映画『スノーピアサー』ネタバレドラマ考察感想・あらすじ結末から評価まで|氷の世界を走り続ける列車と、終わりなき階級闘争

スリラー・SF・アクション

🎬 映画『スノーピアサー』|氷の世界を走り続ける列車と、終わりなき階級闘争

こんにちは。絵描きのタクです。今回取り上げる映画は『スノーピアサー』。2013年のアメリカ合衆国・フランス・韓国合作です。


舞台は地球温暖化が進行した近未来。人類は化学物質で気候を冷やそうと試みるも、逆に氷河期を招いてしまいます。

生き残ったわずかな人々は謎の永久機関で走り続ける列車「スノーピアサー」に乗り込み、そこで暮らしています。まるでそれはノアの方舟のような…。しかし、車両内は厳格な階級社会がありました。先頭には富裕層、最後尾には極貧層。交流は断たれ、支配と服従の構図が続いていました。

最後尾に暮らす青年カーティス(クリス・エヴァンス)は、仲間たちとともに反乱を起こします。 彼らは先頭車両を目指し、戦いを繰り広げ、そして、列車の最前車両に待っていた“真実”とは──?

今回のレビューはそんな近未来ディストピアSFドラマです。

ちなみに『スノーピアサー(Snowpiercer)』は、“雪を突き抜けて進む者”という意味。 原作はジャック・ロブ、バンジャマン・ルグラン、ジャン=マルク・ロシェットによるグラフィックノベル『Le Transperceneige』です。

🧊 『スノーピアサー』あらすじ(中盤まで):氷に閉ざされた地球と、走り続ける唯一の列車

地球温暖化を止めるため、人類は「CW-7」という化学物質を大気中に散布した。 結果──地球全体が凍りついた。気温はマイナス100度を下回り、あらゆる生命は死滅。 人類は“自らの科学”によって滅亡の淵に立たされたのです。

その中で生き延びたわずかな人々を乗せ、休むことなく走り続ける列車があった。 それが「スノーピアサー」。 永久機関を持ち、地球を一年かけて一周しながら、氷の世界を走り続けている。

しかし、列車の中には厳しい階級制度が築かれていた。 先頭車両には富裕層が贅沢な食事と娯楽を享受し、最後尾には極貧層の人々が暗く狭い車両に押し込められ、配給された黒い“タンパク質ブロック”だけで生きている。

この最下層で暮らす青年カーティス(クリス・エヴァンス)は、仲間のエドガー(ジェイミー・ベル)や老指導者ギリアム(ジョン・ハート)とともに、 「先頭車両にいる支配者ウィルフォード(エド・ハリス)を倒す」という計画を練っていた。

その日、ついに決起の時が来る。 門番を務める兵士を倒し、次々と車両を突破していくカーティスたち。 途中で出会うのが、韓国人エンジニアのナムグン・ミンス(ソン・ガンホ)とその娘ヨナ(コ・アソン)。 ふたりはかつてこの列車の設計に関わり、車両のドアの仕組みを熟知していた。

ミンスの協力を得て、反乱軍はさらに前へと進む。 だが、車両を越えるごとに、彼らの前に立ちはだかるのは“違う世界”の人々だった。 プール、学校、ナイトクラブ……同じ列車とは思えないほどの格差。 「なぜ俺たちはここまで差別される?」と、カーティスの怒りは次第に頂点に達していく。


🚨 『スノーピアサー』あらすじ結末まで〜ネタバレ閲覧注意:先頭車両にあった「真実」とは?

仲間たちは次々と命を落とし、ついにカーティスはナムグンとともに先頭車両へと到達する。 そこには、列車の支配者ウィルフォード(エド・ハリス)が待っていた。

静かに語りかけるウィルフォード。 「この列車は完璧なシステムだ。 人口が増えすぎればバランスを崩す。だから時折“反乱”を起こさせ、人数を減らす必要がある。」

衝撃の事実が明かされる。 カーティスたちの反乱は、実はウィルフォードとギリアムが裏で仕組んだものだった。 彼らは人口調整のため、秩序を保つために犠牲を“コントロール”していたのです。

絶望に沈むカーティス。 彼は自分が最後尾で食べてきた“タンパク質ブロック”の正体が、かつて死体から作られていたことを思い出す。 自分たちの生は、常に支配と犠牲の上にあった。

ウィルフォードは、そんなカーティスに“列車の支配者の座”を引き継ぐよう提案する。 だが、カーティスはその“秩序”がいかに腐っているかを悟っていた。

その時、ナムグンが外の世界に目を向ける。 「見ろ、氷が溶け始めている。」 外には雪の上に顔を出した“緑”が見えた。 もしかしたら、もう人間は列車の中で生き続けなくてもいいのではないか──。

ナムグンとヨナは、列車を脱出するための爆薬を仕掛ける。 カーティスは迷いながらも、それを止めない。 爆発によって列車は脱線し、無数の車両が崩壊。 中にいたほとんどの乗客は死んでしまう。

