映画『スケアクロウ』あらすじラストまで〜解説・ネタバレ感想・評価|カカシとライオンがくれたプレゼント

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『スケアクロウ』感想レビュー
あらすじラストまで〜カカシとライオンがくれたプレゼント

このレビュー記事にはネタバレが含まれます。映画をご覧になる方は、必ず鑑賞後にお読みください。また感想評価はあくまで一個人の印象です。その点をご留意の上お読みください。



こんにちは!映画好き絵描きのタクです。

今回レビューする映画は、『スケアクロウ』。1973年公開のアメリカ映画です。
監督はジェリー・シャッツバーグ。主演はジーン・ハックマンとアル・パチーノ。アメリカンニューシネマ後期のロードムービーです。



 

『スケアクロウ』解説

このお話は、二人の男が道端で出会い、ともに旅を続けます。性格が全く違う二人が旅の出来事の中で友情を深めてゆくロードムービーです。

「スケアクロウ=Scarecrow」は日本語に訳すと「案山子(かかし)」。畑に立っている人型を模した鳥よけです。「みすぼらしい人」の意味もあります。

1960年代後半から70年代に、ベトナム戦争や体制への批判から、それまでとは違う表現で作られた作品を「アメリカンニューシネマ」と呼びますが、『スケアクロウ』もアメリカンニューシネマの傑作と評価されている作品です。

第26回カンヌ国際映画祭においてパルム・ドールと国際カトリック映画事務局賞をダブル受賞しています。

何より見どころは、ジーン・ハックマンとアル・パチーノという二大俳優の共演でしょう。
友情とは何なのか?本当の強さとは?もっとも大切なものは何なのか?…そんなことを考えさせられる作品だと思います。


『スケアクロウ』スタッフ・キャスト

◆ スタッフ

役職 名前
監督 ジェリー・シャッツバーグ
脚本 ギャリー・マイケル・ホワイト
音楽 フレッド・カーリン
撮影 ヴィルモス・ジグモンド
製作 ジェリー・シャッツバーグ

◆ キャスト

俳優名 役名
ジーン・ハックマン マックス
アル・パチーノ ライオン
ドロシー・トリスタン フレンチー
アン・ウェッジワース コーリー
リチャード・リンチ ライリー



『スケアクロウ』あらすじ〜ネタバレラストまで

あらすじはネタバレを含みます。映画を観る方はスルーしてください。

+ + +

暴行傷害の罪で6年の刑期を終えたマックスと、長年の船乗り生活を終えたライオンは、南カリフォルニアで出会い、ヒッチハイクの旅を共にすることになる。

喧嘩っ早く無愛想なマックスは、いつもありったけの服を重ね着し、寝る時は靴まで枕の下に置き、人懐っこく陽気なライオンは、ひとときも赤いプレゼントリボンのかけられた白い箱を手放せない。

そんなちぐはぐな2人は次第に心を通わせ、マックスの洗車場開業の夢を軸に、ピッツバーグを目指して旅を続けていく。

デンバーでは、マックスの妹コーリーの家を訪ねる。コーリーの同居人フレンチーとねんごろになるマックス。しかしピッツバーグでの洗車場開業の夢は諦めない。

だがバーでライオンの奇行が原因で客を巻き込んでの喧嘩に発展、二人は逮捕され、刑務農場に送られる。マックスはライオンを許せない。ライオンは人当たりの良さで同室の男に気に入られるが、性的暴行を受けかけ、マックスは男を叩きのめす。しかし心身に深い傷を負うライオン。

