『ハウス・オブ・ダイナマイト』ネタバレあらすじ感想評価
こんにちは、映画好き絵描きのタクです。
今回レビューする映画は『ハウス・オブ・ダイナマイト』2025年公開のアメリカ映画。キャスリン・ビグロー監督作品です。(上映時間112分)
キャスリン・ビグロー監督の作品の中で、ぼくの好きな映画に『ハートロッカー』があります。
アメリカ陸軍爆破物処理班の隊員たちのリアルを描いた映画です。
『ハートロッカー』、確かに好きなんですが、ぼくはラストの締めくくり方に「キャスリン・ビグローはバリバリ右よりのタカ派に違いない…」と思っていました。
でも、違っていた。
「ぼくは勘違いしていた。『ハウスオブダイナマイト』、こいつは国家間戦争への徹底アンチじゃないか。キャスリン・ビグロー、『未知への飛行』のシドニー・ルメットばりに、やってくれた!」
これが映画『ハウスオブダイナマイト』をみたあとのぼくの正直感想です。
ぼくはキャスリン・ビグローの半軍拡へのアンチな徹底姿勢を見せつけられました。
おすすめです。
世界にきな臭い勢いが増している今、ぜひみてほしい映画の一本です。
『ハウスオブダイナマイト』予告編
『ハウスオブダイナマイト』解説〜どんな映画?
『ハウスオブダイナマイト』は、キャスリン・ビグロー監督が『ハート・ロッカー』で描いたように、再び“国家と個人の葛藤”を描いきました。今回は政治サスペンスです。
タイトルの「ハウス(=家)」が象徴するのは、単なる建物ではなく、国家そのものです。つまり「爆薬の上に立つアメリカ」という皮肉めいた比喩が、作品全体に貫かれています。
物語の主軸は、“敵国不明のミサイルがアラスカに向けて発射された”という緊急事態です。
攻撃元が判明しないまま、わずか数十分の間に国家中枢が判断を迫られるという、リアルタイム進行のドラマです。
炙り出されるのは、核抑止と報復のバランス、軍事機密、指導者の責任、そして人間としての恐怖。
キャスリン・ビグローがこれまでの戦争映画で描いてきた「戦場のリアル」を、今度はホワイトハウスと迎撃基地という“冷たい戦場”に置き換えて描いています。
映像の切れ味は相変わらずで、ドキュメンタリー的な緊迫感と、情報が錯綜する群像劇のリズムが見事に融合しています。
一方で、単なるサスペンスに終わらせず、誰もが「一人の人間として」と「職務として」の狭間で苦しむ姿を丁寧に掘り下げている点が、この映画のキモでしょう。
『ハウスオブダイナマイト』スタッフキャスト
制作スタッフ
監督 キャスリン・ビグロー
脚本 ノア・オッペンハイム
撮影 バリー・アクロイド
音楽 フォルカー・ベルテルマン
登場人物/キャスト
(以上Wikipediaより転載)
- アメリカ合衆国大統領
- 演 – イドリス・エルバ、日本語吹替 – 東地宏樹
- オリヴィア・ウォーカー海軍大佐
- 演 – レベッカ・ファーガソン、日本語吹替 – 佐古真弓
- シチュエーションルームに所属する上級将校。
- ジェイク・バリントン
- 演 – ガブリエル・バッソ、日本語吹替 – 清水優譲
- 国家安全保障問題担当大統領副補佐官。
- リード・ベイカー国防長官
- 演 – ジャレッド・ハリス、日本語吹替 – 金尾哲夫
- アンソニー・ブレイディ空軍大将
- 演 – トレイシー・レッツ、日本語吹替 – 大塚芳忠
- アメリカ戦略軍司令官。
- ダニエル・ゴンザレス少佐
- 演 – アンソニー・ラモス、日本語吹替 – 江頭宏哉
- フォート・グリーリー基地司令官。GBIを運用し、飛来する脅威を探知・破壊する任務を担う。
- キャシー・ロジャース
- 演 – モーゼス・イングラム、日本語吹替 – 反町有里
- 連邦緊急事態管理庁(FEMA)の政府存続計画担当者。
- ロバート・リーヴス海軍少佐
- 演 – ジョナ・ハウアー=キング、日本語吹替 – 杉村憲司
- 核のフットボールを運搬する報復戦略顧問兼大統領軍事顧問。
