絵本がリアルな描写のコンピューターグラフィックスで再現された映画、それが『ポーラーエクスプレス』です。クリス・ヴァン・オールズバーグの絵本『急行「北極号」』が原作です。
クリス・ヴァン・オールズバーグの美しい色鉛筆トーンの表紙を本屋さんで見て知っている方も多いと思います。ぼくもその一人ですが、残念ながら原作は読んでいません。美しい絵本で有名ですが、なぜか映画の口コミでは「怖い」とか「気持ち悪い」という評も見受けられるのが不思議です。
なので今回のレビューは、本当に怖いのか?気持ち悪いのか?へのぼくなりの感想も入れながら、純粋に映画としての『ポーラーエクスプレス』をレビューしてみます。(絵本原作者クリス・ヴァン・オールズバーグは制作総指揮としてクレジットされています)
『ポーラーエクスプレス』スタッフ・キャスト解説
監督:ロバート・ゼメキス
原作・製作総指揮/クリス・ヴァン・オールズバーグ
キャスト&声優(カッコ内は日本語版声優)
父親、車掌、ホーボー、サンタクロース:トム・ハンクス(唐沢寿明)
ヒーロー・ボーイ : ジョシュ・ハッチャーソン(山本隆平)
ヒーロー・ガール:ノーナ・ゲイ(三村ゆうな)
ロンリー・ボーイ:ピーター・スコラリ(上村祐翔)
知ったかぶりっ子:エディ・ディーゼン(田中恭兵)
スチーマー:マイケル・ジェッター(屋良有作)
スモーキー:マイケル・ジェッター(中尾隆聖)
エルフ隊長:チャールズ・フライシャー(浜田宏昭)
この映画は、車掌を演じたトム・ハンクスはじめ俳優の演技をモーションキャプチャで撮影、そのデータをレンダリングしてCGに変えています。だからCGとはいえ、キャストの演技は実際に役者が演じたものです。
音楽をアラン・シルヴェストリが手がけています。代表作が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『ロマンシングストーン秘宝の谷』『フォレスト・ガンプ/一期一会』、『アベンジャーズ』など超売れっ子作家ですね。
『ポーラーエクスプレス』は怖い?気持ち悪い?
『ポーラーエクスプレス』は、全編CGのクリスマス映画です。
口コミを見ると、「CGが気持ち悪い」とか、「こわい」という声も見受けられます。
実際、どうでしょうか?
確かに2024年現在のCGに慣れた目で見ると、『ポーラーエクスプレス』のCGは、どこかCG独特のヌメリ感があります。
そのヌメリ感が「怖い」「気持ち悪い」という口コミとして上がっているように思えます。
しかし、ここで考えてみましょう。
『ポーラーエクスプレス』が制作された年は、この記事を書いている2024年の20年前=2004年です。
確かに今見ると微妙なリアル感です。「ただいま進化中」の感じを受けました。
ですが、この20年、CG技術は格段どころか超絶進化しています。
だから、今にそのCGを見るとでも、当時は最高CGスペックだったはずです。
今見る時は、「あくまで20年一昔前のCG技術だ」と理解して観ないといけませんよね。
ぼくは、「怖い」「気持ち悪い」と思うよりも、「当時のCGスタッフは、この映画でギリギリ限界に挑んだんだな。すごいな…」と感心して観ていました。
当時の最先端CGだと理解してみてあげること、大事だと思います。
そう考えて観ることで、全編、ハラハラドキドキクリスマスマジックが楽しめると思います。
では、どんな映画かわかりやすい予告編をどうぞ。
『ポーラーエクスプレス』予告編
『ポーラーエクスプレス』あらすじは?
それでは、まず、簡単にあらすじを書いておきましょう。
+ + +
主人公はサンタの存在を信じられなくなった少年だ。
夜、少年は不思議な音に外に出ると、家の前にはあろうことか蒸気機関車が停車している。
機関車は『ポーラー・エクスプレス号」
その蒸気機関車に続く客車には、多数の少年少女が乗っていた。
『ポーラー・エクスプレス号」の行き先は北極だ。
謎の車掌の存在、そして屋根の上に暮らす無賃乗車の幽霊とのやりとり、さらには冒険。
ポーラー・エクスプレス号が辿り着いた最終駅はサンタの国だった。
スリルとファンタジーに満ちた旅を通し、少年たちは何を得るのだろう???
