映画『サバイバルファミリー』本当にひどい?ネタバレあらすじ〜主役お父さん死亡説考察から感想評価まで

ヒューマン・ハートフル

こんにちは!映画好き絵描きのタクです。今回取り上げる映画は『サバイバルファミリー』2017年公開の日本映画です。

ある日突然理由も不明で、電気、バッテリー、ガスといったライフラインが使えなくなったら、あなたならどうしますか?

『サバイバルファミリー』はそんなシチュエーションで起こりうるドタバタを、どこにでもいそうな家族四人の目を通して描かれるサバイバルロードムービーです。




監督は『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』を撮った矢口史靖。あたりまえの日常の中にあるドラマを切り取るのが上手いです。

家族を演ずるキャストは、小日向文世、深津絵里、泉澤祐希、葵わかな。他に柄本明、大地康雄、時任三郎、藤原紀香、宅麻伸といった俳優陣が物語の進行をカバーします。

ネット評価では「ひどい」「気まずい」ワードも見受けられますが、そんな疑問にぼくなりの考察で答えながら、レビューしてみたいと思います。






『サバイバルファミリー』あらすじは?

主人公は東京都内に住む鈴木ファミリー・四人家族だ。

父親義之(小日向文世)はごく普通の中間管理職サラリーマン。妻光江(深津絵里)は魚すら捌けないごく普通の専業主婦。長男賢司(泉澤祐希)は無関心を絵に描いたような大学生。長女の結衣(葵わかな)はスマホがいっときも欠かせない高校生だ。

ある朝、突然の停電が起こる。慌てる鈴木家だが、どうやら日本全国の電力がストップ、ガス水道ライフラインも全てアウトのようだ。

どうしたわけか、自動車も動かず、パソコンスマホも使えない。

結果、あらゆる情報が遮断され、人々は何が起こっているのかさえわからない。

鈴木ファミリーも近隣住人も結局自給自足しか取る手がない。

そんな日々が続く中、物価は高騰し現金は徐々に意味を失い、人々が食糧を手にいれる手段は物々交換しかなくなっていく。

先行きが見えない中、人々のあいだに、まことしやかな噂が広まる。それは「西日本では電気が使える…」という流言だ。

鈴木ファミリーは家族会議を開く。

父・義之の相変わらずの強引な押しのもと、四人は光恵の実家がある鹿児島まで向かうことを選ぶ。

手段は停電の影響を受けていない移動手段=自転車だ。

東京鹿児島の距離は1300キロ。

鈴木ファミリーは高速道路を自転車で西へ進むが、水食料の欠乏、盗難、パンクと次々トラブルが降りかかる。

サバイバルな道中、西へと向かう鈴木ファミリーは、果たして鹿児島まで辿り着くことができるのか?
…というあらすじです。




『サバイバルファミリー』結末ネタバレ閲覧注意!〜停電の原因は?

以下にあらすじ続きをラストまで書きますが、映画を見る方はスルーしてくださいね。

鈴木ファミリーは大阪に辿り着くも、大阪も東日本と同じくライフラインは全て止まっていた。

力を落とす4人。

それでもさらに西を目指す。

途中、食料が尽き、倒れる寸前を岡山の農家に救われる4人は、農家本来の自給自足的生活に心を打たれる。

歩を先に進める先に、一本の橋のない川が。

流木を集め筏を作り対岸に渡る途中、父義之は溺れ流されてしまう。

3人になってしまったファミリーは絶望感に打ちひしがれながらも線路にそって、西へと向かう。

物欲しそうに現れた犬に食料を分けた優しさが仇となって野犬の群れに襲われ、大怪我をする光江。

そこに線路の向こうから現れたのは、蒸気機関車だ。

蒸気機関車はゆっくりととまり、3人は救出される。

西へと向かい始めた蒸気機関車の窓の外に光江は一筋の発煙筒の煙を見つける。

発煙筒を手にしているのは、ボロボロになり命消えかている父義之だった。

家族四人の再会。機関車はさらに西へ。鈴木家は鹿児島の三枝の実家に辿り着く。

数年が経ち、ある日突然電気が戻る。

ニュースでは当たり前の日常が映し出され、「停電は世界的なもので、太陽フレアの放出が原因だったのでは」という推測が流される。

以上が結末ラストまでのストーリー紹介でした。

映画では停電の原因を太陽フレアとしています。「電力会社の発電所が全て止まった中でどうやって一瞬で復旧したのか?」なんてツッコミは、この映画のトーンからしてヤボでしょう。




 

『サバイバルファミリー』は気まずい?子供と見れる??

