『眼下の敵』ネタバレ感想評価レビュー
「戦争映画」と聞くと、爆発や戦闘シーンが続くような派手な作品を思い浮かべるかもしれません。
でも、1957年の映画『眼下の敵(The Enemy Below)』はちょっと違います。
この作品が描くのは、アメリカ海軍の駆逐艦と、ドイツのUボート(潜水艦)が繰り広げる“静かな戦い”。
海の上と下で続く頭脳戦と心理戦、そして最後に生まれる不思議な「敬意」の物語です。
ド派手な戦闘シーンよりも、人間ドラマや駆け引きが好きな人にはたまらない名作。今回はそんな『眼下の敵』を、わかりやすく紹介してみましょう。
映画『眼下の敵』とは?
1957年に公開されたアメリカ映画で、原作はイギリス海軍のD・A・レイナーによる小説『水面下の敵』。
監督は俳優としても知られるディック・パウエル、主演はロバート・ミッチャムとクルト・ユルゲンス。
第二次世界大戦中の南大西洋を舞台に、米駆逐艦とドイツ潜水艦の一騎打ちが描かれます。
しかも、ただの戦争映画ではなく、**「敵を人間として描く」**ことに重点を置いているのが『眼下の敵』の特徴です。
アメリカ側もドイツ側も、それぞれの立場で信念を持って戦っている。
善悪ではなく「どう生きるか」「どう戦うか」がテーマになっているんです。
ちなみにこの作品、アカデミー賞で「特殊効果賞」を受賞。
1950年代の技術でここまでリアルな海戦を撮ったことに、今見ても驚かされる、そんな映画です。
『眼下の敵』スタッフ・キャスト情報
役柄/担当 | 名前 |
---|---|
監督 | ディック・パウエル |
原作 | D・A・レイナー(『水面下の敵』) |
脚本 | ウェンデル・メイズ |
撮影 | ハロルド・ロッソン |
音楽 | リー・ハーライン |
アメリカ駆逐艦艦長 | マレル中佐(ロバート・ミッチャム) |
ドイツUボート艦長 | フォン・ストルバーグ(クルト・ユルゲンス) |
副長 | ウェア(デヴィッド・ヘディソン) |
あらすじ(途中まで・ネタバレなし)
南大西洋。
アメリカ海軍の駆逐艦「ヘインズ号」は、静かな海を航行していました。
新しく赴任してきた艦長・**マレル中佐(ロバート・ミッチャム)**は、着任早々ほとんど艦橋に出てこないため、乗組員たちは「本当に頼れる人なのか?」と半信半疑。
しかし、マレルには過去の苦い経験がありました。
かつて自らが乗り組んでいた船が敵の魚雷攻撃で沈められ、その船に乗っていた最愛の妻を失っていたのです。
その痛みが、彼を冷静かつ慎重な男に変えていました。
そんなとき、ソナーが海の下に不審な反応をキャッチします。
光った点は、ドイツの潜水艦「Uボート」。艦長は歴戦のツワモノのフォン・ストルバーグ(クルト・ユルゲンス)。
彼もまた、国家のために戦いながらも、ヒトラーに背を向け、戦争そのものに疑問を抱く男でした。
こうして、海の上の駆逐艦と海の下の潜水艦による、緊張の頭脳戦が始まります。
爆雷の投下に対して、深度を変えながらの逃走するUボート、そして執拗に追う駆逐艦ヘインズ。
どちらが先に相手の位置を読み切るか——まるでチェスのような戦いが続いていきます。
あらすじ〜結末まで:ネタバレあり
戦いは長引き、互いに疲労が溜まっていきます。
ヘインズ号はUボートを追い詰め、爆雷攻撃を繰り返しますが、敵も巧妙に回避。
一進一退の攻防が続きます。
そして最終局面。
Uボートはついに損傷を負い、浮上を余儀なくされます。
その機会を待っていたヘインズ号にもまたUボートから放たれた魚雷が命中します。
マレル艦長は、大破した自らの艦で最後の決断をします。
