映画『怒りの葡萄』あらすじ結末までと「葡萄」の意味から感想考察・評価まで

ヒューマン・ハートフル

映画『怒りの葡萄』レビュー
暗闇の向こうに光る『希望』を巨匠ジョンフォードが描く!

※このレビューにはネタバレも多く含まれます。映画を見たい方はその点をご了承ください。


こんにちは!映画好き絵描きのタクです。

今回のレビューでは、アメリカ映画の『怒りの葡萄』(原題:The Grapes of Wrath)です。

日本劇場公開は1963年ですが、製作年は1939年!第二次世界大戦が始まった年です。まさにクラシック中のクラシック映画ですね。アメリカでの公開は1940年です。

この映画、古いですけどロードムービーの元祖的一本と言ってよいのではと思います。

原作は文学の巨人とも呼ばれる、ジョン・スタインベック。ピューリッツァー賞を受賞した本『怒りの葡萄』を、『駅馬車』の巨匠ジョン・フォードが監督し、主役を若き日のヘンリー・フォンダが演じています。

時代を越え、今もなお様々なメッセージを発している映画をレビューしてみます。

このレビューでわかること
映画『怒りの葡萄』あらすじ結末まで〜ネタバレ注意
映画『怒りの葡萄』時代背景は?
映画『怒りの葡萄』タイトルの「葡萄」の意味は?
映画『怒りの葡萄』監督・キャストは?
映画『怒りの葡萄』ぼくの感想・評価
映画『怒りの葡萄』配信先




『怒りの葡萄』はどんな映画?

映画『怒りの葡萄』はどんな映画なのか?ですが、まずは映画の時代と舞台、あらすじを簡単に書いておきましょう。

時代背景と舞台は、1930年代=大恐慌時代のアメリカです。中西部の農地が企業によって買い占められ、理不尽な仕打ちを受け土地を追われた農民たちが、新天地を求め西のカリフォルニアを目指します。

主人公は、代々支えてきた農地を大企業に追われた農民ジョードとその一家です。彼らは一台のポンコツトラックに一切合切を詰めこんで、ルート66をひたすら西に進みます。そんな旅のさまざまな出会いや出来事が『怒りの葡萄』では描かれます。

映画、小説ともに大恐慌時代のアメリカ社会の矛盾と、それにあがなう農民たちの姿が描き出され、メッセージ性の強い作品です。

映画は当時の資本主義による搾取、階層差別、社会の底辺に生きる人々の苦難など、様々な問題を提起しています。

そして貧困に喘ぎ、出口をさがしさまよう主人公たちの姿は、どこか人材の使い捨てが当たり前になってしまった今の令和の日本にも通じるように、ぼくは感じています。

『怒りの葡萄』スタッフ・キャスト解説

原作者・ジョン・スタインベックのこと

原作を書いたジョン・スタインベックは、この小説で、1940年にピューリッツァー賞を受賞しています。

ジョン・スタインベックは後にノーベル文学賞(1962年)も受賞しているのです。

主に『怒りの葡萄』を書いたことが受賞理由だったようです。ピューリッツァー賞にノーベル文学賞。…すごいです。

監督・ジョン・フォードのこと

監督のジョン・フォードは、アメリカでもっと有名でのちの映画監督に大きな影響を与えた巨匠です。50年以上のキャリアの中で140本を超える作品を監督しています。

John Ford on the set of
“Stagecoach,” 1939
MPTV/ © 1978 Ned Scott Archive

駅馬車』(1939年)や『捜索者』(1956年)などの西部劇や、『静かなる男』(1952年)などが有名です。アカデミー賞では監督賞を4回受賞と史上最多。

ちなみにスティーブン・スピルバーグ監督も映画産業に入った若かった駆け出しの頃に、ジョン・フォードに会っていますが、そのエピソードが映画『フェイブルマンズ』にも描かれています。(当サイトの『フェイブルマンズ』レビューはこちら)

主演・ヘンリー・フォンダのこと

主演のヘンリー・フォンダも映画界に多大な影響を与えた俳優の一人と言ってよいでしょう。

子にジェーン・フォンダピーター・フォンダがいますが二人とも映画界を支えた俳優です。ヘンリー・フォンダはそんな俳優一家の長でした。

ぼくが知ったのは『ミッドウェイ』(1976年作品の方)でしたが、その後に『十二人の怒れる男』や『未知への飛行』『黄昏』を劇場でみて、ヘンリーフォンダの俳優としての凄さを知りました。

