『戦争のはらわた』ネタバレ解説2〜合言葉は「編集」そしてラストの謎まで〜スローモーションの美学考察まとめ

スリラー・SF・アクション

こんにちは、映画好き絵描きのタクです。今回は『戦争のはらわた』解説評価編です。(あらすじ考察はこちらにもまとめています)

すごい映画って、細部が語ります。

随所に垣間見える、監督サムペキンパーのこだわりをレビューします。合言葉は「編集」と「音」です。




『戦争のはらわた』デジタルリマスター版予告編




『戦争のはらわた』解説~合言葉は「編集」~

観客を引き込むのも、途中でイビキをかかせるのも、編集に負うところが大きいと思います。

面白くない映画は、冒頭5分程度で「なんとなく」わかるものですよね。

演出され撮られたフィルムをどう繋ぐか、どんなタイミングで繋ぎ合わせるかが編集なわけです。

『戦争のはらわた』は、当時(あくまで当時)、他のどんな映画にも無かったカットつなぎが独特の間合いを作り出してます。

そんな編集のワザにも感動するのが、本作。

たとえば、斃れゆく兵士のカットを、同時進行する他のカットと短い時間で組み合わせるんです。

その効果たるや、サブマシンガン並みパワーです。

その編集テクニックでぐいぐい劇中に引き込まれます。




『戦争のはらわた』解説~合言葉は「絶叫そして音」~

また、「音」へのこだわりにも、ペキンパーの美学が光ってます。

なんの音かって?

それは、死にゆく兵士の「絶叫」。

いわゆるタマが当たった時の「ぎゃーっ!ぐぇーっ!」です。

はじめて観た時、それまで聞いたことない絶叫リアリティにたまげました。

その音声が戦場に観客を引っ張り込むんです。

ペキンパーは「絶叫トーン」に絶対的にこだわり、演出したんだと思います。

それほどまでに悲鳴のすごさが徹底しています。

ぜひぜひその戦場の叫びをお聴きいただきたいです。




『戦争のはらわた』解説~ラストエンドロールの遊低音「ンカシャ!」削除の謎

公開当時、エンドロールが流れる時、銃の遊底音が数秒おきにサウンドエフェクトで挿入されていました。

銃を撃つ前に弾丸を薬室に送り込むために、遊底という装置を操作します。小銃のボルトや拳銃の上部をスライドさせるんですね。

「ンカシャ!」は、その時の音です。

弾がこめられた音ですね。

ビデオ版では、その音が削除されていました。

エンドロールまでこだわっているんだと、公開当時思っていただけに、残念に思いました。遊低音が削除された理由は、今も分かりません。DVDでは復活しているといいんだけど、、、




『戦争のはらわた』解説~兵器のリアリティ~

第二次世界大戦をテーマにしたそれまでの戦争映画では、たとえば戦車や飛行機は、現行戦車のマーキングを変えて撮影に使用するのが一般的でした。

今は、CGでなんでもできちゃいますから、CGで古い兵器も手品のごとく登場させられます。

しかし当時はまだCGのシの字もない時代です。

たとえば「パットン大戦車軍団」という映画では、撮影当時の現役戦車(WW2の時代には存在しなかった車両)を使い、ドイツ軍マーキングを施し「これ、ドイツ軍の戦車ってことにしてね」という方法を取りました。

方法がそれしかなかったのですね。

ところが『戦争のはらわた』ではやられました。

ソ連軍が大戦時に使用していた主力戦車、T34中戦車がリアルに登場するではありませんか。

これには実はちょっとだけミリオタが入っているぼくは、涙が出ました。

どうやって、また、どこからT34を借り受けたのかわかりません。

が、東部戦線のリアリティ再現にこだわったサム・ペキンパーが

「なんとしてもホンマモン、見つけて走らせろ!」

と怒鳴っている姿が目に浮かびました。(叫んだかどうかわからんけど)

細かな兵器ネタでは、シュタイナー伍長が、ソ連軍のサブマシンガン「バラライカ」を鹵獲(ろかく)して使うシーンがあります。

鹵獲という言葉も、ウクライナ戦争のニュースで一般的になりましたね。敵の兵器をぶんどって使うことです。

当時のドイツ軍が、補給がままならなくなって、鹵獲した敵軍のマシンガンも使っていた現実を、さりげなくあらわしていました。

そんな細かなところまで気を配った制作陣に喝采です。




『戦争のはらわた』ぼくの評価

その1.その2と、ずいぶんとミリタリーに偏った事ばかり書きましたが、それがあるから、この映画では戦場のリアルと非条理が描き出されているんだと思います。

冒険小説として書かれたものを映画化した「ナバロンの要塞」や「荒鷲の要塞」といったアドベンチャー系戦争映画とは、全く異質な戦場を世に送り出したサム・ペキンパー。すごい映画を残した時思います。

星、四つと半分。

なんでここまで褒めまくって、星が半分欠けたのか、、、それは一つだけ、個人的に腑に落ちないのは日本版タイトルです。

「悪魔のはらわた」、「死霊のはらわた」、1970年代当時、確かに、はらわた路線タイトルはあったけど、『戦争のはらわた』は、はたして良かったのか悪かったのか

原題「クロス・オブ・アイアン」をそのまんまでも良かったんじゃないかな

「クロス・オブ・アイアン」とは、映画のストーリー展開で大事なカギとなる戦功章・鉄十字勲章のことです。

たぶん、はらわたタイトルでドン引きして観ないヒト、少なからずいると思うし。もったいない。なので星、四つと半分なのでした。




『戦争のはらわた』~キャスト・追記~

デビッド・ワーナーという役者さんが脇役で出ています。

将軍付きの士官役です。歴戦の猛者を匂わせつつ、めっぽういい役回りです。ペキンパー映画では、「わらの犬」に出ていました。

時を経て、誰でもが知る「タイタニック」でもその名脇役ぶりを発揮しています。主人公ジャックを追いかけ、客室に閉じ込めるガードマン役ですよ。「タイタニック」では、とことん悪役を楽しんでいます。

デビッド・ワーナーさん、すでに鬼籍に入りましたが、見返せば見返すほど、いい役者さんだと思います。


『戦争のはらわた』まとめ

戦争映画ってなんでこうも立て続けに作られるのでしょうね?

「戦争って悪いことだ」っていうのは誰でもわかっていますし(多分)、暴力の行き着く先が戦争ということも誰もが理解していると思います。

だけど、戦争映画というジャンルは無くなりませんし、これからも作られ続けるでしょう。

そして、戦争は「絶対悪」ということはわかっていても、ぼくらは戦争映画に惹き寄せられてしまいます。

サム・ペキンパーがどこまでもバイオレンスにこだわって映画を作り続けましたが、バイオレンスの究極系が「戦争」であることを承知で、この映画に取り組んだのだと思います。

人が戦いに惹きつけられるのは、ひるがえって戦争映画に引っ張られるのは、脳の奥にしまわれている「生存本能」をくすぐられるからなのかもしれません。

サムペキンパー監督は、そんな人間の悲しい業を冷徹にかつ寂しく見つめていたのかもしれません。

戦うことの本性を暴いてくれる映画、それが「戦争のはらわた」だと思うぼくです。








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