釈放後、2人は旅を再開しデトロイトを目指す。しかし、かつての明るさを失ったライオンの心は次第に不安定になっていく。

デトロイトでライオンは別れた妻アニーに電話をかけるも、再婚を知らされ、子どもも「流産した」と告げられ、強い衝撃を受ける。

精神の均衡を崩したライオンは病院に収容され、重度の精神障害と診断され、強い鎮静剤で眠り続ける。

マックスはベッドに眠り続けるライオンを前に、これからは自分が面倒を見ると誓い、開業資金を銀行から引き出すためピッツバーグに一人で旅立つ。

ラストは駅の切符売り場。ブーツのかかとに隠していたわずかな金に手をつけて列車の切符を買うマックスの姿で、エンドロール。



感想考察〜オズの魔法使いとスケアクロウ

黄金コンビと『スケアクロウ』

名優2人のロードムービーは、「えっ⁈」と前につんのめるほど、見事なまでの開放型エンディング(結末後の意味を説明せずに、観客に委ねて終わる映画の閉め方)でした。

どんなふうに終わるかは後にまわしますが、まるでハサミで物語をちょんぎったように、幕がおります。

あまりの唐突さにぼくは唖然となり、我に帰ったとき脳裏にやってきたのは、こんな言葉でした。

「そういえば、ケンカしてそのままになっちゃってるアイツは、今ごろどうしてるかな…」

でした。

『スケアクロウ』の主人公の2人は、それこそ絵に描いたような凹凸コンビです。

どことも知れぬ田舎の一本道で主人公となる2人が出会うところから映画ははじまります。

巨漢のマックス=ジーン・ハックマン=は、喧嘩っぱやくてオシが強い巨漢です。

かたやアルパチーノ演ずるライオンは、その名とはかけ離れた優しくて気遣いの塊のような背の低い男です。

性格の全く違う2人の男のロードムービーなんですが、その旅は、性格が違うからこそ、どこまでも一緒に旅できたのでしょう。

2人とも喧嘩っぱやくてオシが強ければ、あっという間にケンカで別れるでしょうし、逆に2人とも気遣いしまくりのタイプだったら、これまたいつも気づまりです。早々に「じゃあ、また、どこかでねバイバイ」となるでしょう。

このドラマは、「凹凸コンビは黄金コンビだ」という人生の約束事を、ある時は暗に、時には明快に描いて見せてくれます。


『オズの魔法使い』と『スケアクロウ』

凹凸コンビは黄金コンビ、なんて書くと、楽しそうでわかりやすい映画に見えますが、なんといってもそこはアメリカンニューシネマ。そうは問屋がおろさないのが『スケアクロウ』です。

この映画は静かに、そして残酷な問いをじわじわっと突きつけてきます。

劇中、アルパチーノ演ずるライオンが、ジーンハックマン演ずるマックスに、カラスとカカシの話をします。

それは「カカシはカラスを怖がらせているか?それとも笑わせているか?」という、どうでもいいような内容です。

マックスは「カラスは怖がってやってこないに決まってるじゃないか」と答えます。しかしライオンは、「カラスは笑わせてくれる農夫はイイ人だから、そんな農夫の畑を狙うのをやめよう思うんだ」と言います。そしてそれ以降マックスを時折「カカシ」と呼んだりもします。

そこでぼくは考えました。

「タイトルのスケアクロウの意味はカカシだ…てことは、カカシがこの映画の大きな意味をはらんでいることは間違いないだろうな…でも、「カカシ」が一体どういう意味を持つんだろう?」…と気になったのですが、アルパチーノ演ずる小男のあだ名が「ライオン」であることに気がつき、はた、と思いあたる物語がありました。

それは『オズの魔法使い』です。

「この映画は『オズの魔法使い』のテーマの反語的なツクリをしているんじゃないか?」と。

だって、『オズ』の脇役は、ブリキの木こりと「カカシ」、そして「ライオン」ですから。

もちろん『オズ』は童話です。明るいです。そしてかなり哲学的なように思います。

『オズ』の童話の核にあるテーマは「探していたものは、最初から自分の中にあった」です。

カカシは持っていない「脳」を、ブリキの木こりは持っていない「心」を、ライオンは持っていない「勇気」を手に入れる願いを叶えてもらうため、旅をします。

でも実際は…最初から全部持っているんだ、ということを諭されます。

”それぞれ欠けているものはそれぞれが元々持っていた”というのが『オズ』なんですね。

『オズ』は、「あなたは、あなたのままでまるっと○」と、肯定してくれる物語です。

一方で映画『スケアクロウ』のカカシとライオン…オシが強くケンカっ早いマックスと、心根優しくいつも陽気なライオンは、互いに欠けているところを補い合うような存在です。

