『アメリカン・スナイパー』ネタバレあらすじ最後まで〜感想・評価・配信情報|ドリルが怖い…命を奪うのか、守るのか?彼はなぜ殺されたのか?実話映画深読み解説

戦争・歴史・時代

『アメリカン・スナイパー』実話映画
ネタバレあらすじ感想レビュー
命を奪うのか、守るのか——描かれる“英雄”の苦悩

こんにちは!映画好き絵描きのタクです。

今回取り上げる映画は、『アメリカン・スナイパー』。2014年公開のイラク戦争の狙撃手を描いた戦争映画です。

イラク戦争に4度出征し、160人以上を狙撃したと言われる実在のアメリカ海軍特殊部隊所属スナイパー(狙撃兵)、クリス・カイル
映画『アメリカンスナイパー』は、彼の実話をもとに、戦場と家庭という二つの別世界のはざまに苦しむ兵士の心を描き出したドラマです。

クリント・イーストウッド監督の静かな演出と、ブラッドリー・クーパーの演技が、観る者に「戦争とは何か」「英雄とは誰か」を問いかける…。『アメリカンスナイパー』はそんな映画です。




 

『アメリカンスナイパー』解説〜どんな映画?

2014年に公開された『アメリカンスナイパー』は、元アメリカ海軍特殊部隊「ネイビー・シールズ」の狙撃手、クリス・カイルの自伝を映画化した実話作品です。

奇しくも彼は、映画でも描かれる通り、公開前年の2013年に38歳で射殺されています。

クリス・カイルは「ラマディの戦い」における狙撃の戦果によって、イラク側武装勢力からは「ラマディの悪魔」と呼ばれていました。

『アメリカンスナイパー』は、単なる戦場アクションではありません。

むしろ映画では、兵士の「国家のために戦う」という大義の裏に潜む葛藤と、兵士が国に戻った後に現れるPTSD(心的外傷ストレス障害)を描いています。

監督は『ミリオンダラー・ベイビー』『グラン・トリノ』などで知られる名匠クリント・イーストウッド。

主演のブラッドリー・クーパーは、製作にも関わり、体重を20キロ近く増やしてスナイパー役に挑んだそうです。

銃声や爆音よりも、沈黙と間の使い方で観客の心を締めつける——そんな戦争映画です。


『アメリカンスナイパー』スタッフ・キャスト情報

役名 俳優名 人物紹介
クリス・カイル ブラッドリー・クーパー アメリカ海軍シールズの狙撃手。160人を射殺した“伝説のスナイパー”。
タヤ・カイル シエナ・ミラー クリスの妻。夫の任務と家庭の板挟みで心を痛める。
ムスタファ サム・シーラ イラク側のスナイパー。オリンピック選手出身の射撃の名手
ビッググルーパー カイル・ガルナー クリスの仲間の一人。仲間意識の強い若い兵士。

 

監督: クリント・イーストウッド
脚本: ジェイソン・ホール
原作: クリス・カイル『アメリカン・スナイパー』(ハーパーコリンズ刊)
音楽: クリント・イーストウッド、ジョエル・コックス
公開: 2014年(アメリカ)/2015年(日本)


『アメリカンスナイパー』あらすじ〜途中まで

テキサスで育ったクリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)は、幼い頃から「家族を守れ」という父の教えを胸に生きてきた。

ロデオの賞金稼ぎとして生きていたクリスは、ある日テレビで大使館爆破の映像を目にし、「国を守りたい」と特殊部隊シールズに志願する。

過酷な訓練を経て狙撃手として任命されたクリスは、イラク戦争が勃発するとすぐに派遣される。

彼の狙撃の腕は一発必殺。その腕で幾人もの仲間の命を救い、“伝説のスナイパー”として名を馳せていく。

一方、妻のタヤ(シエナ・ミラー)は、夫が戦場にいることで、孤独と不安に押しつぶされる日々を送っている。

同時にクリスもまた、戦地でスコープ越しに否応なく飛び込んでくる敵兵の死や、ドリルで容赦無く人を殺すアルカイダの指導者の捜索に駆り出され、次第に寡黙になっていく…。

『アメリカンスナイパー』あらすじ〜ネタバレ結末まで〜閲覧注意!

