『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』ネタバレ考察・あらすじ・評価まで〜元・鬼太郎アニメーターがレビュー

スリラー・SF・アクション

こんにちは!映画好き絵描きのタクです。今回レビューする映画は、劇場公開アニメ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』です。

この映画の見どころは、人気アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』の鬼太郎が、いったいどのようにしてこの世に誕生したか?が明かされるところにあります。



鬼太郎は時代を超えて新シリーズが作られていますが、意外にも鬼太郎誕生エピソードをドラマ化した作品は、過去なかったんですね。

実は「ムービーダイアリーズ」運営人のぼくは、かつてアニメーターを仕事にしていました。

そして、何を隠そう動画マン・原画マンスタッフとして初参加したアニメが、『ゲゲゲの鬼太郎』第3期のテレビシリーズでした。

ぼく自身の一表現者としてのあゆみは、『ゲゲゲの鬼太郎』から始まったといってもよいです。

『ゲゲゲの鬼太郎』がアニメとして世に送り出されてから55年、原作者の水木しげる生誕100年という節目です。

ぼく自身の「鬼太郎メモリーズ」に新たな1ページとなったかどうか?『鬼太郎誕生・ゲゲゲの謎』をレビューしてみます。



『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』予告編




『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』あらすじは?

プロローグ

一人の男が森の中、何かを探して彷徨っている。

濃い霧の中を歩くその男は編集者らしい。

男はその森で怪奇な出来事に遭遇、鬼太郎と猫娘に助けられる。

迷い込んだのは廃村、かつて哭倉村と呼ばれていた集落だ。

そこは今を遡る70年前に、とある一族の惨劇が起こった村だった。

龍賀家の一族

時は昭和31年。

主人公の水木は、勤務する血液銀行の社長から、哭倉村に行くよう社命をうける。

社命は、日本の政治、経済、製薬業界に君臨していた龍賀家の当主龍賀時貞の葬儀参列、そして次の当主にコネを持つことだ。

水木は山奥の哭倉村に辿り着く。

葬儀で喪に伏す村に満ちているのは、よそ者を寄せ付けない空気。

水木は、次の当主になるだろうと目星をつけていた、龍賀克典に取り入る。

克典は時貞の長女乙米の夫であり、龍賀製薬の社長でもある。

克典が新当主に決まれば、水木の血液銀行は安泰なのだ。

血液銀行が龍賀製薬になぜそれほどまでにコネをつけたいのか?

理由は龍賀製薬がつくる謎の血液製剤「M」の存在だった。

血液製剤「M」を打たれた人間は疲れを覚えない。そんな謎の製剤だ。

龍賀家の親類縁者が集まる席上、弁護士が遺言を読み上げる。

選ばれた新当主は克典ではなく今までほとんど表に出ることのなかった奇人の長男に時麻呂。

発表の席は、その発表に大混乱になる。

鬼太郎の父登場

社命は潰え、呆然とする水木。

そこに不思議な風体の一人の男=鬼太郎の父=が、龍賀家の使用人らに捕まえられる。

鬼太郎の父がリンチに合いそうになった時、水木は助けることになる。

鬼太郎の父の素性。それはなんと幽霊族の最後の生き残りだった。

鬼太郎父は、行方不明となった妻を探して哭倉村にたどり着いたのだ。

鬼太郎父と水木は、不思議な運命の糸に絡めとられるように、哭倉村の怨恨渦巻く争いの中に巻き込まれてゆく。

恐るべき仕打ち

新当主の時麻呂が何者かに殺される。

続いて次女に降りかかる凄惨な死。

一体村には何が起こっているのか?

龍賀家の幽霊族に対する恐るべき仕打ちが、明らかになってゆく。

鬼太郎の父は、妻を探し当て、助けることができるのか?

また、水木は村から生きて抜け出すことができるのだろうか?

….というあらすじです。

クライマックスは、鬼太郎がどのようないきさつでこの世に生を受けたのか?

