『明日に向かって撃て!』ネタバレ感想考察・簡単あらすじから、時代遅れの逃亡劇を今に見る意味

戦争・歴史・時代

今となっては伝説的映画でしょう、『明日に向かって撃て!』。主役のポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードはこの作品から快進撃を重ねて、映画史に名前を刻みました。監督はジョージ・ロイ・ヒル。アメリカンニューシネマの流れを組んだ映画です。

原題:は『ブッチ・キャシディとサンダンス・キッド=Butch Cassidy and the Sundance Kid』1969年公開の映画を2025年の55年の時を経た今に見て、レビューします。



『明日に向かって撃て』どんな映画?

この映画、実話です。ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドという、アメリカ西部開拓時代も終わり頃、名を残した2人の札付きの生涯を描いています。主題歌「雨にぬれても」も大ヒットしたそうです。運営人の僕も曲を知っているくらいですから、時代超えた名曲だと思います。

映画の内容をわかりやすく言うなら、銀行を襲ってる強盗団のボスとそのダチ=なうての拳銃使いが、時代から取り残されていく話、です。

『明日に向かって撃て』あらすじ〜簡単に教えます

あらすじはこう。

時代は1890年。銀行強盗と列車強盗で名を馳せた強盗団「壁の穴」のボス、ブッチ・キャシディと、拳銃使いで2枚目のサンダンス・キッドは仲間たちと列車強盗を働く。

しかし、彼らが列車から奪った金は、ユニオンパシフィック鉄道の社長の金だった。

社長は2人をとらえるために追手を雇う。

追っ手から逃げるブッチとサンダンス。

どこまでもつけ狙う追手に、二人は海外への逃亡を企てる。

サンダンスの彼女エッタをカムフラージュに3人組となり、ボリビアで一攫千金を狙うのだ。

たどり着いた新天地ボリビア。

しかしボリビアもすでに栄華は過去のものとなり、新天地ではなかった。

食うに困った3人は勝手を知った銀行強盗を繰り返す。

そして、ボリビアにも追手が迫ってきたことを知る

二人は、身を隠すため、給金運びの護衛の仕事に就くが、サンダンスの彼女はアメリカへ戻る。

給金運びの護衛は、殺伐とした仕事だった。

ある村で、彼らの乗ってきた馬が盗まれた馬だったことが発覚。ブッチとサンダンスは村の警官たちから追い詰められる…

…という、西部開拓時代終わりの終わり、サンセットストーリーです。



『明日に向かって撃て』ネタバレラストは

ここからはラストネタバレですから、映画で見たい方はスルーしてください。閲覧禁止です。

建物に隠れたブッチとサンダンス。

ブッチは銃が苦手だが、サンダンスの腕は衰えていなかった。

一発撃つごとに警官を倒していく。

警官を倒していく。

手持ちの弾丸が切れたことを知ったブッチが、外に繋がれた馬まで弾帯を取りに走るが狙い撃ちされ、傷を負い戻ってくる。

警官は軍隊を呼び、大勢の兵士たちが2人が隠れている建物に狙いをつけ、銃を構える。

物陰で、手負となりながらもサンダンスに「次はオーストラリアに行こう。オーストラリアはまだイケる」と、どこまでも未来を語るブッチ。

サンダンスは、深手に息が荒くなったブッチの手に拳銃を縛りつけ、「わかった。では、出掛けよう!」と、未来へ飛び出していく…。

ここで走り出した2人を正面から捉えたストップモーションとなる……のは、あまりにも有名。

一斉射撃の銃声が3度重なり、セピアトーン、エンドロールとなります。



『明日に向かって撃て!』解説

古き良き時代や、世相から取り残されていく者の悲哀を描かせたら、ホントうまい!…とぼくは思っている監督、ジョージ、ロイヒルがメガホンとっています。

ちなみにロイ・ヒル監督には他にどういう映画があるかと言うと、『スティング『華麗なるヒコーキ野郎』『リトルロマンス』『スローターハウス5』です。

スティング』は大恐慌という景気の底打ちフシメに悪あがきする詐欺師たちの物語です。

『華麗なるヒコーキ野郎』に至っては、かつては花形だったヒコーキ乗りが、時代から取り残されていくハナシです。

『リトルロマンス』に至っては、そんなヒル監督の自作を見ている(笑)映画好きな少年が主人公のラブストーリーですけど、わき役詐欺師の世間から取り残された感が、作品をステキなものにしていました。(詐欺師役を名優サー・ローレンス・オリヴィエがステキ名演)

『明日に向かって撃て!』の脚本は、8年かけて書き上げられたといいます。…とは言っても脚本家だって仕事ですから何本も抱えている企画があるわけで、そのまんま「この一本だけに8年かかりきりになった」と受け取ってはだめ。←広報のテです。あくまで錬りに練った…ということでしょう。

当時はアメリカンニューシネマの流れがガンガンきている時代です。この映画のあまりにも斬新な内容・スタイルは、評論家から酷評されたといいます。…なんといってもワル2人の逃避行ムービーですからね。

新たな道を開くとき、そこがいばらの道となるのは世の常ですね。



『明日に向かって撃て』感想〜おもしろい?つまらない?

