映画『ナポレオン』評価考察からネタバレあらすじ〜本国フランスの反応まで

戦争・歴史・時代

こんにちは!映画好き絵描きのタクです。今回レビューでは、映画『ナポレオン』を取り上げます。リドリースコット監督×ホアキンフェニックス主演の歴史スペクタクルムービーです。(2023年公開)




本サイト・ムービーダイアリーズでは、日本公開日12月1日に先立って、「あらすじ予測」から「ナポレオン戦争年表」まで、予告編を交えつつ予告記事として取り上げてきましたが、こちらは劇場の観劇レポートです。

はたして予告記事に書いていた「期待」は満たされたのか?それとも裏切られたのか??

早速、映画『ナポレオン』感想考察から評価までレビューしてみます。あらすじは最後の方にまとめていますので、あらすじがまずは知りたい!という方は目次からどうぞ。



『ナポレオン』予告編




『ナポレオン』スタッフ・キャスト

監督:リドリー・スコット/脚本:デビッド・スカルパ/撮影監督ダリウス・ウォルスキー/ピロダクションデザイナー:ーサー・マックス/衣装:クレア・シンプソン|サム・レスティヴォ/音楽:マーティン・フィップス

キャスト:ナポレオン:ホアキン・フェニックス/ジョゼフィーヌ:ヴァネッサ・カービー/ウェリントン:ルバート・エヴェレット/ジュノ:マーク・ボナー/マリー・アントワネット:キャサリン。ウォーカー 他



『ナポレオン』ぼくの感想

上映時間158分は長い?短い?

ぼくは映画に「長さ」を感じませんでした。愛憎劇と戦争シーンの組み合わせを考えると、2時間半は必要だったと思います。

とはいえ、158分をもっと長くして、戦いを詳しく解説したり愛憎劇を饒舌たっぷりに描いていたら、観客としてのぼくの集中力が持たなかった、、、とも思います。

歴史において、一人の英雄の存在って、様々なエピソードに支えられ出来上がっていくものです。そう考えると、「英雄映画を史実にのっとって2時間〜3時間で描くって、難しいよなあ…」と感じました。

では、過去に公開され評価の高い歴史英雄映画って、どうだったでしょうか??

当ブログでは過去記事で、実在のスコットランド独立の英雄「ウィリアム・ウォレス」を描いた『ブレイブハート』を取り上げています。

『ブレイブハート』は歴史英雄映画として傑作です。

が、ここで注意しなければならないのは、『ブレイブハート』はかなり昔の話。おまけに史実的に不明なところも多い英雄です。

ゆえに史実にフィクションを巧みに織り交ぜて、いわゆる「換骨奪胎」していますが、観客に違和感を抱かせることはありません。

なので、同じ英雄モノでも歴史アクションスペクタクルとして成り立っていました。

しかし『ナポレオン』で描かれる時代は、歴史研究や人物像研究もかなり進んでいる18〜19世紀です。

人物ナポレオンを史実踏まえた「フィクション」としてどう描くか?が映画『ナポレオン』の脚本のカナメだったと思いますが、さすがに『ブレイブハート』やリドリースコット監督がかつて作った『ロビンフッド』のように「換骨奪胎」はできなかったと思います。

史実や人物研究がはっきりしている時代の英雄を描き出す難しさ。それを、158分の上映時間に感じました。



ホアキン・フェニックスとヴァネッサ・カービーの演技は?

映画では歴史的事実はそう変えられませんが、登場人物の人間像は、解釈の余地=フィクションとして面白みを出せるところです。

例えば、ギャングのボスの人物像を描き出す時、家族からみたボス像と敵から見たボス像は全く違うわけですし、脚色の市街のあるところです。

『ナポレオン』の主人公ナポレオンと妻ジョゼフィーヌの人間像にも同じです。人物なんて立ち位置によって良くも悪くも、英雄にも小物にもなるわけです。

映画のなかでナポレオンもジョゼフィーヌも、とても人間臭い描き方をしています。

ナポレオンなんて、初戦では戦場の恐怖に声さえ出ません。そんな小物感プンプンの設定とホアキン・フェニックスの演技にぼくは拍手でした。

ジョゼフィーヌにしてもしかりです。生身の人間がスクリーンのなかにいました。

彼らのセリフも、「このシーンでこう言うのか、、、さすがだな」と思って聞いていました。全編通してセリフにおいては、観客に「セリフ想像の余地」を与えないところはよかったです。

つまらない映画の最右翼は、「ここでこう言うセリフ言わせるのかな」と思っているとその通りのセリフが出てくる、、、ってやつ。よくあるじゃないですか、そんな映画。

ホアキン・フェニックスとヴァネッサ・カービーの演じた二人のセリフにはそんなアルアルはなかったです。セリフもぼくは楽しめました。

ホアキン・フェニックスとヴァネッサ・カービーはもとより、取り巻く歴史上人物の言葉、演技を。ぼくはしっかりと楽しめました。



脚本への不満〜あの人物はどこへ消えた?