『スケアクロウ』は「2人揃ってまるっと○」なのだと言うメッセージがあるように思えます。



欠けているものはすぐそばにある

『オズ』のメッセージは「現実に潰されるな。最初から人間性はパーフェクトに備わっている」です

一方『スケアクロウ』は「現実に潰されても、人間性は消えない」「自分に欠けているところは友達が補ってくれるから大丈夫。」がメッセージのように思えます。

『オズ』も『スケアクロウ』も、どちらもつまり―「欠けているものはすぐそばにある」―と言いたいんじゃないかな…って思うのです。

 『オズ』と同じ真理を映画『スケアクロウ』ではやるせない現実世界の中に置き換えて、こう言ってる気がするんです。

「さすがに現実は『オズ』ほど甘くはない、厳しいよ。それでも、補い合うダチとふたりでいればなんとか大丈夫なんだ。」と。

『スケアクロウ』はそれまでの価値観や体制に「本当にソレでいいのか?」とアンチを突きつけたアメリカンニューシネマです。なので童話『オズ』とは真逆の超辛口トーンです。だけど結果的に『スケアクロウ』は『オズ』と近いことをメッセージに込めているんじゃないかな…と、ぼくは感じたのでした。



考察〜『スケアクロウ』のくれるメッセージ

『オズ』と『スケアクロウ』の大きく違うところ、それは、

『 オズ』のメッセージは、

「世界は優しい」
「あなたは救われる」

と感じます。そこには希望があります。

一方『スケアクロウ』のくれるメッセージは、

「世界は厳しい」
「救われないかもしれない。それでも、優しさを持つ人であろうとするか?」

という超現実的な示唆のように思います。

『オズの魔法使い』が「人は最初から満たされている」と教えてくれる物語だとすれば、『スケアクロウ』は「それでも現実は人を傷つける」と、世界を激辛に描く物語のようにも思えるんです。

つらつらと『オズ』を材料に『スケアクロウ』が何を言いたかったのかを考えてきましたが、以下、結論です。

「ハードな世界に立ち向かうには、1人じゃ絶対ムリだ。でもな、コンビで補い合いながら立ち向かえば、なんとか戦えるんだよ。」

『オズ』と『スケアクロウ』のカカシとライオンに、真理と違いを見つけたことで、ぼくは映画『スケアクロウ』をスッキリ納得できたのでした。



優しさと10ドル

ここからはクライマックス〜エンディングのネタバレとなります。映画を見たい方はスルーして観劇後にお読みください。

+ + +

映画の問いの一つに「人は、優しさだけでは生きられないのか?」もあると感じています。

ライオン(パチーノ)もマックス(ハックマン)も1.夢を持っており・2.人を思いやる心もあり・3.悪人ではありません。ふたりは性格・表現方法は違えど、3拍子揃った”優しい人”なんです。

それなのに、社会の中で、どんどん削られていきます。特に性的虐待を受けるライオンの心の変化は顕著です。それは「純粋な人間は、時として一瞬で壊れてしまう」という現実を描いているように思えます。

『スケアクロウ』の中で「 頑張れば報われる」とか、「優しければ救われる」というメッセージはありません。

映画『スケアクロウ』の映画の幕引きは、ピッツバーグに全預金を引き出しに向かおうと駅に行くマックスで、スパッとハサミでちょんぎられるように終わります。

なぜそこでちょん切り型の幕引きにしたのでしょうか?

マックスが、駅のチケット売り場で靴底をガリガリこじり開けて、なけなしの10ドルをつまみだし、きっぷ代を払う….そこで唐突にジ・エンドとなるそのエンディングの意味は何だったのでしょうか?

