『ミスト』ネタバレあらすじ考察・感想・評価|賛否真っ二つムービー

スリラー・SF・アクション

こんにちは!映画好き絵描きのタクです。今回レビューする映画は、フランク・ダラボン監督の『ミスト』です。

『ミスト』(原題The Mist=2007年アメリカ映画)は、スティーヴン・キングの1980年の中編小説『霧』を原作とした、ホラー映画です。



監督・脚本はフランク・ダラボン。過去には『グリーンマイル』や『ショーシャンクの空に』といったキング作品も手がけています。

小さなまちが深い霧に包まれたことによって次々起こる怪異現象。そんな中、疑心暗鬼とパニックに陥る人々が描かれます。

ショッキングバッドエンドな映画としても有名です。そのショッキングさは賛否両論五つ星級。

そんな『ミスト』をぼくなりの目線でレビューしてみます。



『ミスト』予告編







『ミスト』解説

大手映画サイトを覗くと「後味が悪い」「鬱映画」「胸糞悪すぎ」のマイナス評価コメント多々の映画が『ミスト』です。

しかし同時に「バッドエンド映画でも良作」「後味悪いけど色々考えさせられる」といったプラス評価も少なくありません。

そう、評価が見事に真っ二つの映画が『ミスト』なのです。

この別れた評価は、何を意味するのでしょうか?「そこそこ」「可もなし不可もなし」の映画ではこうはいきません。

好き嫌いがハッキリ分かれるということは、監督フランク・ダラボンの挑発が観客に見事に届いた結果という気がします。

映画は、スティーヴン・キングの小説「霧」を原作としていますが、ラストシーンなど結末が異なっています。

そんな映画『ミスト』。まずはあらすじから紹介します。



『ミスト』30秒で知るミストあらすじ

以下、時間ない方向けの30秒で知るショートシノプシスです。

1,主人公デヴィッドの暮らす街を謎の霧が覆い、1人の男が霧の中にいる何者かに襲われたと告げる。

2.デヴィッドら町の人々は霧に包まれたスーパーに閉じ込められ、パニックに。次第に奇怪な生物の存在が明らかになってゆく。

3.扇動するものや強行脱出し命を落とすもの、さらには人々は恐怖心で互いが信じられなくなっていく。

4.デヴィッドら8人は、霧中突破の決意をするが、はたして安全な所まで行くことはできるのか?



『ミスト』詳しいあらすじ〜結末ネタバレ閲覧注意!

以下、詳しいあらすじを掲載します。(Wikipediaより転載)結末はネタバレとなります。なので、映画を観たい方はスルーしてくださいね。

激しい嵐が町を襲った翌朝、湖のほとりに住むデヴィッド・ドレイトンとその妻のステファニーは自宅の窓やボート小屋が壊れているのを見つける。デヴィッドは買い出しのため、8歳の息子のビリーと隣人のブレント・ノートンと共に車で地元のスーパーマーケットへ向かった。店は客たちで賑わっていたが冷蔵庫以外は停電していた。デヴィッドたちが買い物をしていると、店外ではパトカーや救急車が走り回りサイレンが鳴り始めた。その直後、鼻血を流したダン・ミラーが店内へ逃げ込み「霧の中に何かがいる」と叫ぶ。店内の一同が戸惑うなか店外の辺り一面は白い霧に包まれていく。不安に駆られた客たちは店内へ閉じこもった。

 

狂信者のミセス・カーモディは「これはハルマゲドンの始まりだ」と考える。自宅に2人の子供を残してきた女性は誰か一緒に付いて来てくれるように懇願したが、皆に拒否されたために「全員地獄に落ちればいい」と言い残して1人で霧の中へと出ていった。そんな中、デヴィッドとビリーは教師のアマンダ・ダンフリーと仲良くなる。デヴィッドはメカニックのマイロン、ジム、ノーム、そして副店長のオリー・ウィークスと共に倉庫を調べ店外の排気口の様子を見るためにシャッターを開けるが、そこから謎の触手が侵入してきてノームが連れ去られてしまう。デヴィッドたちは店外に謎の生物がいることを皆に伝えたが、ノートンをはじめとする懐疑的な者たちは救助を要請するために脱出することを主張する。そこでデヴィッドは彼らがどこまで行けるのかを調べるため、外出する彼らのうちの1人の男にロープを結びつけた。ノートンたちが霧の中に消えロープは少しずつ伸びていくが、突然ロープがとても強い力で引っ張られる。ロープを引っ張っていた力が急になくなりたぐり寄せると、男の下半身だけが帰還した。