「セリフは良かった」と書きましたが、脚本全体の出来とは別物です。

編集の関係もあるのでしょうが、シナリオのざっくり感は残念でした。「あれ?さっき出てきたあの登場人物は、大事なはずだよね。でもどこへ消えちゃったの?」という、「振り返ったら残念シーン」がいくつもありました。

大河ドラマの総集編みたいな匂いが漂っていたのが残念です。



わかりにくい列強各国の思惑と歴史の複雑さ

18〜19世紀の西欧の歴史って、難しいと思いませんか?

ぼくは学生時代在籍していたのは史学科で、実は主に学んでいたのは西洋史でした。(専攻は古代ギリシャローマだったけど)そんなぼくですけど、フランス革命前後の西欧列強の歴史って、わかりにくいです。西洋史やっていた学生時代なんてとうの昔。記憶は霧の彼方です。

ナポレオンの歴史は、イギリスやフランスの観客なら何も言わなくてもわかる歴史かもしれませんが日本人観客でどれだけの人が映画『ナポレオン』をわかったんだろう?これ、正直な実感です。

歴史好きなら問題ないのかもしれませんが、史学科にかつていたぼくでさえ、映画を見るにあたって、当時の歴史を復習して行きました。それでも劇中、「あれ?この国、どこと結託したんだっけ?」とか、「今戦ってる相手、オーストリア?ロシア?どっちだっけ??」となるテイタラクです。

日本人にとって、西欧歴史ムービーの難しさを突きつけられた気がしました。



『ナポレオン』見どころ考察

この映画の推しは「動く絵画」だ=R・スコット監督の「近世絵画」への憧憬

『ナポレオン』でぼくが最大の見どころ、と感じたのは、その撮影における光と影の素晴らしさです。

リドリー・スコット監督は、もともと美術を学んでいた過去があります。そのこだわりが全編に光っています。

リドリー・スコット監督の映画は、『ブレードランナー』から『エイリアンシリーズ』『ブラックレイン』他、どんな作品を観ても「光と影の演出」が徹底追求されています。

『ナポレオン』では、あえて19世紀=近世絵画を彷彿とさせる「光と影」を映像に再現しています。

『ナポレオン』のシーンはもう、どこをとっても「動く絵画」であるということ。

戴冠式のシークエンスなどはもう、登場人物の配置から陰影まで、鳥肌立つほどの絵画的映像でした。もちろんそのシーンだけではありません。

絵画的な見方をたずさえて『ナポレオン』を見ると、そこには他の映画の追随を許さない19世紀の光への監督のこだわりをみることができます。

先に書いた戴冠式シーンでは、よく観ていないと気づかないかもしれませんが、手前に「宮廷画家」がいるのです。

宮廷画家をあえてそのシーンに添えた理由は、ただ一つだと思います。

それは、若き頃、画家としての技術と心を学んだリドリー・スコット監督の「近世絵画の光と影へのリスペクト」です。(リドリー・スコットはハートプール美術大学からロンドン・カレッジ・オブ・アートに進んでいるのです。映画に舵を切ったのはそののちのこと)

そうとしか、ぼくには思えませんでした。

室内シーンに限りません。戦場のシーンさえも雲や光、湿度までも空気感を大切に描き出しています。

撮影監督の力量の凄さでもあると思いますが、『ナポレオン』を見ようと思ったら、ぜひ、そんな視点で「絵画的な光と影」を観てほしいな、と思います。







戦場シーンへの考察〜描きたかったのは歴史スペクタクル?それとも一本の木?

『ナポレオン』予告編を観た時に、この映画は、観たことのない壮大な歴史戦争スペクタクルになるのではないか?とぼくは勝手に思いました。

しかし、観終わって「戦場シーンが印象に残ったか?」と聞かれると、「いや、そうでもない」と言うのが正直な感想です。

広大な原野でエキストラを大動員しドローン撮影された戦闘シーンのスケールの大きさは確かに過去最大級かと思います。

でも、なぜか戦闘シーンはそんなに印象に残らなかった。むしろ、同監督の『グラディエーター』の戦闘シーンの方が数段上だとぼくは感じています。

しかし、そんな戦場で強く印象に刻まれたあるモノがありました。それは原野にたつ林だったり、一本の木だったのです。戦いのシーンで映し出される木々。その存在感を丁寧に作り上げた美術にぼくは心が動いていました。

