こんにちは、運営人の映画好き画家のタクです。今回レビューする映画は、スリラー×ラブストーリー×思春期男子夏への扉…と、贅沢な掛け合わせの『とらわれて夏』2014年公開・アメリカ映画です。これ、なかなか出会わなかったタイプの映画でした。最後まで惹き(引き)つけられました。
主役の一人は、タイタニックで世に出た美人女優ケイト・ウィンスレット。彼女が「え?この人ケイトなの?」と思わせるほどの別人的演技を見せてくれます。
遠い夏の日に想いを馳せたくなるような、そんな『とらわれて夏』。
脱獄囚と心通わせた母子家庭の意外な展開にざわざわしっぱなし、、、そんな『とらわれて夏』をレビューします。
原題の『レイバー・デー(英語: Labor Day)』は、「労働者の日」の意味です。アメリカ合衆国の祝日の一つであり、9月第1月曜日とのことです。(アメリカ映画:111分)
『とらわれて夏』予告編
『とらわれて夏』あらすじは?〜ネタバレあり
『とらわれて夏』、まずはあらすじから行ってみましょう。ネタバレありますので、映画を見たい方はスルーしてくださいね。
+ + +
舞台はアメリカの小さな田舎町。
夫と離婚し鬱病となったアデル(ケイト・ウィンスレット)は、13歳の息子ヘンリー(ガトリン・グリフィス)と二人暮らしだ。
重い鬱は車の運転にも支障をきたすほど。
アデルとヘンリー2人はスーパーに買い物に出かけたところ、怪我を負った脱獄囚フランクに脅され自宅に匿うこととなる。
最初フランクを恐れていた2人だが、フランクはどうやら凶悪犯ではなく、弾みで人を殺めたようだ。
「夕方まで匿ってくれ。迷惑はかけない。すぐに出ていく」
というフランク。
こわもてだが実直なフランクに、アデルとヘンリーは、次第に心を許し、傷が治るまで家に居るように伝える。
男手がいなくなったアデルの家は荒れていた。
家の修理を黙々とするフランク。
父がいないヘンリーに対して、フランクは工具の使い方や野球のボールの握り方までさりげなく教える。
しかし、フランクは脱獄犯だ。次第に警察の影がちらつきはじめ、隠していたフランクの存在が周囲に漏れはじめる。
息子ヘンリーは、思春期ゆえのデリケートな心から、母アデルのフランクへの愛情に戸惑う。
ヘンリーの子供から大人へ移りゆく性への目覚め。
ヘンリーのほろ苦い時間に重なるように、迫る警察の捜査の手。
フランクがなくてはならない存在となってしまったアデル。
アデルはフランクとヘンリーに「誰も見知らぬカナダの地で3人で暮らそう…と、全てを捨てての旅立ちを密かに計画する…。
…といったあらすじです。
『とらわれて夏』ネタバレ結末ラストは?〜閲覧注意!
ドラマ後半、ほんのちょっとしたことの積み重ねが、次第に3人の運命を翻弄する。
旅立ちの日、ヘンリーは離婚した父への想いを手紙にしたため、郵便ポストへ投函に出かける。
その帰り道、一台のパトカーがヘンリーを呼び止める。その日は学校の始業式の日だったのだ。
一人歩くヘンリーを保護した警官は家まで送り届けるが、荷物が満載された車の様子に不信を抱く。
なんとかその場を乗り切る母アデルと子のヘンリー。
新天地での暮らしに必要な現金を引き出すため二人は銀行を訪れる。
その額の大きさに不信感を抱く行員。機転をきかしたヘンリーのジョークでことなきを得る。
しかしその時、自宅に残っていたフランクは近所の主婦に見つかってしまう。
もう猶予はない。今すぐ出発だ。
しかしヘンリーは「自分の部屋に別れの挨拶をしたい」と子供部屋に駆け上がる。
遠くから響くサイレン。
サイレンが家の前で止まる。
フランクのとった行動は意外なものだった。
アデルとヘンリーを椅子に縛りつけたのだ。
2人が警察から人質にみえるようにすること。それは、逮捕から逃れられないと悟ったフランクが、二人に罪が及ばないためにできる唯一の方法だった。
