『ロボット・ドリームズ』ネタバレ解説・あらすじ感想評価レビュー|人生は切ないことだらけ、だけど素敵だ

アニメ

『ロボット・ドリームズ』評価:映画の殿堂入り!

こんにちは!映画好き絵描きのタクです。今回レビューする映画は『ロボット・ドリームズ』2024年公開のアニメです。制作国はスペイン。監督はパブロ・ベルヘル。アニメは初挑戦なそうです。「制約のないアニメーションで、物語を描く無限の可能性を探求したかった」とのコメントが入っています。

シンプルでかわいらしい絵柄が綴る、切なくも心がホッと暖かくなるストーリーです。ちなみにいっさいセリフはないんです。

日本のアニメもすごいと評判だけど、正直ぼくはどうも苦手な作品が多い。どう苦手かって?手厳しいかもしれないけど、その理由はキャラと背景の金太郎アメ的なところ。海外のアニメにはそんな金太郎アメ的なところがないんですよね。アニメクリエイターの育った文化、土壌が違うから当たり前なんでしょうけど。

そんな日本のアニメとはガラッと違うアニメ『ロボット・ドリームズ』をレビューしてみます。

本記事には見方によってはネタバレも多く含まれます。あくまで自己判断でお読みくださいね。

解説『ロボット・ドリームズ』予告編

解説『ロボット・ドリームズ』はどんな映画?

主人公の孤独なワンコ「ドッグ」と、彼が買った「ロボット」との友情を描いて第96回アカデミー賞:長編アニメーション映画賞ノミネート、アニー賞、ヨーロッパ映画賞、ゴヤ賞と受賞。めちゃくちゃ評判の高いアニメです。公式サイトでは「切ないながらも暖かく観るものの心を揺さぶる類まれな傑作」とのキャッチコピーもあります。

でもな、えてして「評判の高い」と「おもしろい」は別物だったりしするし、公式サイトの文言はアテにならないことも多いですよね、、、。

大昔の話ですが、ぼくはアニメーターをしていた時期もありました。なのでアニメにはアマノジャクです=笑。そんなぼくがどう感じたか、『ロボット・ドリームズ』正直直球感想文です。

『ロボットドリームズ』あらすじです

あらすじは公式サイトより転載します

大都会ニューヨーク。

ひとりぼっちのドッグは、孤独感に押しつぶされそうになっていた。
そんな物憂げな夜、ドッグはふと目にしたテレビCMに心を動かされる。

数日後、ドッグの元に届けられた大きな箱―― それは友達ロボットだった。
セントラルパーク、エンパイアステートビル、クイーンズボロ橋……
ニューヨークの名所を巡りながら、深い友情を育んでいくドッグとロボット。
ふたりの世界はリズミカルに色づき、輝きを増していく。

しかし、夏の終わり、海水浴を楽しんだ帰りに、ロボットが錆びて動けなくなり、ビーチも翌夏まで閉鎖されてしまう。
離れ離れになったドッグとロボットは、再会を心待ちにしながら、それぞれの時を過ごす。
やがてまた巡りくる夏。ふたりを待ち受ける結末とは
―― 。

『ロボットドリームズ』あらすじ結末まで~ネタバレ閲覧注意!