- アナ・パク
- 演 – グレタ・リー、日本語吹替 – 永田亮子
- 国家安全保障局(NSA)の北朝鮮問題専門家。
- マーク・ミラー海軍大将
- 演 – ジェイソン・クラーク、日本語吹替 – 山野井仁
- 大統領との連絡役を務めるシチュエーションルームにおける最高責任者。
- ウィリアム・デイヴィス海軍先任上等兵曹
- 演 – マラキ・ビーズリー、日本語吹替 – 山下タイキ
- シチュエーションルームに勤務するウォーカー大佐の部下。
- ケン・チョー
- 演 – ブライアン・ティー、日本語吹替 – 川本克彦
- シークレットサービス特別捜査官の責任者。
- リリー・バリントン
- 演 – ブリタニー・オグラディ
- ジェイクの妻で連邦議会補佐官。
- スティーブン・カイル空軍少将
- 演 – ベンガ・アキナベ
- アメリカ戦略軍参謀。
- アビー・ジャンシング
- 演 – ウィラ・フィッツジェラルド
- ホワイトハウス担当のCNN記者。
(以上Wikipediaより転載)
『ハウスオブダイナマイト』あらすじ〜途中まで
1. 傾斜が水平に
ある早朝、ホワイトハウスのシチュエーションルーム(WHSR)で、オリヴィア・ウォーカー海軍大佐は当直勤務を引き継いでいた。
午前9時30分(東部標準時)頃、レーダーが千島列島東方からを飛行中の正体不明の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を探知する。
ホワイトハウス危機管理対策室=WHSRと軍司令官、統合参謀本部議長、国防長官、大統領との間でビデオ会議が開始される。
アメリカ戦略軍の初期分析により、アメリカ本土中西部に着弾するまでおよそ18分しかないことがわかる。
コンピューターは都市部を直撃した場合には数百万人が死亡すると解析。
アラスカ州のフォート・グリーリー基地(英語版)ではダニエル・ゴンザレス少佐率いる部隊が弾道弾迎撃ミサイルを発射するが、ICBMの撃墜に失敗する。
ICBMの着弾目標地点はシカゴと特定される。
リード・ベイカー国防長官は「政府存続計画(COOP)」を発動し、政府高官らの避難を命じる。
その結果、連邦緊急事態管理庁(FEMA)のCOOP担当者キャシー・ロジャースは、政府の用意した自給自足核シェルターへ避難させられる。
ホワイトハウスでは異変を察知した記者たちが報道官を問い詰めるが、一方的に会見は打ち切りとなる。
不審に思った一人の記者が兵士に何が起こっているかを尋ねる。
答えは一言だけ、「逃げろ」だった。
一方、不在の国家安全保障問題の大統領副補佐官のジェイク・バリントンがビデオ会議に加わり、大統領に報復措置を取らないよう進言する。
2. 弾丸で弾丸を撃つ
ネブラスカ州のオファット空軍基地にあるアメリカ戦略軍指揮統制施設・核戦略本部(C2F)では、ICBMに対応するビデオ会議が開かれている。
参加者は、WHSR、国防長官、軍最高司令官、そして大統領だ。
軍のトップは、さらなる攻撃を抑止するため、発射国への報復ミサイル攻撃を行うよう大統領に促す。
しかし発射国は特定できていない。
会議の中で大統領副補佐官バリントンは軍司令官と激しく衝突し、国家安全保障局(NSA)の北朝鮮問題専門家のアナ・パクに連絡を取るよう要請する。
休暇中だったパクは、北朝鮮がこのミサイルを発射する能力を持っていた可能性があると説明する。
バリントンはシチュエーションルームの最高責任者であるマーク・ミラー海軍大将とともに大統領危機管理センター(PEOC)に避難し、ロシア外相からの電話に対応する。
ロシア外相は、ロシアがこの発射に関与していないと主張し、もしロシアが攻撃の標的となれば報復する、と警告する。
ICBMがシカゴに近づく中、大統領は報復計画の選択を迫られる…。
(以上、ウィキぺディアのあらすじを大幅短縮改稿)
『ハウスオブダイナマイト』あらすじ結末まで〜ネタバレ閲覧注意!