警察に確保されたフランクは再び長い刑期に服役することになった。
アデルは刑務所のフランク宛に手紙を何通も出したが、全ては返送されてくる。
時は流れ、ヘンリーはパン屋を経営していた。
奇しくもフランクがレシピを教えてくれたピーチパイが店の人気商品だ。
そんなヘンリーの元に、フランクからはじめて手紙が届く。
「刑務所で見た雑誌でパン屋のことを知った。まもなく刑期をつとめあげ、出所する。もしアデルが再婚していないならば、会いに行っても良いだろうか?」
ヘンリーはフランクに、母の暮らしている家は変わっていない、と、返信を書いた。
長い時を経て再会するアデルとフランク。
彼らの後ろ姿で映画は静かに終わります。
『とらわれて夏』解説
さて、あらすじを最初に書いてしまいましたが、『とらわれて夏』の解説を「映画.com」から転載します。
「JUNO ジュノ」「マイレージ、マイライフ」のジェイソン・ライトマン監督が、過去にとらわれた男女が障害を乗り越えて愛し合っていく夏の5日間の出来事を、13歳の少年の視点から描いたドラマ。
9月はじめのレイバー・デイ(労働者の日)を週末にひかえたある日、アメリカ東部の小さな町で暮らすシングルマザーのアデルと13歳の息子ヘンリーは、偶然出会った脱獄犯のフランクに強要され、自宅に匿うことになる。危害は加えないと約束したフランクは、アデルの家事を手伝い、ヘンリーには野球を教えて過ごし、ヘンリーはそんなフランクを次第に父のように慕うようになるが……。
アデル役に「愛を読むひと」のケイト・ウィンスレット、フランク役に「ノーカントリー」のジョシュ・ブローリン。原作は、J・D・サリンジャーとも同棲していたことのある女性作家ジョイス・メイナード。
『とらわれて夏』考察〜4本の糸の絡み合い
さて、ここからぼくの考察(感想含みつつ)です。
+ + +
なんの気なしに観た『とらわれて夏』でしたが、ぼくはあっという間に引き込まれました。
この映画のスタイルを「スリラー×ラブストーリー×思春期男子夏への扉」と冒頭で書きましたが、それらも見事な掛け合わせでした。
なぜぼくは引き込まれたのか?
それはいくつかのドラマがタペストリーのように織りあっていたから…だったと思います。
解説・この映画の4本の撚り糸
1本目の撚り糸は、「人の欠けている部分をおぎなってくれるのは寄り添う人の愛」というラブストーリーの糸です。
2本目の撚り糸は「少年が異性を通し大人になっていく物語」という、ほろ苦い成長物語という糸
3本目の糸は「父が子に何を教えるか?」という父性の糸
4本目は、「迫りゆく追っ手からの脱出」というスリラーの糸です。
その4本の糸を1人の脱獄囚フランクが結びつけるのですが、フランクが思いもかけずに一組の母子家庭の二人が抱える欠乏感にぴたりとはまる大切なピースとなってしまうのです。
この4本がピシリと絡み合って、絶妙のハーモニーとなっています。そのハーモニーがあってこそ、感動へ導くように感じました。
『とらわれて夏』考察〜大人と子供、男と女
誰だって支える誰かが必要なんだ
人は心で生きる生き物です。
うつ病の母親アデルを演じるケイト・ウィンスレットの演技が素晴らしすぎます。
だって、最初のシーン数分、ぼくはケイト・ウィンスレットだと思わなかったですから。
息子のヘンリーの支えなしでは生きていけないほど心を病んでいる。
でも、ヘンリーはまだ子供です。
母を支えようとしていますが、子供ですから支え切れるはずがない。
そんな崖っぷちな状況に現れるのが、脱獄犯とはいえ心はまっすぐなフランクです。
お仕着せがましくなく、やることを淡々とやっていくフランクがいつしかアデルの心を占領してしまうのも、わかります。
人って、支える誰かが必要ですもんね。
ロバート・B・パーカーの『初秋』彷彿!
