『エイリアン2』(原題『ALIENS』)は、1986年公開。「続編=2はおもしろくない!」という定説をものの見事に打ち破った名作SF映画です。
前作の『エイリアン』で唯一の生存者となった二等航海士リプリー(シガニー…ウィーバー)が主人公となる続編で、監督は、『ターミネーター』『タイタニック』『アバター』のヒットメイカー、ジェームズ・キャメロン。
主人公リプリーは音信不通となった殖民惑星LV-426の調査に向かい、宇宙海兵隊と共に激戦を繰り広げるストーリーは、今に見ても斬新です。『エイリアン2』のチラシポスターのメインキャッチは「今度は戦争だ」でした。言い得て妙のキャッチでした。
いまだに数年おきに観たくなる映画です。そんな『エイリアン2』を2023年に再観。早速レビューしてみます。
『エイリアン2』は、前作『エイリアン』から57年後を舞台に、再びエイリアンとリプリーが対決する物語です。前作がホラーなら、今作はアクション戦争映画のトーンです。進化したエイリアンの造形も前作からの違和感、全くなし。
1986年公開当時、リプリーが女の子のニュートを守りエイリアンと戦う姿は、「女性の新しい姿」を描いた作品としても評価されていました。
以下に、エイリアン2の主要な登場人物を紹介しておきます。(カッコ内は俳優)
- リプリー:ノストロモ号事件唯一の生存者。エイリアンの脅威へのアドバイザーとして、LV-426に向かう。パワーローダー操縦の達人。(シガニー・ウィーバー)
- ヒックス:宇宙海兵隊伍長。リプリーを援護する。歴戦の猛者。(マイケル・ビーン)
- ニュート:植民地の少女。リプリーらに助けられ、行動を共にする。(キャリー・ヘン)
- ビショップ:アンドロイド。一作目『エイリアン』アンドロイドの新型。(ランス・ヘンリクセン)
- バスケス:宇宙海兵隊員。歴戦の女性兵士。スマートガンの名手。(ジャネット・ゴールドスタイン)
- ハドソン:宇宙海兵隊員。口とは裏腹に怖がり屋。(ビル・パクストン)
- ゴーマン中尉:実戦経験浅い士官学校出のエリート。(ウィリアム・アームストロング)
- バーク:リプリーの雇用会社の社員。エイリアンを持ち帰ろうと画策(ポール・ライザー)
『エイリアン2』最強続編のワケ
この映画が続編ものとして成功した理由、それは主人公のリプリーと対するエイリアンという好敵手は生かしながら、エイリアンの軍勢と宇宙海兵隊の戦いを舞台にしたことにあります。
『エイリアン2』は、SF映画としてつい見ちゃいますが、見方を変えれば、戦争映画として描いているんです。
エイリアンがどこからともなく現れて襲いかかるシチュエーションは、昔から映画で描かれてきた、「神出鬼没のゲリラに苦しむ正規軍」の図式です。
さらには、映画のジャンルでこれまた人気の「籠城モノ」「脱出モノ」のダブルスタイルもとっている。
一作目の「エイリアンの最強の怖さ」を素材に、「戦争・籠城・脱出」を腕のいい女性シェフが腕を振るったディナーフルコースみたいなものです。
この女性シェフは、もちろんシガニー・ウィーバーです。
『エイリアン2』はすでにたくさんのブログが書かれていますが、ここからは、ぼくの『エイリアン2』オススメポイントをいくつか挙げてみたいと思います。
1.『エイリアン2』といえばバスケス
宇宙海兵隊の兵士たちの描写、性格設定が際立って見事です。
軍曹が冷凍睡眠から目醒めるシーンなど、絶品です。冷凍ポッドの中で兵士たちが目を覚ますシーンがありますが、軍曹は目が覚め、上半身を起こすや否や葉巻を咥えます。この目覚め方は何度見ても引っ張りますね。
また、女性兵士バスケスはごっつい兵器、ハンディ重機関銃=M56スマートガンの名手ですが、ガンを振り回すには筋力だ、とばかり、いきなり懸垂をはじめます。
そんな細かな演出が、「兵士たちは筋金入りだ」ということを暗に匂わせます。
兵士の中でもいぶし銀のような光りを感じるのが、その女性兵士バスケス。ニヒルな表情といい、タンクトップ姿の逞しさといい、いいとこ取り。
劇中、数秒ですが、ドラムの効果音に合わせてバスケスとドレークがスマートガンをリハする場面があります。たった数秒ですが何度も繰り返し見てしまう絶品シーンです。
ネタバレになりますが、クライマックスへ向けて籠城脱出シーンでは、バスケスが良い味を見せてくれます。
最初毛嫌いしていた実戦経験浅い指揮官と共に、エイリアンに立ち塞がり、リプリーたちを逃すくだりは、冒険小説の名シーンのよう。冒険活劇のツボを見事に押さえてます。
2.『エイリアン2』といえばビショップのナイフ
エイリアンシリーズには欠かせない存在がアンドロイドです。
