映画『アウトロー』(1976)あらすじ感想評価から音楽のこと|クリントイーストウッド監督主演作品。

戦争・歴史・時代

クリント・イーストウッドが自身でメガホンとった西部劇には、『許されざる者』、『ペイルライダー』があります。が、管理人としてイチオシは、頭一つ抜いてこの『アウトロー』です。ぼくは公開当時に劇場で見ましたが、その音楽のドラミングのカッコよさや、それまで観てきた西部劇とは全く違うトーンに衝撃を受けた記憶があります。




1970年台当時、ウェスタンはほとんど作られなくなっていました。映画の楽しさを知り始めたぼくだって、クリント・イーストウッドといえば『ダーティ・ハリー』一強。テレビで観るクリント・イーストウッドのマカロニウェスタンリバイバル放映を「おもしろいけど、ほぼ内容一緒だな~」と思っていたわけで、、、。

なので、そういったオーソドックス&トラディショナル西部劇とは一線を画した『アウトロー』のカッコよさには、スナオにシビれました。西部劇は、この作品以前と以後に分かれる、といっても良いと思います。(『明日に向かって撃て!』『ワイルドバンチ』などアメリカンニューシネマの流れ組む西部劇は、別。)

今、ネットで『アウトロー』と打ち込むと、出てくるのはトム・クルーズの『アウトロー』。ああ、そうだよなあ、知ってるヒト少なくなってきたんだろうな、、、時代はとうに過ぎ去りし、か。。。と、ちょっぴり悲しくなり、じゃあ、ぼくが観てカッコいい!と感じた『アウトロー』ってどうだったんかいな?と、恐る恐る、配信で観直してみたのです。果たして、モニターに映し出された『アウトロー』は…。大いにネタバレありのレビューです。




『アウトロー』映画予告編




『アウトロー』あらすじは?

ストーリーは、Wikipediaから以下に転載しておきます。

1860年代なかばのミズーリ州南北戦争の混乱のさなか、北軍の名を借りたならず者集団レッド・レッグスが、各地で暴行・略奪を繰り返していた。彼らに妻と息子を殺され、重傷を負った農夫ジョージー・ウェールズ(クリント・イーストウッド)も、彼らへの復讐のために集まったウィリアム・ブラッディ・ビル・アンダーソン率いるミズーリのゲリラ部隊に加わって北軍と戦い、その早撃ちを知られるようになっていく。

やがて戦争は終わり、リーダー格のフレッチャー(ジョン・ヴァーノン)の説得により、部隊はジョージーを除いて全員北軍に投降する。ところが北軍は、独善的なレーン上院議員の指示の下、フレッチャーとの約束を破り、投降してきた部隊を犯罪者扱いで皆殺しにしてしまう。

負傷した若者ジェイミー(サム・ボトムズ)だけは救い出したジョージーであったが、北軍から追われる身の二人は、仲間の復讐どころではなく、インディアン居住区を目指して身を隠す旅に出る。

ジョージーに部隊の大半を倒されてしまい、怒りに燃える上院議員の指示で、レッド・レッグスのリーダーながらも北軍の大尉に納まっていたテリル(ビル・マッキニー)は、裏切り者に仕組まれたフレッチャーを伴い、ジョージー達の追跡を始める。

クリントネーションという街でもお尋ね者のジョージーの名は轟いていたが交易所の親父には顔まで知られて居なかった。しかし酒売りに顔がばれて、ひと悶着のうえ逃げ出す。

サンタリオという町に行き着き、カンザスから牧場を作りにやって来た老婆一行や現地住民の男女らと共に町の外れで一旦落ち着くが、アメリカ先住民コマンチ族に襲撃されそうになり、酋長テン・ベアーズ(ウィル・サンプソン)に申し入れ、共に生きようと誓い合う。

しかし、やはり牧場コミュニティから立ち去ろうとするジョージー。追っ手一味がやって来て「やっと一人になったな」と取り囲まれるが、仲間達が砲撃でジョージーと共に応戦し撃退。サンタリオにフレッチャーが訪れ捜索をするが、宿酒場に集った町の者たちはジョージーが死んだと証言する。その場にジョージが居るのだがフレッチャーも何も見なかったように振る舞い去る。ジョージーも「皆、戦争の犠牲者だ」と言って独り立ち去る。

『アウトロー』音楽、やっぱカッコええじゃないか!

