『エイリアン ロムルス』考察・感想レビュー
こんにちは、映画好き絵描きのタクです。
SFホラー映画史にその名を燦然と刻む「エイリアン」シリーズ。その最新作・続編の『エイリアン ロムルス』を観ました。(アメリカ映画・1時間59分)
1979年に始まったエイリアンシリーズ第一作から、なんと45年の時を経ての7作目にあたります。
一作目の監督リドリースコットもプロデューサーとして名を連ねていますし、彼のプロダクションアニメも冒頭に流れますので、正統的続編と言っても良いと思います。
その最新作をネタバレ考察から評価までレビューします。
『エイリアン ロムルス』予告編
解説〜エイリアンシリーズ時系列では何番目?
『エイリアンロムルス』は、エイリアン7作品の時系列においては、第一作『エイリアン』と、2作目『エイリアン2』の真ん中に当たるエピソードになっています。
最新作だから時系列が7番目というわけではありません。
詳しい年代を調べてみました。舞台設定は、第1作西暦2122年から20年後=西暦2142年となっています。
時系列で考えると一作目に続く続編という見方もできると思います。
ここで「一作目を観ていないとつまらないんじゃない?」という声が聞こえてきそうですが、映画単体としてみても、十分楽しめる脚本となっています。
しかし、ぜひ、観終わった後に一作目も観て欲しいと思います。
そうすることで、『エイリアンロムルス』の理解がさらに深まりますし、一作目の良さも引き立ってくるという美味しさも持っています。
監督はフェデ・アルバレス。心理ホラー「ドント・ブリーズ」で名を上げた監督です。
一作目、そして『プロメテウス』『エイリアンコヴェナント』でメガホンをとったリドリー・スコットは、今回は製作に回っています。
『エイリアン ロムルス』…ロムルスってどういう意味?
ところで『エイリアン ロムルス』の”ロムルス”って一体なんなの???と思われる方、いると思います。
ちなみにロムルスとは映画の舞台となる宇宙ステーションの名前ですが、もともとは古代ローマの建国神話に登場する王の名前なんです。
『エイリアンロムルス』の劇中、宇宙ステーションの扉などに、「狼の乳を飲む双子の像」があちこちに登場します。この双子の一人がロムルスです。写真も添えておきましょう。(wikipediaから転載)
しかし、それはそうとして、一体どういう意図でタイトルにロムルスと名付けたのか??が気になりますよね?
↓以下がぼくの憶測です。(あくまで推測。間違っているかもしれません)
一作目からカギとなっている「ウェイランド・ユタニ社」が、冒頭シーンでエイリアンの残骸を回収します。そして主人公たちがドッキングし乗り込む宇宙ステーション(ウェイランド・ユタニ社製)ではエイリアンが複製増殖されている、、、。
ということは、ウェイランド・ユタニ社は「かつて強大な軍事力で世界を支配したローマ帝国のように、エイリアンによる新たな帝国を作ろう」という意図のもと、宇宙ステーションのネーミングに「ロムルス」と冠したのではないか、、、と推測されます。
ローマ帝国の始まりからネーミングを引っ張ってきた『エイリアン ロムルス』は、一作目から40年以上の歴史を持つ『エイリアン』の新たな始まりとも捉えられる、含みを持ったタイトルですよね。
そして、もう一つロムルスが意味するものがあります。それは主人公レインと彼女を護るアンドロイド:アンディの関係です。
二人はまるで兄弟のようでもあります。
ロムルスにはおそらくその暗喩も込められているとぼくは思っています。
『エイリアン ロムルス』あらすじ(ネタバレ閲覧注意!)
プロローグ
宇宙船の残骸散らばる宇宙空間で、一隻の宇宙船のロボットアームが残骸の中から化石のような破片を回収する。
破片となリ散らばる宇宙船はノストロモ号。
化石はエイリアンの一部だったこと、そして何かの研究材料とされるだろうことが明かされる。
植民地惑星
舞台は変わって、地球から遠く離れた植民地惑星。
その惑星は劣悪な環境だ。鉱山労働労働に苦しむレイン(ケイリー・スピーニー)と弟分のアンドロイド、アンディ(デビッド・ジョンソン)は、惑星から脱出することを願っている。
レインは仲間から新天地を求めての惑星脱出を持ちかけられる。
惑星の周回軌道上にある宇宙ステーションに、脱出に必要な冬眠ポッドがあることがわかっての計画だ。
ステーションのドアを開くにはアンドロイドのアンディが必要なのだ。
レインは渋々アンディと一緒に行くことを承諾し、仲間たちと共に宇宙貨物船で植民惑星から離脱する。
無人宇宙ステーション
レインらは、惑星の周回軌道上にある廃虚化した宇宙ステーションに貨物船をドッキングさせ、目指す新天地までの渡航に必要な冷凍睡眠ポッドを得るために、宇宙ステーションに踏み込む。
冷凍ポッドにはエネルギーが必要だった。
そのエネルギー源を探しているうちに、彼らはエイリアンの種に遭遇。仲間の一人がフェイスハガーに襲われ、エイリアンの宿主となってしまい絶命する。
エイリアンの襲撃
宇宙ステーションロムルスの中で孤立してしまうレインと仲間たち。彼らの前に、急速に成長する何頭ものエイリアンが立ちはだかる。
倒そうにもエイリアンの血液は鉄をも溶かす強烈な酸だ。若者たちとレインとアンディは、エイリアンの襲撃から脱出することができるのか?