1作目エイリアンでのアンドロイドは、エイリアン捕獲の密命を帯びていました。
5作目6作目でもアンドロイドがストーリーのカギを握っています。
『エイリアン2』では、ランス・ヘンリクセンがアンドロイド・ビショップを演じていますが、他の作品とは違ってとても人間らしいのです。怖がったり、失敗したり。
ビショップがアンドロイドとわかるシーンが、ユーモア交えて描かれるのも本作の特徴ですね。
ビル・パクストン演じる海兵隊員ハドソンの手のひらをテーブルに置いて、その上に自身の手を重ね合わせ、ナイフ突きをする。
隊員たちから「やれよ」とけしかけられ、いやいやながらもやるその表情も温かい。
非常に人間臭いアンドロイドなのです。
3.『エイリアン2』といえばニュートの悲鳴
通信が途絶えた開拓民の子供が一人、海兵隊員によって救出されます。女の子のニュートです。
子供である彼女を物語に据えたことで、ただのドンパチSFとは一線を画しました。
何より幼い女の子です。その悲鳴が、ヨイ!
頭のてっぺんから突き抜けるように叫ぶ悲鳴は、ホラー系によくある女性の悲鳴ではなく無邪気さが入り混じった恐怖の悲鳴。海兵隊員ならずとも守ってあげたくなりますよ。ニュートを登場させたこと、作戦成功です。
4.『エイリアン2』といえばヒックスのショットガン
海兵隊員達が索敵するシーンで、エイリアンの巣が核融合炉の真上とわかるくだりがあります。で、高性能爆薬が装弾されたライフルは使えなくなる。
隊員たちのカートリッジは集められて、武器的にほぼ丸裸になってしまうのですが、その場でマイケル・ビーン演じるヒックス伍長がニヤッと笑ってショットガンを背から抜き出し、こう言います。
「接近戦にはこれが一番だ」
取り出したショットガンはポンプアクションのイサカ37。
このショットガンはベトナム戦争の塹壕戦でも使われたガンなのです。
塹壕戦といえば超接近戦です。銃身が長いライフルは接近戦には不向きなんですね。
冒頭でぼくは「神出鬼没のゲリラ戦に苦しむ正規軍」と書きました。
そう、この映画はベトナム戦争で亡くなった兵士たちへのレクイエムでもある、とぼくは思っています。
そうでなければヒックス伍長に骨董兵器、ベトナム戦争時代から使われてきたイサカを登場させないでしょう。
5『エイリアン2』といえばドボジョ=重機女子元祖パワーローダー
今、土木系の仕事に女性が普通に就職する時代になりました。また、自然災害が多くなっている昨今、復興のために重機を扱うスキルを覚えたい!という女性も増えていると聞きます。
現に、ぼくの友人の女性も洪水で被災。その後、その町の女性たちとチームを組みパワーショベルの講習を受けています。
その話を聞いた時、ぼくは彼女たちに「リプリーズだね」と賛辞のネーミングを勝手に与えました。きょとんとしてましたけど。
そう、重機女子の元祖といえば、『エイリアン2』のリプリーです。
二足歩行型重機「パワーローダー」を自在にあやつるリプリーのかっこよさと言ったらありません。
パワーローダー進化系は後のSF映画の傑作『マトリックス・レボリューションズ』のミフネ隊長率いる二足歩行系ロボットに進化しますが、元祖はパワーローダーでしょう。
武器らしい武器の装備がないところもますます重機くさくてヨイです。あ、簡単なバーナーはついていますが。
今はCGで簡単に作れてしまう時代ですが、公開当時はまだ大道具を合成、あるいはコマ撮りアニメの時代です。
リプリーが操るパワーローダーの特撮はCGにはない重機の重さがあります。今見ても動きの間の絶妙さに唸ってしまいます。
話はそれますが、今、土木系の会社で女性を採用したならば、もしぼくが社長だったなら、まずは『エイリアン2』を研修で見せる。
リプリーのパワーローダー操縦シーンで、女性の重機へのラブ&プライドがアップすること間違いなしだと思います。
6『エイリアン2』といえば、ママは怖いのリプリー
一作、そして続編とリプリーはエイリアンと戦うハメになるのですが、先に書いたニュートとの関係で、リプリーは、怒らせたら怖いママになります。
ニュートが我が子ではないにせよ、子供を護らねば、という女性の本能が、クライマックスへとリプリーを動かします。
「エイリアンだろうがなんだろうが、我が子に手出しさせたらただではおかないわよ」
というセリフはもちろん出てきません。
しかし、さらわれたニュートを助け出すべく、ライフルと火炎放射器をガムテープでぐるぐる巻きにし、肩からスリングで下げる姿と表情は、まさにそんな心のセリフが表れています。
なぜに、リプリーはそんなにしてまで超絶に怖いエイリアンの巣に戻っていくのか?
