映画『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』あらすじ・感想・評価レビュー。配信~上映館情報(2023/6月現在)

アニメ

世界中で愛されているフランスの児童書『プチ·ニコラ』。誰もがその絵を見れば「あ!あのキャラ!」と知っているニコラがアニメになりました。原作はジャン=ジャック·サンペとルネ·ゴシラ。アニメといっても見慣れたジャパニメーションとは一線画した、水彩画が動くようなフランス的空気をまとった作品です。元アニメーターであり、水彩画家でもあるmorinokumaがレビューします。はてさて、『プチ·ニコラ』はスクリーンの中でどんなイタズラをしてくれたのでしょうか。原題『Le Petit Nicolas』2022年 フランス映画

『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』あらすじは?

時代は1950年代。パリに暮らす二人のアーティスト、作家のゴシニとイラストレーターのサンペ。意気投合した2人は、ヤンチャな男の子キャラクター『ニコラ』を生み出す。

家族のスラップスティック、学校でのイタズラな日々、ステキな隣の女の子への淡い想い。

パリの柔らかな光の中、プチ·ニコラのコミックストーリーと同時に、サンペとゴシニの実際の伝記エピソードがアニメーションで織り込まれる。 いつしかサンペとゴシニの暗い過去をも知るニコラ。

3人のキャラクターがさまざまのエピソードを数珠のように繋いでいく…。

そんなストーリーです。

大人が忘れかけていた子供時代の「宝石のような日々」が、国境越えて、切なくも甦ってきます。

『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』ぼくはこんな気持ちで劇場を後にした~感想レビュー

最初に言ってしまいます。ひとこと、「超」が三つつくくらい、ぼくには「素敵な作品」でした。劇場を出た後、小雨がぱらついていたけど、公園のベンチに座って、ぼーっと余韻に浸っていました。それくらい良かった。

スマイルをそれはたくさんもらえました。「わははスマイル」というよりも、登場する子供たちが愛しくなって、じわ~っとあふれるスマイルです。

そしてなぜか涙が

アニメーションを観て涙が流れたことは、過去ウン十年、ありません。制作に携わっていたアニメーター時代、自分の苦労した作品見たときも、そんな体験はなかった。今回は不覚にも?二箇所のとあるシーンで涙があふれました。

おっと、あまり余韻に浸っているといけません、冷静になって、あれこれ感想をレビューしていきます。

『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』ストーリーを支える2つの織り糸

この映画は、よくある原作本そのまんまアニメ化作品ではありません。

実在の原作者2人・ジャン=ジャック·サンペとルネ·ゴシラをアニメキャラクターとして登場させ、「2人&ニコラ」のオリジナルストーリーとなっています。ニコラワールドのかわいくも小憎らしくもあるフレンチスパイスを十分効かせて、2本の糸を撚り合わせたような、純粋に一本の映画作品として昇華させた90分です。

物語の一つの撚り糸は、サンペとゴシラ伝奇的エピソードです。『プチ·ニコラ』がスタートしたのは1955年。当然彼らは戦前(第二次世界大戦)前の生まれです。激動の時代に生きてきたわけです。そんな過去が映画の中で描かれます。と書くと「ヘビーなの?」と思われそうですが、そこは脚本の良さ。決して歴史説教にかたむくことなく、アニメ世界の中で、程よくしみじみ表現されています。

ナチスドイツに占領されていた時代のパリエピソードも出てきます。ユダヤ人強制収容所の話にも至ります。しかし、決してニコラワールドを崩さずに織り込んでいるところは、監督の技量でしょう。

2本目の糸は、もちろんニコラが仲間たちや学校、野原や臨海学校で駆け回る世界です。

こちらの糸も、ニコラの脇を固めるクラスメートや先生、両親のキャラクター性格造形がきちっとなされているので、はちゃめちゃシーンであってもクスクス笑わせます。

そしてこの「2本の糸」をニコラがむすびつけるのです。サンペとゴシラに話しかけ、さりげなく伝記エピソードに引っ張って行ったり、ニコラが見ているテレビの中にサンペとゴシラが登場したり。その絡ませ方もよく考えられています。なのでドラマが二つの世界を行ったり来たりしても、違和感が全然なく話もつまづかない。緩急自在なお話に最後まで楽しめました。

『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』素敵な絵作り

背景美術がまさにエスプリ利いたパリ表現です。ニコラの原作の線画をイメージしたドローイングで描かれたパリのイラストに使われている絵の具は、透明水彩です。仕事柄つい穴が開くほど見てしまう背景ですが、もちろんバシバシデジタル表現は加えているのですが、ベースの基本色にはデジタルじゃなく、ホンモノの透明水彩を使っているのではないか、と思います。

その具合がとっても気持ち良い。(間違っていたらごめんなさい)

「そういえば、日本のアニメでも似たトーンの、あったなそうそう、『となりの山田くん』とか、『かぐや姫』がそうだった」

と思っていたところ、パンフレットの監督インタビューを読んだら、ありました。

「日本アニメが好きで、高畑勲監督の『となりの山田くん』に影響を受けた」

納得です。とはいえ、色彩はやはりフランスのそれ。受けた影響を見事に自分たちのモノにしていました。

フランスの色って書きましたが、色って、国によって違います。ぼくが使っている絵の具は実はフランスで作られている画材メーカー「セヌリエ」のものですが、例えば「ロイヤルブルー」という絵の具でも、イギリスで作られた「ロイヤルブルー色」とは、同じネーミングとは思えないほどに違うのです。