その謎を解き明かします。



エンドロール席立ち禁止

エンドロールも、しっかりストーリーの一部になっています。

途中で席立ちは厳禁ですよ。ラストまでご覧ください。



『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』感想です

新たな世界を作り上げた脚本に拍手

「ん?名のある一族の後継者が謎の死を遂げる??もしかしてめんどくさい推理系の脚本かな?」と最初は思いましたが、すっと入っていけるストーリー展開にマルです。

横溝正史「犬神家の一族」的おどろおどろしい雰囲気はありますが、そこはアニメワールドレシピで、程よい具合に料理していました。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の素晴らしかった点は、水木しげる作品の「鬼太郎誕生エピソード」オリジナルを、丁寧に別ストーリーに膨らませた点にあります。

水木しげるオリジナルをリスペクトしつつ、ガッチリとした新オリジナルワールドを作り上げています。

一部、苦笑いしてしまうようなベタベタなセリフまわしもあったりします。

例えば、鼻緒が切れた女性の下駄を、主人公水木が直してあげるシーン。そのシーンは、過去の名画へのオマージュだろうな、とぼくは思いました。(若い人には通じるかどうかは別だけど…)

きちんと作られた新しい世界観の前に、そんなベタセリフは消えてしまいました。



強烈な社会批判が冴える

ネタバレになりますがエンドクレジットでは、水木しげる漫画作品の第一話が上手に使用されています。

映画では、水木漫画第一話の鬼太郎誕生エピソード前半&ラストを使いつつ、その間に新しいドラマ=この映画の柱となる新ストーリーをすえています。

その新しいドラマを水木漫画第一話とうま〜く繋ぐことで映画としての奥行きが生まれ、大成功しています。

成功の秘訣は、水木の戦争体験をうまく絡めたこと。そして「血液製剤M」という謎の薬を、今の社会の業=ひずみにオーバーラップさせたことです。

その2つがドラマを映画を「一枚のタペストリー」として完成させています。

では『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』というタペストリーには、一体どんな絵が織り込まれていたのか?

それは、「戦場で、社会で、今もなお、人間を捨てコマのように扱う日本の社会へ対するパワフルなアンチ」です。

また、劇中においてストーリーの核の一つとなっているのは「人間と幽霊族の対立」でもありますが、それは「支配する側=富裕層と支配される側=市井の人々の暗喩」といってもよいでしょう。



鬼太郎キャラクターは時代が作るもの

鬼太郎も猫娘、そしてネズミ男は昔からのお馴染みキャラですが、新キャラクターとして創り上げられた「鬼太郎父=ゲゲ男」のキャラ造形がドンピシャでした。違和感全然なし。

鬼太郎や猫娘のキャラ造形がオールドファンには「かっこよすぎ」る感はあります。が、でもまあ、そんなものは、埋め切れない世代ギャップというものですから全然ヨイのです。キャラは時代とともに変わるもの。目くじら立てちゃ老害になります。

かつてぼくが原画マンとして関わっていた1986年第3期でも、鬼太郎アニメにはいろんな意見が聞こえてきました。「ヒーローすぎる」とか「可愛い女の子出しちゃいかんだろ」「おどろおどろしさがないよ」…なんて意見が。

で、当時でさえ、ぼくは作画しながらこう思っていました。

「鬼太郎は、10年おきにその時代が作っていくキャラクターなんだろうなあ」と。

ちなみにですね、水木しげる原作の漫画本での鬼太郎父は、ミイラ男のような顔はドロッとしたお化けそのもの。母も幽霊画そのものといったホラー度高しのキャラクターです。「墓場の鬼太郎 父」でググると出てきますよ。

そんな鬼太郎父母キャラを今回の映画で新キャラに転換したのは、見事というしかありませんでした。



『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』ぼくの評価は、星4つ

泣けました。ストーリーの枝葉もきちんと糸を結び、その結び目に涙でした。

ラスト、鬼太郎登場シーンでは、思わずアニメーター時代がフラッシュバック、涙が滲みました。ぼくの中では星4つ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎でした。

星ひとつ欠けの理由

星ひとつ及ばなかった理由を書いておきます。

一つは、水木の戦争時代の体験談をもう少し掘り下げて欲しかったこと。

水木しげるの従軍体験をエピソードとして盛り込んでいてそれはそれでよかったです。

しかし水木しげるの従軍漫画を以前読んで感動していたぼくは、「戦争」への水木しげるのアンチ戦争の想いをもっと掘り下げてくれるかな、と余計な期待を抱いたところがありました。