 

夜になると、店内の光に惹き寄せられて巨大な羽虫や翼竜のような怪物が窓を破り店内に侵入し、デヴィッドたちは辛くもこれを撃退するが店内で犠牲者が出てしまう。その混乱を受けミセス・カーモディの狂信的発言を信じる者が現れ始めるなか、デヴィッドたちは負傷者を助けるため隣の薬局へ医療物資を取りに行った。薬局内は蜘蛛の糸に覆われており、デヴィッドたちは柱にくくりつけられたMPを発見する。謝り続けるMPの体から無数に出てくる蜘蛛のような生物の襲撃を受けたデヴィッドたちは、犠牲者を出しつつも店へと逃げ戻る。

 

店に戻ると、3人の兵士のうち2人が自殺していた。残り1人のジェサップ二等兵は「軍が異次元を観察する『アローヘッド計画』を実行している」という噂について問い詰められたうえ、そのことをミセス・カーモディの信者となったジムに聞かれてしまう。ミセス・カーモディは「ジェサップに責任がある」と演説し、彼は店内の人々にナイフで何度も刺されたうえ生贄として店外に放り出され、何者かに霧の中へと攫われる。

 

ミセス・カーモディとその信者たちを恐れたデヴィッドと一部の生存者たちは、物資をかき集めて店外への脱出を計画する。夜が明けてデヴィッドたちは動き出すが、彼らの前に立ちはだかったミセス・カーモディは「ビリーを生贄に差し出せ」と要求する。信者の男たちとの戦いのなかオリーがミセス・カーモディを射殺し店内の脱出に成功する。店から車へ向かう最中、オリー、マイロン、コーネルが怪物の餌食となりバド・ブラウンは間に合わず慌てて店内に引き返した。結局、デヴィッドの車に乗り込めたのは彼とアマンダ、ビリー、ダン、アイリーンの計5名であった。信者たちが静観する中デヴィッドの車は走り去っていく。

 

霧の中、デヴィッドは自宅へ辿り着くが妻は屋外で糸に巻かれて死んでいた。悲しみをこらえ南に向かったデヴィッドたちは生存者に遭うことも無く、崩壊した街の風景や何百フィートもある巨大な怪物を目撃する。そして、ついにデヴィッドの車はガス欠となり、彼ら4人の大人は眠ってしまったビリーの横で生還を断念する。オリーが怪物に喰われる際に落とした銃をデヴィッドは持っていたが、それには弾丸が4発しか残っていなかったため、彼は「自分は何とかする」と述べてビリーら4人を射殺した。

 

半狂乱となったデヴィッドは車を飛び出し「自分を殺せ」と叫ぶ。だがその直後、霧の中からは現れたのは自走砲や火炎放射器で怪物たちを焼き殺す兵隊たち、そして霧が発生してすぐに店を出ていった女性と彼女の2人の子供を含む生存者らを載せたトラックだった。判断を間違え、無駄に仲間の命を散らしてしまったデヴィッドは霧が晴れていくなか後悔の念にかられて絶叫し続けた。




『ミスト』見どころは?

霧の中の未知の生物による恐怖

霧の中から現れる怪物、生物の登場の仕方が怖いです。

まあ、ところどころツクリモノ的なヤツらが出てくるのは、許容範囲ですね。

ラスト登場のクリーチャーはしかし、特筆モノだと思います。

極限状況に追い込まれた人間たちの心理描写

この映画のキモは、人間の心理描写に尽きます。

先に書いたクリーチャーの若干の安っぽさは心理劇の前にすっ飛んでしまいました。

衝撃的なラストシーン

とにかく愕然とします。

そんな衝撃的ラストがあるからこそ、この映画は「胸糞悪すぎ!」と「良作!」の二班に別れたんだと思います。

どちらの言い分もわかるほど、ショッキングなのです。




『ミスト』考察

脚本が素晴らしい

ラストの賛否は横に置いて、とにかくフランク・ダラボンの脚本が素晴らしいです。

スティーブン・キングの原作があるとはいえ、本と映画は別モノです。

奇怪な生物のチラ見せ具合から、襲われ方といったホラー表現はもとより、登場人物のそれぞれ異なる性格設定から、次第に反目していくグループ化した人々の怖さまで、心理ミステリーとしても手抜きがありません。