ぼくはその意味を以下のように感じました。

「旅のその先は報われないかもしれない。それでも、優しさを失わない人間は、絶対的に尊い」

「わずかであっても優しさを持ちつづける人間は、前に進めるんだ」

映画『スケアクロウ』は、そんなことを伝えたかったのではないか….。なけなしの10ドルをチケット売り場で手放したマックスの姿に、僕は無限の優しさを感じました。



考察〜リボンの箱の中身は何だったのか?

ライオンが片時も離さなかった箱

劇中、ライオンが大切に抱えている「赤いリボンのかけられた白い箱」が登場します。しかし、子供へのプレゼントと思わせる以外、何も語られません。中身が何であるのかさえ、はっきりしません。いったいライオンが抱える白い箱は、何を意味しているのでしょうか?

すごく象徴的なのは、箱の様子の変化です。

赤いリボンの白い箱は、前半は、ライオンが常に抱えているにも関わらず、綺麗なままです。ところが刑務所で性的虐待を受け、心に傷を負った時点からその白い箱は傷み始め、色もくすんでいきます。その様子は、まるでライオンの心を映し出すかのようです。

そう考えるとあの箱は”ライオンの心の鏡”とも捉えられます。

さらに深くはこの存在を考えてみると、それだけではないように思います。


箱には何が入っていたのか?

注意!以下ネタバレです。

先に「箱は子供へのプレゼントと思わせる」と書きました。しかし、中身を見せることをしませんし、何が入っているのかはハッキリと語られません。

では一体、箱の中には何が入っていたのでしょう?

ここからはぼくの独断考察です。

クライマックス近く、デトロイトにたどり着いたライオンは、寂れた自動車修理工場脇の公衆電話から妻に電話します。そこで妻から子供は流産だったとウソをつかれます。その言葉に愕然としたライオンはしかし、逆に大げさに喜んでマックスと抱き合い、それまで片時も離さなかった赤いリボンのプレゼントボックスを、修理工場傍に停められたホコリっぽいクルマの上に無造作に置いたまま、マックスと共に電話ボックスから立ち去ります。

実は、刑務所で傷ついたライオンの心は、道中、大事に抱えてきた箱を手放したその瞬間、ついに完全に崩れているんです。

では、いったい、箱には何が入っていたのでしょうか?

ぼくの答えは、

「箱の中身は空だった。何も入っていなかった」

です。

 

たぶんライオンは、まだ見ぬ子どもの存在が、心の支えになっていたんだと思います。その子に何かを届けよう、、、とライオンは思い、最も大切なものを入れようと考えたんだと思います。

では、”最も大切なもの”とは何でしょう?

サン=テグジュペリの小説「星の王子さま」に有名な言葉があります。それは、

【大切なものは目には見えない】

です。

ライオンは、彼なりに最もかけがえのない大切な”もの”をギフトとして届けようと思っていた。しかしそれは”モノ”に置き換えることはできなかった。だから自分の”愛”をその箱に大切に入れて持ち歩いていた、、、。

妻への電話で、流産というウソを言われたライオンが立ち去った後、赤いリボンの箱はこわれかけ、埃まみれの車の上に置き去りにされてしまいます。ボンネットに置きっぱなしにされたのはライオンの”愛”だったようにぼくには思えるのです。

そう考えるとぼくの中で、『スケアクロウ』の全ての辻褄が合うのです。

この考察は間違っているかもしれません。いや、間違っていてもいいんです。少なくとも『スケアクロウ』のマックスとライオンは「目に見えないとても大切なもの」をぼくにくれたのですから。


『スケアクロウ』評価

公開から半世紀以上たった2026年に初めて見た『スケアクロウ』でした。ぼくの評価は星四つ半⭐️⭐️⭐️⭐️✨です。

とても素晴らしい映画でした。ありがとうございました。


『スケアクロウ』配信・レンタル情報

以下のサービスで配信・レンタルされています。(2026年1月時点での情報です。配信が終わっておいる場合もありますので、ご確認ください)

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