『チェルノブイリ』怖い実話です。グロいです。でも必見です。ネタバレあらすじ評価レビューから配信先・キャストまで

ヒューマン・ハートフル

『チェルノブイリ』は2019年にHBOというテレビ局が制作し、米英で放送された5話連続ミニテレビシリーズです。映画ではありませんが、放映を知った時からぼくは強烈に見てみたいと思っていました。

1986426日、旧ソ連(現・ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所で発生した原発事故をノンフィクションタッチで映像化。30年以上も前に世界を震撼させた原発事故の現場を再現ときけば、見ないわけにはいきません。

当時、海の向こうの原発事故に、ぼくは得体の知れない恐ろしさを実際感じました。事故直後、チェルノブイリの現場では何があったのでしょうか?

『チェルノブイリ』は、現場で必死に放射能と戦った人々の、今まで明かされることのなかった、壮絶ドラマです。





『チェルノブイリ』あらすじは?

19884月、科学者ヴァレリー・レガソフ博士が、とある告発をカセットテープに口述録音絵いている。彼はチェルノブイリ原発事故の現場で指揮に当たった人物だった。

場面は一転、チェルノブイリ原発事故の現場に移る。

炎と煙、放射能がばら撒かれる中、必死の作業にあたる消防士や軍人、市民たち。

誰もが、放射能の影響を知らずに現場へと入っていく。その恐ろしさが描かれる。

旧ソ連の首脳部の対応もまた、同時進行でドラマの核となる。

誰も知り得ない未知の領域だ。ヴァレリー・レガソフ博士は放射能の怖さを十二分に理解している。ゆえに、ことを荒立てたくない指揮系統と反発する。

ドラマ前半は未曾有の原発事故対応に、「手探り」であたる壮絶極まりない現場が舞台だ。

ドラマの後半、ストーリーの時系列は事故前に遡り、原発が事故を起こすに至った経緯が明かされる。原子炉爆発は管理センターでの試験が原因だったのだが、ドラマで畳み掛けられるのは、「こんなことで事故に至ったのか」という想像を絶する事実だった

と、そんなストーリーというか、事実です。

『チェルノブイリ』は大雑把に、五つの視点で描かれます。

1.現場でメルトダウンと戦う消防士や職員の視点

2.現場を指揮する科学者レガソフ博士と政治家シチェルビナ副議長の視点

3.周辺の距離を置いた市民と兵士の視点

4.事故に至った原因に絡む発電所員の視点

5.放射能に侵され死にゆく人と身内の視点

今まで隠されていたことが、そんな立場が異なった視点でえぐり出されます。

とにかく、このドラマは大勢の方に見て欲しいです。その理由は以下に書きましょう。

 




放射能が「怖い話だ」と教えてくれた『チェルノブイリ』レビュー

事故は1986年。当時のぼくの記憶

チェルノブイリで原発事故が起こった当時、ぼくは大学生でした。「ヤバいことが海の向こうで起こった」という感覚は今でも思い出せます。事故ニュースも放送されたはずですが、当時の報道の記憶はあまり覚えていません。それでも、「ヨーロッパから輸入されてるシシャモは食わん方がいいな」とか、「パスタの小麦はチェルノブイリの周りの穀倉地帯だなヤバいかもな」と買い控えたり、なんとも嫌な恐怖感が日々の中にジワッと広がっていました。

同時に、『危険な話』(広瀬隆・著)や『原発ジプシー』(堀江 邦夫・著)といった原発関連本をずいぶん読み漁りましたので、放射能事故というものは「知らぬがホトケ」は通用しない、と、暗に理解していたんだと思います。

そんな本を読んだ結果、知識として「放射能の怖さ」は刷り込まれました。

刷り込みが深かったのは、やはりチェルノブイリ原発事故という現実があったからだと思います。

チェルノブイリから30年後、東日本大震災で発生した大津波が原因となり福島第二原発がメルトダウンを起こしたとき、ぼくは仙台に暮らしていました。

事故の情報をゲットした時、即座に脳内を駆け巡ったのは、そう、チェルノブイリのことと、そして読み漁った本から刷り込まれていた「怖さ」でした。

福島原発から仙台の自宅までの直線距離を東北地図上で図り、直感で思いました。

「マジかよ。仙台なんて風向き次第でアウトじゃないかこれ、最悪にヤバいぜ。」

以下当時のことです。若干それます。

そこで、隣の町内会長のじいさまにそのこと話したわけですよ。「ヤバいですよ」と。

でもね、じいさまは、ポカーンと危機感全くなし。言葉が会長さんの体を素通りしてたのがよくわかりました。

話がドラマから離れて行ってますね。でもいいんです、ドラマが伝えたいエッセンスと、被っていますから。

ぼくは『チェルノブイリ』の事故のあと、事故の怖さを本を通じてでも「知ろう」と思った。だから、原発水蒸気爆発の直後、東北地図に定規を当てることができた。

怖いことにふたをせず「知ろう」と思うこと、これ、とても大事だと思うのです。

『チェルノブイリ』というテレビシリーズは、過去をえぐり出していますが、「知る」きっかけをもえぐり出す、非常に良質な映像コンテンツだとぼくは感じました。




『チェルノブイリ』このドラマはグロさの限界に挑んだ

事実にのっとって描かれた『チェルノブイリ』です。放射能を浴びた人間がどうなるのか?それをきちんと描いた容赦ない描写も秀逸です。あえて「秀逸」と書きました。もちろんメイキャップアーティストの腕の凄さであるわけですけど、おどろおどろしさを全面に押し出すスプラッタームービーなんぞより、よっぽど怖い。