ここからは完全ネタバレとなります。映画を見る方は絶対スルーしてください

+ + +

再び夏が来た。ドッグは海開きを待って、ビーチにロボット救出に出かける。

しかし探し出すことは叶わず、意気消沈。家に帰るドッグ。

ロボットは金属廃品回収のサルによって見つけられ、ジャンクガレージへと売られていたのだ。

ドッグは、そんなことは知らずに、新しい出会いに心を癒され、そして切なくもまた別れを経験する。

そして「新しいロボット」を友人として迎える。

ジャンクガレージに売られていたロボットは、バラバラに壊されていた。

そんなロボットをアライグマの「ラスカル」がもらい受ける。

ラスカルは、ロボットをいびつながらも修理し再生させる。

修理されたロボットはラスカルとの新しい友情を育む。

ある日、ロボットがラスカルとアパートの屋上でバーベキューを楽しんでいると、

通りにドッグが新しいロボットと通りかかる。

一瞬、路上のドッグと屋上のロボットは互いに視線を交え、懐かしい思い出が二人の間に交差する。

しかし、思い出は、思い出だ。

「ドッグ」は「新しいロボット」との今を、そして「ロボット」は「ラスカル」との今を、それぞれが笑顔で生きる「今」を選び取る。

ニューヨークの青空にエンドロール

『ロボット・ドリームズ』の何が素敵なのか

幻影との素敵なダンス

こんなにも、「出会いと別れ、人生の機微」を暖かい愛で包んだアニメは久しぶりに見ました。

人は誰でもが出会いと別れの繰り返しの中に生きていますよね。

好きな人と出会って、楽しい日々がいつまでも続く気がして、でもいつか別れがやってきます。

しかし新しい明日は必ず訪れて、そんな中に新しい出会いがあり、思い出が重なっていく…。

ある日、ふっと振り返れば、記憶の彼方にそんな離れ離れになった人たちがこちらを見て手を振っている。

懐かしい思い出は幻影のダンスとなって、また新たな日々へのきっかけになって行く…。

そんな人生のカタチをニューヨークを舞台に犬のキャラクターとロボットキャラクターで見せてくれた『ロボット・ドリームズ』にぼくは大きな感動をもらいました。

では、その感動はどこからやってきたものなのか?を掘り下げてみましょう。

背景の色彩にため息

「こんなきれいな色合いのアニメは初めてだ!」

これはぼくの『ロボット・ドリームズ:観劇メモ』の最初に書かれていた言葉です。

「きれい」という言葉はあまりに漠然、広すぎますね。うーん、他の言い方をするなら「強い作家性と今を感じさせる色彩トーン」…でしょうか。

それは背景の素晴らしさからくるものでした。

ニューヨークの街並みが背景となっています。

イラレによる作画背景かな、、、と最初思っていたのですが、よくよく目を凝らして見ていると、なんと手書きによる線をスキャンして処理しているのです。

なんと、アナログな「手描き」ですよ。

それには驚きました。と同時に納得しました。背景の色彩の暖かなトーンは、「手描き」が生み出していたものだったのです。

キャラククターももちろん一枚一枚手描きの線で動かされています。

人って、クリエイターが労力を重ねたものに感動するんです、たぶんきっと。

音楽がくれるため息

使われる曲がふるっています。

アースウインド&ファイアーのセプテンバーが映画全体を通してのキーミュージックになっています。

これは「ふたり」をテーマにした名作『最強のふたり』への隠れオマージュかも、とぼくは思っています。…というか、そう思うととってもハッピーな気持ちになれるので、そういうことにしておきます。

他にも小さな恋人たちを描いた佳作『リトルロマンス』の楽曲が使われているんですが、これも素敵。

花たちとのタップダンスシーンもスマイル必至の名シーンです。アニメーションでしかできない表現に、思わず拍手でした。

音楽とアニメのシンクロが、とことん超絶に粋なのが『ロボット・ドリームズ』です。

教えることは愛だ

『ロボット・ドリームズ』のぼくの心に響いたものの一つとして、「教えることは愛なんだ」というメッセージがあります。

作られたばかりのロボットは赤ちゃんのように何も知りません。ドッグはロボットにまるで母親のように様々なことを教えます。

他にも、小鳥の親子が出てきます。ビーチで動けなくなったロボットのかたわらで、母親が赤ちゃんの小鳥に飛び方をや、さえずり方を教えるといったシーンがあるんですね。そのシーンはそんなメッセージが強く現れているところです。

そんなふうに、ドッグとロボットだけではなく他の登場キャラを通しても、やはり「教えることは愛だ」というメッセージを忍ばせているように思います。

全編通して製作陣がこのアニメを通して「母と子の愛」だと僕は思っています。

ストーリーを支えるロボットの夢

『ロボット・ドリームズ』のストーリーを支えているのはたくさんの夢です。それは逆に「夢こそ現実だ」というメッセージではないでしょうか?

悲しみに暮れるドッグの夢、「無情」さえ感じるビーチに放置されたロボットの色彩豊かな歓喜に溢れた夢

まるで、哲学です。

ドッグとロボットそれぞれの夢が物語を進めていくのです。

その夢の表現がファンタスティックで巧みです。

「夢」って、こんなにも「切なさ」をかきたてるんだ、、、そして「切なさ」って感動をさざなみのようにかき立てるものなんだ、、、そう感じて改めてタイトル「ロボット・ドリームズ」の意味を考えると、タイトル自体に深い意味が見えてきます。

R2-D2から、マジンガーZまで製作陣のロボットラブ

映画を見るときに注意してみててほしいのが、ドッグのベッドの脇の窓辺です。そこにはR2-D2やC3-PO、マジンガーZ、そして、、、うーん名前出てこない=古い映画の丸っこいロボット(失笑)まで、それこそ隅々に製作陣のロボットラブ遊び心が溢れていて嬉しいです。

もちろん、ロボットのデザインは、『天空の城ラピュタ』の「ロボット兵」へのまんまリスペクトだと思いますし、キャラの抑えに抑えた表情の変化なんて宮崎アニメのキャラクター演出に通じるものがあると思います。派手な表情見せないけど心のうちをしっかり観客に伝えるうまさには舌を巻きました。

ロボットネタではないけれどドッグが読んでいる本が何かというと、スティーブンキングの「ペットセメタリー」です。「ペットセメタリー」が出版されてブレイクしたのも1980年代でした。このあたりにも80’sラブが仕込まれています。

『ロボット・ドリームズ』ぼくの評価は?

