映画『ワイルドギース』タイトルの意味から感想レビュー・ネタバレありのあらすじ・音楽・キャストまで

スリラー・SF・アクション

傭兵をテーマにした映画って、昔いくつか撮られていました。この映画は1979年の作品ですが、当時往年のスター俳優がずらりの戦争アクション映画です。当時映画館で観、高校生のぼくはハマった映画でした。Prime Videoで配信されていたので、再観劇。なるほど、こういう映画だったんだとなりました。。あらすじはラストのまとめています。 今回、「傭兵」の歴史にも触れつつ、傭兵戦争映画『ワイルドギース』の魅力を探ってみます。

いつもは公式予告編をここで紹介しますが、以下のサントラクリップの方が、公式予告編よりも映画のストーリーを伝えていると思います(ていうか、ほぼネタバレ)。なので、サントラクリップ『WILD GEESE OVERTURE』をあらすじ紹介に替えて導入にします。

映画の話の前に~『ワイルドギース』ってどういう意味?

『ワイルドギース』(雁の群れ)という言葉は、十七世紀にアイルランドの傭兵部隊が自分たちをそう呼んだことに由来します。雁の飛ぶその隊列は整然としていますが、落伍した鳥は容赦なく見捨てられていく。そんな雁たちを空に見あげたアイルランドの傭兵が部隊名にしたことが、傭兵を指す言葉となったようです。

「傭兵」を辞書でひくと「外国勢力に奉仕する職業的な兵士」 と出ています。

平たく言えば、

(1)戦う国では彼は外国人である。

(2)報酬は、その国の政府か、関係している誰か(企業もあり)により支払われる。

(3)政治的、イデオロギー的理由でその国に魅力を感じている。

といった条項を満たす兵士=となります。

傭兵の歴史は文明の発生と同じくらい古く、アテネのために戦ったクセノフォンの一万人部隊は傭兵部隊でした。また、シーザーの軍隊も大多数が傭兵でした。(余談ですが、ちなみに兵士の英語Solderの語源は「solt= 塩をもらう人」大昔、兵士の報酬は塩だったことに由来すると言います。)

今、戦争が続いているウクライナで「外人部隊」「義勇兵」と呼ばれている各国から自分たちの意思で参戦している兵士も、いわば広義の意味で傭兵です。

この映画『ワイルド・ギース』の軍事願問を、かつて傭兵部隊を率いていた・マイク・ホア大佐が担当していますが、こう言っていると言います。「我々が戦ったのは金のためだけではなかった」。

『ワイルドギース』感想レビュー

〜イギリス好きにはたまらないかも。

『ワイルドギース』の舞台はほぼアフリカですが、イギリス映画ですので、ロンドン、ロンドン郊外でもなされています。

変な話ですが、イギリス好きには、ドアのカギや部屋の作り、窓やカーテンといったブリティッシュな空気にニヤッとすると思います。というか、英国好きなぼくは、にやけてみていました。

〜英国冒険小説好きならニヤニヤする映画。

『ワイルドギース』は冒険活劇戦争映画です。小説ジャンルに冒険小説というジャンルがあります。中でも英国は冒険小説のメッカ。ジャック・ヒギンズやデズモンド・バグリィ、フレデリック・フォーサイスと言った有名冒険小説ミステリ作家がたくさんいました。(残念、過去形)ぼくはその世界が好きで、20代〜30代あたりに随分と読み漁っていました。

その世界は言葉の言い回しが独特なんです。「英国風」と言っていい。アメリカのミステリとはちょっと違います。

この映画のセリフには、英国ならではのユーモアセンスが、あちこち溢れています。

困難な時ほどユーモアを口にするのが英国気質、なんて言われますね。そんな気質をを感じたい人にはぴったりなワイルドギース』かもしれません。

さらにはストーリー自体、英国冒険小説アルアルスタイルを踏襲しています。

まず、1.スーパーマン的ヒーローがいない。これ、英国冒険小説スタイルの中で、とても大きな比重をしめます。大事なとこです。

主人公のフォークナー大佐という存在は居ますが、決してスーパーマンではない。

2.脇を固める仲間たちがそれぞれ何か主義を持っている。

フォークナーの元部下のサンディ曹長はじめ、傭兵たちがそれぞれ普通に自分の主義を持っています。チラチラ見える主義の曲げなさがいたって英国冒険小説風景なのです。

3.そんないいヤツらが次々死んでいく

そうなんです。これも定番です。『ワイルドギース』でもきちんと定石を守っています。(泣)

『ワイルドギース』今見てどう?

