映画『ホテルローヤル』感想レビュー
廃墟のラブホテルに交差する人生の悲喜劇
こんにちは、映画好き絵描きのタクです。
今回取り上げる映画は『ホテルローヤル』(2020年/日本映画)です。
北海道・釧路湿原の端に建つ一軒の廃墟のラブホテル。
そこには、さまざまな人たちの“愛”や“秘密”、そして“孤独”が流れ込んでは消えていきました。
映画『ホテルローヤル』は、桜木紫乃の直木賞受賞作をもとにした人間ドラマです。
監督は『百円の恋』の武正晴。人生に迷う主人公・雅代を演じるのは波瑠。
松山ケンイチはじめ脇役陣も、それぞれが人生の「影」を丁寧に、おかしみのあるトーンで演じています。
僕は個人的に桜木紫乃の小説が好きです。また武正晴監督の『百円の恋』も好きだったので、これは映画『ホテルローヤル』を観なければ、、、と観てみました。
解説・映画『ホテルローヤル』とは?
先にも書きましたが、『ホテルローヤル』は、2013年に直木賞を受賞した桜木紫乃の同名小説の映画化作品です。
原作本は、北海道・釧路を舞台に、ラブホテル「ローヤル」をめぐる7つの短編形式で構成されています。桜木紫乃の小説はさざなみのような余韻がいいんですよね。
ちなみに原作者桜木紫乃も両親がラブホテルを経営していたといいます。だからこそ書ける独特な余韻のような気がしています。
映画版ではそれらを再構成し、ホテル経営者の娘・田中雅代(波瑠) を中心にしたひとつの物語として描かれています。
監督は武正晴。彼は『百円の恋』で社会の片隅に生きる普通の人々の機微を優しくリアルに描きだした監督です。『ホテルローヤル』でもその観察眼と優しさが光っています。
ラブホテルが舞台です。なので性的な要素が柱にはありますが、映画はそれ以上に「人間の生きる場所」としてのリアリティを、静かにかつ絶妙なおかしみで描き出しています。
『ホテルローヤル』スタッフ・キャスト
| 監督 | 武正晴 |
| 原作 | 桜木紫乃『ホテルローヤル』 |
| 脚本 | 清水友佳子 |
| 主演 | 田中雅代(波瑠) |
| 共演 | 宮川聡史(松山ケンイチ)/田中大吉(安田顕)/田中るり子(夏川結衣) |
| 共演 | 能代ミコ(余貴美子)/佐倉まりあ(伊藤沙莉)/野島亮介(岡山天音) |
『ホテルローヤル』あらすじ(途中まで)
北海道・釧路の郊外。釧路湿原の傍らに立つラブホテル「ホテルローヤル」。
ひと組のカップルが廃墟になったローヤルを訪れます。
誰もいない建物に忍び込んだ二人の目的はヌード撮影。
そんな導入から、かつて営業されていた時のエピソードが展開していきます。
ホテルローヤルは、かつて多くの人たちの密やかな時間を受け入れてきました。
主人公の田中雅代(波瑠) は、ホテルの一人娘です。
絵を描くことが好きで、美大受験に挑むものの失敗し、父・大吉(安田顕)と母・るり子(夏川結衣) の経営するホテルを嫌々ながら手伝い、事務の仕事を淡々とこなす毎日を送っています。
ホテルにいつも出入りしているのは、部屋の清掃を行うパートの主婦たち。そして「大人のおもちゃ屋さん」の営業マン・宮川(松山ケンイチ)です。
ホテルを訪れる客は様々です。部屋から漏れ聞こえる男女の声は、部屋の清掃を行うパートの主婦たちの密かなエンターティメントになっていました。
そんなある日、女子高校生の佐倉(伊藤沙莉) は教師との不思議な関係で部屋で心中してしまいます。
マスコミがホテルを取り巻き、雅代は困惑してしまいます….。
そこへ助け舟を出したのは、意外にも、偶然ルート営業に訪れた「大人のおもちゃ屋さん」の営業マン・宮川でした。
あらすじ ネタバレ結末まで〜閲覧注意!
