『正体』ネタバレ!映画版とドラマ版の違いを比較レビュー・主役の違いからあらすじ感想評価まで

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『正体』評価:ドラマ版を見るか?映画版を見るか?

話題の映画『正体』を見ました。原作は染井為人の長編小説です。4話連続ドラマ化されていた作品の映画化です。

ぼくの個人的推しの監督、藤井道人作品ということで、ドラマより先に映画版を見てみました。

とはいえ「映画版」を見終えてすぐに「ドラマ版」を配信で見ましたので、同時に2本をレビューしてみます。

『正体』は映画もドラマもテーマは冤罪を晴らすための逃避行です。そして若年性アルツハイマーもストーリーに絡んできます。

今、社会問題となっているテーマ=冤罪を扱っている作品だけに、オススメ度高しの作品だと思います。

で、どっちが面白いか?ですが、最初に言っちゃいます。ぼくは映画『正体』に一票!でした。

あっ、でもドラマ版がつまらない、というわけでは全然ありませんよ!

では、映画版とドラマ版をレビューしてみましょう。





『正体』ドラマ版・映画版それぞれの主役・監督・主なキャストは?

映画版/主役:横浜流星 監督:藤井道人

キャスト:吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈、前田公輝、田島亮、遠藤雄弥、宮崎優、森田甘路、西田尚美、山中崇、宇野祥平 他

ドラマ版/主役:亀梨和也 監督:中田秀夫、谷口正晃

キャスト:黒木瞳、市原隼人、貫地谷しほり、堀田真由 、濱田崇裕、音尾琢真、若村麻由美、高畑淳子、上川隆也 他





『正体』のあらすじ

ドラマ版も映画版もあらすじはシンプルです。

冤罪で死刑判決受けた一人の若者が逃亡。様々な人々とのドラマの中で、警察の追ってを振り切りつつ、冤罪を晴らすべく真実へ迫っていく、、、です。

と、ここで終わらせたらあんまりなので、もうちょっとだけ詳しくストーリーを書いておきましょう。

とある殺人事件の現場に居合わせた若者が冤罪で死刑判決を受けます。

埼玉の民家で、住人の夫婦と2歳の息子が殺害され、18歳の少年・鏑木慶一が現行犯逮捕されます。

鏑木は死刑判決を受け神戸拘置所に収監されますが、一年半後、19歳で拘置所を脱走。

鏑木は偽名を使い、逃亡先で様々な人と出会い、その人たちを直接的に助け、時には間接的に支えます。そのいくつもの出会いがストーリーの太い枝となります。

最後の出会いは、とあるグループホームで働く若い女性・酒井舞とその職場で働いていた先輩介護士・桜井=鏑木との出会いです。

酒井は鏑木に思いを寄せますが、桜井の正体が鏑木であることに気づきます。

桜井=鏑木は、グループホームに入っていた女性が殺人事件の唯一の目撃者であることを突き止め、真実を告白してほしいと懇願します。

しかし、その女性は記憶を失っていたのです、、、。



『正体』あらすじ・結末ラストまで

ここからはラストまでのネタバレとなりますので、映画、ドラマを観る方はスルーしてください。

+  +  +

警察へ鏑木がグループホームで働いているとの通報が入り、グループホームは警察に包囲されます。鏑木は舞に真実を告げ、しかし警察に捕縛されます。

そして新たに起こった殺人事件で一人の男が逮捕されますが、鏑木が逮捕された事件と酷似していることから「模倣犯」と報じられます。

しかし意味深な嘲笑うかのような表情を浮かべる犯人。

ここでいくつもの枝に分かれていた、「鏑木が助けてきた人々」が一つにまとまり、鏑木を冤罪から救う署名運動に発展します。

その後、鏑木を冤罪に持ち込んだ警察の捜査官自身が誤認逮捕を認め、鏑木は裁判において無罪を勝ち取ります。

映画とドラマの結末は、この警察捜査官が鏑木とどう向き合うか?という点において、脚本が異なります。

ドラマ版ではあくまで捜査官は警察という組織の歯車の一つとして描かれています。

一方、映画版では捜査官が鏑木に理解を示し、警察組織に、ある意味反旗を翻し終わります。

この違いは大きいです。

ぼくは映画版の捜査官の心の揺れを描いたラストが好きでした。



『正体』映画版・ドラマ版を見比べて〜

先にも書いてしまいましたが、ぼくは映画の方が密度が濃く、追う警察捜査官の誤認逮捕への確執がしっかり描かれていて、重厚に感じました。

しかし、ドラマがつまらないわけではありません。ドラマも映画と引けを取らないくらいに面白いです。

ですが、映画の方が2時間という時間をうまく使い、思い切った枝葉の削ぎ落としが功をそうしていると感じました。

また先行していたドラマを換骨奪胎し、単なる焼き直しにしていません。

「ドラマをモデルにはしましたが、別物を作りました」という姿勢が見えていました。

それは監督藤井道人の才能によるものだと思います。

絵画でも、同じモチーフを彗星で描くか、油で描くかで全くアプローチは異なります。しかし、描いている本質は一緒です。

『正体』においてもそんな感じで、絵に例えるならドラマ版は水彩画。映画版は油彩画。そんな印象を受けました。、、、って、ますますわからない例えですよね、すみません(汗

クラシックでも同じ楽譜が指揮者によってガラッと変わった演奏を聴かされて驚くことって、あります。

映画版とドラマ版の違いはそれに近いかもしれません。




ドラマ『正体』の主役:亀梨和也と映画『正体」主役:横浜流星のどっちがすごい?

