映画『ブレイブハート』あらすじ・ネタバレ感想評価レビュー|実話ベースのスコットランド独立歴史絵巻。

実話・リアリティ

 『ブレイブハート』は、スコットランドのイングランド圧政からの独立を描いた1995年アメリカ映画。メル・ギブソン監督・主演の歴史スペクタクルムービーです。アカデミー賞を5部門受賞。

実話かと思われがちですが、史実をベースに映画としてかなり脚色がなされています。事実を元にしたフィクションムービーと言って良いでしょう。




同じ英国でもスコットランドはイングランドとは違う文化と気質を持っています。スコットランド現地を旅すると、いまだにイングランドに対するアンチスピリットを感じます。

そしてスコットランドには他の国にはない独特な空気感があります。それは古代ゲール文化圏ならではの空気といってもいいです。『ブレイブハート』では、ケルティックサウンドを取り入れたジェームズ・ホーナーの音楽が、物語に見事にゲールの気質を吹き込んでいます。

メルギブソン演じるウィリアム・ウォレスが、スコットランドハイランドの清涼な光の中、深呼吸するシーンがありますが、彼の吸い込む空気はゲールの地の古来からの空気なのです。

ぼくは何を隠そう、『スコットランド大好きピープル』、さらには『ブレイブハート』フリークです。かつて、『ブレイブハート』に出てくる古戦場をレンタカーで探す旅までしたことがありました。

今回は、2023年10月からPrimeVideoで配信が始まりましたので、スコットランドの風を感じる歴史大作『ブレイブハート』の世界をご紹介しましょう。



 

『ブレイブハート』そのスコティッシュな音楽から感想スタート

感想は、いきなり映画音楽からスタートです。こういうのも珍しいかも。

『ブレイブハート』を語るにあたって、ジェームズ・ホーナーの音楽抜きには語れません。

というのも、この映画は「スコットランド叙事詩」であると同時に「抵抗の交響詩」でもあるのです。

といっても、ジェームズ・ホーナーは派手派手なケルティックサウンドで盛り上げるような手は使いません。

観終わると、心のどこかにパグパイプの旋律がずうっと静かにこだましているような、慎ましやかな音楽です。

ジェームズ・ホーナーはのちに映画『タイタニック』でもアイリッシュな旋律を見事に使いましたが、『ブレイブハート』では、どこか遠くハイランドの峰々の向こうから風に乗って響いてくるかのごとき旋律です。

戦いのシーンにおいても、決して勇壮なジャカジャカしい音楽ではなく、兵士たちの恐怖、緊張感、スコットランド・イングランド両軍のせめぎ合いを見事なドラミングやメロディで抑えています。

そう、「抑えた音楽」が素晴らしいのです。

たぶん、はじめてみる方は、観終わった時、「あれ?どんな音楽だったっけ?」となるかもしれません。

映画において主役は、物語であり俳優であり、シーンの連なりです。映画音楽はあくまで縁の下の力持ちです。

ジェームズ・ホーナーの書き上げた『ブレイブハート』スコアは、そんな意味でも、傑作スクリーンミュージックだと思います。

2度観ると、よーく分かりますよ。



『ブレイブハート』映画のあらすじです

さて、それではあらすじです。主な登場人物は以下の5人を押さえておくと良いです。

  • ウィリアム・ウォレス:スコットランド独立の英雄。
  • ミューロン:ウォレスの幼なじみ。妻。イングランド代官に殺される。
  • エドワード1世:イングランド王。冷酷非道。スコットランドを侵略する。
  • イザベラ:フランス王女。エドワード王の息子の妻。ウォレスに恋する。
  • ロバート・ザ・ブルース:スコットランド貴族。現実と理想の間に悩む。ウォレスは一目置いている