「水木従軍記」の漫画には、ほんとに漫画とは思えないパワフルな反戦メッセージが込められていますので…。

といっても、これはあくまで個人的な想いですね。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』で初めて水木しげるの反戦思想に触れた方には、木しげるの戦争体験のフィードバックは、これくらいでよかったのでしょう。

ぼくの「水木反戦メッセージ」への思い入れゆえに、物足りなさを感じただけだと思います。

…と書きましたが、そんな点は、他の人にはどうだって良いこと!です。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は55年前に生まれた鬼太郎たちが、時代を超えてくことを証明しました。

思いっきり、とことんオリジナリティあふれる「新たな鬼太郎ワールド」の「誕生」を楽しんで欲しいと思います。



『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』配信先

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』はPrime Videoで独占配信中です。(2024年5月現在)

配信決まったらお知らせします。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』スタッフ・キャスト(声優)

原作/水木しげる

キャスト

鬼太郎の父/関俊彦

水木/木内秀信

紺質沙代/種崎敦美

龍賀時弥/小林由美子

龍賀時貞/白烏哲

龍賀時1ft 飛田展男

龍賀孝三中井和哉

龍賀乙/米沢海陽子

龍賀克典/山路和弘

龍賀丙/皆口裕子

長田庚子/釘宮理恵

長田幻治/石川彰

ねずみ男/古川 登志夫

ねこ娘/庄司宇芽香

山田/松風雅也

ゲゲゲの鬼太郎/沢城みゆき

目玉おやじ/野沢雅子

スタッフ

監督/古賀豪

脚本/吉野弘幸

音楽/井憲次

キャラククーデザイン/谷田部透湖

美術監骨/市岡茉衣

色彩設計/横山さよ子

撮影監督/石山智之







コメント

  1. くさかつとむ より:

    昨年12月にこの映画の公開時に劇場で鑑賞。その面白さに立て続けに2度劇場で見ました。
    この作品を観る少し前に「ゴジラマイナスワン」を観て、そのすごい雑な戦争と戦後の描き方に心底がっかりしていたので、より胸に響いたのかもしれません。
    まずこの映画が始まってすぐに登場人物がやたらに煙草を吸う。汽車の車中で幼い子供が咳き込もうとも、かまわずもくもくと吸う、しっかり昭和30年代の雰囲気を出しているところから、ややこれは違うぞ、と姿勢を正して見始めました(ちょっと見方が変ですけど、ゴジラマイナスワンの妙にデオドランドされた戦後が嫌だったのです)
    そして鬼哭村を取り巻く山々の自然の描写の美しさに反して、旧弊な家の中で繰り広げられる陰惨な事件の対比、それを解決していくゲゲ郎と水木のバディものとしての面白さも十分でとても満足。多くの方が指摘してますが、横溝正史の犬神家の一族みたいな雰囲気もそうなのですが、わたしは京極夏彦の「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」「狂骨の夢」あたりも思い起こさせてそこも妙でした。

    最後のバトルシーンは、虐げられた狂骨(幽霊族)の血を吸って怪しく美しく咲き乱れる桜の下で行われるのですが、これは戦争によって太った悪(あるいは戦争に対して何の責任も取らない無責任な者たち)の暗喩にもなっていると思います。ちょっと話はそれるのですが、水木の勤めている血液銀行は1950年~60年代にかけて実際にあったもので、民間で有名なのは日本ブラッドバンク、これは今のミドリ十字(悪魔の飽食で森村誠一が描いた731部隊の将校が設立し、後年薬害エイズ禍を引き起こす会社です)になっています。と考えるとこの作品の最後の血と桜(搾取されるものと日本国)と符合するような気がします(深読みが過ぎるかも知れませんけど)

    「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を昨年暮れに観て痛く感心したのですが、その直後に「劇場版 窓ぎわのトットちゃん」というさらなる傑作に出会えました。これはトットちゃんという少女から見た「戦争」。戦争というものがどう日常を侵食していくかが鋭く描かれていた作品で、これもおすすめなのです。

    • くさかつとむ より:

      すいません、村の名前間違えてました(-_-;)

      • タク タク より:

        くさかつとむさん、いつも深い考察のコメントをありがとうございます。
        戦後の空気の描き方、見事だったと僕も感じています。

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