エルバ島に流されるシークエンスでも、「本の枯れ木の傍に座るナポレオン」のカットが使われます。その枯れ木もまた、シーンが持っているメッセージを静かに訴えてくるのです。

映画は見る人がそれぞれ何を受け止めるか?それは自由です。

戦争映画や歴史物が好きなぼくですが、『ナポレオン』では戦闘シーンにスペクタクルはさほど感じず、むしろそんな木々にドラマを感じたのでした。



『ナポレオン』が描き出した英雄像の裏側

ナポレオン=英雄=クセある強いヤツ….という連想が大方の人の抱いているイメージではないでしょうか?

少なくともぼくはそうでした。

ですが、この映画では『ナポレオン』はそんな型通りのイメージでは描かれません。人によってはそのスタンダードなイメージとは離れた描かれ方が、映画への評価につながるのかもしれません。ぼくはいい意味で裏切られた感が心地良かったです。

あえてナポレオンを大胆不敵な英雄として描かなかったのは、これまでの映画界の英雄描写への監督からの、敢えてのアンチテーゼだったのではないか、と考えています。


「4時間版の存在」をちらつかせたリドリースコット監督のマイナス

映画の公開が日本に紹介され始めた2023年の夏あたり、リドリースコット監督のコメントが何かに乗っていました。

それは「この映画は2時間半だが、4時間バージョンも用意してある…」といったようなコメントでした。

そのコメントにぼくは、「公開されるのは、4時間バージョンのダイジェスト版と言うことなのだろうか?」と、いやーな思いが頭をかすめました。

今回映画を見終わった時に思い出したのは、その監督の言葉でした。

説明不足で消えていった登場人物や、あちこちで枝がちょん切れたような欲求不満が残るような感覚は、総集編によくある感覚でもあります。

いろんな事情があるにせよ、完全版は後ほど、、、って、そりゃないぜ、と思ってしまった『ナポレオン』でした。


『ナポレオン』評価1・ナポレオン(2023)は万人におすすめか?

以上、色々と書いてきましたが、ナポレオンは万人向けか?と聞かれたら、イエス!とは言い難いかな、とぼくは思いました。

「映像美やセリフの機微を楽しみたい人」は、2時間半を長く感じないと思います。

一方、「とことんドンパチ歴史戦争スペクタクルを楽しみたい人」は、肩透かしを食らうかもしれません。


『ナポレオン』評価2・リドリー・スコットファンのぼくですが、一抹の寂しさが…

ぼくの個人的に好きなリドリー・スコット監督が86歳にして世に送り出した歴史大作『ナポレオン』ですが、考察でも色々書いたとおりで、寂寥感が残っています。

ぼくの『ナポレオン』評価は星5つ中、星3つ、でした。

しかして86歳(!)にしてこれだけ大きなスケールの映画を世に送り出すリドリー・スコット監督はますます好きな監督となったのも事実です。



『ナポレオン』評価3・本家フランスの評価は?

歴史的英雄の映画となれば、英雄の本国の評価が気になりますよね。

産経新聞にフランスでの評価について書かれた記事を見つけましたので、参考まで貼っておきます。

米英映画「ナポレオン」 フランスから不満タラタラ 戦争の時代、英雄史観に変化も
米英合作映画「ナポレオン」が年末を前に、日本など世界各国で公開された。「グラディエーター」で知られる英国人監督リドリー・スコットの大作だが、フランスではアング…

フランスでの評価はどうやら散々だった模様です。

「下品な映画」「歴史家が疑問を投げかけている」など酷評もあったようです。

英雄の映画での描き方って、立ち位置によって変わるのはもちろんですが、制作陣がどの国で育ってきたかでも、英雄の受け取り方が変わりますよね。

国籍が違う映画人が別の国の英雄を脚本にした場合、たとえ中立を意識して脚本を書いても、ズレは出てくると思います。

例えば、もし、豊臣秀吉を中国映画人が監督したら、、、それはもう、ぼくら日本人には思いもつかない解釈で映画を作ると思いますよ…。



追記・『ナポレオン』映画で描かれる戦争は?