では、『ブレイブハート』のあらすじを以下簡単に紹介しますが、スコットランドの歴史的事実をベースにしていますので、ネタバレとなるラストまで書いてしまいます。

時代は13世紀末のスコットランド。

残虐非道なイングランド王エドワード1世の治世で、スコットランドの人々は苦しんでいた。

主人公ウィリアム・ウォレスは、家族をイングランド兵に殺害される。ウォレスは叔父のもとで育ち、成長して故郷に戻ると、幼なじみのミューロンと恋に落ち、結婚する。

しかし、ミューロンはイングランド代官に殺され、ウォレスは復讐を誓い、スコットランドの民衆を率いイングランド軍に立ち向かう。

次々と勝利を収めていくスコットランド連合軍。ウォレスの意気に触れ、仲間が増え、遠くアイルランドからもやってくる。

イングランド王エドワード1世はウォレスらの結束を瓦解させるため、政略結婚で息子の妃となったフランス国王の娘イザベラをウォレスの元へと遣わせる。

しかし、妃イザベラは逆にウォレスの魅力を知ることになり恋に落ちる。

ウォレスの存在を恐れたイングランド王エドワード1世は、彼を亡き者にせんと、スコットランドの貴族たちを寝返りさせるべく企てる。

ウォレスは、スコットランド諸侯の裏切りに遭い、捕縛。イザベラの助命嘆願も虚しく、エドワード1世によって処刑される。

ウォレス、死す。

しかしウォレスの培った自由への意志は、イングランドに屈するかに見えたブルース公率いるスコットランド連合軍を自由への戦いへと動かした。

1328年、スコットランド軍はバノックバーンでイングランドに勝利。スコットランドはついに悲願の独立を勝ち取る。



『ブレイブハート』何度もため息…の感想

「何度も観た」と、冒頭に書きました。ぼくは観るたびに『ブレイブハート』は飛び抜けている、と感じ、その都度に感嘆のため息をついてしまいます。

何にため息をつくか?いくつか挙げてみましょう。

ため息・その1〜セリフの少なさと絶妙さ

そうなんです。この映画の脚本は、セリフが削りに削られています。

シーンそれぞれが非常に詩的かつ躍動的。脚本家ランダル・ウォレスは、シーンや風景に「セリフを語らせている」のですね。

なので、俳優が口にするセリフは、最小限の、それも「そうきたか!」的言葉なのです。

役者が喋るセリフが饒舌になったら興醒め必至です。

ベタセリフを喋らせるのは、映画の鬼門といってもいいでしょう。

『ブレイブハート』のセリフは一つ一つとても生き生きしていて小気味良い。なのでため息ついてしまうのです。



ため息・その2〜メル・ギブソンの抑えた演技

絶望や怒りが頂点に達したとき、人間はどういう反応を示すのだろう?という疑問への答えをメル・ギブソンが見せてくれます。

ネタバレになりますが、妻がイングランドの行政官に殺され、単身イングランドに乗り込んでいく時のウィリアム・ウォレス(メル・ギブソン)の表情は、「絶望と悲しみ、怒り」を静かに表しています。

以下はネタバレその2になってしまうので、映画を観たい方はスルーして欲しいのですが、「信頼していたブルース公爵に裏切られる場面」もまたそんな複雑な表情を見せてくれます。

『ブレイブハート』は、スコットランドがイングランド王エドワード1世の抑圧から立ち上がる、というシチュエーションが柱です。

そこに必要なのは、「死への恐れ、悲しみや、仲間や大地への深い愛」を包み込んだ演技であり演出なのです。鼓舞するような派手な演技を極力抑えた結果、素晴らしい作品になり、ため息が出るのです。

そういった点で、メル・ギブソンのみならず、他の俳優たちの表情にぐいぐい引っ張られていく映画です。

ため息・その3〜脇役陣がたまらない

ウォレスの周りを固める仲間達のキャラクター設定が素敵です。

幼馴染の巨漢ハミッシュ(ブレンダン・クリーソン)、その父親のキャンベル(ジェームズ・コスモ)、途中からアイルランドより馳せ参じる、かな〜りヤバそうなスティーブン(デイビッド・オハラ)初め、戦陣に並ぶチョイ役でもとことんキャラクターに存在感があります。

俳優それぞれが役の大切さをていねいに理解して演じているからでしょう、そんな彼らにため息連発なのでした。

余談ですが、ちなみに以前、スコットランドの古戦場を回ったことがある、と書きましたが、スターリング城のごつい石垣に一輪の小さな花が咲いていて、描いたことがあります。描いていたときに脳裏にあったのは、ウォレスの幼馴染ハミッシュの姿でした。その絵をここにあげておきます。