『サバイバルファミリー』は家族みんなでぜひ観てほしいです。子供が隣で見ていて「気まずいなあ」というシーンはありません。ご安心を。

ラブホテルに高い金を払って四人が泊まるシーンが出てきますが、ハダカやアノ声は登場しません。

お父さん、お母さんの皆様はコドモたちに「ここどいういうとこ?」って聞かれたら「コドモお断りの宿屋って、あるんだよ」とでも言っておいていください。

ぜひ家族で見てほしいです。




『サバイバルファミリー』考察〜本当にひどい映画?

ネット上の「ひどい」コメントをチラ見してみましたが、ライフライン寸断でパニクらないのはおかしい、とか、サバイバルシチュにしては顔色が良すぎ、とか、他にもいろんなコメントがあり、あらためて「映画ってものは100人いれば100人それぞれブラスマイナスの感想を抱くものだなあ…」と思いました。

ちなみにぼくは、映画『サバイバルファミリー』を観た後に「ひどいコメント」を知りましたので、まずは自分の「ひどいかひどくないか?」をずばっと伝えておきます。

『サバイバルファミリー』、ぼくは決してひどいとは思いませんでした。

それどころか、非常に身につまされる映画です。

「観てよかった!」これがぼくのダイレクトな感想です。

それでは、いったい、『サバイバルファミリー』のどこが良くて、何がぼくの身につまされたのか?を以下に書いてみますね。




小日向文世演じる「ひどいダメオヤジ」が自分に重なりました

とことん身勝手でダメなオヤジを小日向文世が演じています。

そのダメっぷりが最強です。この役を見て、苦笑いしない男が(父親が)いるとすれば会ってみたい。

ぼくは、「はい、はい、ボク、まんまこんなかんじです」と思って、苦笑い連続でみてました。

会社ではそこそこ仕事がデキる男ですが、家庭内では何にもせず身勝手。家族から冷ややか〜にみられているのを、本人自身は、わかっていない。

そんなところを淡々と映し出す演出センス、最高でした。




「ママチャリ」で東京から大阪をめざす設定は、リアル感あります

ライフラインが途絶えてしまったなか、マンション住人の間に広がる「どうするよ?」の葛藤の描き方も良かったです。

阪神淡路や東日本の震災はじめ各地の水害等でライフライン途絶を体験したことがある方なら、そのシークエンスも苦笑いするのではないでしょうか。

ぼく自身、東日本大震災でガスがひと月使えず、おまけに福島原発事故では情報ほとんどなく、「パニックになりそう…」という感じと、「冷静にならなきゃ…」のココロの葛藤体験をしてますので、よーくわかります。

震災でなくとも災害大国ニッポンとなった今、『サバイバルファミリー』は笑って観て良いのですけど、同時に「実際その場にいることになったらどうする?」を考えさせられる映画なのです。




ひどい状況から「家族で逃げる!」を自分たちで決める設定が超絶にマル

『サバイバルファミリー』では父が「自転車で大阪に行くぞ」と決め、家族四人は自転車で最小限の荷物で大阪に向けてペダル漕ぎ出します。

実はこのシーンが自分たちの実体験と重なりました。

それは東日本大震災の時の福島原発事故です。

ぼくら家族(4人家族です)は、仙台に住んでいます。

福島原発事故が起こった時、仙台においては誰も「こうしなさい」という指示がなかったので、自分たちの判断で北へと向かいました。

映画『サバイバルファミリー』で自転車で西へと向かう四人は、まるでぼくら家族を描いてるようでした。(ぼくらは結果、映画のようなサバイバルまではなかったけど、ガソリン無くなりかけて大変だった)