『ワイルドギース』を2023年の今に見てどうだったか?リチャード・バートン、リチャード・ハリス、ロジャー・ムーア、ハーディ・クリューガーの最後の時代を飾っている映画。まあ、それ以上でもそれ以下でもありません。

アクション映画って、時代と共に変わっていきます。演出方法も編集の仕方も流行がありますね。たとえばミレニアム以降のデジタルが普及してきたここ20年ほどのアクション映画は、ワンカットあたりの秒数がメチャクチャ短いです。1秒あるかないかの短カットをうまい具合につなぎ合わせ、スピード感を出しています。それに慣れた目で197080年くらいの映画を観るとどうしても見劣りしてしまう。

そんな意味では、『ワイルドギース』は流石に古さを感じます。

カメラのアングル、編集テンポが昔のそれです。公開当時、劇場で観ましたが、その時はそんなこと全く感じませんでした。目が今のスピード、演出に慣れてしまったのだと思います。

『ワイルドギース』ここはすごいよ

ここで、『ワイルドギース』の背景に触れてみましょう。

1960年あたりにアフリカはヨーロッパ列強植民地から次々独立しますが、その後内戦や部族問題で混乱します。映画はそんなアフリカ問題に触れています。

世界史において、大英帝国は二枚舌はお手のもの、悪辣手腕振るってきた国です。そのイギリスがこんな二枚舌=裏切りをある意味こき下ろす映画を作ろう、と思い至ったところ、ステキです。

銅山の利権をかざし、傭兵を雇うのがイギリス人なら、裏切るのも同じイギリス人。歴史上イギリス得意の二枚舌(失礼!)を揶揄するところもまた、自虐的な英国流ユーモアなのかもしれません。

ある意味、この映画のすごいところは、作ったイギリスが、「ダークサイドのUK」をあえて物語の展開に置いたところにある、と思っています。

『ワイルドギース』のシナリオは、大いに確信犯のような気がします。

『ワイルドギース』主役キャストから脇役俳優のことまで

四強アクター縦横無尽〜R・バートン:R・ハリス:R・ムーア:H・クリューガー

 

ぼくが『ワイルドギース』を観た公開時でも、主役の4人、リチャード・バートン、リチャード・ハリス、ロジャー・ムーア、ハーディ・クリューガーは、スターってオーラ、バリバリだなあ、と思いました。

リチャード・バートンは『クレオパトラ』『旅路』といった映画で名を上げた名優。

リチャード・ハリスも息が長く、さまざまな映画に出演した名優ですが、『ハリーポッター聖者の石』で校長を演じています。ぼくがはじめて映画館で観たのは『カサンドラクロス』というウィルスパニックアクション映画です。これも面白かった。

ロジャー・ムーアは3代目ジェームズ・ボンドを張り、007ではショーンコネリーの後を継いだイギリスアクション映画の顔役でした。ぼくはボンド役のムーアより、この映画の役回りの方が好き。

ハーディ・クリューガーはドイツ系ならまかせろ的俳優。本編では、南アフリカに帰りたくとも帰れないという南ア人の役を演じています。

救出する黒人大統領と反目する役回りですが、死に方も伝統的イギリス冒険小説的で、良いところしっかと持っていきます。

名脇役ジャック・ワトソン

『ワイルドギース』の脇役で最も光っている役者さんが、サンディ曹長役を演じた、ジャック・ワトソン。

映画の中での登場が、イギリスの片田舎で庭仕事をしているシーンです。庭ハサミ手に、いかにも退役軍人というシチュエーションです。

その彼が教練を任されると一変、鬼曹長となります。が、優しさチラ見のいい役回りです。ジャック・ワトソンだから演じれた名脇役だと思います。イギリスでは数多くの映画に出演しています。

一本一本彼の出演作を制覇してみたいなと思わせる名優です。

ジャック・ワトソンさんは、ぼくが大好きなイギリスの町のひとつ、バースに暮らしていたとのこと…ますます身近に感じました。(1999年没)