答えはニュートとリプリーの母娘にも似た繋がりにあるのです。
現にそのシーンでは、歴戦の猛者ヒックス伍長も満身創痍、もはや兵士としても男としても使い物にならない状況です。
シナリオで男をあえてポンコツにした理由は、リプリーの母性を最大限に発揮させるためだったのでは、と、思っています。
『エイリアン2』あらすじです。
『エイリアン』一作目・ノストロモ号事件唯一の生存者であるエレン・リプリーは、57年間の冷凍睡眠から目覚める。
彼女は、ノストロモ号で遭遇したエイリアンの存在を訴えるが、なしのつぶてだ。
そんな中、LV-426という惑星にある植民地から連絡が途絶えたという知らせが届く。
リプリーは、エイリアンの存在を懸念し、植民地調査のために海兵隊員と共にLV-426へと向かうことになる。
LV-426に到着したリプリーと海兵隊員たち。
しかし植民地はエイリアンの襲撃によって壊滅状態になっていた。
唯一の生存者は女の子のニュートただ一人。
多数のエイリアンが海兵隊員たちを攻める。
リプリーと海兵隊員たちは、籠城。
エイリアンとの戦いを繰り広げるが、一人また一人と命を落としていく…
『エイリアン2』ネタバレラストまで(閲覧注意)
籠城から脱出の途中、ハドソン、バスケス共に命を落とす。
残った海兵隊員はヒックス伍長のみ。
そんな中、ニュートはエイリアンにさらわれてしまう。
ヒックス伍長も傷つき、もはや戦えない。
戦闘が原因で、植民施設の核融合炉は臨界に達し、爆発まで残り20分。
リプリーは一人、ライフルと火炎放射器を携え、ニュート救出に向かう。
ニュートがいる場所を見つけ出し助け出すが、周りには無数のエイリアンの卵が。
そこはエイリアンクイーンが卵を次々と産み落とすおぞましいエイリアンの宮殿だった。
産み落とされた多数のエイリアンエッグを火炎放射器で焼き払うリプリー。
怒ったクイーンはリプリーとニュートに襲いかかる。
あわやと思えたその時、一機の上陸艇が旋回浮上してくる。コクピットにはアンドロイドのビショップの姿が。
艇に救出される2人。
全ては終わったかと思われたが、突然エイリアンの鋭利な尾に貫かれるビショップ。
エイリアンクイーンは上陸艇に紛れていたのだ。
リプリーは単身、パワーローダーを操り、クイーンに最後の戦いを挑む。
『エイリアン2』ぼくの評価と配信レンタル先
ここまで散々褒めておいて、今さら評価も何もあったもんじゃないですね。観たことがない方はぜひぜひ観てください。何度見ても良い映画です。Prime Videoでレンタルできます。
『エイリアン2』スタッフ・キャスト
監督:ジェームズ。キャメロン 製作:ゲイル・アン・ハード 音楽ジェームズ・ホーナー 特撮スタン・ウィンストン キャラクタークリエイター:ダン・オバノン ロナルド・シャセット
キャスト シガニー・ウィーバー マイケル・ビーン ビル・パクストン ランス・ヘンリクセン ポール・ライザー 他
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