ため息・その4〜悩める貴族ロバート・ザ・ブルース

劇中、ウィリアム・ウォレスの一目置く貴族としてロバート・ザ・ブルース(アンガス・マクファーデン)が登場し、物語の節目を作ります。

ロバート・ザ・ブルースの貴族としての理想と現実のギャップに悩める姿が、映画に重みを与えています。

彼は、とても素直な性格なんですね。だから、理想と現実の板挟みに悩み、苦しむ。

他の登場人物もまざまな悩みを抱えているはずで、ロバート・ザ・ブルースはそんな大勢の登場人物の悩みを一手に引き受け、「悩むアイコン」だったと感じています。

彼のキャラクターがなかったならば、この物語は威勢のいい話で終わってしまったようにも思えます。

つい、観ていて「自分がブルースだったら、多分、同じことするかもなあ、、、」と、悩める貴族ロバート・ザ・ブルースにため息が出るのです。



ため息・その4〜絶対的な悪、非情の権化エドワード1世

やっぱり映画は悪役が大事でしょう。とことん政治の世界に生きるエドワード1世(パトリック・マッグハーン)の非情さは、映画史上悪役ベストテンに入るのではないかしら?

それほどヨイです。政治家が観たのならニヤニヤしてしまうのでは、と思います。(政治家なったことないからわからんけど)

エドワード1世あってのウィリアム・ウォレスなんですね。

ちなみに両者は一度も面と向かって顔を合わせることはありません。(戦場において遠目には対峙しますが)そんな脚本も「よく考えてるよなあ」です。

余談ですが、エドワード1世って、実際どんな人だったかと言いますと、英国国会を制定したり、平民を国会に迎い入れ聖職者・貴族と同席をゆるしたり、有名建築を多数残したというプラスの面も持っています。でも残虐行為エピソードの方が絶対多数な王だったようです。



ため息・その5〜カットをつなげる編集の素晴らしさ

ぼくは、映画は編集で決まる、と思っています。

『ブレイブハート』のため息ポイントはその編集の素晴らしさにもあります。何度も繰り返し観ているうちに編集スティーブン・ローゼンブラムの気持ちまで伝わってくるようです。「どや、このシーンならこの編集以外にありえんだろ?」と言われているようにさえ感じます。

編集に惚れ惚れの映画でもあるのです。

ため息・その6〜『ブレイブハート』はあざみの物語

『ブレイブハート』では、物語のキーになる花が登場します。

それは「あざみ」です。

ウォレスが肌身離さず持っていたハンカチ刺繍にある模様は「あざみ」なのです。

冒頭、父を亡くした少年ウィリアム・ウォレスに、葬儀で一人の少女があざみの花を渡します。その少女はのちの結婚相手ミューロンなのですが、劇中、重要なポイントでこの「あざみ」が押し花や刺繍されたハンカチとして登場します。

ぜひ、ハンカチの行方を追ってください。

ちなみに「あざみ」の花言葉を知っている方、あまりいないと思います。なので、以下に花言葉を書いておきますね。

なんと「独立」「厳格」「報復」そして「私に触れないで」です。

そして、実はあざみはスコットランドの花でもあり、ざまざまな文様や図版にあしらわれています。

以下、Wikipediaからスコットランドの紋章モチーフ画像を転載します。

そう、スコットランド独立の物語を花に置き換えるなら、「あざみ」しかありえないのです。



『ブレイブハート』ぼくの評価は?

満点です。

ぼくにとって『ブレイブハート』は現地まで旅してみたいなと思わせた映画でした。

映画を観たのが1995年です。その後、2010年にスコットランドへ聖地巡礼しました。観終わってから15年たってもどうしても行きたかったのが『ブレイブハート』の世界でした。

旅の終わり近く、映画のラスト、ブルース率いるスコットランド軍がイングランド軍を打ち破った「バノックバーン」に辿り着きました。その時の感慨は今もなお胸に残っています。

最後にバノックバーンを描いた絵をアップして、『ブレイブハート』レビューを終わりにしたいと思います。

ぼくがスコットランドへ『ブレイブハート』聖地巡礼したルポは、別記事で書いています。よかったらこちらの記事もどうぞ。

そんなふうにぼくの旅人生にも広がりをくれたこの映画は「ムービーダイアリーズ」映画の殿堂入り♩決定です。

 







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