といったあらすじです。
『エイリアン ロムルス』ネタバレ感想
ロムルスはおもしろい?つまらない?
「おもしろかった?それともつまらない?」と聞かれたら、こう答えます。
「エイリアンDNAをしっかり受け継いでいて楽しめます」
ぼくは、エイリアンと登場人物たちとのスリリングな展開に、最後まで面白く見ることができました。
重力を味方につけたシナリオが粋
『エイリアンロムルス』では、今までのエイリアンシリーズにはなかったスパイスが加わっています。
それは、重力です。
無重力状態に重力が加わるとどうなるか?という、今までなかった味付けがとても斬新でした。「ナルホド、宇宙が舞台のホラーに、このテがあったか!」と拍手でした。
「無重力空間」って、誰もが憧れる世界だと思います。
『エイリアンロムルス』では、そんなフックをきちんと意識して脚本が書かれています。スパイスの利かせ方が絶妙なんです。
さらにはその重力が、突如として無重力となる見せかたが巧みです。それがエイリアンとの対決シーンにもうまく用いられて、ストーリーを力強く引っ張っています。
無重力シーンの撮影方法は分かりませんが、多分VFXと実写の合わせ技なんでしょう。これまで見たことがなかった表現でした。
随所に見える実写へのこだわり
一作目『エイリアン』が作られた1970年代は、まだCGも黎明期でした。なのでほとんどのシーンがCGを使わないアナログ撮影でした。
その後、回を重ねるごとに最新のVFX技術が導入されてきたエイリアンシリーズです。
「VFXではなんでもできちゃうからなあ…」と、妙に冷めてしまうのが、今日この頃のSF映画です。この『エイリアン ロムルス』も、VFX山盛り花盛りなんだろう…と思いきや……なんと『エイリアン』一作目のトーンを再現すべく、かなりのカットを実写にこだわり制作されたとのこと!
これには驚きました。
確かに宇宙船の外も中も、オイルの匂いとかしてきそうな『エイリアン』一作目と二作目の雰囲気がプンプンしてるのです。
その一作目に続いていると感じさせる質感、空気感を作り出すために、あえてアナログな撮影をしたんですね。
それは監督フェデ・アルバレスのリドリースコットへの敬意をの現れとぼくは思いました。
『エイリアン』のおもしろさってどこにある?
エイリアンシリーズのおもしろさの一つは、エイリアンがどういう舞台設定に登場するか?にあります。
今回のエイリアンは、顔に張り付くフェイスハガーからして数十匹という大量発生登場でした。
その流れで、ゼノモーフ(よく見る等身大のエイリアン)も当然一頭ではなく群勢です。
『エイリアン2』や『エイリアン4』もゼノモーフは大量投入されていましたので、その登場に目新しさは感じられませんでしたが、先にも書いた「重力」をうまく取り入れることで面白みを削いでいません。
登場人物設定を比べてみる
ここでエイリアンと対決する登場人物の設定も過去作と比べてみましょう。
『エイリアン』=エイリアンVSリプリー&貨物船乗組員
『エイリアン2』=エイリアンVSリプリー&宇宙海兵隊員
『エイリアン3』=エイリアンVSリプリー&惑星刑務所の犯罪者
『エイリアン4』=エイリアンVSクローンリプリー&密輸船乗組員
でした。(『プロメテウス』と『エイリアンコヴェナント』はリドリー監督による前日談なので除外)
『エイリアンロムルス』は、エイリアンVS惑星植民地の若者たち、です。
登場人物の設定は「なるほど、いいところに目をつけたよね!」と、納得でした。
なぜ主人公を惑星植民地の若者たちにしたのでしょう?
それは、監督フェデ・アルバレス自身が若き頃『エイリアン2』を観た時に抱いた素朴な疑問がベースとなっているそうです。
まだ映画を観る側だったフェデ・アルバレス少年は「舞台となっている植民地惑星の若者たちはどんな世界に生きているんだろう?」と思ったことがきっかけとなっています。
こういう設定理由を知ると、登場人物たちの個性的な若者たちが、フェデ・アルバレス少年の投影のようにも思えてきます。
過去『エイリアン』の焼き直し?