『明日に向かって撃て』はオススメか?

公開から50年以上経った映画を「おもしろいかつまらないか」話すのは気が引けますよね。

だって映画って、その時代が生み出すエンタメだし、世相は変わっていくし、人の価値観だって変わっていっちゃいます。

それを前置きとしておいて、それでもあえて『2025年の今、万人にオススメですか?』って訊かれたら、ぼくの答えは『みんな見て!見て!』とは言えないかな。。。

個人的には大好きな監督だし俳優も好きです。でも、「めちゃくちゃおもしろいから、絶対見てね!」とは言えないのが、2025年に見た感想です。

たぶんイマの人が見るなら「つまらない」と思う人が多数でしょう。

と、ここまでは、公式見解。

ここからは『明日に向かって撃て!』をどう感じたか?

どう見れば面白く見れるか?

どんなところが素晴らしいのか?

を書いていきます。

イイとこ探しってだいじでしょ?この映画の超かたよりレビューです。



逃げる逃げる、そして逃げた先のしょぼいさがすごい!

とにかく、主役のブッチとサンダンス、ひたすら逃げる。どこまでも逃げる。延々逃げます。

西部劇定番のアクションがそんなにあるわけでもなく、派手じゃないんだけど、なぜか最後まで見てしまう。そして、クライマックスに見事、ドカンときます。

正直、どこまで逃げやがるんだ?と思いました。

結果、主人公たちが逃げた先はボリビアなんですが、そこが、ほとんど地の果て。主人公2人の呆然とした感じがまたしょぼいんです。(そのしょぼさがまたニクイ演出!)

ホント笑ってしまうほどしょぼい。

「一攫千金狙ってボリビア行こうぜ!」って言ってたのにもかかわらず、着いたボリビアで汽車から降りた町…というか村、集落は、鶏と豚がしかいない。

そのしょぼさたるや映画史上、最強かも。

さっきも「派手じゃない」と書きました。ブッチ・キャシディとサンダンス・キッド主人公となれば、なんとなく派手なウェスタンって思うじゃないですか。ところが違うんですね。むしろ地味でさえある。そこはアメリカンニューシネマですから、アルアルなのです。

地味という言葉は良くないかな、、、たとえば型通りのウェスタンのかっこよさ、ってあるじゃないですか。それの間逆と言ってもいい脚本と演出です。ドンパチ派手系とはま逆の激シブ系です。



ウェスタン定番のカッコよさなんてない

『明日に向って撃て』と言う邦題も誰もが知っているタイトルでそりゃ素敵です。

だけど、映画見終わって、僕はこのタイトルの付け方、ちょっと違うんじゃ?…と思いました。ごめんなさい、正直感想で…。

そんなタイトルのかっこよさをこの映画に期待したら、ダメです。肩透かし喰らいますよ。

『明日に向って撃て!』からイメージするのは、「明日をもしれない男たちが颯爽と馬にまたがりドンパチ決めまくるカッコ良さ」…そんなイメージじゃないでしょうか?

でも、はっきりいって、ないです。そんなカッコよさ。

あるのは、「時代から取り残されつつある二人の悪党の、悪あがきするでもなく、流れに身を任せ、働いた悪事で執拗な追っ手に追われるドラマ」です。

そんなドラマを所々コミカルにさえ描き出したのが、この『明日に向って撃て!』です。

『明日に向かって撃て!』の持つ作品トーンって、ワビサビとハードボイルドとコミカルキュートを掛け合わせて3で割ったような(どんなだいったい??)、どんな映画にもないトーンなんです。



タメにタメてやってくるクライマックスはやっぱりすごい

なんだか悪口を書いてるような気になってきました。(汗)

ショボいショボいと書いてきましたが、この映画の前半から中盤、これは様々な形の「タメ=溜め」であり、クライマックスへ向けてのグッと肝に気を封じ込めている感じ…です。

その証拠に、ブッチとサンダンスを追い詰める雇われチェイサーたちが、劇中、一切顔を見せません。

「あれっ?へんだな?普通、追っ手ってどんなヤツか、顔見せするでしょ?」と思うかもしれません。

ところがですよ、この映画での追手の表現は、「馬に乗った姿を遥か遠くに見せるだけ」で、一切顔見せ、ナシなんです。

これが追われる怖さを出しています。そして同時に「タメ」も。

そう。顔見せしないことで、主人公たちはヤバさを覚え、ボリビアへ逃げるきっかけをスムーズに作ってるんですね。

追手の顔を見せないことで、見ているぼくはブッチとサンダンスに感情移入していました。

そしてしまいには「なるようになるようになるか、、」と飄々と生きていく二人に、逞しさと憧れさえ感じてた…これって、タメの持つチカラでしょう。

そのタメが決壊していく第一波が、給金運びの護衛についているときの山賊との戦い。

あっという間に決着つくシーンですが、サンダンスのセリフとスローモーションが相まって、徹底的に魅せます。

さてそして、クライマックスのガンアクションについてです。このシーンはもう、めちゃくちゃカッコイイ。銃の名手サンダンスのガンさばきの連続は、見事なカット割りで見せまくります。