『アウトロー』の舞台はアメリカ南北戦争です。年代は1860年あたりという設定。

ちなみにこの映画は「アメリカ建国200周年記念作品」として撮られています。そのネライからしてかなりチカラの入った制作だったと思います。

ぼくの古い記憶に刻まれているのは、ドラムの迫力あるリズムとピッコロの進軍調のかわいいメロディが見事に絡み合うメインテーマ。そしてめちゃかっこいいポスターです。絵柄はクリントイーストウッドが正面にらんで二丁拳銃掲げ、叫んでいるイラスト。

ストーリーは、ほとんど記憶に残ってません。(そんなもんです)

さて、映画のプレイボタンを押すと、きましたきました!「ダンっ!ダンっ!ダンっ!ダンっ!」とめちゃかっこいいドラムの音とともに『アウトロー』メインテーマが流れてきました。公開から50年近く経つというのに、トリハダ。

で、『アウトロー』メインテーマのほぼ3~5分間で、主人公の農夫ジョージー・ウェールズ(クリント・イーストウッド)の紹介と歴史背景が旋律に合わせて紹介されます。このオープニングはみごとというほかありません。

たった、数分ですよ。セリフらしいセリフはないんですが、農夫ジョージーが、なぜアウトローになっていくのかが映像で語られます。チンタラもったいぶらないで、数分で導入をキメる。こういうの、好きです。

ちなみにぼくが「カッコいい!」と騒ぎ立てている音楽を書いたのは、ジェリー・フィールディング。

『ダーティハリー』や『ワイルドバンチ』、『ガルシアの首』なんてクセありシブ系アクション映画のスコア書いてます。(なんだ、みんな好きな映画じゃないか…知らなかった…)

音源貼っておきますね。

ポスターだったかチラシだったか忘れたけど、当時のビジュアルで記憶に残ってるのは、この絵柄です。イラストってのがいい。ガンを持つ手もカッコいい。1970年代~80年代って映画ポスターをずいぶん質の高いイラストが飾っていたのですね。




『アウトロー』あらすじ展開もカッコいい!

『アウトロー』の映画冒頭はいきなり北軍のチンピラ集団に妻と息子を殺されるシーンでスピーディに始まります。

ジョージーは悲しみ胸にゲリラに加わり北軍と戦う道を選ぶのですが、南北戦争は北軍の勝利に終わり、ゲリラたちは北軍にくだります。

しかし一人反旗を翻し、「我が道をいく」を選ぶジョージー。

「我が道を行く」人が敵を作るのは、今も昔も東も西も一緒ですよね。結果、勝てば官軍の北軍からジョージーはアウトローとみなされ、追われる身となります。

西部劇定番のガンファイトでも、この映画は抜きん出ています。

ジョージーの使うピストルはコルトネイビー。トラディショナル西部劇ではみたことないタイプ。それも二丁拳銃。

大方西部劇ではコルトピースメーカーが主役張っていたので、銃身が長いコルトネイビーの銃バランスが重さを感じさせて、ガンファイトシーンに重厚感を与えてます。(実は今回『アウトロー』観て、コルトネイビーのモデルガンが欲しくなってしまった…。探したら高かった…)

この先の「追いつ追われつ」に絡んでくるのが、先住民インディアンの爺さんと、ほぼDVで白人に囲われてたところをジョージーに助けられた、これまたインディアン女。

ジョージーにとっては迷惑でしかないのですが、三人での逃避行と相成ります。




キャラのたつ脇役たち

逃避行で次々絡んでくる脇役たちが、ヨイです。渡船の男、怪しい行商人、しょぼくれた町で出会うバーテンや商売女。誰も彼もが、観ていてニヤニヤしてしまう自分の顔がわかるほど、いい味を出しています。

だからジョージーがさらに引き立つ。脚本家も監督クリント・イーストウッドもそのことを知りながら楽しんで作っているように思えました。




素敵な3人組♪

「三人組」って、いろんな物語の定番数ですよね。特にインディアンからめた3人組って、過去の西部劇には多分あまりなかった設定ではないでしょうか?