というあらすじです。
誰もが夢見る「サンタの国」が、クライマックスに登場しますよ。
『ポーラーエクスプレス』感想です
素晴らしいカメラアングルの連続
ぼくが最も惹きつけられたのは、ワンカットワンカットこだわりぬいた、カメラアングルです。
主人公の子供部屋をうつしだすシーンのアングルは、ハデさではないんですけど「このアングル以外にないよね」と納得させる絶妙アングルの連続です。
「ステキ!」と思いました。
CGなので、実写の映画とは違って、アングル自由自在でしょう。
とはいえ、演出する人間の頭の中に「カットで何を伝えたいか?」が元々なければつまらなくなってしまうのが、「カメラアングル」です。
全編通して、ストーリーを効果的に見せるアングル・構図の連打は素晴らしいものがありました。
ぼくが受け取った映画のメッセージ
映画にはどんな映画であっても、制作者のメッセージがありますよね。
それを観客が受け取った時、「感動」という心の動きが生まれるわけですよね。
では映画『ポーラーエクスプレス』から、ぼくはどんなメッセージを受け取ったのかを話します。
それは、
「クリスマスの奇跡は、決してクリスマスに限ったことではなく、日々にも満ちている」
というメッセージでした。
それをぼくにくれたのは、以下のたった一つのシーンです。
客車から風で飛び去った乗車券が、動物たちの手や口を経て偶然重なるが如く手元に戻ってくる短いシーンです。
そんなマジカルシーンからぼくは「人生って実際、バトンリレーのようなマジックに満ちているんだ」と受け取ったのでした。
もちろん、誰もがそのシーンからぼくが感じたようなメッセージを受け取るとは思いません。
映画の楽しみの一つは、見る側それぞれが自由に感度を合わせて良いんです。
ぼくはそう思います。
おもちゃ箱ひっくり返したような映画
メッセージのことはさておいて、全編息つぐ暇がないような仕掛けがいっぱいです。
まるでおもちゃ箱をひっくり返したみたいな感じですよ。
でも…映画としては残念感が…
ただ、純粋に映画として観るとぼくは物足りなさ…というか残念感が否めませんでした。
原作アリなので、どこまで原作絵本に忠実なのか分かりません。
残念ながらぼくには、この映画が「一体何をやりたかったのか?」わかりませんでした。
おっと、原作を否定しているわけではありません。あくまで映画としての『ポーラーエクスプレス』のことです。
全体に漂うチグハグ感
オープニング、クリスマスを楽しみにしている主人公が謎の機関車に乗り込みます。
しばらくすると客車内で、CGタップミュージカルが始まります。
このシーンはなかなか素晴らしい出来です。
そのミュージカルシーンを観てぼくはこう思いました。
「そうか、この映画は、生身の人間ではできない踊りをCGで魅せる、『CGミュージカルムービー』なんだな。そういえばCGミュージカルなんてみたことないしな…」
…と思って見続けると、ミュージカルタッチのシーンはそれ以降あまり出てこず、ミュージカルムービーでもない。。。
あちこちに仕組まれているハラハラ感を持たせるシーンも、ハラハラはするけどハラハラさせるだけ…ストーリーの必然性が感じられない。
むむむ、と困り果ててしまいました。
客車の屋根上でのシーンでは
「アクション系なのかな、、、?(クリスマスだからそんなはずないけど)」と思いきや、やっぱりそこまで徹底していない。
かと思えば、ポーラーエクスプレスが氷上でスケーティングロコモティブと化し、また別のシーンでも遊園地アトラクションのようなジェットコースターシーンが長々続いたり。
「この映画はどこかのアトラクションとタイアップ企画なのだろうか?」と、首を傾げてしまうほど。
観客をハラハラさせようという目論みはわかるんですけど、この映画がどんな歌い踊るミュージカルなのか、スリルでハラハラ「トーン」で攻めようか?という大切な柱みたいなのが伝わってこなかったのです。
映画全編通して、「子供はこういう映画を喜ぶはずだ!!」と、大人が一方的サービス精神で作った感が強くて、ぼくはどうも肌が合わなかったです。。
残念だった子供の吹き替え
ぼくが観たのは吹き替え版でしたが、吹き替えを子供の俳優が吹き替えしたのかな?
棒読みに近い主人公たち子供のセリフに、ぼくはいまひとつ『ポーラーエクスプレス』に乗り切れませんでした。
吹き替えに子供を起用したのは、もちろんオトナの事情ですから、吹き替えした子供達にはなんの罪もありませんが。
『ポーラーエクスプレス』、ぼくの評価は?
映画『ポーラーエクスプレス』は、ぼくにはチグハグ感が強く感じられて映画に没頭できず、残念、二つ星と半分でした。
クリスマスものとしては良いのかもしれません。が、純粋に映画としてのぼくの評価は今まで見たクリスマス映画の中では残念ムービーとなりました。、
でもね、ぼくのそんな感想は、あくまで映画をあーだこーだと語りたいオトナの感想です。
小さな子供は純粋に楽しんでくれるでしょう。クリスマスに幼い子供たちと一緒に見るには、気まずく思うところもなく、ファミリーでしっかり楽しめる映画だと思いますよ。
『ポーラーエクスプレス』スタッフキャスト
『ポーラーエクスプレス』配信は?
以下サービスで配信、レンタルできます
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