『ワイルドギース』は他にも脇役陣が脚本を心得てて、ヨイです。

『ワイルドギース』音楽も好き

実はぼく、『ワイルドギース』のサントラのLPを持っていました。好きで何度も聞いてました。作曲担当したのはロイ・バッド。英国のジャズピアニストでもあります。天才と称されています。映画音楽では『ソルジャーブルー』で映画音楽デビュー。その後、『殺しのカルテ』『太陽にかける橋 ペーパータイガー』など手がけていますが、その後映画音楽からは離れ、ジャズプレイヤーに専念したようです。

ちなみに、『ワイルドギース序曲』の導入メロディ、日本の高校野球の吹部応援「コンバットマーチ」として編曲され、随分プレイされてた時代がありましたよ。

甲子園で応援演奏している高校生ラッパ吹きたち、誰も『ワイルドギース序曲』だとは思ってもいなかったんじゃないかなあ。

エンドロールのアフリカへの哀愁込めた『ワイルドギースエンドタイトル』がいかにも1970年代サウンドですが、久々に聴いたら切なかったです。

『ワイルドギース』1978年と2023年のタイムスリップダブル評価

『ワイルドギース』を公開時の印象と今のダブル時代で点数つけてみました。

1978年=85

2023年=65

この差20点は、前にも書きましたが、時代の違いです。ぼくは部屋にポスターを貼り、サントラを聴きまくって、パンフのイラストを下手くそながらマネ描いていました。それほど高校生のぼくはハマっていたわけで、若い自分をかたち作ってくれた映画の一本なのでした。

『ワイルドギース』よ、ありがとう。

『ワイルドギース』結構詳しくあらすじです~ネタバレあり~

以下、『ワイルドギース』のストーリーです。

1967年。アフリカ大陸の某国。国民に絶大な信望を持つ黒人大統領リンパニ(ウインストン・ヌショナ)が軍部指導者ヌドフ将軍にその地位を追われた。

この国の銅山の権益を一手にしていたイギリスの大銀行家マターソン(スチュアート・グレンジャー)は慌てふためく。ヌドフ独裁体制のもとで銅山も国有化されると聞いた彼は、国有化阻止するためリンバニをイギリスへ亡命させようとしたが、途中で機がヌドフ一派にハイジャックされ、リンバニはアルジェリアヘ囚われてしまう。

彼の消息はそれっきり途絶え、もう死んだものと世間には思われていた。

2年後、主人公のアメリカ人アレン・フォークナー(リチャード・バートン)が、ロンドン郊外にあるマターソン邸へ招かれた。リンパニはまだ生きていたのだ。マターソンは錆山の権益を守るべくリンパニ奪回を計画して、歴戦の元陸軍大尉フォークナーに奪回作戦の指揮を依頼してきたのだ。

フォークナーは仕事を引き受ける条件として、かつての戦友レイファー・ヤンダース(リチャード・ハリス)とショーン・フィン(ロジャー・ムーア)の参加を申し出、二人の行方を探してもらうことにする。

第二次大戦中、卓抜した作戦能力で縦横の活躍をみせたレイファーも、今は一人息子をパブリックスクールの寮に入れたままうだつの上がらぬ身の上。

名パイロットとして鳴らしたショーンも、トラブルでマフィアに命を狙われていた。

三人は、かくてリンバニ奪還へと動き出す。

レイファーのたてた奪回計画はこうだ。

まず50名の傭兵を集め、部隊を編成。リンバニが収容されている兵舎近くに落下傘降下する。二手に分かれ、兵舎と空港を襲撃、リンバニを飛行機で脱出させる。

兵舎襲繋を指揮するのがフォークナー、空港を占拠してリンバニ到着を迎え、輸送機で全員を脱出させる役目はショーン。ショーンか酒場で知り合った南アフリカ人のビーター・コエジー(ハーディー・クリューガー)も現地の地理に詳しいことと毒矢を使う石弓の腕を買われ、幹部の一人に加わる。

