『1917 命をかけた伝令』考察|ワンカットされど縦横無尽!あらすじ感想評価まで〜世界の美しさと人間の業

戦争・歴史・時代

こんにちは!映画好き絵描きのタクです。ここのところ絵本の仕事に追われ、ちょっと間が開いてしまいました。はい、言い訳です。気を取り直して今回レビューする映画は、『1917 命をかけた伝令』です。(2020年公開:イギリス・アメリカ共同制作)





「全編ワンカット!」の謳い文句で「どういうことだろう?」と思っていましたが、観て納得。みなきゃソンの映画です。戦争映画というジャンルに新しく足跡を刻んだ映画『1917 命をかけた伝令』を、ぼくなり目線でレビューします。

『1917 命をかけた伝令』予告編

『1917 命をかけた伝令』解説

監督はサム・メンデス。『アメリカン・ビューティ』『007スカイフォール』といった作品を撮った監督です。

キャストは主役のウィル・スコフィールド役をジョージ・マッケイ。トム・ブレイク役をディーン=チャールズ・チャップマン。

全編ワンカット構成で話題になった映画でもありますね。

そのリアリティといかにもありそうなストーリーから「実話なの?」と思われるのもわかります。が、フィクションです。

第一次世界大戦では、命令伝達は電話でしたが、電話線が切られた時は、伝令兵が戦場を駆け抜け伝えていました。

全編ワンカットはVFXが発達したから成せたことですが、まさに主人公の1日を追体験する感じです。




『1917 命をかけた伝令』あらすじ

第一次世界大戦時のフランス。塹壕が慧然と続く西部戦線ではドイツ軍が後退、デボンシャー大隊は追撃命令を下す直前にあった。

しかし、航空写真からドイツ軍の敗退と見えていた後退は、戦略的撤退であり、イギリス軍の追撃部隊を殲滅させるワナだった。

そのことを知った司令部は二人の伝令兵ウィルとトムに突撃中止の命令を託す。

ウィルとトムは託された命令書をもち、敵地をすすむことになる。

敵地を突破し、のどかな田園に二人は出るが、そこに墜落してきたドイツ戦闘機のパイロットに情けをかけたトムは刺し殺されてしまう。

一人となったウィルは、単身燃え盛る市街戦を潜り抜け、川を越え、ついにデボンシャー大隊の兵士たちと合流する。

しかし、命令書は司令官に渡さなければ意味がない。長々と続く塹壕に司令官を探すウィル。

果たしてウィルは命令書を渡して突撃を中止させ、味方の兵士たちの命を救うることができるのか?

…といったあらすじです。




『1917 命をかけた伝令』考察〜様々なスタイルの戦場が2時間に集約

『1917 命をかけた伝来』の他の戦争映画と違うところは、「いくつもの異なるタイプの戦場を2時間で見せてくれる」という点です。

たとえば同じく戦争映画『西部戦線異常なし』や『プライベートライアン』でも、確かにリアルな戦場を見せられます。

しかし『1917 命をかけた伝令』はそれらの映画とは一味違います。

それはなぜか?

理由は、どこまでもカットなしでピタリくっついてゆくカメラにあります。(くっついているようにVFXで継ないでいるわけですけど)

観客は、主人公たちをどこまでも追いかけてゆくカメラ目線で戦場に放り込まれます。(ぼくは少なくとも放り込まれた)