過酷な戦場で、クリスは次第に心を閉ざしていく。

彼の狙撃の正確さは敵からも恐れられ、イラク側は五輪メダリストでもある伝説的射撃手ムスタファにクリス殺害を命じ、戦場に送り込む。

その首に賞金がかけられたクリスとムスタファの死闘。

仲間が倒れていく中、兵としての使命感と良心の呵責の狭間で苦しむクリス。

ついにムスタファとの一騎打ちで、クリスは1発の遠距離射撃でムスタファを倒し、ライバルとの戦いに終止符を打つ。

帰国後、彼は家族との平穏な日々を取り戻そうとするクリスだが、戦場の記憶に苦しめられる。戦場から離れた兵士に発症すると言われるPTSD(心的外傷ストレス障害)だ。

ふとした音を銃声と勘違いし、もはや家族との距離を埋められないクリス。

そんなある日、クリスは退役軍人のリハビリ支援プログラムに参加する。

しかしその活動中に——…..PTSDを抱えた一人の若い帰還兵によって、クリスは射殺されてしまう。

映画のラストでは、アメリカ全土が“英雄”の死を悼み、クリスの葬儀の実際の映像が挿入される。
棺を見送るアメリカ市民の振る星条旗の列が映し出され、エンドロール。


『アメリカンスナイパー』ぼくの感想

『アメリカン・スナイパー』に描かれた兵士の心の傷

解説でも書きましたが『アメリカン・スナイパー』は単なる戦争映画ではなく、「英雄として讃えられた男が、実は心の中で何と戦っていたのか」を描いたヒューマンドラマと言っていいと思います。

イーストウッド監督の演出は、戦争映画ではある意味避けて通れない「派手さ」を排しています。

銃弾や爆発音よりも静けさや行間で語る…そんな感じです。

観客に「戦場の現実」を突きつけながらも、アメリカの愛国心を賛美することも、否定することもありません。「この映画を見たあなたはどう思いますか?」と、観客に委ねている感じです。

その絶妙な中立バランスが、ともすればヒーロー讃歌になりがちなこの映画のテーマを、讃歌にしていません。うまいです。

目で語るブラッドリー・クーパーの名演

ブラッドリー・クーパーの演技の見どころは、演ずるクリスの心の揺らぎを表した、照準器を覗くアップ気味の「目」にあります。

家族と一緒にいる時の姿と、戦場での非情さのギャップを「目」で表現しています。

ぼくは、その「目」こそが、この映画のテーマであり、本質——「人間が人間を殺すという矛盾」——を立ったのでは、、、とさえ思いました。

ドリルは怖い

また、人間が人間をいとも簡単に殺してしまうという本質を際立たせているのが、敵アルカイダの支流組織のボスである※ザルカーウィーのキャラクターです。(※もちろん実在の人物)

ザルカーウィーの殺しの道具が、ふるっています。

なんとハンディなドリルです。そう、ホームセンターで売っている、ドリルビットをはめて穴をあけるやつです。それで人を殺してしまう…。

人を殺すために作られていない道具で人を殺す、、、その描写で人間の持つ残虐非道性が際立たっているんですね。ザルカーウィーにドリルを打ち込み殺されるそのシーンを見せ詰められると、多分、誰もが戦争での死の意味を考えてしまうのではないでしょうか。

『アメリカンスナイパー』のメッセージ

では、この映画では「何」が描かれていたのでしょうか?

それを一言で言うならば、戦争の英雄=あくまで国家が作り上げた虚像です=を主人公にしつつも、戦場と人の命を奪う行為が兵士の精神をどう変えてしまうのか?だと思います。

環境が人間の心を変えてしまう悲劇作品だとぼくは捉えました。

ぼくの『アメリカンスナイパー』正直感想

誤解恐れずに言えば、『アメリカンスナイパー』には、戦争映画の持つヒロイックな、、、というかサバイバルな「爽快感」はありません。

感想を正直にいうならば、少なくともぼくは「落ち込み」ました。

エンドロールを最後まで見送ったぼくは、

「なんて言ったらいいんだろう、。この虚無感は….」

と思いながら…映画を見終えた、、、そんな感じでした。

『アメリカンスナイパー』はどんな人向きか?

というように、『アメリカンスナイパー』は、戦争映画と言ってもスカッとアクション系ではないです。

アクション映画や戦争映画でストレスを吹っ飛ばしたい、、、そんな方には向いていないように思います。

逆に戦争の現実がどんな影響を与えるのか?ということに興味がある方や、アメリカの裏側を知りたい人の参考書になるように思います。



『アメリカン・スナイパー』考察:英雄の影に潜む“見えない戦争”

日常の中での「心の戦争」が怖い

映画『アメリカンスナイパー』が他の戦争映画と一線を画しているのは、先にも書きましたが、銃撃戦の迫力ではありません。帰還した後の平和な日常の中での「心の戦争」を丁寧に描いた点です。

クリス・カイルは戦場では“伝説”と呼ばれ、仲間たちの命を守る”英雄”でした。
しかし、その手で奪った、敵のたくさんの命は、彼の心を次第に苦しめ冒していきます。

帰国しても耳の奥では銃声が響き、家族と過ごしていても、ちょっとした音にびくりとなり心は戦場に置き去りのまま…。この心の状況が、PTSD(心的外傷後ストレス障害)という形で、彼を静かに蝕んでいきます。

