映画『エイリアンコヴェナント』は、2017年公開のSFホラー作品。エイリアンシリーズは6作作られていますが、本作はリドリー・スコットが監督した作品としては、1本目の『エイリアン』、間を開けて5本目の『プロメテウス』。そして6本目が本作の『エイリアン コヴェナント』です。
SF映画史に大きな足跡を残していると言っていい『エイリアンシリーズ』ですが、エイリアンの世界観を、一番最初に作り上げたリドリー・スコット監督の、エイリアンシリーズラストを決める最新作!とくれば期待絶大。観てみました。
果たして『プロメテウス』から続く『エイリアンコヴェナント』は、みる価値ある?それともハズレ??『エイリアンコヴェナント』で出てくるショウ博士の謎解きのための前作あらすじも含めてレビューします
※エイリアンシリーズの他作品レビューはこちらでどうぞ
『エイリアン:コヴェナント』予告編
『エイリアンコヴェナント』は『プロメテウス』の続編。
『エイリアン コヴェナント』は、前作『プロメテウス』の続編であり、『エイリアン』シリーズの最新作です。『プロメテウス』で描かれた、人類の起源とエイリアンの関係性がさらに明らかにされます。また、エイリアンの新たな形態や、より残忍な攻撃性も描かれます。
『プロメテウス』のあらすじは、別記事に書いていましたので、そちらから転載します。観て知っている方はスルーです。
前編『プロメテウス』のあらすじおさらい
『プロメテウス』では、人間を創った異星人「エンジニア」の存在が明かされ、ふるつわの船長やショウ博士以下10数人の探査チームがそのエンジニアの星を目指す。
星につく探査チームメンバーの先遣部隊。彼らは巨大な遺跡を発見し、内部を踏査する。
しかし、生命反応は、ない。転がっていたのは化石化したようなエンジニアの死体だ。
エンジニアたちはすでに何者かに滅ぼされていたのだ。
探査チームメンバーの一人、アンドロイドのディヴィッドは、滅したその何者かの存在を探り当て、こっそりと乗組員にエイリアンの株を移植する。
乗組員は寄生株として体内で発芽、乗組員の肉体は別の生命体に乗っ取られてしまい、乗組員リーダーの手によって、火炎放射器で焼き殺される。
しかし、ショウ博士もまた寄生されていた。自らの腹部に帝王切開オペを施し、体外に寄生体を排出させるショウ。
そんな最中、探査船では、アンドロイド・ディヴィッドを作り、探査チームを送り込んだボスが乗り組んでいたことが明かされる。
ボスは、「不滅の生命の秘密をエンジニアから聞き出したい」と、ただ一人遺跡の中の冬眠ポッドに生き残っていたエンジニアを解凍する。
しかし、エンジニアは人間の理解の及ばぬ存在だった。
一撃で倒されるボスはじめ人間たち。そして首を引き抜かれ破壊されるディヴィッド。
辛くもショウは遺跡から逃げ出す。
一方、目覚めたエンジニアは、高射砲のようなコクピットに座り、何らかのシステムを起動させる。
遺跡と思っていたそれは、想像を越えた巨大母船だった。
荒野が割れ、宇宙船が浮上する。目指すは地球だ。
宇宙船内には多数のエイリアンの株があることを知ったショウは、探査船に待機している船長に伝える。「なんとしても地球に母船が向かうのを阻止して!」
船長以下乗組員の二人は命を投げ出す覚悟を決め、探査船を宇宙船に体当たりさせる。
墜落する母船。
からくも逃げ延びたショウ博士は一機のポッドにたどり着くが、室内にはショウの腹部から取り出したエイリアンが巨大に成長していた。
エイリアンとの最後の戦いを乗り切るショウ。
しかし、すでに仲間は誰も生き残ってはいない。絶望するショウ。
その時、イヤパッドにデイヴィッドの声が響く。
「助けてください。私がもう一機のエンジニアの宇宙船を操縦できる。ここから脱出しましょう」
程なく、ショウ博士とデイヴィッドを乗せた一機の母船が、星から宇宙へ向けて旅立った。。。
以上が『プロメテウス』のあらすじです。『エイリアンコヴェナント』では、このあとのエピソードが描かれます。
『エイリアンコヴェナント』のあらすじです
探査
時は、2104年。植民地へ移民を運ぶ、宇宙船コヴェナント号我有通空間を進む。突然発生した緊急事態で冬眠していた乗組員たちは、目を覚ます。