乗組員たちを救命ボートで対比させた後、自らの船を敵にぶつける「体当たり」です。
Uボートの前部にヘインズ号が乗り上げます。
海の上では火の手が上がり、沈むUボートからドイツ兵たちが次々と脱出。
すると、なんとアメリカ側の救命ボートの水兵たちはUボートの乗組員を救助し始めるのです。
さらにはマレル艦長はUボート艦橋に残ったストルバーグ艦長にロープを投げかけ救助します。
敵同士だった二人が、互いの船をなくし、救出されたアメリカ駆逐艦の上で上で向かい合う。
そこにあったのは“敵”ではなく、“人間としての敬意”でした。
最後、マレルとストルバーグは短く視線を交わし、静かに敬礼。
言葉はないけれど、互いに理解し合ったことが伝わってきます。
エンドロールが流れるとき、心に残るのは「勝ち負け」ではなく海に生きる男同士の「尊敬」と「矜持」でした。
感想と見どころ
ド派手な戦闘シーンが戦争映画の当たり前となっている今、『眼下の敵』は、戦争映画の中でも“静か”な部類と言って良いでしょう。
とはいえ、第二次世界大戦後まもない当時、アメリカ海軍のホンモノの駆逐艦を使い、本物の爆雷を投下させ爆発させたところを捉えたカメラは、まさに生の迫力です。
しかし、そんな生の撮影による迫力をさらに超えて光っているのが、ストーリーテリングです。
爆発シーンの迫力=戦闘シーン以上に、『眼下の敵』は「人と人との駆け引き」「決断の重み」に焦点を当てています。
特に印象的なのは、ハリウッド映画にあって、敵であるはずのドイツ海軍Uボート艦長ストルバーグが悪役ではないこと、です。
彼は冷静で知的、そしてどこか哀しみを帯びた人物として描かれます。
ラストで見せる行動にも、彼の「人間としての誇り」が感じられます。
そして、同時に心に残るのは、マレル艦長の落ち着いた指揮ぶりです。
彼もまた、妻を目の前で海の藻屑としてしまったという戦争の悲しみを背負いながら、それでも戦いに冷静に臨む姿勢が美しい。
二人の艦長の対比がこの映画の軸であり、同時に二人は“似た者同士”のようにも感じられます。
戦争という極限状況の中で、敵にさえ敬意を持てる人間がいる。
この作品が1950年代に作られたという事実は、すごいことだと思います。
今観ても心に響いたのは、スポーツマンシップにも似たフェアプレイ精神が映画から滲み出ているから、だと思います。
こんな人におすすめかも
-
派手な戦闘シーンより、心理戦が好きな人
-
戦争映画の中に「人間ドラマ」を感じたい人
-
『Uボート』『クリムゾン・タイド』など潜水艦映画が好きな人
-
シンプルでも深いテーマのある映画を探している人
- 『雪風YUKIKAZE』を見た人
『眼下の敵』僕の評価は?
『眼下の敵』は、海の上と下で繰り広げられるスリリングな駆け引きの中に、「敵を人として見る」という大切なメッセージが込められた作品だとおもいます。
先にも書きましたが、人間同士の「尊敬」と「矜持」がじわりと滲み、見終わったあとに凛とした余韻が残ります。
日常に置き換えても、誰かと対立しても、どこかに必ず共通するものがある——そんなことを教えてくれる映画だと思います。
勇壮なマーチ主体の音楽がオープニングから少々耳についたのは、これはもう時代の違いでしょう。2025年にこの映画を見た時、僕はその点を差し引いてみていました。
僕の評価は星四つ⭐️⭐️⭐️⭐️です。
いい映画をありがとうございました。
『眼下の敵』配信・レンタル情報
※最新の配信状況は各サービスでご確認ください。
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