『戦争のはらわた』見逃し厳禁!戦争映画の常識をぶっ壊す傑作を徹底レビュー【解説・評価編】
こんにちは、映画好き絵描きのタクです!
今回は、サム・ペキンパー監督の戦争映画『戦争のはらわた』について、徹底解説と個人的評価をお届けします。すでにあらすじ考察編を読んでくれた方はありがとうございます!(まだの方は別記事をぜひ)
さて、今回のキーワードはズバリ「編集」と「音」。この映画、ただの戦争映画じゃありません。戦争映画の枠を超えた、ペキンパーの美学が炸裂してるんです。
編集の魔術──映画を“魅せる”真の職人芸
映画の最初の数分で「これは面白い!」って思えるかどうか、編集が鍵を握ってると思いませんか?
『戦争のはらわた』の編集は、当時としては異例のリズムと間合いで構成されていて、その独特さが物語の緊張感を倍増させているんです。
例えば、戦場で倒れていく兵士の映像と、全く別のカットを短いテンポで交互に挟む。まるでサブマシンガンのような編集の連打。観ているこちらも無意識にそのスピードに巻き込まれていく感覚。
この編集の力こそが、『戦争のはらわた』をただの戦争ドラマではなく、“体感する映画”へと押し上げているポイントなんです。
音で刺さる──「絶叫」が戦場に引きずり込む!
そしてもう一つのキーワード「音」。ここでは特に“兵士たちの絶叫”に注目してください。
銃弾が当たった瞬間の「ぎゃああっ!」とか「ぐわあっ!」っていう、生々しい叫び声。これが、とにかくリアル。
ホラー映画全盛期だった70年代に、「絶叫」の本当の恐ろしさを戦場で表現したペキンパー。音だけで観客をスクリーンの中に連れて行ってしまうその演出力、ぜひ体感してみてください。
エンドロールにまで仕込まれた“銃の音”の謎
もう一つ、サウンドデザインで印象的だったのが、劇場公開版エンドロールに流れていた「ンカシャ!」という銃の遊底音(※弾を込めるときの金属音)。
この音が数秒ごとに挿入されることで、映画が終わっても戦場の緊張感が持続するという演出だったんです。
しかし、なんとビデオ版ではこの音が削除……。理由は不明。DVDで復活していることを祈るばかりです。
兵器のリアル度が桁違い!ミリタリーマニア歓喜のディテール
CGなんて無かった時代に、実際の第二次世界大戦当時のソ連軍主力戦車「T-34」が登場するんです。これ、マジで感動しました。
普通は撮影当時の現役戦車にそれっぽいペイントをして代用するのが定番でしたが、ペキンパーはそんな妥協を許しません。
「ホンモノじゃなきゃ意味がない!」
そんな怒号(妄想ですが)が聞こえてきそうなくらいのこだわり。
さらに、ドイツ兵がソ連のサブマシンガン「バラライカ」を鹵獲して使う描写もリアル!補給難の中で敵の兵器を転用する、戦場のリアルをしっかり押さえてます。
タクの評価:文句なしの⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
戦争の理不尽さと狂気を真正面から描いた本作。アドベンチャー系戦争映画とは一線を画す、まさに異質の名作です。
ただ一つ、どうしても気になるのが日本版タイトル「戦争のはらわた」。
当時は「◯◯のはらわた」ブームだったとはいえ、ホラーと勘違いされて敬遠されてしまった人も多かったのでは?原題『Cross of Iron(クロス・オブ・アイアン)』のままで良かったんじゃないかなぁ…。
ちなみに「クロス・オブ・アイアン」とは、物語のカギを握る“鉄十字章”のこと。この勲章にまつわる人間ドラマも見どころの一つです。
名脇役・デヴィッド・ワーナーの味わい深さ
最後に少しキャスト話を。
将軍付き士官役で登場するデヴィッド・ワーナーが、めちゃくちゃ渋い!『わらの犬』でもおなじみの俳優さんですが、ここでも良い味出してます。
後年は『タイタニック』で、主人公ジャックを閉じ込める悪役ガードマン役としても登場。派手じゃないけど印象に残る名優でした。
というわけで、戦争映画というジャンルにひとつの“革命”を起こした『戦争のはらわた』。ホラーっぽいタイトルに惑わされず、ぜひ一度観てほしい一本です!
『戦争のはらわた』デジタルリマスター版予告編
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