(『未知への飛行』は当サイトでもレビューしていますのでよかったらご覧ください)

アカデミー賞、ゴールデングローブ賞を受賞している名実ともにアメリカを代表する俳優です。

そんな、原作もピカイチ、監督もピカイチ、俳優もピカイチなのが本作『怒りの葡萄』なのです。




映画『怒りの葡萄』予告編

映画『怒りの葡萄』あらすじ〜結末まで

はじめに、『怒りの葡萄』のあらすじを、以下簡単に紹介します。ネタバレ含みますので映画を見る方はスルーしてくださいね。

時代背景

時代背景は1930年代。大恐慌時代のアメリカ中西部です。

冒頭の舞台となるオクラホマ州は、干ばつと砂嵐で農作物が壊滅的な被害を受けていました。

同時に企業が土地を買い占め、多くの農民たちが代々耕してきた農地を失っていました。

主人公一家

主人公のトム・ジョードは、殺人罪で4年間服役していた男です。

刑期を終えて故郷オクラホマに戻ると、古くからの付き合いの元説教士ケーシーと偶然出会います。

二人が家に着くと一家の土地はすでに買い占められた後でした。

ジョードの父母、祖父母、子供たちの大家族は、農場労働者募集のチラシに希望を託し、一台の中古トラックに家財を詰め込み、カリフォルニアを目指して旅立ちます。

過酷な旅路

ジョード一家は、オンボロトラックでルート66を西へ進みます。

しかし、旅路は過酷を極めます。

食糧不足、劣悪な衛生環境、排他的な地元住民など、様々な困難に直面します。

祖父母もそんな過酷な旅に耐えられるはずもなく、道中命を落としてしまいます。

カリフォルニアでの苦難

ようやくジョードらはカリフォルニアにたどり着きます。

しかしそこもまた楽園ではなく、現実は厳しいものでした。

ジョード一家は、とある流民たちが肩を寄せ合うコミュニティに辿り着きます。

元説教士ケーシーは、怒りに任せ保安官を殴ったジョードを庇い、逮捕されてしまいます。

ジョードたちはそのコミュニティにもいられない、と、抜け出してまた旅を続けます。

彼らはある農場に働き口を見つけます。

しかし賃金は低く、劣悪な労働環境で働かされるジョード一家。

その農場の郊外の一軒家でジョードはケーシーと再会します。

ケーシーは農民解放運動に加担していたのです。

喜ぶのも束の間、家は農場に雇われたガードマンたちに包囲され、ケーシーは死亡。

ジョードは傷を負ってしまいます。

新たな地へ

お尋ね者となったジョード。

家族に迷惑をかけられない、、、と、彼は一人で農場を抜け出す決意を固めます。

一人旅立とうとするジョードの意を、しかし母親が見抜きます。

「家族で新たな地へ旅立とう、、、」と、ジョード一家は未来への希望を胸に、静かに農場を抜け出し新天地へと向かいます。

エンドロール。



 




『怒りの葡萄』の葡萄が意味するものは?

『怒りの葡萄』の「葡萄」って、一体なんのこと?って思いませんか?

映画の中でカリフォルニアの農場で収穫するのが葡萄なのかな?と思うかもしれませんが、差にあらず、桃です。

調べてみたところ、「神にふみつぶされる人間」というキリスト教世界の比喩のようです。日本人にはわかりにくいですよね。

いくつかの解釈ができる言葉ですが、「搾取され踏み潰されても、それでも生きる農民たちの怒り」を現しているのかもしれません。

以下、Wikipediaからも転載します。

怒りの葡萄(grapes of wrath)という表現は、同じくヨハネの黙示録に題材を得たアメリカの女流詩人ジュリア・ウォード・ハウの1862年出版の『共和国の戦いの歌』(リパブリック賛歌)の歌詞からとったものであり[5]、当時としても広く知られているものであった。




