『ベルファスト』ネタバレ考察|あらすじ・感想・評価〜ケネス・ブラナー自伝的実話映画

ヒューマン・ハートフル

♩ケネス・ブラナー自伝的映画『ベルファスト』:評価星四つ⭐️⭐️⭐️⭐️♩

こんにちは!映画好き絵描きのタクです。今回取り上げる映画は『ベルファスト』(2021年公開・制作国イギリス)です。

北アイルランド紛争時のベルファスト、ある家族の日常を切なくも温かく描いています。

俳優でもあり監督もこなすケネスブラナーの少年時代を描いた伝記的映画であり、実話です。

ムービーダイアリーズでは、アイルランドと英国の対立を紐解きながら、映画レビューしてみます。




『ベルファスト』あらすじは?

映画の舞台は、1960年代のベルファスト(北アイルランド)。主人公の少年(演ずるはジュード・ヒル)は、貧しいの家庭の子。

ベルファストではキリスト教宗派間の対立が起こり、カトリック信者とプロテスタント信仰の中で衝突が起きる。

ジュードの家族もこの衝突に巻き込まれ、彼らの日常に次第に暴力の影が忍び寄ってくる

主人公の少年は、苦難の時代を生き抜くために、自分自身を見つめ直す必要に迫られる。

家族との絆や自分自身について悩む少年。

貧しさと宗教対立の中、主人公家族たちはどう生きて、どんな道を選びとっていくのか?

政治的な対立と家族の絆、子供のこころの成長を軸に、個人の物語と社会の歴史がクロスする歴史ドラマです。




『ベルファスト』感想です

素敵なモノクロ映像に酔う

オープニング冒頭数分、いまのベルファストが映像で流れ、ホント一瞬で過去の時代へとつながります。その手法にまずは引き込まれました。

幕開きマジックに脱帽です。

どんなマジックかは、観てのお楽しみです。

ぼくは、好きなシーンが山ほどもらえました。

そんなシーンを撮影したカメラマンに脱帽です。

ワンカットワンカット、それこそ全てが絵になっています。素晴らしい。

その素晴らしさを例えるなら、歴史に名を残している写真家によるモノクロ写真作品集を見ている感覚と言ったらいいのかな…。

もし仮に、「ベルファスト写真集」という良質な写真記録があるとすれば、その写真集が映写機にて動き出したかのようです。




会話が絶品素敵

子供とおじいさんの会話が素敵です。物語を作る上でとっても大事な要素の一つ、「ボーイミーツガール」&「アドバイスする老賢者」が描かれています。

例えばこんな感じです。↓

「答えはひとつでしょ?」と尋ねる少年。

少年の言葉におじいさんがなんと返すかというと、

「答えがひとつなら戦争はおこらんよ。」

ですよ。

戦争が絶えない今、しみじみと響くセリフでした。

気まずいシーンもさほどなく、子供が小学生くらいなら、家族で見るのもオススメです。



子役の演技がたまらなくイイ

そして、主人公の少年の演技がたまらなく、ヨイ!のです。

例えば、教室内のシーンで、成績で一等賞をとった少年が、席を移動するシーンがあります。

映画ではそのシーンをスローモーションで捉えています。

スローモーションを使うことで少年の心の動きが「ずん!」と伝わってくるんですね。

そんなちょっとしたシーンにも、ホレボレしてしまう味を感じました。




彼女のファンになってしまった…

母親を演じているのは、カトリーナバルフっていう女優さんです。

ぼくははじめて見ましたが、カトリーナバルフ、ステキです。

前半はなんとも思わなかったのですが、ドラマが進むにつれて彼女が輝いて迫ってきました。

クライマックス近く、父親と踊るシーンがありますが、カトリーナバルフのなんと美しくセクシーでラブリーなこと!