近くの惑星から謎の信号を受け取った主人公ダニエルズを初めとした乗組員メンバーは、その惑星を調査することになる。
惑星での調査を開始した彼らは、そこで地球に似た環境を発見する。水があり、麦が育ち、巨木が生えている。
ショウ博士の影
惑星調査する中で、ダニエルズたちは、ショウ博士(エイリアンプロメテウスの主人公=プロメテウスラストで脱出する)の刻印がされた認識表を見つける。
なぜ、この惑星にショウの認識表が落ちているのか??いぶかる乗組員。
実は惑星は、エイリアンの起源株(霧のような粉)が生命体=人間の到着を待っていた惑星でもあった。
乗組員は一人また一人とエイリアンの幼体に寄生され、母船に戻る着陸艇まで失うことになる。
デイヴィッドとウォルター
そこに謎の男が現れ、エイリアンから乗組員を救い出す。安全確保のため謎の男に連れて行かれたのは、遺跡のような場所だ。周りには黒焦げた無数の人型異星人の亡骸が無数にある。
いったいその場所はなんなのか?
謎の男は、『プロメテウス』のアンドロイド、ディヴィッドだった。
なぜこの星にデイヴィッドがいて、ショウ博士の痕跡があるのか??
探査チームに同行していた新型アンドロイドのウォルターは、旧型アンドロイド・ディヴィッドにその謎を問いただす。
エイリアン追撃
次第に明らかになる、エイリアン誕生の謎。先住民を抹殺、エイリアン株を進化させていたのはデイヴィッドだったのだ。
物語は、ウォルターとデイヴィッドとの戦い。生き残った乗組員たちとエイリアンの戦いのクライマックスに突き進む。
果たして乗組員たちは、エイリアンの追撃をかわしながら、惑星から脱出することができるのか?
…といったあらすじです。
『エイリアンコヴェナント』ネタバレありの考察
登場人物のキャラクター
ヒトの生命の誕生。その謎明かしに別の惑星のヒト型宇宙人とエイリアンクリーチャーを絡めて描いたのが前作の『プロメテウス』でした。
『プロメテウス』主人公たちは、生命探査船乗組員です。いわゆる探査研究のための学者系でした。
前作『プロメテウス』の登場人物がほぼ学者だったのに対し、続編となる本編『エイリアン:コヴェナント』の主人公たちは、惑星移民船乗組員です。学者ももちろんいますが、それは一部。職業毛色が前作メンバーのそれとは違います。
しかし両作に共通しているキャラクターが出てきます。『プロメテウス』『エイリアン:コヴェナント』に同じ顔で登場する「アンドロイド」です。
『エイリアン:コヴェナント』では最新型のアンドロイドが「ウォルター」という名前で登場しますが、『プロメテウス』の「デイヴィッド」も生き残っていたことが本作でわかります。
2体は俳優マイケル・ファスベンダーが一人二役を演じ、「善と悪の象徴」として、ストーリーのカギを握ります。
にじむリドリー・スコット哲学
リドリー・スコットの映画には、どこか宗教の匂いがします。哲学の匂いと言っても良いかもしれません。
といっても、堅苦しいわけではなく、じわっと滲み出る感じです。
ぼくがリドリースコット監督の好きなところに、その「滲む哲学観」があります。
リドリースコットの哲学感は、押し付けがましくなく、あからさまなそれでもなく、極めてそこはかとなく、、です。
ぼくは、リドリー・スコットのそんなところが好きだったりもします。
また、「AIに対する警鐘」とも思えなくもない、アンドロイドの静かな叛逆が、両作の根底には流れています。
そんなイマドキな批判的テーマを数年前にすでにSFホラーアクションというコロモでやんわりと包んでいたあたりは、さすがだなあ、と思いました。
鉛筆デッサンに注目
また、デイヴィッドがエイリアンを作り上げる試行錯誤の表現が秀逸です。
ディビッドの暮らす室内に所狭しと張り出されている「紙へのスケッチ。デッサン」としたところが、この映画の世界観を引き立てています。
大方、SF映画なら、このようなシーンはコンピューターグラフィックスを使いたくなるところです。しかし、あえて究極のアナログ「鉛筆デッサン」としています。