頻繁に戦争を繰り返したナポレオンですが、映画の中で取り上げられた「対外戦争スペクタクルシーン」は、以下の5つの戦いでした。

1.トゥーロンの戦い

2.エジプト遠征

3.アウステルリッツの戦い

4.ロシア遠征

5.ワーテルローの戦い

ちなみにナポレオン戦争の年表(大まかです)を調べてみたので、あらためて以下に記載しておきますね。映画で取り上げられた戦いは赤字にしておきます。

1796〜97年:26歳〜フランス革命後の対オーストリア・イギリス戦争(トゥーロンの戦いはここ)〜イタリア遠征

1798〜99年:エジプト遠征:対オスマン帝国軍に勝利99年アブギール湾の戦い:イギリス海軍ネルソン提督に敗北

1800年:第二次イタリア遠征:マレンゴの戦いでオーストリア軍に勝利

1805年:対イギリス戦争:トラファルガーの海戦:イギリス海軍ネルソン提督に敗北。

1805年:アウステルリッツ三帝会戦:オーストリア・ロシア連合軍に勝利。

1806年:イエナの戦い:プロイセン軍に勝利〜ポーランド侵攻

1807年:ポルトガル・スペイン征服

1808年:スペイン反乱軍を鎮圧できずに祖国防衛に転換。

1812年:イギリス弱体化を目論み大陸封鎖令。従わなかったロシアに遠征。敗北。

1813年:ライプツィヒの戦いでヨーロッパ連合軍に敗北。連合軍のパリ入城〜ナポレオン退位。エルバ島へ流刑。

1815年:エルバ島から脱出し、ワーテルローの戦い:イギリス連合軍に敗北。セントヘレナ島に流刑。



『ナポレオン』あらすじ結末まで〜ネタバレ閲覧注意です

簡単に映画のあらすじを紹介しておきます。歴史的事実ベースの映画ですので、あらすじはネタバレありで書きます。ご注意ください。

映画『ナポレオン』は1789年フランス革命・マリーアントワネットがギロチンの露と消えるシーンからスタートする。

その断頭台を横目に登場するのが、若き砲兵士官ナポレオンだ。

しかし、革命で全てが変わったかと思いきや、党派が紛糾、フランスはまとまらない。

そんな機に乗じ、イギリスがフランスに軍を進める。

コルシカ島出身の砲兵将校のナポレオンが、そのイギリス軍撃退任務を任される。

任務は成功。ナポレオンは昇格、軍人としての地位を固めていく。

そんなナポレオンの前に現れた女性が、子持ちの未亡人ジョゼフィーヌだ。

やがてナポレオンはジョゼフィーヌと結婚。

次々と対外戦争で戦果を上げ国家の中枢に迫り、ついにナポレオンは王冠まで手に入れる。

しかし世継ぎができないナポレオンとジョゼフィーヌの間には愛憎が渦巻く。

時代はヨーロッパ列強がしのぎを削る帝国主義の真っ只中。

繰り返される祖国防衛戦争は拡大戦争と様相を変え、戦いと夫婦の愛憎の間にナポレオンは漂流することになる。

ナポレオンは結果、ジョゼフィーヌと離婚する。

ここからは結末へ向けてのネタバレとなりますので閲覧注意です。くれぐれもご自身の判断でどうぞ。


繰り返される戦争は転換期を迎え、敗北が続き、ロシア遠征では40万を越す死者を出し、ナポレオンは王冠を取り上げられ、エルバ島に流される。

しかし、皇帝復帰を謀りエルバ島を脱出。再び皇帝に返り咲くが、イギリスとのワーテルローの戦いに敗れ、セントヘレナ島へと流される。

ナポレオンの戦いと愛憎の漂流はセントヘレナ島で終わりとなる。

ナポレオンはセントヘレナ島で死去。最後に口にした言葉は、フランス・陸軍・そしてジョゼフィーヌだった。

これが映画のあらすじです。


リドリー・スコット監督の他作品紹介レビュー・リンク

『ナポレオン』の監督リドリースコットは、名作『グラディエーター』(アカデミー賞作品賞受賞)の続編『Gradiator2』も2024年に公開予定とのこと。ワクワクします。

以下に、「ムービーダイアリーズ』で取り上げたリドリースコット映画レビューを紹介しておきます。

『グラディエーター』https://www.movie-diaries.com/gradiator-420

『オデッセイ』https://www.movie-diaries.com/oddessey-1448

『最後の決闘裁判』https://www.movie-diaries.com/saigono-kettosaiban-1040

『エイリアン』https://www.movie-diaries.com/alien1-948

『ブラックホーク・ダウン』https://www.movie-diaries.com/blackhawkdown-823

『プロメテウス』https://www.movie-diaries.com/prometeus-812

『エイリアン・コヴェナント』https://www.movie-diaries.com/aliens-covenant-794

『テルマ&ルイーズ』https://www.movie-diaries.com/termalouise-1279




『ナポレオン』配信先は?

AppleTV+で配信されています。(2024年3月現在)







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