監督の「皆さんさーてお立ちあい!ブッチとサンダンスのガンアクション、しかとご覧くだされ!!」という声が聞こえてきそうな、そんなかっこよさですよ。



レッドフォードの二枚目演技がデビュー作とは思えない点

この映画はロバートレッドフォードのデビュー作なんです。でもね、そう言われてもピンときません。デビュー感、あまりないんです。

どしっと腰が座ってて、逆にキャリア踏んだ役者さんに見えてしまう。

この後にポールニューマンと再びタッグを組んでとられた映画が『スティング』です。演じた役の雰囲気から、むしろスティングの方が初デビュー、と思ってしまう位です。

やっぱり名を残す俳優って、デビュー作からして印象が濃いんだなあ、と感じたのでした。

ちなみに、ロバート・レッドフォードは、サンダンス映画祭の先駆けを作った人でもあるんです。

サンダンス映画祭はインディ系の映画を対象とした映画祭です。そのあたりからしてロバート・レッドフォードの良き人格を感じるのは僕だけじゃないと思います。

毎年、約200本もの長・短編映画が上映されるフェスですが、もちろんサンダンス映画祭の「サンダンス」は『明日に向って撃て』のサンダンス・キッドから命名されたものです。

ポール・ニューマン=ブッチの魅力と祝・誕生日記事となったこと

これってほんと偶然なんですが、記事をアップした日=1月26日が、なんとポール・ニューマンの誕生日でした。ポール♩祝・バースデー!

『明日に向って撃て!』のブッチ役は、強盗なんだけれどもめちゃくちゃ人間味があるんです。喧嘩ではずるしたり、「人を撃ったことがないんだ」と告ったり。

悪党なんだけど、近くにもしこんな奴いたら友達になっていたかもしれないな…と思わせるようなブッチを演じて表現したポールニューマンは、やっぱりすごい役者さんだなぁと思います。

僕が初めてポール・ニューマンを初めてスクリーンに知ったのは『タワーリングインフェルノ』でした。中学1年生の時です。

『タワーリングインフェルノ』で共演していたスティーヴ・マックイーンと、ポール・ニューマンが映画が好きになったゲートだった事に、感謝しています。

すでに亡くなられていますが、空の向こうのポール・ニューマンにハッピーバースデー!を伝えたいです。(2008年9月26日・没です)

まとめ〜『明日に向かって撃て!』が教えてくれる今

今まさに時代は超スピードで変わっていていますよね。

僕なんぞブログをchatAI使わずに書いてる時点ですでに取り残され組でしょうが、「オレ(ワタシ)、時代にバッチリのってるぜ」と思っている人の方が、実は多分少数派でしょう?

と考えると、『明日に向かって撃て!』をみて感じた「時代から取り残されても必死に生きて死んでいくのが人間ってものなんだ」というメッセージは、そのまんま「今」に当てはまるような気もするんです。

映画の時代背景の1890年の情報スピードは、今とは全く違いますよね。

多分二人は風の便りから、ボリビアが金のなる国だと信じて、やばい橋を渡り、さらに高い船賃かけて異国へ渡りました。そして時代の流れに消え散ったのがブッチとサンダンスでした。

一方ですよ、今、ぼくらの2025年にですよ、あたりを見回すと、ネットで毎日のように「こうすりゃラクに金儲けできるよAIセミナー」の広告が流れてくるじゃないですか。

そんなヤバい広告を信じて、高い入会金払って、散っていくぼくら(笑)がいます。

映画を観た後に時代と彼らの生き様を今に置き換えたら、出てきた言葉は、『なんだ!130年も経って、なーーんにも変わってないじゃないか!』でした。

そんなふうに50年以上経ってなお思わせてくれる『明日に向って撃て』は、やっぱり素晴らしい映画だと僕は思いました。

僕の評価は星四つ⭐️⭐️⭐️⭐️です。いい映画をありがとうございました。



スタッフキャスト

ブッチ・キャシディ/ポール・ニューマン 強盗団ボス。頭脳派。射撃は下手

ザ・サンダンス・キッド/ロバート・レッドフォード ブッチの相棒。早撃ちの名手。泳げない。

エッタ・プレイス/キャサリン・ロス サンダンスの恋人。学校教師。



雨に濡れても~PV

最後に「雨にぬれても」を紹介して終わりにしますね。

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