R&Bとソウルミュージックが全編に流れるけど、ミュージカルでもないし、音楽映画ともちょっと違う。笑えるんけど、ただのコメディでもないし、撮影で壊した車の数はマッドマックスシリーズに匹敵するだろうけど、カーアクションものでは決してない。
ジャンル分けをどうしていいのかわからないけど、ぼくが勝手に「20世紀のスラップスティックミュージックムービーの傑作」と評価している映画の紹介をしたいと思います。
その映画のタイトルは、『ブルースブラザース』。1980年公開と、すでに40年以上も前の映画です。
主演はジョン。べルーシとダン・エイクロイド。他、ソウル・R&B界の有名ミュージシャン多数。脇役にキャリー・フィッシャーが出ています。
監督はジョン・ランディス。どんな監督かといいますと、マイケルジャクソンの『スリラー』はジョン・ランディス監督が撮ったクリップ、といえばわかりやすいかもしれません。
そんなクラシック名盤的映画『ブルースブラザース』をレビューしてみます。
『ブルースブラザース』あらすじです。
舞台は、シカゴ。
刑務所から一人の男が出所する。名前はジェイク。
オンボロの中古のパトカーで迎えにきたのは弟のエルウッドだ。
彼らは、育った孤児院を運営する教会を訪ね、税金滞納で孤児院が閉鎖されかけていることを知る。
税金納付期限まではあとわずか11日。
とある教会でクリオファス牧師の説教に天啓を受けた2人は、かつて組んでいたブルースブラザースバンドを復活させ、ステージングで5,000ドルを工面することを決意する。
かつての仲間たちをひとりまたひとりと仲間に引き入れ、ライブを再会させる。
しかし、名うてのチンピラバンドだ。そううまくコトは進まない。
ネオナチやカントリーバンドがブルースブラザースバンドを目の敵に追いかける。
無免許運転がばれ、警察も放ってはおかない。
そんなチェイスのはてに、ジェイクとエルウッドは、旧友のプロモーターに頼みこみ、コンサート会場を押さえることに成功する。
コンサート会場に向かうブルースブラザースバンド。しかしいく手には警察の包囲網が。
はたしてブルースブラザースはコンサートを成功させ、税金を納めることはできるのか?
というあらすじです。
『ブルースブラザース』は面白くない?世代を超えられるか?
ネット上では「つまんない」「面白くないです」という評価もあちこち見受けます。
ぼくも冷静に『ブルースブラザース』を客観視すると、はたして今の若い世代にはどう映るか?ちょっと微妙な感はあります。
微妙と思える理由は、『ブルースブラザース』のひたすらに、破壊しまくる点にあります。
『ブルースブラザース』定番の「壊しまくり」は、ある意味、モノ礼賛時代の裏返しです。
カーチェイスで壊したクルマの数は、カーチェイス映画の中ではトップクラスでしょう。
また、カーチェイスで壊すのはクルマだけではありません。ショッピングモール一つをまんま壊してしまいます。(セットではなく、実際に使われなくなったモールを撮影に使用した)
ぼくは以前から、アメリカ映画が持つ「モノ破壊礼賛」的ニオイの根っこには、アメリカ人のあふれすぎたモノ至上主義へのアンチな潜在意識が、影響しているのでは?と思っています。
ひるがえって、今はすでに「モノ」はたいして意味をなさなくなってきていますよね。
そんな「モノ」への熱が引けた社会に生まれ育った「平成以降の世代の目」には、はたして『ブルースブラザース』がどう映るのか?
ぼくは腹を抱えて笑い、無邪気に楽しんでいますが、ぜんぜん違った冷めた見方をしてもおかしくないのでは?と思います。
「アメリカ文化の洗礼を受けて、アメリカに気付かぬうちに憧れを持っていた」ぼくをはじめとした昭和世代と、「アメリカは数ある外国の中のひとつに過ぎない」世代では、『ブルースブラザース』は違った風に見えるような気がします。
『ブルースブラザーズ』ぼくの感想
ひとことでこの映画をジャンル分けすることはできません。あえてするならば、「スラップスティックブラックミュージックコメディ」とやたらと長いジャンル名にしたくなってしまうのが、ぼくにとっての『ブルースブラザース』です。
映画の作りは、「くだらないことをとことんくだらなく」。この一言に尽きます。
どこまでもドタバタを突き詰めています。
ショッピングモールでの警察とのカーチェイスシーンは前代未聞の壊し方です。タガを外しまくって、それは呆れるほど。
『ブルースブラザース』のキモは、くだらないことをとことん徹底的にポーカーフェイスでやりまくる。この一点にあります。
これ以上やったらアウトだろ、と思う一線を越えてドタバタするんですから、呆れます。
呆れるんですが、常にポーカーフェイスの主役二人とスラップスティックのギャップが生み出す馬鹿馬鹿しさに、ある種、感動すら覚えます。
馬鹿馬鹿しさを通り越して、気持ちが高揚した映画は、未だかつてありません。
音楽もダンスも、決して新しいものではないけれど、ぼくの感覚にどハマりだったのでしょう。何度観てもカラダが動いてしまいます。
ぼくは1980年の初見から何度も繰り返し観てきましたが、2023年の配信で久しぶりに観てもなお、映画が終わった後の爽快感は43年前と変わらずでした。
『ブルースブラザース』曲のこと
『ブルースブラザース』の劇中使われる曲は、リズム&ブルースとソウルミュージックがメインです。
ジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズ、キャブ・キャロウェイ、と、ソウルミュージック・R&B界の大御所が次々登場する贅沢ムービーです。
ですが公開当時、そんな大御所ミュージシャンをぼくは知っていたのか?というと、正直、知りませんでした。(だって、ぼくが赤ん坊の頃すでに活躍していたジェネレーションスターですし)
『ブルースブラザース』公開当時1981年、ぼくは高校生でした。
当時のぼくにとって、ラジオから流れてくると、妙にカラダを揺すりたくなる「音楽ジャンル」がありました。
だけど、今のようにネットもなければ、YouTubeもありませんので、そのジャンルがなんというジャンルなのか、わかりませんでした。
映画好きのぼくは、映画館で流れた『ブルースブラザース』予告編を見た時、「これだよこれ!まさに、この音楽だ!」と、光が差したのを覚えています。ちょっとオーバーだけど。
「オレ、すきなの、リズム&ブルース=R&Bっていうジャンルだったんだ!ブルースって名前ついてるけど、オヤジが聞いてる○町ブルースとは違うわ。ブルースってオヤジくせー音楽だと思ってたけど、カッケーんだな!」
当時ぼくは吹奏楽部でトランペットを吹いていたこともあり、ラッパがフューチャーされた曲が響く予告編に「これは必見だ!」と映画館に向かったことを覚えています。
「ブルースブラザースのテーマ」的な「I can’t turn you loose」はその後あちこちで使われているので、知っている方も多いと思います。吹奏楽部のコンサートでも定番となりました.
「Gimme Some Lovin’」なんて、高校生のくせに鳥肌立ててました。
『ブルースブラザース』主役の二人は?
ブルースブラザースの二人組のことをちょっとだけ。
ブルースブラザースとは、もともとジョン・ベルーシとダン・エイクロイドの二人組コメディです。
『サタデーナイトライブ』出演で人気を博していました。(もちろんぼくはみたことはないけど)
ブルースブラザースの映画の二人のスタイルは、その頃からの流れなのです。
映画、ステージング、テレビバラエティと縦横無尽のエンターティナーコンビだったのですね。
だった、と、過去形で書いたのには理由があります。
映画『ブルースブラザース』が公開されてほどなく、コンビのひとり、ジョン・ベルーシが急逝し、自ずとコンビは消滅。ダン・エイクロイドはその後もひとりでエンターティナーとして映画、ステージとコメディアンとして活躍し続けています。
サタデーナイトライブのクリップは見つけられませんでしたが、ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドの『ブルースブラザース』コンサートライブのクリップが見つかりましたので、はっておきます。
『ブルースブラザース』出演者は?
とにかく『ブルースブラザース』の出演者は、R&B、ソウルミュージック界の大御所揃いです。
アレサ・フランクリン、レイ・チャールズ、キャブ・キャロウェイ、ジェームス・ブラウン…。
ブルース&ソウルミュージック界最強の共演者たちです。今はもう実現不可能な出演です。
それぞれのシーンを紹介します。
ジェームス・ブラウン
アレサ・フランクリン
レイ・チャールズ
キャブ・キャロウェイ
キャリー・フィッシャー
ほぼ知らない人はいないスターウォーズのエピソード4でレイア姫を演じた女優、キャリー・フィッシャーがジェイクをつけ狙う謎の女性として登場します。スターウォーズエピソード4公開から3年後の出演です。
バズーカ抱えたり、マシンガン撃ちまくったりと派手な役回りですが、当時、レイア姫とのギャップ、なかなかです。
キャリー自身が、出演を楽しんでいる感じがするのは気のせいだろうか?
スティーブン・スピルバーグ
はい、あの、映画監督のスティーブン・スピルバーグが実は出演しているのです。といってもカメオ出演。
クライマックスの役所でジェイクとエルウッドから5000ドルを受け取る「収納係」の役です。
『未知との遭遇』で大ヒットメーカーになった頃です。まだ髭無しで若々しく、パッと見では「え?この人スピルバーグ?」と思いますが、ちゃんとエンドクレジットにもロールされています。
ブルースブラザースバンドミュージシャン
スティーブ・クロッパー
ドナルド・ダック・ダン
マーフィー・ダン
ウィリー”トゥービッグ”ホール
トム・マローン
ブルー・マリーニ
マット・マーフィー
アラン・ルービン
以上がバンドメンバーですが、路上ミュージシャンとして、ジョン・リー・フッカーも出ています。
『ブルースブラザース』ぼくの評価は殿堂入り
前にも書きましたが世代によって受け止め方が違ってくる映画だと思います。
が!
ぼくにとっては映画の殿堂入りムービーです。
『ブルースブラザース』といえばサングラス
ブルースブラザースのファッションアイテムで公開当時に、映画好きの間で流行ったのが、黒いサングラスです。
このサングラスはレイバンのウェイ ファーラー。まだ高校生だったぼくには、手が届かなかったです。
今もラインナップされている定番ですね。
おまけ〜ジョン・ランディス監督のマイケル・ジャクソン『スリラー』
映画とは関係ありませんが、ジョン・ランディス監督の撮った名作『スリラー』を張っておきます。
コメント