オープニングからラストまで間延びなく緊迫感で突っ走る一級ホラーだとぼくは思います。



人間を3つのグループに分けた見事さ

何よりぼくがすごいな、と思ったのは、スーパーマーケットの中に閉じ込められた町の人々が、次第に「3つのグループ」に分かれてゆくところです。

ひとつ目のグループはデヴィッドや店主を中心とした、理解不可能な状況ななかでも可能なことをやり、脱出の手口を探ろう…というグループ。いわゆる「何事もベストを尽くせグループ」

二つ目のグループは、デヴィッドの隣人弁護士ブレントを中心とした、非科学的なことは一切信じず、霧の中へ踏み出すグループ。いわゆる「科学論理至上グループ」

三つ目のグループは、宗教で扇動する女性カモーディと彼女の口上に乗った「神に祈る情緒アオラレグループ」

です。

ぼくらは普段生活の中ではなにげに日々を生きていますが、行動ベースになる「気質」って、おおざっぱに分けるとその三つに分かれるような気がします。

結果どうあれまずはやってみようタイプ

ものごとを筋道立て分析得意なタイプ

ノリや雰囲気優先、皆で動くの好きなタイプ

 

って感じでしょうか。

 

訳のわからない状況に置かれて、おまけに奇怪な謎の生物に襲われて人が殺されてゆく。

そんな究極シチュエーションに置かれた人々が、そんな三つの集団に次第に分かれてゆく様は、あまりにも自然すぎて怖いくらいでした。

映画『ミスト』は、ホラー映画という皮を被りつつ、人間の心の闇や、極限状況における人間の行動をグリッと描き出した作品だと、ぼくは感じました。



善人は救われるのか?

『ミスト』の主人公デヴィッドは、良くも悪くも。いわゆる絵に描いたような善人です。

冒頭の嵐で、「仕事途中のイラストレーション」が倒木で無惨に壊されます。しかし、何も責めません。逆に「絵が壊れたのは自分のせいだ」とさえ言います。

映画はそんな善人設定のデヴィッドを軸にして語られます。

彼の周囲を取り囲むのは、さまざまなタイプの人間です。

しかし、監督は「善人デヴィッド」を、決して清きものとはしていません。

ラストまで見るとそれはハッキリとします。

この手の話では結末は善人は救われるのが定石です。

しかし脚本は、脱出の選択を選んだデヴィッドと仲間数人を冷徹に突き放します。

この突き放しこそ、観客評価を大きく賛否に分けているものでしょう。



ラストの冷徹な突き放しが意味するものとは?

では、この冷徹さが何を意味しているのでしょう?

それは、映画への現実世界の投影です。

「良きものは救われる」「願えば必ず助けはくる」といった、一見美しい思想がイージーに世界を覆っています。

「善人」デヴィッドに救いを与えない結末から、僕はフランク・ダラボン監督がそんな楽観的な空気にハテナを投げかけたのだと感じました。

賛否両論分かれるそんなラストは、フランク・ダラボン監督が人間洞察、社会洞察を経て、理想論に対して投げかけた答えだったと思います。



『ミスト』ぼくの評価は星四つ

ラスト10分。映画のトーンがガラッと変わります。

そのトーンの変化は霧の中の絶望感を意味して演出されているのですが、フランク・ダラボンが考えに考え抜いて答えを出した演出だと思います。

静かに進むSUVと車内の主役たちの表情が、「絶望」という声を完璧に描き上げています。

バッドエンドムービー数あれど、『ミスト』ほど絶望をラストに昇華させた映画は少ないと思います。

あまりの衝撃に呆然となりますが、時間が経つと、なぜかぼくはまた見たくなる….不思議な良作だと、ぼくは思っています。

でもな、世の中の大半=ハッピーエンド好きには受け入れられないだろうな…



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