クリント・イーストウッド監督は、その描写を過剰な演出ではなく、「静けさと距離」で表現しています。「間合いと行間」といってもよいでしょう。

・妻タヤとの会話で返事をしないクリス。

・息子を抱いていてもどこか意識は遠くにあるクリス。

・何も写っていないテレビの前に、ぼうっと座り続けるクリス

そんなアメリカ本土に帰還したクリスの描写の方に、ぼくはざわっと鳥肌が立ちました。

戦場では誰よりも冷静だったクリスは、家庭という穏やかな世界には順応できなかったのです。

この戦争映画の怖さは、そのギャップにありました。

『アメリカンスナイパー』には、そのはざまに、目に見えない戦争の持つ悲劇を埋め込んだのだと思います。

家族の崩壊と「守る」という矛盾

クリスが戦場で戦っていた理由は、「国を守るため」「仲間を守るため」「家族を守るため」でした。

しかし、その“守る”という行為が、いつしか彼自身と家族を壊して蝕んでいくのです。これもまた戦争の悲劇が生み出す矛盾です。

劇中でクリスの妻=タヤは、電話越しに銃撃音を聞きながら、「帰ってきて!」と泣き叫びます。

それでもクリスは、仲間が戦っている限り、自分も行かなければならないと、派兵に応じます。

彼にとって「戦争」は“使命”であり、“家族を守るための戦い”でもありましたが、しかし皮肉にも、その戦いこそが家族の時間を奪い、心の距離を広げていく….。

その距離を暗に打ち出すことで「戦場から家庭に帰ってきても、戦争は追いかけてくる」という戦争というバケモノが放つ残酷な現実を表現したのです。

クリスはなぜ殺されたのか?

クリスは元海兵隊員、エディー・レイ・ルースによって射殺されました。そのことは事実ですから客観的に映画でも述べられています。

では、なぜ、ルースはクリスを射殺したのでしょうか?

ぼくもなぜクリスが殺されなければならなかったのか?疑問があったので、ネットで調べてみました。いくつかの記事やブログから、その答えはやはり戦場のもたらすPTSDにあるようです。

ルース自身、PTSDを発症していたそうです。それも重度の。その根っこはイラク派兵とハイチ大地震時の救援活動参加が理由だとされています。

ルースはアルコール依存や薬物依存のもたらすパニック障害も持っていたようです。
帰還兵のサポートをしていたクリスは、ルースをケアするボランティアを受け入れ、共に射撃場に誘ったとのこと。悲劇はそこで起こりました。

そんな流れから推察するに、多分にルースの抱えた重度のパニック障害と銃器の心に与える何かがきっかけとなり、事件が起こったのではないかと思います。

クリスは「PTSDを患う退役軍人とは、射撃場で銃を撃つ現場によりそうことで、心のケアができる」と信じていたそうです。

クリスを撃ったルースは、その後終身刑となり服役しています。

「英雄」とは何か——イーストウッドの問い

『アメリカンスナイパー』が重く問いかけていることのひとつは、「英雄とは一体誰なのか?」ということです。

クリスは、国からは星条旗の英雄として称えられた存在でした。

しかし、彼の心の目に映っていたのは、勇壮にはためく星条旗ではなかったとぼくは思います。彼の心に焼き付いたのは戦場で死んでいった仲間や、狙撃した敵の姿。スコープに映ったRPGを掲げ持った少年だけだったのでしょう。

そして、彼に頻繁に投げかけられる”英雄”という言葉は、彼にとって誇りではなく、重荷だったに違いありません。

そのことは、ドラマの中のブラッドリー・クーパーの演技からも推察できます。

イーストウッドは、過去、戦争に対してフラットな視点を一貫して持ち続けてきました。(理由は、自身が従軍経験を持たないからだ…と聞きます。)

彼の送り出した名作と言っていい硫黄島二部作『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』にそれは顕著に出ていると思います。

『父親たちの星条旗』では英雄の作られ方とその影で犠牲になっていく一兵士を描き、『硫黄島からの手紙』では、アメリカ映画では敵として描かれる日本兵目線で戦争を描きました。そのようにフラットなのです。

また、『グラン・トリノ』では老人の退役軍人としての贖罪を描いています。

その延長線上にある『アメリカンスナイパー』でもやはり、「戦うことの大義」よりも「生き続けることの苦しみ」を描いているように思えます。

ラストの実際の葬列シーンは、まるで監督自身がアメリカという国に果敢にも問いを投げかけているかのように、僕は感じました。

——私たちは、何を“英雄”と呼んでいるのか?
——その代償を、誰が払っているのか?

『アメリカン・スナイパー』は、その問いを静かに突きつけて終わります。まさしくイーストウッド流の戦争映画だと思います。

「戦場は人の心を荒廃させる」というテーマは数多くの戦争映画で示されてきました。

クリント・イーストウッドは、そんな数ある戦争映画の中に、新たな一石を投じたんだと思います。

『アメリカンスナイパー』僕の評価は?

『アメリカンスナイパー』は戦争映画でありながら、語られるのは「人間」そのものです。
帰還後の孤独、家族の愛、そして英雄という幻想。これらをすべて内包した本作は、観客に答えではなく“問い”を残す作品だと感じました。

僕の評価は星三つ半⭐️⭐️⭐️⭐️です。

いい映画をありがとうございました。

🔖作品データ

原題:American Sniper

公開:2014年/アメリカ、2015年/日本

上映時間:132分

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