小さなエピソードの積み重ねがドラマに厚みを作ってます

『サバイバルファミリー』では、小日向文世演じる父親が主役というわけではありません。

深津絵里演じる、頼りなげだけど、実は肝っ玉座っている母親。

泉澤祐希演じる、結構素直な、でも父親からは「今ドキのワカモノ、何やってんだよ」と見られている長男。

葵わかな演じる、一見調子よく見えるけど、結構デリケートな長女。

それぞれが、適材適所、ここぞの時に父親を越える超絶にナイスなことをしてくれます

そんな小さなナイスなドラマが積み重ねなることで、逆に、父親はそのたびに威厳が崩れていきます。

でも、小日向文世がその様子を実にいい匙加減で演じていて、仏頂面の父親の顔は絶品、それは見ものです。

結局、崩れた威厳の向こうに何が姿を現すかというと、それは「家族って、親も子も含めて、上も下もない。家族って、構成してるそれぞれが、実はたいしたヤツの集合体なんだ」という事実です。

四人が各人、これ見よがしにドラマチックに派手なことをするわけじゃないんですが、その抑えた「超絶ナイスなこと」がステキに演出されてるとこ、ポイントめちゃ高しです。




「蒸気機関車」というアナログ移動手段の登場が粋でした

クライマックスで家族を助け出す、蒸気機関車の登場は、粋でした。

そう、蒸気機関車は電力、バッテリーに関係なく走ることができる、現行唯一の移動手段なのです。

「クラシックツールが窮地を救うシチュエーション」って、映画に時々登場します。

例えばSF映画『エイリアン2』でも、最新型兵器が使えなくなってしまったシチュエーションで、兵士の一人が「こんな時はこれさ」と取り出すのが「旧式ショットガン」で、思わずニヤリです。

異星人が地球を襲う映画『バトルシップ』でも、クライマックスの戦いのシーンを飾ったのは、博物館級の戦艦ミズーリで、これまたしびれました。

「ふるつわものが絶体絶命の危機を救う」というニクい脚本にぼくは拍手でした。

ちなみに撮影に使われた蒸気機関車は「SLやまぐち」です。




ネットに流れる「お父さん死亡」のキーワードを解き明かします

観た後にネットで『サバイバルファミリー』でググると、「お父さん死亡」というキーワードが出てきました。そのキーワードについてちょっと触れたいと思います。

ちょっとネタバレになりますが(観たい方は、ここ、スルーしてください)、映画のクライマックス近くでダメオヤジの父は、増水した川を渡る途中、濁流にのまれて行方がわからなくなります。

死をも暗示させる演出がなされていることで、「お父さん死亡」というキーワードがネット上に浮かび上がってきたのだと思いますが、ここで一つ、ぼくの考察を書いておきます。

確かにその一連のシーンで消え去るものがあります。それは、それまで父親がすがりついていた”オレは一家の大黒柱だ”という「つまらない威厳」です。

と考えると、流されて行方不明になるシーンは、「過去、父が振りかざしていた、つまらない威厳の死だ」と言い変えることができます。

その証拠に、実は風前の灯となりながらギリギリ生きていた父親をカメラが捉えるシーンで、あるものが彼の顔に止まっています。

それはハエです。

そう、ハエがたかるのはほとんど命が消えかけた人間なのです

監督は、命が消えかけている父親と、最後の力を振り絞って「オレはここに生きている。助けてくれ」とアピールする父親を画面に出すことで、「過去のつまらない威厳を捨て去った、父親の心の再生」を表現しているのだと、ぼくは感じました。

それほどまでに、倒れて動けなくなった父のシーンは印象的でしたし、小日向文世の演技は素晴らしかったです。

さらにはその事件が起こる日は、サバイバル108日目なのです。

仏教の世界で108という数字は人間が抱いている煩悩の数です。除夜の鐘も108回鳴らされることは煩悩を浄化する意があると言われています。

家族皆が持っている「煩悩」がもとで生まれた威厳やすれ違い。それが消滅する日が、108日目です。

ボロボロになった父親の生還は、家族の過去の死と新しい明日の再生を意味している、とぼくは推察しました。(深読みすぎかもしれませんが…)