このことは実際に現地に行き、意識して街のあちこちに使われている「色」を見ると、よく理解できます。

話がそれましたが、『プチ·ニコラ』の映画の色合いは、まさしくフランスでフランス人が塗った色です。全編通した色合いにフランスが溢れている、そう感じました。

『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』輝く音楽とさりげなくミュージカルエッセンス

音楽が、ほぼ全編を飾っていますが、ジャズをはじめ、なんていうジャンルかわからないけど、いかにもパリ街角的音楽(誰か教えて)がストーリーのテンポを作っています。全然邪魔してません。

その上、ミュージカル映画「雨に歌えば」へのオマージュシーンもあったり、サンぺがタップを踏踏んだりのミュージカルエッセンスも素敵でした。

決して最近流行りのCGダンスアニメではなく、「手描きの原画動画で昔ながらのアニメの絵作り」をしています。

ぼくはそのシーンで、なぜか、ボロボロと涙が。素敵なジャスの音楽とサンぺのダンス、そしていい意味で素朴なアニメトーンに泣けてしょうがありませんでした。

『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』縦横無尽なメタモルフォーゼ

以前、アニメ映画『木を植えた男』を取り上げたときも書きましたが、アニメの得意技と魅力は、シーン丸ごとが変化していく「メタモルフォーゼ」にもあります。

『プチ·ニコラ』でも、大好きな赤いヒコーキをプレゼントされた「ニコラの空にも舞い上がるような気持ち」を、メタモルフォーゼを駆使して表現しています。

「子供が持っている自由な創造世界=どこまでも広がってゆく想像世界」を見事に表現していました。ぼくの2粒目の涙は、実はそのシーンでした。

CGをぼくは決して否定しません。このアニメでももちろん使われているでしょう。

それでも、クリエイターが想像力を駆使してシーンを作り上げる手作業での「メタモルフォーゼ」は心を動かします。「すごいなあ」とは違う心への働きかけです。

忘れかけていた子供時代の「あるよ、そうそう、そうだった!」の気持ちを手作業がぐいぐいと揺さぶった故の涙だったと思います。

『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』のセリフの輝き

「ぼくはぼく」というセリフがニコラから発せられます。

ちびっこが「ぼくはぼく」ということはこまっしゃくれて聞こえますが、この言葉、宝物のように光っていました。

ぼくの好きな絵本に『ペツェッティーノ』という絵本があります。(作者はレオ·レオーニ)何度も読み返している絵本です。その本も締めくくりは、「ぼくはぼくなんだ」というシンプルな言葉で終わります。

当たり前にような「ぼくはぼく」という言葉。実はこの映画の中で深い意味を持っているようにぼくは思います。

劇中、作家の二人の過去を追う伝記シーンがあります。作家の過去実話をアニメに置き換えているシーンですが、彼らの表現者としての駆け出し時代は、ボツの連続、連戦連敗が続き、決して輝かしいスタートではありませんでした。

それでもイラストレーターとして描き、作家として書き続けた。

何がその原動力だったのか?

多分それは「ぼくはぼく」というシンプルな言葉に支えられていたからに違いない。そう感じました。

アニメの中にそっと忍ばした哲学的な言葉は、ぼくにとっても忘れられない言葉となりました。いや、誰にとっても前に進むための魔法の言葉になると思っています。

『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』ぼくの評価

こどもの頃の自分と会えると同時に、感じる心を大切にしたくなる映画です。

ぼくの評価、10点/10点満点です。

『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』スタッフについてメモ

監督はアマンディーヌ·フルドンとバンジャマン·バスブルの共同監督です。

アマンディーヌ·フルドンは絵画を学び、その後映画の世界へ進んだ女性です。もう一人のバンジャマン·バスブルはアニメ業界で活躍して多数賞をゲットしています。

本作品では編集もバンジャマン·バスブル。脚本は二人で手がけています。

日本語吹き替え版の声優を以下紹介しておきます。

堀内賢雄(ゴシニ)・小野大輔(サンペ)・小市眞琴(ニコラ)・井上喜久子(ママ)・三上哲(パパ)

『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』の映画祭出品歴·受賞歴

キラ星のごとくの映画祭出品受賞歴です。

2022

カンヌ映画祭正式出品

アヌシー国際アニメーション映画祭·クリスタル賞(最高賞)

プチョン国際アニメーション映画祭コンペティション部門観客賞

ケンブリッジ映画祭観客賞

ラ·ボール映画&映画音楽祭最優秀音楽賞

GKIDSアニメーション映画祭グランプリ

ヴォワ·ドゥ·エトワール国際映画祭最優秀音楽賞、審査員特別賞

2023

リュミェール·アワードアニメーション作品賞

【ノミネート】

2022

ヨーロピアン·フィルム·アワードノミネート(ヨーロピアン長編アニメーション部門)

2023

セザール賞長編アニメ作品賞

アニー賞長編アニメインディ作品賞

[映画祭出品]

2022

シルク·ロード国際映画祭中国ノミネート長編アニメーション部門、

ラ·ポール映画&映画音楽祭、プチョン国際アニメーション映画祭、

アニマクション映画祭、チューリッヒ映画祭、GKIDSアニメーション映画祭、

シネマニア·フレンチ映画祭モントリオール、アニメスト映画祭、

ヒホン国際映画祭、ナミュール国際フランコフォニー映画祭

2023

新潟国際アニメーション映画祭

『プチ·ニコラ パリがくれた幸せ』配信・上映映画館情報(2023年6月現在)

2023年6月現在、まだ映画館で上映中のため配信されていません。

上映映画館の情報は、映画.comで調べられました。いかにURLを貼っておきます。(2023年6月現在)https://eiga.com/movie/99034/theater/




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