『最後の乗客』2023年に開催された試写レポートです。(英題 The last passenger 日本映画)
『最後の乗客』は、東日本大震災と親子、そして救いをテーマにした映画です。宮城出身ニューヨーク在住の映画監督・堀江貴が宮城にロケ。
サンディエゴ芸術映画祭で「最優秀インデペンデント映画賞」を受賞したほか、世界中の映画祭で評価が高まっています。
『最後の乗客』試写会に行く機会を得ましたので、あらすじや感想をまとめてみました。
2023年3月、フォーラム仙台チネラヴィータで上映決定。堀江貴監督も舞台挨拶に登場予定です。
『最後の乗客』予告編
『最後の乗客』公式予告編です。
『最後の乗客』制作スタッフ・キャスト
制作/監督兼プロデューサー:堀江貴
キャスト/冨家ノリマサ 岩田華怜 長尾純子 谷田真吾 畠山心 大日琳太郎
『最後の乗客』仙台にて2024年3月、上映決定
『最後の乗客』の仙台上映が決定したようです。
フォーラム仙台チネラヴィータにて、3月公開決定。
公開日3月8日〜3月14日。8日から10日は、監督の舞台挨拶も予定されているとのこと。お見逃しなく!
先行上映会も2月29日に、同館で開催されるようです。18時30分から。
以下、公式サイトの情報を貼っておきますので詳しくはチェックしてください。
『最後の乗客』プレスリリース&前売情報
なんと、取引先の M氏が『最後の乗客』制作に関わっていました。
M氏から仙台上映のプレスリリースが届きましたのでアップしておきますね。
『最後の乗客』あらすじは?
映画の舞台は、仙台の海辺に近い地下鉄駅のタクシープールで始まる。
主人公の中年タクシードライバー(冨家ノリマサ)が、地下鉄駅前での客待ちのあいだ、同業男性ドライバーと雑談している。
交わされている会話は、客が告げた目的地に着くと、乗客は消えている…という「幽霊話し」だ。
そんな雑談のあと、終電もなくなり、客待ちを諦めたタクシードライバー(冨家ノリマサ)は車を走らせるが、途中、一人の若い女性客を拾い、乗せることになる。
様子がどうも奇妙だ。
その女性の告げる行き先は、「幽霊話」に出てきたとある町の名だった…。
途中、タクシーはひと組の親子もまた載せることになる。
なぜか車が動かなくなったり、何かが、どこかがおかしい。
タクシードライバー(冨家ノリマサ)は疑問を感じ始める、、、。
…ここから先は書けません。試写会作品の結末を書くのは、あきらかにルール違反ですし。
その代わりに、以下、『最後の乗客』試写会で思ったこと、感じたことを書いておきます。
『最後の乗客』試写の感想です
観る前にぼくはこう思った
『最後の乗客』という映画の完成試写会があります。一緒に行きませんか?」
この映画との出会いは、友人からのそんな一本のメールがきっかけでした。配給先は決まっていないということでした。
聞けば、監督の堀江貴は、ぼくが暮らす宮城県仙台出身。今はニューヨーク在住。
メールをくれた友人の旧友が、アメリカに住んでおり、ニューヨークで監督と知り合い、その映画のサポートをしているとのこと。
「もちろん!」と返事を打ち、仙台のとあるホールでの試写会にでかけました。
東日本大震災の「その後」を題材にとりあげた作品ですが、ドキュメンタリーではありません。
この映画で描かれる柱は、誰でもが経験している「親子の関係」です。
震災から12年目の3月11日。その日を完成試写の日にすべく、制作が進められたといいいます。
『最後の乗客』震災と映画
12年の歳月は流れたとはいえ、フィクション映画『最後の乗客』でどのように震災が語られるのか?が、ぼくは興味ありました。
ぼく自身、東日本大震災を仙台で体験、実際に激震に怯え、その後、見たくもない、ヒトが持つ心のダークサイドも否応なしに見せられました。
なのでヘビーで逃げ場のない震災テーマ映画は、どこかに「救い」がないと、やりきれないものがあります。
実は過去に、あまり良い印象を受けなかった震災映画も見ていたので、正直、『最後の乗客』も試写がはじまるまで、不安は拭いきれませんでした。
『最後の乗客』が仙台でロケがされたこともあってか、試写会が行われた小さなホールは満員でした。
監督もニューヨークから、俳優も東京から駆けつけていました。
『最後の乗客』上映実行委員会関係者からあいさつがあり、そして試写が始まりました。
『最後の乗客』ぼくの評価です
良質短編の読後感
『最後の乗客』は夜中に拾った一人の女性客とドライバーの関係が物語の核になっていますが、決してホラー映画ではありません。
その女性役は、AKB48の元メンバー岩田華怜(宮城出身)です。他の登場人物は、わずかに5人。
それぞれの関係が「えっ?そういうこと??」という意外な展開とともに語られていきます。
語られるといっても、饒舌ではありません。
余計な説明は一切省かれて、行間が語ってくれる映画です。
しかし、『最後の乗客』というタイトルが、非常に意味深です。
ちょっとネタバレになりますが、タクシーには合計三人の乗客が乗り込みます。果たして「最後の乗客」とは一体なんの最後だったのか、そして「最後の乗客」は誰だったのか??