インディアン女が、ここぞ!の時に助ける役回りになったり、爺さんが同じくここぞのときにずっこけたり、、、なかなかいい演出なのです。

こういうシチュエーションを何かの映画でみたことあるなあ、、、、、そうだ!スターウォーズの「ルークとC3PO,そしてR2D2」じゃないか!(スターウォーズの方がちょっとだけ後です)

3人組は永遠に最強なのです。「素敵な3人組」って名作絵本もそういえばありました。これは脇道。




男と女・1

3人組で逃避行を進めるジョージーが、とある町で、若い女(サンドラ・ロック)と老婦人に出会います。

この二人の女性との出会いが、それまでとは別の方向にストーリーの歯車を回していきます。

その急展開が、起承転結の「転」。クライマックスへの流れですね。

若い女(サンドラ・ロック)との出会いが、映画の中で、一切笑うことがなかった苦虫噛み潰したようなクリント・イーストウッドの表情をはじめて和らげます。

最初は一人ぼっちのアウトローだったジョージーが、逃避行の果てに仲間達と出会い、愛することを再びしり、静かな農場暮らしが始まる、、、そしてハッピーエンド。

な訳はありません。

追っ手はジョージーを探し当て、静かな農場でクライマックスの戦いが始まります。

戦いが始まる前、ジョージーが皆を鼓舞します。「戦う時は必死に戦え」と。

当たり前のような言葉ですが、とても響く言葉でした。




男と女・2

ちなみにサンドラ・ロックにジョージーが心を通わすシーンがありますが、全編のなかでどうも違和感あるのです。はっきりいって、浮いてる。

なんというか、ハートマークほんわか~、って感じ。サンドラの目なんて、完全に恋する乙女の目。

実はこの二人、実生活でもこの作品で恋に落ちて結婚してます。ほんわかシーンは、素直な演技だったんですね。そう思って、暖かい目で見ましょう。ツッコミはヤボ、ですね。




『アウトロー』名セリフをいくつか〜評価に代えて

『アウトロー』のオシの一つ、それは、名セリフに溢れているってこと。

銃撃戦がはじまりそうだ、というシーンで、こんなセリフがあります。

「長生きした拳銃使いは、必ず有利な場所に立って勝負した。例えば太陽を背に戦うとかだ。」

そのセリフの次のカット、太陽を背にジョージーが逆光シルエットで現れる。簡単にしびれます。

戦い済んで、「作戦勝ちだな」と言われたジョージーが「そうだ。何事もな。」と呟いたり…。

自分の意思と反してジョージーを追わねばならない立場となったかつての仲間が、ラスト、ジョージーに譲るシーンではこんなセリフが、「先に撃たせるよ。あいつにはそれだけの義理がある。」

最後にもう一つセリフを。「映画のセリフって、昔から客と脚本家のウインクの交わし合いだったよな」←これは『アウトロー』観終わった時の、管理人の心の中のセリフでした(笑

ちなみに最後のセリフは「みんな戦争の犠牲者さ。」で終わります。

観終わって、何故かぼくは、戊辰戦争が頭をよぎっていました。1860年代という時代も一緒。国を二分しての内戦という点でも同じ。そんなことで南北戦争と戊辰戦争がリンクしたんだと思います。

「南北戦争の『アウトロー』を換骨奪胎、会津福島あたりを舞台に新たな戊辰戦争ムービーなんてイケると思うんだけどな。」(morinokuma)

古い映画のレビューに最後までおつきあいくださって、ありがとうございました!

ちなみにクリントイーストウッド監督の『許されざる者』もレビューしていますので、よかったらこちらをどうぞ






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