セクシーラブリーと書きましたが、調べてみたらファッションモデルもやっているようで、当然と言えば当然ですね。

この女優さんの映画、他の出演作は、『大脱出』や『グランドイリュージョン』があります。(ぼくは未見)




『ベルファスト』ぼくの評価は?

劇中、主人公の少年が、家族で映画館にいき、映画を観るシーンがあります。

その映画館で家族が観る作品が、名作『チキチキバンバン』。

音楽は誰でも知っている『チキチキ』ですが、意外と本編を観たことある人、観ても憶えているひと、少ないのでは?  チキチキ、ぼく的に大のオススメムービーです。

話を戻しますが、その映画館シーンで写し出される「少年と家族の表情」が絶品に素晴らしい。

スクリーンの光に照らされた彼らの顔のなんと美しいことか!神々しくさえあります。

こういうのを「劇中劇」なんても言いますが、映画好きのココロをムチャクチャにくすぐるんですよね。

似たようなシーンが1970年代の映画にもありました。

それは、ジョージ・ロイ・ヒル監督の『リトルロマンス』です。

『リトルロマンス』でも主人公の映画好きの少年が映画館でスクリーンの光に照らされる、「映画って素敵」シーンがあります。(『リトルロマンス』では、劇場内で『明日に向かって撃て』が上映されていました)

子供が映画を無心に観る表情って、なんでこんなにも素敵なんだろう。あらためてそう思います。

この映画の背景はアイルランド独立闘争という暗い時代背景ですから、映画自体ブラック&ダークになってもおかしくないのですが、不思議と観ているこちらが幸せな気持ちにさせてもらえた映画でした。

全編通して、ケネスブラナー自身を形作ってくれたベルファストへの愛、そして「映画」や「物語」へのリスペクトに溢れている映画でした。

映画『ベルファスト』、ぼくの評価は星四つ⭐️⭐️⭐️⭐️です。

いい映画をありがとうございました。



『ベルファスト』ちょっとだけ歴史解説

映画の歴史背景をちょっとだけ解説しておきます。カトリックとプロテスタントの対立に端を発したのが北アイルランド紛争です。

1960年代の北アイルランドで、アイルランド共和国との統一を求める少数派=カトリックと英国への帰属を望む多数派=プロテスタントの住民対立が激化。

双方過激派による衝突、イギリス軍の出動で多くの市民が犠牲になり、混乱は1997年(諸説あり)まで続きました。

「IRA」という言葉を聞いたことがあるかと思います。

アイルランド共和国軍の略称ですが、この独立の戦いを仕切ってきた武装組織の名前です。

紛争のあった場所は、アイルランドの東北部、アルスター地方6州です。

+ + +

独立闘争自体は実は19世紀からあったようです。

アイルランドはイギリス本島の西に位置する大きな島国です。

その一部だけがイギリスの領土=北アイルランドです。今も北アイルランドは、イギリスの領土です。

舞台のベルファストは、イギリス・北アイルランドの州府なのです。

余談ですが、ちなみに「イギリス」という国名は、日本でしか通用しません。

正確には「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)という名称です。GBとかUKと略されます。

そのベルファストのホント一角にカトリックの市民が暮らしているのですが、プロテスタント市民から「出ていけ!」コールが起こります。

そんな中、歴史に翻弄されながらも、必死に生きる両親と子どもの辛く激しい日常が、映画『ベルファスト』では描かれているのです。

『ベルファスト』は、子どもの目を通して見た、激動の時代の黙示録と言ってもいいと思います。




『ベルファスト』スタッフ・キャストなど

製作・監督・脚本:ケネス・ブラナー

音楽・ヴァン・モリソン

出演:カトリーナ・バルフ、ジュディ・デンチ、ジェイミー・ドーナン、キアラン・ハインズ、ジュード・ヒル

2021年/イギリス映画




『ベルファスト』配信・DVD/ブルーレイは?

配信は、以下でご覧いただけます。

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追記

『チキチキバンバン』に触れましたが、当ブログでも取り上げています。こちらです。








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