50人の傭兵と武器弾薬の調達が終わると、特務曹長サンティ(ジャック・ワトソン)による訓練が始まった。フォークナーが絶大な信頼を置いた、かつての部下である。

報償金は一人一万ポンド。軍隊経験を持つ50人の男たちは、厳しい特訓にも耐え、短期間に"ワイルド・ギース"へと変身していく。

しかし、予定は変えられた。六週間の訓練予定を終わらぬうちにリンバニ護送の日取りがくり上げられたとの情報が入電。急拠部隊はアルバートピルヘ飛ぶ。

作戦は順調に進んだ。フォークナーにひきいられた一隊は厳重な警戒網を突破して兵営に侵入し、兵隊たちを鎮圧、地下牢かリンバニを救出。無線でその報告を受けたショーンたちは手瑠弾を武器に空港のコントロール室を占拠して、いったん引き返した輸送機の飛来を待つ。

しかしその頃イギリスでは、ヌドフ将軍の使者とマターソンの間に思いがけない密約が成立していた。将軍に査金面の援助をする交換条件として、マターソンは銅山の所有権継続の約束をとりつけたのだ。

こうなると彼にとって傭兵たちの存在はむしろ邪魔な存在でしかない。全員を抹殺すれば報償金の支払いからものがれられる。彼は、部隊の行動の詳細を、使者に告げた。この瞬間から傭兵たちの運命は狂った。時間通りに現われた輸送機は着陸寸前にイギリスからの指令を受けて、そのまま無情に飛ぴ去った。

マターソンの裏切りを察知したフォークナーたちは、トラック三台、ジープニ台を手に入れて、リンバニの故郷カリマ地方へ向かうことにする。

ヌドフ独裁に反抗する内戦の火の手をそこからあげようと考えたのだ。

ジャングルを分け、河を渡り、待ち伏せる二00 人の敵のバズーカ砲の攻撃をかいくぐりつつ進む血みどろの旅で得た犠牲は、死者十三名、負傷者六名。リンバニを背負って歩き続けたピーターも遂に大統領の楯となって倒れる。

やっとたどり着いたカリマ。リンバニの生存に喜ぶ村人たち。フォークナーたちの目論みはしかし潰える。リンバニは反乱を起こすことを押しとどめたのだ。彼は、血は血しか呼ばないことを知っていたのだ。

村の近くに一機だけ取り残されているという輸送機で国外脱出を図る傭兵たちとリンバニ。しかし、ヌドフの追跡は執拗をきわめる。輸送機へ向かう途上、波のように押し寄せるヌドフの兵士たち。

フォークナーらは滑走を始めた輸送機へひた走る。たどり着く前に一人また一人と命を落とす傭兵たち。

サンディが倒れた。フォークナーのあとから機にすかりつこうとしたレイファーも足を撃れて転倒した。「自分を撃て」と懇願するレイファーにフォークナーは苦渋の引き金を引く。

荒れた大地に彼を残して舞い上がる輸送機。その機上でリンバニもまた息を引きとった。生存者はわずか12

ラストはロンドン郊外。仕事を依頼し手のひらを返したマターソンの背後にしのび寄るフォークナー。

フォークナーはゆっくり消音銃の引き金をひく。

そしてアフリカに散った友レイファーとの約束を果たすべく、彼は小学校の校庭に立つ。

レイファーの遺児に近づくとフォークナーは言った。

「父さんの話をしよう」

『ワイルドギース』配信先と公開当時の公式予告編

Amazon Prime Video で配信中です。

最後は一応公式予告編をアップしておきます。(僕は好きではないけど)

あっ!!そうそう、『ワイルドギース』ネタで一つ寄り道です。

『Wild Geese』という名前のアイリッシュウィスキーがあります。これ、絶品ですよ。シングルモルトです。酒屋で見つけたら即買いおすすめです。

『Wild Geese』ウィスキー片手に映画『ワイルドギース』を観る…これこそ正しい贅沢映画ライフ、ですね。

当ブログで、別記事として俳優リチャード・ハリスのことを書いています。よかったらご覧ください。

リチャードハリス〜ダンブルドア校長役が最後の演技となった名優の横顔と生涯
『ハリポタ』初代校長役で若い映画ファンの心にも名を刻まれたリチャードハリス。惜しくも2002年に亡くなりました。彼の若い頃から円熟期、そして死因までを追ってみます。




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