優しさとは愛する人を守ること

壊れたロボットを救ったのはアライグマの「ラスカル」でした。ラスカルはドッグと違って?寡黙なタイプです。ロボットへ黙々とさりげなく愛情を注ぎます。ラストでドッグとロボットは再会しますが、ロボットはあえて隠れます。そしてラスカルへ愛情を返すのです。ドッグとロボットの明白な別れなんだけれど、ロボットとラスカルの、小さな幸せを暗示して終わります。

ぼくはこのエンディングに思わず泣きました。

だって、いつだってどこでだって、人生には出会いと別れがあって、そして新しい幸せは別れから芽を出すんだ、と教えてもらえたから。

ぼくの評価は、映画の殿堂入りです。星五つです⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

『ロボット・ドリームズ』使用曲:歌詞と和訳コーナー

『ロボット・ドリームズ』はあまりにも音楽が素敵すぎました。

その素敵さ、ずるすぎます。

なので、二つの使用曲について歌詞と和訳を載せておきます。

1・アース・ウィンド・アンド・ファイアーのセプテンバー

以下のサイトから転載します

SAYAKARADIO翻訳部屋~どんな歌にも愛がある~

http://honyakubeya.xsrv.jp/september-earth-wind-fire-1273#google_vignettettp://honyakubeya.xsrv.jp/september-earth-wind-

[Verse 1]

Do you remember

The twenty-first night of September?

Love was changin’ the minds of pretenders

While chasin’ the clouds away

Our hearts were ringin’

In the key that our souls were singin’

As we danced in the night, remember

How the stars stole the night away, oh yeah

覚えているかい

9月21日の夜のこと

見せかけばかりの人々の心を愛が変えていった日

雲が去るのを追いかけながら

僕らの心は高鳴っていたね

僕らの魂が奏でる歌のキーに包まれて

僕らが夜を踊り明かしたみたいに

忘れないで、星たちがどのように夜を奪い去ったかを

Hey, hey, hey

Ba-dee-ya

Say, do you remember?

Ba-dee-ya

Dancin’ in September

Ba-dee-ya

Never was a cloudy day

Hey, hey, hey

Ba-dee-ya

ねえ覚えてるかい

Ba-dee-ya

9月に踊り明かしたことを

Ba-dee-ya

曇りの日なんてなかったね

かわいい小鳥たちのダニーボーイ

以下のサイトから転載します

Swingin’ in the Free World

http://kofzipangu.blog37.fc2.com/blog-entry-145.html

Danny Boy 歌詞と訳

Oh Danny boy, the pipes, the pipes are calling

ああダニー,パイプの音色が呼んでいるよ

From glen to glen, and down the mountain side

谷から谷へ,そして山のほうへと響き渡るパイプの音色が

The summer’s gone, and all the roses falling

夏は過ぎ去ってしまい,薔薇の花々は枯れ落ちていく

‘Tis you, ‘tis you must go and I must bide.

あなたは,そう,あなたは行かなければならない.

だから私はいつまでも待っているよ

But come ye back when summer’s in the meadow

でもあなたが帰ってくるのは,

牧草地に夏が戻ってくる頃なんだろうね

Or when the valley’s hushed and white with snow

あるいは,谷が静まり返り,雪で白むころかも知れない

‘Tis I’ll be here in sunshine or in shadow

陽の光の中でも,暗闇の中でも,

私はここであなたを待っているよ

Oh Danny boy, oh Danny boy, I love you so.

ダニー,ダニー,愛しているからね

And if you come, when all the flowers are dying

花々が枯れゆくころ,あなたは帰ってくるのかもしれない

And I am dead, as dead I well may be

その頃には,私は息絶えてしまっているのでしょうね

You’ll come and find the place where I am lying

あなたは戻ってきて,

私の眠っている場所を見つけてくれるでしょう

And kneel and say an “Ave” there for me.

そして,膝を折って

私のために祈りを捧げてくれるのでしょうね

And I shall hear, tho’ soft you tread above me

私の上を踏みしめる,あなたの足音がどれほど微かでも,

私には聞こえるでしょう,あなたが帰って来てくれたその音が

And all my dreams will warm and sweeter be

そして,私の見る夢は暖かく,甘美なものとなるでしょう

If you’ll not fail to tell me that you love me

あなたが私のところに帰ってきて,

愛していると告げてくれるのなら

I’ll simply sleep in peace until you come to me.

あなたが帰って来てくれるまで,ただ安らかに眠っています

『ロボットドリームズ』の監督はどんなキャリア?

パブロ・ベルヘル・ウランガPablo Berger Uranga, 1963年12月21日 – )は、スペイン・ビスカヤ県ビルバオ出身の映画監督・脚本家・映像監督です。

1963年にビスカヤ県ビルバオに生まれ。1988年には、初の短編映画『Mama』を監督。その後はニューヨーク大学映画学科修士課程で学びました。

ニューヨーク大学で満んでいた時の体験が『ロボットドリームズ』には生かされています。

その後はケンブリッジ大学、プリンストン大学、イェール大学、ソルボンヌ大学などの映画学科で教壇に立ち、ニューヨーク・フィルム・アカデミーでも教授を務めています。

2003年に『Torremolinos 73』を監督し、興行的な成功をおさめます。

2012年の3作目『ブランカニエベス』でグリム童話の白雪姫を換骨奪胎、大胆に脚色し、様々な賞を受賞、高い評価を得ています。

『ロボットドリームズ』配信先は?

U -NEXTのみで配信レンタル中です(2025年5月現在)

U-NEXT レンタル 初回31日間 無料

コメント

タイトルとURLをコピーしました