映画『怒りの葡萄』感想〜監督と俳優のスピリッツ融合作

作られた時代は1939年ですから、太平洋戦争の開戦前です。

モノクロ映画でセット撮影も多いですが、名匠ジョン・フォード監督の力強い演出が古さを感じさせません。

主演の若きヘンリー・フォンダはもちろんですが、母親役マー・ジョード役のジェーン・ダーウェルの熱演が、印象に深く焼き付きました。

母親役のジェーン・ダーウェルが素晴らしいです。

映画はもちろん主人公ジョードの物語なのですが、ジョード一家の旅を支えている母親の強さ、子供への理解が、映画の柱と、ぼくはあえて言いたいです。

過去見た映画の中で理想の母親像の一人として刻まれました。



映画『怒りの葡萄』感想〜原作を2時間に収めた巧みさ

「ダイジェスト感」がなかった良さ

ぼくは原作(上下2巻)も読んでいますが、2時間の映画でどう表現するのだろう?と思って観たのですが、柱をしっかり据えて、原作小説の持つ深いメッセージ性を2時間の中に、たくみに描き込んでいる、、、と感じました。

長編文学を2時間にまとめたとはいえ、そのテによくある「ダイジェスト感」が全くありません。その点に驚きました。

原作文学を読んで、ぼく的に印象深いシーンがいくつもあるのですが、そんな印象に残っているシーンは一つも出てこない。だけど最後まで波のように筋を引っ張ってゆきます。

そのことは映画としての脚本がよく練られている、、、ということなんだと思います。

原作で印象に残っているシーンって、多分に人それぞれです。脚本が素晴らしければ「はしょり」もよいのです。そんなシーンが映画ではしょられたといって残念がること自体ナンセンスですしね。

ポンコツトラックの存在感が素晴らしい

映画の中で、主人公たちは一台のポンコツトラックで旅をするのですが、家族を運んでルート66をひた走るポンコツトラックの存在感がめちゃくちゃ秀でています。

原作においてもそのポンコツ具合にハラハラさせられた記憶があります。

しかし、本を読んでの印象ですから、あくまでぼくの脳内想像力の産物にすぎません。

そのイメージが実際に映画の中に大道具として登場してきた姿を見た時、ぼくは「なるほど、大家族で移動するトラックって、間違いなくこんな姿だよな!」と素直に感動し、そして納得しました。

あくまで大道具に過ぎないトラックが「登場人物」になっています。

それはもう、美術スタッフの勝利ですね。

ちなみに僕がサラッと描いたトラック、こんな感じです。荷物、人が、これでもか!というほどに山になっているのです。





映画『怒りの葡萄』ぼくの評価は?

歴史越えて今に残る名作を、ぼくが「評価」をするなんて、おこがましいです。

『怒りの葡萄』描かれているのは「人間が人間らしく生きるために必要なのは、『希望』だ…という普遍的なテーマ」です。

そして「逆境は乗り越えるためにある」というメッセージも込められています。

さらにロードムービーとしてみても、通りすぎてゆく人々とのホロリとさせるエピソードや、ハラハラさせる場面と、緩急富んでいます。

令和の今、改めて見直して、映画に描かれている「怒り」は「今」にもしっかりと通じるよなあ…とはっきり思いました。

悲しいかな「歴史は繰り返す」んですね…。

負の歴史は決して繰り返されてはいけないはずですけど、今なおリピートされている。その事実に気付かされました。

+ + +

一本の映画が時代を越えるために必要なのは、なんだろう?と、ぼくは常々、古い映画を見るたびに思っていました。

その答えの一つは「希望を描けているかどうかだ」、と『怒りの葡萄』から教えられました。

ぼくの評価は星四つ半⭐️⭐️⭐️⭐️✨です。

素晴らしい映画をありがとうございました。

『怒りの葡萄』と合わせて読みたいロードムービーに『ノマドランド』があります。『ノマドランド』レビューはこちらからどうぞ。




映画『怒りの葡萄』監督・スタッフ・キャスト情報

監督:ジョン・フォード 脚本:ナナリー・ジョンソン 撮影:グレッグ・トーランド 音楽:アルフレッド・ニューマン

キャスト:ヘンリー・フォンダ ジェーン・ダーウィル ジョン・キャラダイン 他



映画『怒りの葡萄』配信・レンタル情報

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