以下はネタバレとなります。映画をご覧になる方はスルーしてください。
+ + +
そんなある日、父・大吉が病に倒れます。経営は苦しくなる一方のホテルです。
雅代は家業と自分の生き方との狭間に苦しみます。
そして、彼女は決意します。
このホテルを閉じよう――と。
閉鎖にあたり商品の引き上げでホテルを訪れる大人のおもちゃの営業マン宮川。
雅代は実は好きだったことを告白し、一度だけの関係を望み、宮川に伝えます。
体を重ねようとする宮川ですが、結局叶いません。
雅代は、父と母、そしてこの場所に関わった人たちの記憶を胸に、「ホテルローヤル」を立ち去ります。
新たな人生への旅立つ雅代の顔に浮かぶのは、奇妙な清々しさ。そして希望と再生の匂い。
物語のラスト、若かりし頃の両親がホテルの開業を夢見ていた回想が映し出されます。
それはあたかも、人生の始まりと終わりを一枚の風景に重ねるように…。
エンドロール。
『ホテルローヤル』感想
ぼくが『ホテルローヤル』を観て感じたのは、「逃げること」もまた人間の大切な選択なのだ、ということでした。
この映画の登場人物たちは、みな現実に押しつぶされ、誰かに愛されたいと願いながら、それが叶わない人たちです。
だからホテルローヤルに逃げてきます。
ホテルローヤルという“誰にも見られない空間”の中でだけでは、多分少しだけ、自分を取り戻せるんですね。そう、ホテルは逃げ場なんです。
そんな逃げ場へとやってくる人間の弱さと優しさを、映画は責めることなく暖かく見つめています。
波瑠の演技もとても印象的でした。波瑠、いいです。
彼女の静かな表情、言葉を飲み込むような間の取り方が、雅代という人物の心の奥行きを生んでいました。
また、松山ケンイチの“臆病なのに誠実で勇気のある”男の描き方も絶妙で、二人の間に流れる気まずさ以上に、生きる切なさが現れていて、それはとてもよかったです。
『ホテルローヤル』は、ラブホテルという閉ざされた空間を一枚の心象風景画として描いた作品だ、と、僕は感じています。
誰の心象なのか?それは「逃げる人々」なのです。
桜木紫乃のリアルが紡ぎ出す「一枚の絵」
原作の桜木紫乃は、実際にラブホテル経営の家庭で育ったといいます。
だからこそ、作品には“場所”そのものに対する愛情とリアリティが滲んでいるように感じます。
ホテルローヤルは、人が「本音をさらけ出せる場所」であり、立場や肩書き、善悪の境界が一瞬だぼんやりとかすむ世界です。
雅代は自分の部屋から見える釧路湿原を描きます。キャンバスに描きだすのは「ただそこにある」釧路湿原です。
まるで釧路湿原があたかも人格を持って、ホテルに行き交う人間模様を逆に見ているのです。
それと同じようにように、映画は登場人物を裁くことなく、ただ優しく見つめ続けているとぼくは感じました。
映画としての『ホテルローヤル』を一言で言うならば、釧路湿原が見ていた「人間たちという風景」だと思っています。
まとめ|人生の断片を受け止める静かな映画
『ホテルローヤル』は、派手な展開や劇的なエンディングを決める映画ではありません。
むしろ、“静かな乾いた痛み”を内に抱えた映画だと思います。
しかし、痛みは感じるんだけれど、不思議と観終えたあとに心が温かくなりました。
それは、この作品が人間の弱さをしっかりと抱きしめているから…そんな気がします。
ラブホテルという特異な場所を通じて、人生の“交差点”を描く――。
桜木紫乃の手を離れたもう一つのパラレルワールド――。
桜木紫乃の本の世界観を好きな人も、初めて桜木紫乃ワールドに触れてみたい人にもおすすめできる映画だと思います。
『ホテルローヤル』僕の評価
『ホテルローヤル』僕の評価は、星四つ⭐️⭐️⭐️⭐️です。
桜木紫乃ファンとしてもしっかり楽しめましたし、しっかり波瑠のファンになりました。
余韻のあるいい映画をありがとうございました。
配信情報(2025年10月現在)
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