実話『型破りな教室』感想レビュー|ネタバレあらすじからパロマのその後まで〜最底辺の学校から学ぶ教師と子どものぶつかり方

ヒューマン・ハートフル

『型破りな教室』
あらすじ感想評価レビュー




こんにちは、映画好き絵描きのタクです。

今回レビューする映画は、『型破りな教室』原題:RADICAL メキシコ映画です。2023年公開作品で上映時間は2時間7分。実話ベースの映画です。

治安最悪&最底辺の小学校に赴任してきた教師が行うユニークな授業が子どもたちの心を開かせてゆく、、、そんなストーリーの映画です。



『型破りな教室』はどんな映画?

「どこか「金八先生」みたいな感じなのかな???」と、そんな先入観なきにしもあらずでみてみました、『型破りな教室』。しかしそんな先入観は木っ端微塵にふき飛んだ、とんでも無くオリジナリティのある素晴らしい作品でした。

監督はクリストファー・ザラ。ぼくはその名前を初めて聞きました。なので調べてみました。

クリストファー・ザラは、デビュー作の『Blood of My Blood』で、サンダンス映画祭審査員大賞を受賞しています。またインディペンデント・スピリット賞においても最優秀脚本賞と新人作品賞にノミネートされています。

2015年にはロブ・ロウ出演のテレビムービー「Beautiful & Twisted」を監督しています。『型破りな教室』は長編映画としてはたった2作目です。2作目でこんな素晴らしい作品を生み出すとは、正真正銘のクリエイターですね。

『型破りな教室』はサンダンス映画祭で観客賞を受賞したほか、マラガ映画祭で作品賞、ハーグ映画祭では審査員賞など受賞も多数です。

しかし原題Radicalを『型破りな教室』と意訳した配給会社のセンスは上手いなあ!と思いました。

では、早速レビューしてみます。まずはあらすじからスタートです。


『型破りな教室』あらすじは?

あらすじはネタバレを含みますので、ご注意ください。

+ + +

舞台は麻薬と殺人が日常化したメキシコの小学校です。学力は国内最底辺。周りはすさみ切った環境。教師は子どもたちを、カタにはめようとするだけ…。

そんな学校に通うのは、ガラクタ集めをして健気にも家計を支えるパロマ。

海辺のあばら屋に住むニコ。ニコには親がいない上、兄はストリートギャングの一員でニコをギャンググループに引き入れようとしています。

兄弟が多く貧しい家のルペは、学校に通うことさえ精一杯です。

そんな彼らの世界は常に犯罪と隣り合わせ。

学校に通ってくる子どもたちは皆、すさんだ環境にある子どもたちばかりです。

おまけに学校の教育設備も最低。パソコン教室には壊れたパソコンが置かれているだけ。図書室の百科事典も盗難にあったせいか不揃いです。

教員もお役人の御機嫌取りばかりで、子どもたちに本気でぶつかっていく教師はいません。

そんな学校の6年生クラスに、新任の教師セルヒオ・ファレス・コレアが赴任してきます。

早速セルヒオはカリキュラムを完全に無視した授業をはじめます。ユニークで破天荒なその授業に、校長のチュチョ先生は最初、何事かと眉をしかめます。

しかし、セルヒオの型破りなスタイルは、見事に子どもたちの探究心に火をつけます。

またチュチョ校長もセルヒオ先生の熱意とスタイルを理解し始めます。

ゴミ集積場の隣の一軒家に住むパロマは、ゴミの山から拾ってきた屑で天体望遠鏡を作り上げ、宇宙への興味とNASAで研究したいという夢を抱きます。

ルペはセルヒオ先生の一言で哲学に目覚め、町の図書館に足を運び、借りてきた哲学書に目を輝かせます。

海辺のあばら屋に住むニコは、パロマに恋をし、あたらしい世界へ漕ぎ出す夢を持ちます。彼の心を見抜いたセルヒオ先生はニコに「好きな相手にしてはいけないこと、すべきこと」を伝えます。

ニコはセルヒオ先生の教えを守ります。

ニコはパロマに、NASAのスペシャルカリキュラム・特待生募集のパンフレットを手渡すのです。

心に新たな夢を抱き宇宙への扉を開けようとするパロマ。

しかし、そんなある日、ニコの兄が、ストリートギャングの一員であることで、事件が起こります…。



『型破りな教室』あらすじ結末まで〜ネタバレにつき閲覧注意!

以下はネタバレになります。映画を見たい方はスルーして読み飛ばしてください。

+  +  +

パロマへの恋、そして世界の探求に新たな世界を見出そうとしていたニコの気持ちは次第に兄とギャング団から離れていきます。

一方でストリートギャングの一員である兄は、ニコがこの世界で食べていくためにはギャングの一員になることしかない、と思っていました。

兄はニコに、ピストルの入ったリュックを預けてピストル密輸の受け渡し役をさせていたのです。ギャング入団の第一歩です。

小学校でそのリュックを手離そうとしないニコを不審に思ったセルヒオ先生は、誰もいなくなった放課後に、ニコにリュックの中身は違法なものかどうかを問いただします。

ニコは、「リュックの中身はピストルだ」なんて言えるわけがありません。

セルヒオ先生は、ニコの言うことを信じようとします。

ある日の放課後。パロマとニコが校門から出ると、そこに兄とストリートギャングが車で乗り付け、パロマに乱暴しようとします。

思わずリュックからピストルを取り出すニコ。

数発の銃声が響き渡り、騒然となる中、セルヒオ先生は道端に倒れたギャングたちの向こうに、同じく横たわり動かなくなったニコを見つけ慟哭します。

教育への絶望からセルヒオ先生は家に閉じ籠り、教えることを拒否します。

しかし時期は学期末。テストを受けさせなければ子どもたちの卒業は危うくなります。

チュチョ校長はセルヒオ先生を自宅に訪ね、説得します。

セルヒオ先生は期末テストギリギリに復帰。しかし残された時間はあまりになさすぎます。

しかし、セルヒオ先生は「自分が型破りな授業を通じて教えてきたことは、答えを求める考え方そのものであり、君たちはその考え方をすでに身につけている。だからテスト問題は難なく乗り越えられるはずだ」と子どもたちに告げ、テストに送り出します。

子どもたちの成績は素晴らしい結果でした。

中でもクラスの何人かはメキシコ全国のトップクラスの成績となったことが伝えられ、セルヒオ先生の授業は身を結んだことが証明され、エンドロールとなります。


『型破りな教室』感想です

迷わず見て!