その昔、ハードボイルド小説に『初秋』(作/ロバート・B・パーカー)という名著がありました。
主人公の探偵が、訳ありの一人の少年に、「男として生きていくに必要なあれこれ」を教えるという話でした。
世知辛い世の中を生き抜いてきた人生後半戦も曲がり角に差しかかった男が、未来を担う子にサムシングを教える…っていうのは、ドラマの定番でもありますね。
脱獄犯とはいえ悪党ではないフランクと、アデルの息子ヘンリーの関係は、まさに『初秋』のような深い味わいがありました。
フランクがヘンリーに見せるのは、大工仕事や、工夫して修理するといった、今忘れかけられていること。だからこそ、迫ってくるのかもしれません。
『とらわれて夏』ぼくの感想です
思春期って残酷だ。
さらにはフランクと母アデルの関係を見つめるヘンリーの思春期独特の目線がドラマに湿度を与えています。
何から生まれる湿度かというと、それはもちろん異性への目覚めです。
たぶん男子は誰もが経験してきただろう10代前半の「説明のつかない心模様」の描き方が素敵だな、と、ぼくは感じました。
(女性が見てどう感じるかはわからないけど)
さらには劇中、ヘンリーは、都会から転校してきた女の子が、男子的に気になり始めます。
その子との関係が、物語をクライマックスへと導く歯車になります。
これがまた、男子思春期スタンダードなのですね。
『とらわれて夏』の静かなエロ
『とらわれて夏』にはどこか官能の匂いがします。
ヘンリーの思春期独特の目線が、そこはかとなく映画全編にうすーいエロの膜をはっているのです。
基本スリラー映画なのですが、ただのスリラーで終わっていないのは、誰でも体のどこかでチロチロうごめいてる官能。そこをついているからだとぼくは感じました。
料理が濡れ場の『とらわれて夏』
エロティックということでもうちょっとお話しします。
とくにフランクが料理を作るシーンは、ただのレシピシーンではありません。これがなかなかグッとくる、ある意味、絶品濡れ場です。
パイ生地を練り上げるときに、フランクが手をアデルの手に重ね合わせる。はっきりいちゃうとそれだけなんですが、めちゃくちゃエロティック。
料理シーンや食べるシーンって、セックスシーンにも似て、映画ではとっっても大事なファクターだとぼくは思っているのですが、(そう感じてるのはぼくだけか?)『とらわれて夏』の料理のシーンはめちゃエロティックですよ。(決して濡れ場ではないんだけどね)
なあんだ、結局ぼくは『とらわれて夏』の「そこはかとないエロ」にやられたのか…と、このレビュー書いていて思いました。
でも、エロって、、、ヤダって思う人、多分いないですよね??。
『とらわれて夏』ぼくの評価は星四つ!
ぼくは正直、映画のタイトルを見た時に「この映画、面白いんかな?外れるかもな…。」と、思いました。その理由は『とらわれて夏』という邦題のもつベタさ。なんていうか「B級メロドラマっぽいネーミング」と思いません??
でもね、ぼくは『とらわれて夏』を見ながら、なぜだか、遥か遠い夏の思春期を思い出していました。
そんな淡い記憶に重なるように、素敵なラストが畳み掛けられてさらにさらに気持ちが暖かくなっていました。一言「観て良かった!」です。
多分、邦題をつけた映画配給会社の担当者さんは、原題『Labor day』見終わって、ぼくと同じ、遠い10代のエロ心をくすぐられた気持ちになったんじゃないかな、、、だから『とらわれて夏』ってタイトルつけたんじゃないかな、、、と妙に納得したのでした。(ほんとかどうかはワカラナイ)
しかし、ジョシュ・ブローリンって不思議な俳優さんです。『ノーカントリー』の時もそう思いましたが、ごく普通の存在感(ってしか言えない…)が、超絶スゴイ!のです。
ぼくの評価は、星⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎四つの80点。オススメです。
いい映画をありがとうございました。
『とらわれて夏』スタッフ・キャスト
◾️スタッフ
監督:脚本/ジェイソン・ライトマン 撮影/エリック・スティールバーグ 編集/デイナ・E・グローバーマン
◾️キャスト
アデル・ウィーラー /ケイト・ウィンスレット
フランク・チェンバース / ジョシュ・ブローリン
ヘンリー・ウィーラー /ガトリン・グリフィス
成人後のヘンリー・ウィーラー / ナレーター – トビー・マグワイア
青年期のフランク・チェンバース / トム・リピンスキー
『とらわれて夏』配信・レンタル情報です
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