『サバイバルファミリー』ぼくの評価は85点

『サバイバルファミリー』の映画の底に横たわっているテーマは、「家族って、いったい、なにもの?」に尽きます。

世の中でいろんな人たちとぼくらは付き合っていきますが、平凡で当たり前にして、もっとも身近で、でも実は一番不思議で不可解なのが、家族です。

「家族っていつも一緒にいるように見えて、でも、いつもバラバラ。皆さんの家族はどうですか?」と、夫婦や親子、兄弟といった家族の関係を問い直した、新しいスタイルのファミリードラマだとぼくは感じました。

その新しい視点と、身につまされ度が高得点だったのと、三度繰り返し観ても、そのたびごとに「やるなあ…」と感じましたので、85点です。




『サバイバルファミリー』に見るぼくのあなたの町〜ロケ地情報です

今を舞台にした日常ドラマって、映画のロケ地が気になるところですが、『サバイバルファミリー』ロケ地は以下。ぼくの住んでいる宮城県の仙台市内でもロケされていて嬉しかった。

宮城県仙台市、山口県宇部市・山口市・長門市・下関市・美祢市・兵庫県神戸市・大阪府大阪市・千葉県南房総市・神奈川県横浜市・東京都大田区と日本中いたるところです。

ぼくの母校東北学院大学土樋キャンパス内の階段教室が映ったシーンは思わず二度見。懐かしかったです!実際に自分が歩いたり座ったりしたところがスクリーンに映ると、舞い上がりますよね。



『サバイバルファミリー』のロケ地情報を以下に『地ムービー』サイトより転載(一部転載)しておきます。『地ムービー』さんのサイトはロケ地を知るに楽しいサイトですよ!

東名高速道路を自転車で移動する高速道路のシーンは、山口県でロケーション撮影。

矢口監督は、山口宇部道路・宇部湾岸道路(スカイロード)を封鎖して高速道路のシーンを撮影ができることから、山口県をロケ地に決めています。(”高速道路に見える道路”を封鎖してロケ撮影できる場所は、全国でもほとんどありません。)

劇中には、「SLやまぐち号」も登場します。

東京のシーンの多くは、仙台市内でロケーション撮影されています。

東京のマンションのシーンは、仙台市営住宅でロケ撮影されています。

鈴木一家が道路を歩く人の中を自転車で避難していくシーンは、仙台市の卸町道路(一般道路)を封鎖してロケ撮影されています。

東北学院大学土樋キャンパスでロケ撮影されました。(大学キャンパスのシーン)

ロケ撮影は、宮城県仙台市、山口県宇部市・山口市・長門市・下関市・美祢市、兵庫県神戸市、大阪府大阪市、静岡県、千葉県南房総市、神奈川県横浜市、東京都大田区など国内各地で、ロケ隊の総移動距離は約1万キロを超えています。

以上は『地ムービー』さんから転載でした。(一部割愛)




『サバイバルファミリー』スタッフ・キャスト

スタッフ:監督脚本・矢口文靖/撮影・葛西誉仁/編集・宮島竜治

キャスト:小日向文世/深津絵里/泉澤祐希/葵わかな/柄本明/大地康雄/時任三郎/藤原紀香/宅麻伸 他

 




『サバイバルファミリー』配信は?

2023年現在、結構いろんなサービスでレンタル、配信されています。以下に記載しておきます。

U-NEXT 見放題配信 初回31日間無料
Prime Video 見放題配信 30日間無料
DMM TV レンタル 初回30日間無料
TELASA レンタル 初回2週間無料 
クランクインビデオ レンタル 初回14日間無料
Lemino レンタル 31日間無料 
FOD PREMIUM 見放題配信 無料期間なし
MUSIC.JP レンタル 30日間無料 
TSUTAYA DISCUS DVDレンタル 30日間無料

 






コメント

  1. 匿名 より:

    とても役に立った。

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