「被曝の事実はこうなんだよ。消化作業にあたり被爆した消防士たちの末路に、電気の恩恵を受けている我々は決して目を背けてはならない。そして、今にきちんと伝えなければならない」

という製作陣の悲鳴にも近い叫び=訴えが伝わってきます。

確かにメイクは極めてリアルでグロいです。が、そのグロさは、気持ち悪くさせるためのメイクではありません。チェルノブイリの悲劇を生んだ旧ソ連の「手を抜いた原発政策のグロさ」を暗に訴えてる手法でもあることに気がつくのです。




『チェルノブイリ』このドラマは戦争映画だ~敵は放射能

全編、コントロールを失った放射能との「戦争」です。

爆発後、屋根に散った黒鉛を撤去するためにロボットを使いますが、あっけなく壊れてしまう。

彼らは、残された手を使わざるを得なくなるのですが、それは、マンパワー。猛烈な放射能の中、人による撤去です。

90秒というギリギリ晒される限界値の中で、防護服をまとった兵士たちがシャベルで撤去するシーンは、まさに形を変えた戦争。

瓦礫の中へ走り出し、黙ったままシャベルで黒鉛を掻き出す兵士たち。セリフは一才ありません。抑えた演出に、兵士の息の上がり方、恐怖感が痛いほど伝わってきます。

事故現場を指揮する科学者レガソフ博士とシチェルビナ副議長はまさに大本営と最前線のあいだに挟まれ、兵力がわからない敵=放射能を押さえ込もうと苦悩する指揮官です。

放射能の怖さを理論的に理解しているレガソフ博士が、黒鉛撤去にあたり、「人力ロボットを使う」と決定を下します。いわば「死んでくれ」と引導を渡すに等しいシーンでした。




『チェルノブイリ』このドラマは家族の愛を突きつける

放射能やけどに侵され死にゆく消防士とその妻のシーンが酷にも丁寧に描かれます。

顔が、身体が崩れてゆく愛する夫。見るに耐えない姿となっても、それでもそばに寄り添う妻。

このシーンはかなりヘビーですが、重きを置かれて描かれます。妊婦という設定もあり、放射能の母胎への影響=世代を越えた影響=を問うために、必要不可欠なシーンだったとぼくは感じました。

ドラマのラスト、エンドロールに「彼女には現在子供がいる」とのクレジットが表記され、少しだけ救いがあり、ぼくは同時に少しだけホッとしました。




『チェルノブイリ』このドラマは原発以外の地と一般市民への問いかけでもある

ドラマの中で、カメラはいっとき、郊外にでます。

無人の町に捨て置かれたペットを射殺する任務を負わされた兵士と市民に視点が入り、静かな無人の街に銃声が無常に響くシーンとなります。

このなかの一人は、かつて駐車場職員だった、普通の若い男です。

いわば、志願してきたわけですが、彼の存在=どこにでもいる普通の市民=がドラマに深みを与えています。

それまで駐車場係員だった彼が、いきなりライフルを持たされ、放置されたペットを射殺しなければならない立場に置かれるのです。

彼はほとんどセリフらしいセリフを発しませんが、最前線の周囲に放り込まれた一般人の戸惑いとやるせなさが痛いほど伝わってきます。




『チェルノブイリ』このドラマが目指したのは、2時間映画では作りえなかった、より深い事故の奥行きだ。

『チェルノブイリ』はテレビシリーズです。5話構成という枠は、ドラマの中に映画以上の広がりと深さをもちえています。これはテレビシリーズだからこそ、成し得たことだと思います。

かつてはなんとなく『テレビは映画の下』的イメージがありました。(絵の世界も同じく、『イラストは絵画の下』という見下し感がいまだに存在する)

Netflixが作った『THE DAYS』もそうでしたが、明らかにここ最近、映画と連続ドラマの逆転現象が起こっています。

5話見終えたときの満足感(打ちのめされ感)は「テレビシリーズを観た」という感覚は全くなく、良質な映像コンテンツを見終わった時に感じるそれでした。




『チェルノブイリ』このドラマのぼくの評価は?

満点です。

ぜひ、多くの方に時間を作って見てほしい作品です。(きつい内容だけど)

『チェルノブイリ』スタッフ・キャスト

監督/クレイグ・メイジン

キャスト/ジャレッド・ハリス ステラン・スカルスガルド エミリー・ワトソン 他




『チェルノブイリ』配信先は?

U-NEXTで配信中。Prime Videoでレンタル中です。









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