観客に問いを残す映画でした。
ぼくは、良質な短編を読み終わったような感覚を持ちました。
舞台挨拶の様子から評価に代えて・その2
映画試写が終わり、舞台挨拶で堀江監督がこんなことを言いました。
「震災があった時、ぼくはニューヨークにいました。被災地に支援にいけなかったから、できることをしなければ…と、ニューヨークでドネーション活動をしていました。」
「ある時、一人の若い女性の日本人と会ったんです。彼女はぼくにこう言いました。『チャリティするのが当たり前という空気が、実は辛かった』と。」
「その時、わかりました。震災の感じ方、震災が与えたダメージは、人それぞれ全く違うんだ、と。同時に、そのことが分かったようでわかっていなかった自分を恥じました」
「この映画『最後の乗客』を撮ろうと思った時、大切にしたかったのは、そういうことです。」
そんな監督の舞台挨拶で、ぼくが『最後の乗客』のストーリーに漠然と感じていた、あることが、ハッキリと像を結びました。
それは、被災者それぞれが持つ経験の連なり(歴史といってもいい)と、心の多様性です。
『最後の乗客』は一方的に震災の悲劇を押し付ける映画ではありませんでした。
被災で心を痛めた人々や、愛するものを失った人々はたくさんいます。
その人たち全てにできる限り寄り添おう、、、というパワーがこの映画にはあるように思えました。
『最後の乗客』主役の岩田華怜さんのこと
『最後の乗客』ではAKB48の元メンバー岩田華怜(いわた かれん)さんがドライバーの娘の役をしています。(ネタバレやん…これくらいなら許されるかな…)
岩田さんは宮城県出身。舞台挨拶でもタレント時代にスポットライトを浴び続けていたせいでしょうか、オーラが光ってました。
もともと地元仙台では子どもタレントが芸能活動のスタートだったようです。AKB48オーディションに合格直後に、実家のある仙台で東日本大震災を体験しています。
そのことを考えると、この映画への出演は必然だったのかもしれません。
どんな映画に出ていたんだろうとウィキを調べましたところ、この映画と同じく宮城県を舞台にした時代劇『殿、利息でござる』にも出演していました。『殿、利息でござる』はぼくも見ました。面白い映画でした。が、岩田華怜さんには気がつかなかった。。。
『最後の乗客』気になった俳優・冨家ノリマサさんのこと
『最後の乗客』の試写会が終わりホールを出る時、監督と俳優さんが、ぼくらを見送ってくれました。皆さんは暖かな空気をまとっていましたが、中でも印象に強く残ったのが、主人公のドライバー役を演じた冨家ノリマサ(ふけ のりまさ)さん。
Wikipediaを調べたら、テレビドラマでは「おしん」や「ひらり」、「水戸黄門」シリーズや「大岡越前」シリーズ、映画では「エトロフ遙かなり」「ストックホルムの密使」をはじめとして、それはすごい本数のドラマに出演しています。プロ中のプロですね。キャリアが長い役者さんです。Wikipediaの冨家さんのページを貼っておきます。
舞台挨拶でも、「震災をテーマにした映画に出るという事実を重く考えて引き受けた」とおっしゃっていましたが、会場から出る時に二言三言、言葉を交わし握手することができました。
その時の綺麗な瞳と笑顔が不思議と心に刻まれました。
そして、ビルを出て、日差しのもと、こう思いました。
「近い将来、配給先が決まってほしいな…」
そう、「最後の乗客」が「誰だったのか」を再び確かめるためにも、繰り返して観てみたい映画となったのです。
この映画、上映の機会が増えて欲しいので、以下に公式サイトをアップしておきます。https://lastpassenger.net/#2021
(仙台上映が2023年3月に決定しました=2023年2月時点情報です)
堀江貴監督へのインタビューが『Newsweek』日本版で掲載
『Newsweek』日本版で堀江貴監督インタビューが掲載されていますので、ご覧ください。
堀江貴監督の今に至るまでのことや、岩田華怜さん出演のいきさつ、劇中で重要な小道具として登場する「おにぎり」についても語っていますよ。必見です。
『最後の乗客』映画祭での受賞・ノミネート歴
世界中の映画祭で評価が高まっています。
以下にノミネート並びに受賞データを記載しておきます。
・サンディエゴ芸術映画祭:「最優秀インデペンデント映画賞」受賞
・モントリオール・インデペンデント映画祭:「最優秀フィクション映画」
・カンヌ世界映画祭:「最優秀インディペンデント映画/低予算部門」ファイナリスト
・ボーデン・インターナショナル映画祭:「初長編映画」ノミネート
『最後の乗客』映画のキーになる震災と幽霊
被災地での幽霊話は多いと聞きます。
これまでに何度か新聞だったか雑誌だったかの記事で、海岸方面を流しているタクシードライバーの幽霊話を読んだことがあります。
ちなみにいくつかの出版物にもまとめられています。
興味のある方は、「東日本大震災 幽霊 本」でググると出てきます。電子書籍で読めるものもあります。どれも興味本位で描かれたものではないですので、興味のある方はググってみてください。
僕は仙台に住まいがありますので、何度も被災地に行っています。車なら40分も走れば津波でやられた地域にたどり着きます。
が、霊感が弱いせいか一度もそれらしい体験をしたことはありません。
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