3. 爆薬が詰まった家
対策室の混乱から、シーンは国防長官室内に。
リード・ベイカー国防長官は、ICBMが自分の娘の住むシカゴに向かっていることを知る。ベイカーは娘の避難を試みるが間に合わず、絶望に陥る。
ペンシルベニア州の核シェルターには、続々と高官たちが入っていく。
大統領はバスケットボールのイベント参加中にICBM発射の報告を受け、会場から避難。
同行するのは報復戦略顧問のロバート・リーヴス海軍少佐だ。
大統領とリーヴスは空路ワシントンD.C.から脱出。
リーヴスは2つの選択肢を大統領に提示する。大統領は自らの判断で最終決断を下さねばならない。重責に苦悩する大統領….。
フォート・グリーリーの疲れ切ったゴンザレス少佐でスクリーンは幕となる。
(以上、参考文献:ウィキぺディアの『ハウスオブダイナマイト』あらすじ)
『ハウスオブダイナマイト』ぼくの感想
『ハウスオブダイナマイト』、面白かったです!
『ハウスオブダイナマイト』の魅力はいくつもあるのですが、ぼくがレビューで伝えたいことを、4つにまとめてみました。
以下、順を追ってお話ししていきましょう。
・5人の視点を巧みに絡める構成
『ハウスオブダイナマイト』のドラマを語る上で欠かせないのが、ミサイルが飛来してくるという”ワンシチュエーション”に対して、5人=5箇所の視点が描かれる特異性です。
ドラマはアラスカのミサイル迎撃基地ではじまります。
最初はもちろん ”5人=5箇所の視点”で進むとは分かりません。
しかし、次のシチュエーション=危機管理対策室でのドラマへと移るにつれ、その特異性にはっとします。
映画のシーンがミサイル迎撃基地で描かれるドラマからホワイトハウス危機管理室へと移ると、ミサイル迎撃基地で主役を張っていた迎撃部隊の兵士が一転脇役となり、”同じドラマが危機管理対策室の人間にはどう見えているか?”という描かれ方になるのです。
5箇所の視点と書きましたが、その視点は大きく分けて以下の五つです。
1.アラスカ・フォートグリーリー基地のダニエル・ゴンザレス少佐の視点
2.ホワイトハウス危機管理室のオリヴィア・ウォーカー大佐の視点
3.国防長官室のリード・ベイカー国防長官視点
4.移動しながら携帯で危機を知る大統領副補佐官ジェイク・バリントンの視点
5.移動しながら危機を知り判断を仰がれるアメリカ大統領の視点
です。
多分30分かそこら(違っているかもしれません)の”敵国不明のミサイル飛来”という一つの時間軸に対して、5つの場所からその危機がどう見えていて、その場所にいる人間がどう動いていくのか?