そのワンカット効果で主人公たちの進む目の前の「風景」に自然に心が向くのです。

例えが悪いかもしれませんが、旅先で素敵な街に出会った時、「あの角を曲がると、一体どんな風景があるんだろう?」思う期待にも似た感覚です。

では、どんな戦場シーンが現れるか、そして、どう感じたか?を時系列でレポートしてみます。

【 】内はそれぞれの戦場シーンで、ぼくの心が感じたことを言葉に置き換えたものです。

1.オープニング==【美しいフランスの田園風景】

2.塹壕から出発==塹壕の外の色は、黒です。あちこちに転がっている戦死者の死体。最前線の色です。【クレーターだらけの黒い泥の戦場】

3.空薬莢積み重なる打ち捨てられたドイツ軍陣地を行く==【物量消耗の無意味さ】。

4.トンネル内ドイツ軍基地に入る==そのトンネル内塹壕の作りの丁寧さに几帳面なドイツ気質が現れています==【閉塞感】

5.美しいフランスの平原==トンネルでのトラップ爆発からからくも脱出した2人は、平原にでます。==【トンネルの閉塞感から一転、平原の開放感】

6.その美しい平原を進むと現れるのは一軒の農家。【打ち捨てられたばかりの酪農家の絵になる美しさ】

7.橋が落ちた川を挟んで狙撃兵との対峙。【恐怖】

8.破壊し尽くされ闇に燃え上がる市街で、ドイツ兵から追われる主人公。==【闇の業火が光の世界を浮き上がらせる・悪と善のせめぎ合い対比の美】

9.逃げ込んだ住居。==【赤子を抱えた女性との心の交わりのほのかな美しさ】

10.川へ逃げ込む。==【無為に殺された市民の死体の無惨さ】

11.森==歌を歌う一人の兵士と、その歌を静かに聞く大勢の兵士たち。その兵たちは伝令を伝えるべく目指していた大隊だった。==【歌う兵士の凛とした美】

12.大隊司令部のある塹壕==【白亜の塹壕〜チョーク層の地面を掘った塹壕の白色の美しさ】

13.突撃命令が下され、塹壕から草原に駆け出す大勢の兵士たち。【その兵士たちが突撃し斃れてゆく草原に咲き乱れた野の花の、なんとかわいい美しい世界】

14.ラスト。野戦病院でトムの兄と会う主人公ウィル。==【奇妙な清々しい空気】

長々と順を追って書きましたが、戦争映画の持つヒヤヒヤハラハラ感はもちろん全編貫いてあります。

ですが、破壊、殺戮といった醜悪さ以上に、対極である【美】をぼくは感じてしまいました。

【美】感じさせられたのは、なぜだろう??…数日、考えていました。

答えを以下、書きます。

『1917 命をかけた伝令』考察〜隠されたメッセージ

監督は、あえて変幻自在なワンカットという仕掛けでもって、観客の心を鋭敏に研ぎすまし、

戦争という醜悪の対極にある【美】を忍ばせることで、

「世界は美しい。どうしようもない人間にも、まだ救いがある…」

というメッセージを込めたかったのではないか???

これがぼくの感想です。

美しさ探しをさせられた戦争映画でした。

こんな戦争映画は初めてでした。

 

『戦場と人間たちの醜悪さ。それでも静かに人間を見守る自然美による一抹の救い』これが、この映画の隠れたメッセージだと、思っています。




『1917 命をかけた伝令』感想〜ワンカットだけどタルミがない

普通の映画って、シーンごとに伝えたい「意図」〜ハラハラさせたい、とか、しんみりさせたい、といった意図〜を効果的に観客に刷り込むため、意味を込めたカメラワークを繋いで、複数カットで構成されています。

複数カットを細かく繋いでたたみかけることで、観客の「余計な思索」を断ち、ドラマに集中させます。

「ワンカットワンカットが長回しで、だらけてしまうなあ」と思ったことはないでしょうか?

カットが無駄に長いと、その長さの中で観客は「あれこれ考えてしまう」んだと思います。少なくともぼくは、そうです。

ところがです、『1917 命をかけた伝令』は確かにワンカット長回しの極み(本当は複数カットをうまく繋いでいるのですが、便宜上、ワンカットと呼びますね)ではあるけれど、カメラの自由自在な動きが、カット繋ぎの役割も果たして、観客に「あれこれ考える余計な時間」を与えないんです。

主人公を前から捉えていたと思うと、回り込んで後ろから追ったり、カメラと主人公の間に兵士が横切ったりブッシュや柵が現れたりと変幻自在です。

ただただカメラが追いかけるのではなく、きちんと観客の心の動きを予測した演出でカメラが動き回っているんですね。

その考え抜かれたカメラワークに、ぼくは心底、舌を巻きました。




『1917 命をかけた伝令』評価〜星四つ半

ぼくの評価は星四つと半です。

ウィルが隠れた家で出会う女性とのエピソードでの女性の「お願いだから一緒にいて」というシーンのどこか浮いた感じと、「燃え盛る市街の光に浮かぶ十字架」が好きなのですが、「スキ」だからのマイナス星半分でした。

「スキ」と「ヨイ」ってちょっとちがうですよね、、、








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