「迷わず見て!」

映画『型破りな教室』を見終わり、ぼくはそう叫びたくなりました。久々の快作、感動作、ホームラン!!です。

舞台はメキシコ・マタモロス。もちろん聞いたことなどありません。

子どもたちが登校する道端には銃で撃たれた死体が転がっている、、、そんなことが日常にある、無法地帯のような町の小学校で話はすすみます。

その学校に新たに赴任してきた教師が、未来を見出せずにいる子どもたちを、それこそ「型破りな授業スタイル」でグイグイと変えていきます。

ちなみにこの映画、実話です。実話の重みが、脚本のよさでずっしりとした質量となって迫ってきます。

エウヘニオ・デルベスの型破りさ

主人公の先生役を演じたのは、エウヘニオ・デルベス。

エウヘニオ・デルベスは、みたことがある役者さんだと思っていたんですが、『コーダ あいのうた』で主人公の音楽の資質を見抜き、人生の扉を開く先生役を演じていました。『コーダ あいのうた』でもめちゃくちゃいい役でしたが、同時にオーラも強烈でした。

『コーダ あいのうた』に続いて『型破りな教室』でも子どもたちを導く教師の役なわけですが、「いい教師は、あくまで個性的でオーラを発しているくらいじゃないといけない」という証明なのかもしれません。

余談ですが、ぼくの中学時代の歴史の恩師もカリキュラムから外れることを厭わない、それこそ型破りな先生でした。

先生の歴史の授業でぼくが「ベトコンってよく聞きくけど、ベトナムコンバットの略ですか?」と的外れな質問したところ「いい質問だ!ではベトコンのことを調べてみよう」と、その時間がベトコンの解説で終わってしまったことがありました。

この映画を見ながら、つい、その恩師の授業を思い出し、「生きていたなら『型破りな教室』を見てもらって感想を聞きたかったな、、、」とも思いました。

すみません話がそれました。

話を戻しますと、エウヘニオ・デルベスはその顔も個性的です。一度見たら忘れられません。というか、初めて見ても「どこかで見た役者さんだ」と思ってしまいます。(『コーダ 愛のうた』の時がそうでした)

それほどまでに印象に刻まれます。そして彼がやる授業内容もまたパワフルに個性的です。


『型破りな教室』の映画体験は学ぶ現場だ

『型破りな教室』は、「教えるとは知識を詰め込むことではなく、発想法、考え方、疑問の持ち方を子供たちの心に刻み込むことだ」と、見る人に、実にわかりやすく明快に教えてくれます。

そしてそのためには忘れ難い体験が必要だ、ということも。

この映画のすごいところは、知らず知らずのうちに、ぼくら観客が「型破りな教室の現場」に放り込まれているということです。

その学びの体験は、めちゃくちゃエキサイティングと言ってもいいです。

映画は本来エンターテイメントなわけですけれども、教育現場としても機能するものなんだな、と、妙に感心してしまいました。

全ての人のための映画

果たして日本の教育現場にいる先生方のどれ゚だけの人数がこの『型破りな教室』を見るのでしょう?

もし、過半数の教育従事者、役人、親がこの映画『型破りな教室』を見るならば、今生きている世界の20年後はガラッと変わるのでは?とさえ感じました。

未来の世代ー子どもたちのためにも、親であろうとなかろうと、『型破りな教室』を見る人が多ければ多いほど未来は明るいものになっていくのでは?とさえ思いました。

子供たちが、可能性や夢に出会い、瞳がきらきら輝きだす様は、この映画のテーマでもありますが、彼の演出はそのテーマを見事に輝かせていました。

「奇跡の感動作が誕生した」と映画のウェブサイトのコピーにありますが、「まさに!」とぼくも思いました。


気になるパロマのその後は?

準主役と言ってもいいパロマですが、エンドクレジットで当人の写真が登場します。ですのでラスト席立ちすると損をしますよ。

パロマはその後、映画の中で描かれていた宇宙への夢を実際に叶えるべく、宇宙工学を学び、アメリカのNASA航空宇宙局に入るべく勉強を続けているそうです。

『型破りな教室』ぼくの評価は星四つ半

『型破りな教室』のぼくの評価は限りなく五つ星に近い星四つ半です。

事実の凄さ、脚本の素晴らしさ、俳優たち、また子役たちも素晴らしかったです。

少し星がかけた理由は、いわば「反面教師」として描かれる教育のお役所、お役人、他の教師たちはこの後、どう変化していったのか?町は変わっていったのか?親たちの子どもたちへの教育上の接し方は変わったのか?親たちを変えるにはどんな教育が必要なんだろう?などと幾つもの疑問が生まれて頭を離れなかったからです。

しかし、そんな問題提起までくれるとはさすがともいえます。やはり五つ星にしたくなりますね。

本当に素晴らしい映画でした。ありがとうございました。


『型破りな教室』配信先は?

U-NEXTのみになります。(2025年7月現在)

すぐに見たい方はこちらからどうぞ







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