リドリースコット監督は、若いころ美術を学んでいました。ペーパーに鉛筆デッサンというアイデアは、美術の学生から映画界へ進んだキャリアがあるリドリースコット監督だからこその発想だったのでは?と、僕は推測しています。
今回、配信で観たので、ついつい一時停止ボタンを押して、目を皿のようにして鉛筆スケッチを見ているぼくがいました。
リドリー・スコットのエイリアンシリーズには、凄まじいホラーとともに、「人間はどこからきてどこへ行くのか?」という問いが見え隠れしているように思えます。そんなところがぼくがリドリー大好きな理由なのです。
『エイリアンシリーズ』の時系列を一挙紹介
最後に、「エイリアンシリーズって、何本もあるけど、時代はどういう順番なの?」って思っている方、多いと思います。ぼくもわからなくなってきましたし(笑
なので調べてみました。
以下が『エイリアン年代記』です
1作目の『エイリアン』は時代設定が2122年。
2作目『エイリアン2』はそれから57年後の2179年。
3作目『エイリアン3』はそのまた後(主人公は1.2と変わらずリプリー(シガニー・ウィーバー)ですが、時代は明確にわからず…2200年くらいか?)
4作目『エイリアン4』はその400年後(!)ということで…2600年くらい??(….もはや、すっ飛んでます)
5作目が本作『プロメテウス』ですが、設定は2089年。意外にもブログで書いている現在から、そんな遠い未来の話でもありません。
6作目『エイリアン:コヴェナント』の設定は『プロメテウス』から15年後の2104年。
というわけで、時代順は、『プロメテウス』→『エイリアン:コヴェナント』→『エイリアン』→『エイリアン2』→『エイリアン3』→『エイリアン4』の時系列なのでした。
ちょっとびっくりしますよね。
第1作『エイリアン』の方が『プロメテウス』『エイリアン:コヴェナント』よりもあとのお話なのでした。
「洋画専門チャンネルザ・シネマ」さんが、わかりやすく『エイリアン』シリーズの繋がりや設定、エイリアンのタイプなどを解説していますので、ご一読をオススメします。
『エイリアンコヴェナント』ぼくの評価
『エイリアンコヴェナント』はエイリアンが人間を襲うすリーズ定番の怖さももちろんありますが、この作品は二人のアンドロイドのものがたりにテーマので主眼が置かれています。ぼくはその点に、リドリー・スコット監督の進化を見ました。
まだ進化しているってすごいな。だって八十歳近くで撮った映画ですよ。パワーは年齢に関係ないんだなあ、とあらためて思いました。
オープニングのタイトルデザインが従来のタイトルを踏襲しているのも嬉しかったですし、リドリー、スコットの独壇場とも言える横長画面での画面構成も、随所に見られて、大満足。
また、「我々はどこから来てどこへ行くのか?」とのメッセージも忍ばせており、二度見、三度見したくなるSFホラーだと感じました。
エイリアンの造形は、第1作のエイリアンをデザインしたH・R・ギーガーを徹底的にリスペクトしつつの新バージョンクリーチャー登場です。そんなこだわりと進化に嬉しくなりました。
アクションシーンも、もちろん手抜かりございませんでした。
全体通して、ホラー映画としての迫力と、SF映画としての深み、そしてシリーズとしてのつながりを感じさせる作品です。エイリアンシリーズのファンはもちろん、SFホラー映画ファンにもおすすめします。
良い映画をありがとうございました。
追記
『エイリアンコヴェナント』の制作クレジットに「ウォルター・ヒル」の名前を見つけました。アクション映画を撮らせたら一級の巨匠監督です。
作品には『ストリートオブファイヤー』などがあります。エイリアン第一作のプロデューサーもウォルター・ヒルです。
嬉しくなったと同時に本作のアンドロイド名が「ウォルター」だったことにニヤッとしてしまいました。
『エイリアン:コヴェナント』キャスト
キャストはマイケル・ファスベンダー、キャサリン・ウォーターストン、ダニエル・ケイヒ、ジェームズ・フランコ、カトリーナ・ボウデンらが出演。
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