日本アカデミー賞で映画版『正体』の主役を張った横浜流星が主演男優賞を受賞しました。

ではドラマ版『正体』の主演亀梨和也の演技評価が低いのか??

いえいえ、そんなことはありません。

ドラマ版も映画版も主役としての存在感は変わらないとぼくは感じていました。

どっちがすごい?と聞かれたら、ぼくの答えは「どちらも想定内のきっちり演技で、でも、そんなにすごみは感じられない」が正直感想でした。

むしろ、二人の役者の演じいている変幻していく鏑木像は、脚本に支えられていての演技、と感じています。

そして、もしかすると二人とも「もっと別の鏑木を演じたかったのではないか??」とも感じています。(あくまでぼくの個人的な感想です)

脇役俳優陣もまた、どちらも甲乙つけ難い熱演でした。



映画版『正体』監督 藤井道人の演出の「粋」

映画版『正体』は、脚本(共同脚本)と演出を手がけた監督・藤井道人の力技がすごいです。ぼくは『パレード』『最後まで行く』『ヴィレッジ』しかまだ見ていませんが、一本一本見るたびに、底知れない力持ってる監督だなあ、と思っていました。

藤井監督の何がすごいかというと、カットカットに対してのクリエイターとしてのこだわりを感じさせる点です。

そして作品ごとに、いい意味での豹変するところ。…どこかスティーブン・スピルバーグを思わせる変幻自在さをぼくは感じます。

『正体』映画版においても、冒頭、救急車から逃亡するシーンのカットの連なりから、「藤井道人絶品!」と思わず心の中で叫んでいました。

 

そのシーンを言葉で書くならこんな感じ↓

 

鏑木を乗せた走る救急車両をカメラが後方から横に移動しながら捉える

車内の格闘の様子を真俯瞰から捉えるカメラへと切り替わる

次のカットでカメラは救急車両外の側面を右から左へ移動しながら捉えていく…

そのあとに続く真俯瞰から見下ろした車外シーンへと続く

ようやくカメラは立ち位置目線で、走り去る鏑木を捉える

そんなふうに丁寧に考えられたカットの連なりが緊迫感をうみ、シーンを次へ次へと導いていく…。

 

↑冒頭シーンの縦横無尽なカメラワークへのぼくの「驚嘆」を言葉で書くと、こうなります。

 

すみません、↑どうでもいいよね(笑

でも書き残しておきたいんです。

何がぼくは言いたいかをまとめるとですね、
「シーンの持つ意味を、どうカメラで捉え、組み合わせて表現するか?」へのこだわりがハンパないって感じるんです。

それこそが、藤井監督の「粋」だ、と、ぼくは思っています。

だから、冒頭から『正体』の世界に引きずり込まれるんです。

藤井道人監督って、いつも期待を裏切らないんですよね。

脇道に逸れますが、個人的には藤井道人監督の「藤井道人による宮沢賢治作品の映像化」と「藤井道人の撮る戦争映画」に勝手な期待してます。(そんな企画、ないだろうな、、、)



映画版『正体』の真犯人は?模倣犯演じる山中崇にビビる

さて、脇道に逸れた話を戻します。どうしても書いておきたい事です。

映画では真犯人は模倣犯と報じられていた男だったことが匂わされます。が、そのエピソードの差し込み方が上手いな、とぼくは思いました。

もちろんそのエピソードが挟まれるのは後半です。

それも、追いつ追われつ畳みかけのドラマ進行の中で「はっ!」とするタイミングなんです。

そのタイミングと真犯人=足利の役を演じた山中崇の超絶ヤバそうな演技とメイクに、気持ちが「ぎゅっ」と縮みました。

山中崇の演技の凄さを使いながら、観客は「そうだよ、鏑木は冤罪だから真犯人が他にいるんだよな」と、我にかえります。

そのタイミングが絶妙だ、と思いました。



ドラマ版『正体』の4話完結の魅力

映画版『正体』は、原作を「2時間」で見事にタイトに完結させたところがやはり魅力なわけですが、ドラマ版はワンエピソードが1本ですから、一本一本が1時間ドラマとしてある意味完結させなければならない制約があります。

その制約の中でも、とてもうまく表現していると感じました。

さらに一話ごとに見応えがあり、次はどうなる???とぐいぐい引っ張ります。

一話ごとに違う脇役俳優陣の熱演もドラマを盛り立てています

「主役脇役ともに映画版と比べるのがナンセンスだ」とぼくは感じました。

 

しかし、「一話完結×4」の制約がどうしても裏目に出てしまうのが、最終話でそれまでのエピソードで登場した鏑木が助けた人々が全員集合するシーンです。「あっ、、、そうだった。そういえば鏑木はこの人たちを助けたんだっけな」と妙な冷めが出てしまったのです。

過去助けた登場人物たちが、なんというか「遠い過去」から急に現れたような、そんな錯覚にぼくは陥ったんですね。

次の回まで間合いが生まれてしまうのは、舞台設定がそれぞれガラッと異なる4回ドラマの宿命かもしれません。



映画『正体』とドラマ版『正体』のぼくの評価は?

長々書いてきましたが、『正体』は個人的には映画版の方が好きです。

映画版を評価するなら星四つ⭐️⭐️⭐️⭐️

ドラマ版を評価するなら星三半⭐️⭐️⭐️✨

どちらもドキドキハラハラで楽しめると思います。

素敵な作品をありがとうございました。



『正体」配信レンタル先は?

映画版『正体』配信先はNetflixです

ドラマ版『正体』はNetflix、U-NEXT、FOD、TELASA、Hulu、WOWOWオンデマンドなどで配信中です。






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