雪煙が晴れたあと、外に出てきたのはヨナと、列車で生まれた少年のふたりだけ。 彼らの目の前に現れたのは、遠くの山を歩く一頭の“シロクマ”。 ──地球に、生命はまだ生きていた。

人類は終わったのではなく、再び始まるのかもしれない。


❄️ 『スノーピアサー』ネタバレ〜結末の余韻:列車=社会、そして生まれ変わりの寓話

ラストの白熊は、いろいろな読み方ができます。 「人間が滅んで自然が戻る」という皮肉でもあり、 「文明が滅びても、生命は続く」という希望でもある。

列車という閉じた世界は、ぼくらが生きる社会そのもの。 先頭と最後尾、富と貧困、支配と従属。 その中で“新しい世代”が雪原に立つ──という構図が、まるで現代への警鐘のように突き刺さります。

実に風刺と希望が入り混じった終わり方だと思います。

 

🎥 なぜ『スノーピアサー』を観ようと思ったのか

ぼくは映画評論家ではないので、なんでも片っ端から観るわけではありません。 限られた2時間をひねり出す以上、そこには「観る理由」があります。

今回は、理由が2つありました。

ひとつは、『リトル・ダンサー』の名子役だったジェイミー・ベルと、渋すぎる俳優エド・ハリスが出演していること。

もうひとつは、監督が『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノで、製作が『オールドボーイ』のパク・チャヌクだったことです。

このふたりのタッグ、韓国映画界最強コンビといってもいい。 「これはハズレないだろう」と思いつつも、正直“列車の中だけで物語が展開する”…..という設定に、最初はあまりピンときていませんでした。

ところが──観始めると、この“狭い世界”がむしろ面白い。

物語の構造が、古典的で強いんです。

「A地点からB地点へ進む」という、冒険アドベンチャー名作に共通する王道パターンなのです。


🚆 見どころ:列車の中の「宇宙戦艦ヤマト」

この「AからBへ進む物語」というのは、名作が多いと書きました。 ぼくが子どもの頃ワクワクして観ていた『宇宙戦艦ヤマト』だって、究極のA→B作品でした。

ヤマトがイスカンダルを目指したように、『スノーピアサー』では最後尾から先頭を目指す。 列車という閉ざされた空間の中で、貧困層の反乱と階級闘争が繰り返される。

彼らの前に立ちはだかるのは、冷酷なエリートたち。 ガミラスに代わって、資本主義の亡霊たちが行く手を阻むのです。

📚 原作とテイスト:バンド・デシネの影

観終わってから知ったのですが、この映画の原作は1982年のフランスのコミック『Le Transperceneige(邦題:スノーピアサー)』。

アクションもテンポも良く、ド派手な演出もあるのですが、観ていてどこか「マンガっぽい」と感じていました。 マーベル的な“キメカット”連続の絵作り。 それを潔く楽しめばよかったのかもしれないけど、ぼくにはどこか割り切れない部分が残りました。

たぶん理由は、フランスのバンド・デシネ特有の毒気や皮肉が、映画では中和されていたから。 その“毒の香り”が薄まった分、映像はスタイリッシュだけど、原作の持つ苦味は消えていたのかもしれない、、、そんな気がします。


⚙️ 感想と評価:ポン・ジュノの“痛みの美学”

文句を言いながらも、列車という極限の密室で繰り広げられるアクションは見応え充分です。 斧を振り回しての肉弾戦なんて、見ているこっちまで痛くなるほど。

キャラも立っていて、エド・ハリスも終盤に登場。派手に暴れず、静かな圧で物語を締めくくります。 ただし脇役の退場スピードが異常に早い(笑)。フラグもなしに次々と死んでいく。 ここにこそ、ポン・ジュノ監督の“あっけなさの美学”があるのかもしれません。

クライマックスでは、「列車内の世界=ぼくらの生きる社会そのもの」と突きつけられる ディストピア映画として、腑に落ちる終わり方でした。

ぼくの評価は10点中7点。 傷だらけのアクションと皮肉な寓話が共存する、不思議な熱をもった映画でした。

面白い映画をありがとうございました。

👥 スタッフ・キャスト

役名 俳優名
カーティス クリス・エヴァンス
ウィルフォード エド・ハリス
ナムグン・ミンス ソン・ガンホ
エドガー ジェイミー・ベル
ヨナ コ・アソン
ギリアム ジョン・ハート

監督・脚本:ポン・ジュノ
撮影:ホン・キュンピョ/編集:スティーブ・チェ/音楽:マルコ・ベルトラミ
製作:パク・チャヌク

💻 『スノーピアサー』配信情報

現在以下の配信サービスで視聴可能です。

  • U-NEXT
  • Prime Video
  • DMM TV
  • Rakuten TV
  • Hulu







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