「時代が一作目から45年たち新しい世代の監督になったが、監督が新しいオリジナリティをひねり出したかは疑問だ」という声も聞こえています。1回目に『エイリアンロムルス』をみた時は、ぼくもそう感じました。
「初代エイリアンとエイリアン2を掛け合わせて、2で割ったような、、、。どこかで見たようなエイリアンだな」が、一回目に見た時の感想でした。(でも、つまらなかった、ということではありません)
しかし、2回目、3回目と観るにつれて、エイリアンから逃げ、戦う若者たちが、かつてぼくが若かった時に身近にいた友達のようなデジャヴュで立ち上がってきたのです。
言い方を変えるなら、1回目みた時のぼくは、「上から目線」だったんだと思います。ダメですねこういう年寄り目線は。反省猛省です。
2回目みた時には、キャラが立ち上がって迫ってきたので、本当にびっくりでした。
今回のフェデ・アルバレス監督脚本によるエイリアンは、誰もが10代の頃抱いていただろう「ここから別の世界へランナウェイしたい」世代に立ち返ってみると、新しい見方が生まれる映画だと思いました。
シリーズ定石「アンドロイド」はどうだった?
また、アンドロイドがストーリーの中で重要な鍵になるのがエイリアンシリーズの定石です。
今回もしっかりアンドロイドが登場します。主人公レインを護ることがすでにプログラムされた「アンディ」として、最初から存在が明かされての登場です。
「再起動」やスマホのSIMを変えるようなイマ風なバージョンアップシチュエーションもあります。そういうアイデアは過去作品にはないものでした。
しかし、それらはどうもそいうった「再起動」「SIM差し替えっぽさ」が、小手先のように感じてしまい、正直、ぼくはダメでした。
まとめ感想
主人公レインの活躍は、言ってしまえば、イマ風リプリーです。
銃を持ったこともないレインが、いきなりかっこよくライフルを撃ちまくります。「そんなにうまくいくかいな?」と思いたくなります。
しかし、そのように撃てるのはなぜか?という細かなところは、きちんと伏線が貼られています。なので、「そんなにうまくいくかいな?」という一種うう抱いた疑問は「あ、そういえば」と納得させられるのです。
(2作目でもリプリーがパルスライフルを撃ちまくります。ではなぜ「そんなに銃を撃てるわけないだろ?」と疑問に思わないか?それは多分、一作目で腰抜かす寸前で逃げ回っていたというエイリアン免疫があること。さらにパワーローダーの扱いに優れている=機械系が強い=という素地があるから疑問に思わず見れるんだと思います)
ラストにレインと戦うことになるニューボーン新タイプエイリアンも、『エイリアン4』のリメイク的印象でした。
つい比べてしまう残念コメントが続いてしまうのは、それだけ過去作エイリアンシリーズそれぞれの個性が猛烈に強かった…ということになるのでしょう。
でも、そんな残念ばかりではありません。
フェデ・アルバレス監督がは強烈シリーズの最新作で散々苦労したはずです。だってリドリースコットとさまざまな意見交換をしたと言いますから。
その苦労は並大抵ではなかったとぼくは思います。
そしてその結果、ぼくはクライマックスまでハラハラし通し、さらには「リスペクト」にニヤリとさせられっぱなし、という非常にニクいエイリアンとなっていました。
『エイリアンロムルス』は、新しいジェネレーションにバトンタッチされたと思います
過去4作のバラエティにとんだ監督たちの作品を観た後に、本作引き受けたんですから、アルバレス監督ってでっかい肝っ玉持ってますよね。すごいと思います。
『エイリアン ロムルス』ぼくの評価は?
一作目から45年、、、新鮮感はさほど感じませんでしたが、二度、三度と観るにつれおもしろさが増してきた不思議な感じがありました。
『エイリアン ロムルス』、ぼくの評価は、かぎりなく星四つに近い星3つ半です。
『エイリアン・ロムルス』配信レンタル先は?
プライムビデオで配信レンタル中です。
コメント
おはようございます。
まあねえ、最初から1作目と2作目を合わせたような話にするつもりだったのだろうから、ああなるのは当然の帰結だったような気はしますね。私はパクリは嫌いだけど、リスペクトは大好き。だから1作目と2作目へのリスペクトに満ち満ちた本作には、私は割と好感をもっています。確かに、ストーリー展開にはもうちょっと工夫がほしかったかも。
一番面白かったのはイアン・ホルム(笑)。まさかこの人を持ってくるとは!?技術的には今どき特に珍しくはないけど、アッシュだよ!監督のマニアックぶりが見えてめっちゃ面白かったし楽しかった。ここにビショップが出てきたらもっと面白いのにね(笑)。まあそんな感じで、私は結構楽しめましたね。
まあ、これも人それぞれ。
あくまで主観で書いているレビューです。エイリアンシリーズも監督世代交代ですね。
しかしモスラの息子さん、あなたは40年たっても変わらないですね(笑)
ふふ、根っこは変わらないさ。それはあなたも同じだよ。