『ハウスオブダイナマイト』のおもしろさの一つはそこにあります。
その面白さを喩えていうなら、粘土の塊から徐々に削り出され目鼻立ちが浮き上がってくる彫像制作を早回しで観ている感じと言ったら良いでしょうか。(たとえになってませんね、多分…)
多分そんな作りをされた映画はあまりなく、思いつくところではクリストファーノーラン監督の『ダンケルク』でしょうか。
(第二次世界大戦での「ダンケルクの撤退」を陸海空三つの視点と時間軸で描かれた作品)
・描かれるのは肩書の先の人間性
『ハウスオブダイナマイト』の魅力の一つは、一兵士から大統領に至るまで、登場人物に血肉が通っているという点です。
肩書がそれなりに高く、嘘くささがありません。
それは俳優陣の力量によるところが大きいと思いますが、全員が仕事人であり、愛する家族があり、誰かと繋がって生きているということが感じられます。
危機管理対策室でのオリヴィア・ウォーカー海軍大佐(演/レベッカ・ファーガソン)の演技は見ものですし、こと大統領に関してのシーンでは、危機寸前の大統領の姿をフィクションとはいえある意味リアルに見せつけられます。その大統領視点は、仕事人として大統領が危機に対しどう動くものなのか?を、これまたフィクションのリアルとして見事に描いています。「そうだよな、そうとしか言えないよな…」と妙に納得していました。
・敵がどこなのか示されない怖さ
『ハウスオブダイナマイト』は、怖いです。
「いまの時代の他国へのICBM攻撃の怖さってこんな感じなんだろうな、、、」久々にエンタメ系の怖さではない「もしかすると…明日にでもありえるよな…」的怖さを感じました。
その怖さの本質は、「宣戦布告さえないミサイル大陸間弾道弾による戦争勃発」の怖さにあります。
敵がはっきりしないシチュエーションで疑心暗鬼のままに手探りで対策しなければならない怖さが、この映画からは伝わってきます。
敵がどこの誰だかわからないままにドラマが進みますが、多分、現実としても大いにありうるんだと思います。
最前線で銃を撃ち合う戦争映画につきものの怖さとは全く異質な怖さが、『ハウスオブダイナマイト』のホラー感です。
そんな怖さを過去、ある映画で感じたことがありました。それは、シドニールメット監督の『未知への飛行』です。
その映画は、米ソ対立時代の「もしかするとありえるかも…」という人間のちょっとした誤りが次々と連鎖を起こし核攻撃につながってしまうという話でした。
(Amazon Prime/UーNEXT/AppleTV/YOU TUBEでレンタルできます)
・結末は寸止めの美学
ネタバレになりますので映画見たい方は以下スルーしてくださいね。
久々に見事なオープンエンディング=ここから先はどうなるんでしょうね?見る人の想像にお任せしますってやつ=に完封されました。
いや、ほんとに「だからここから先を知りたいんだよ!」という手前で映画はジ・エンドとなります。
でもね、わかるんですよ、そんな監督の意図。
誰でも想像できる二つの選択肢を前に答えを出せずにいる大統領の姿にこちらも胃がキリキリします。で、キリキリしたまま終るんです。
「これ以外のエンディングはないだろう」と監督は思っていたに違いないです。もし、観客が求める絵を出したならば、映画全体が崩れてしまうんですよね….。まさにこの映画のエンディングは、寸止めの美学です。
絵を描いていてもあるのです。
描いている最後に「この一筆を入れるかどうか?」で迷う時、えいやっ!と筆を入れるとおおかた失敗して思っていたイメージが総崩れに繋がってしまう…なんてことが。
寸止めの美学が『ハウスオブダイナマイト』にはある、と、レビューを書いているいま、思っています。(もっともぼくだって映画見終わった直後は、そのオープンエンディングにモヤモヤ感にたっぷりどっぷりでしたけど)
『ハウスオブダイナマイト』ぼくの評価は?
ぼくはこの映画を、”前情報ほぼナシ”で見ました。
ネット上の評価も確認していません。
ですので、評価は直球です。ぼくの評価は星四つ半⭐️⭐️⭐️⭐️✨。
星半欠けの理由は、配信で観た点にあります。何度か途中で「あれ?どういうこと?この人誰だっけ??」と、「戻るボタン」で見返したんですよね。
自宅配信で見る集中力と映画館で見る集中力は違うじゃないですか。
映画館という没入感がある暗闇で見たならば、集中力も違いそんなことはなかったのでは…と思います。
スクリーンでもし観たなら星五つだったと思います。
『ハウスオブダイナマイト』配信レンタルは?
NETFLIXで配信中です。(2025年11月現在)
DVD、ブルーレイは以下で購入可能です。



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