「エンタメ」って言葉が、いつの間にか一人歩きして、いろんなジャンルや遊びを指す言葉になってます。
けれど、その昔(昔といってしまうのが悲しいけど)エンターティメントといえば、主に映画でありました。
コンサートや舞台が庶民にとっては高嶺の花で、娯楽といえば映画、エンターティメントといえば、映画。そんな時代があったのです。
中でもミュージカル映画は非日常の代名詞。人気がありました。スクリーンで所狭しと踊られるのは、タッタカタカタン!と靴音も華やかにタップダンス。
今回は超絶タップで20世紀を席巻したミュージカル俳優、フレッドアステアを取り上げます。
(フレッド・アステア(Fred Astaire)が正しい表記ですが、記事中は「フレッドアステア」で統一します)
「フレッドアステア」でググるとなぜか『雨に唄えば』…なんでやねん…
フレッドアステアは『雨に唄えば』に出ていません
ミュージカル映画タップダンサーの大御所、『フレッドアステア』をググると、なぜか『雨に唄えば』がキーワードで出てきます。超有名傑作ミュージカル映画『雨に唄えば』の主役はジーン・ケリー。アステアは出演していません。なんでやねん。
「そうか、21世紀の令和となった今、超絶エンターティナーのフレッドアステアって、意外と知らないヒト多いかもなあ、、、どこかで耳にした『フレッドアステア』と有名な『雨に唄えば』を混ぜちゃってるのかもなあ…」
そう思って、今回、フレッドアステアを取り上げてみました。
『フレッドアステア』と『マイケルジャクソン』そしてムーンウォーク
フレッドアステアの名前を聞いたことがない方でも、マイケル・ジャクソンを知らないという方は、まずいないと思います。
フレッドアステアは1899年生まれ、1987年没。マイケルは1958年生まれ、2009年没。彼らの間には60歳の年の差があります。
活躍していた時代もダンスシーンも、ダンススタイルも違います。共通点は突き抜けたエンターティナーだったということ。歳は離れていても、二人は互いに尊敬し合っていたと聞きます。
その証拠となる映像があります。
マイケルの『デンジャラス』という曲のプロモーションビデオ。
マイケルがキレのあるダンスで世界を魅了したビデオ、実はフレッドアステアの傑作ミュージカル『バンドワゴン』の中のワンシークエンスなのです。
ぜひ、見比べてみてください。
こちらがマイケルの『デンジャラス』
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こちらがフレッドアステアの『バンドワゴン』(1953年 アメリカ映画 監督/ヴィンセントミネリ 出演/アステア&シド・チャリシ他)
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どうでしょう?マイケルが、フレッドアステアに敬意を表しての、作りだったのだと思います。
冒頭にマイケルを取り上げて、何を言いたかったのかといえば、フレッドアステアはマイケル同様、間違いなく時代を突き抜けたエンターティナーだ、ということです。
ちなみにマイケルの技といえば「ムーンウォーク」。フレッドアステアは、当時ムーンウォークに感動、マイケルにその技を教えてもらい、マスターした。。。というエピソードも残っています。アステアもマイケルをエンターティナーとしてリスペクトしていたのですね。
フレッドアステアのタップダンスの洗練さが超絶!
フレッドアステアのタップは『神』です
そう、フレッドアステアの代名詞は、『洗練されたタップダンス』でしょう。
磨きに磨き上げられたタップは、品の良さとそしてユーモアまで感じさせます。
彼のダンスシーンをみているだけで、ぼくは嫌なこと、忘れます。
実は運営人のぼくも、いっときタップダンスを習っていました。40歳を過ぎたあたりから15年ほどです。
習い始めたきっかけは、映画観始めの頃=高校時代=に知った、フレッドアステアやジーンケリーのタップダンスミュージカルにあります。
「足だけで踊るんだったら、オレでもできるかもな~。タカタカって、つま先かかとだけなんだ、なんか簡単そう」
と、思っていたわけですが、習ってわかりました。「簡単にできる芸事など存在しない。」
タップダンスって、ただ雰囲気と気分だけでタカタカやっているのではないのです。
実は様々な「型のステップの組み合わせ」なのです。
「シャッフル」「タイムステップ」「バックステップ」なんて名前がついたたくさんの基本形をバラエティに縦横無尽に組み合わせ、踊りを作っていくんですね。(気分で即興するインプロタップってのもありますが、それでさえ型を知らなければできない)
映画観てると、なんとなーく誰でもそこそこできそうなのがタップダンスです。
しかし、習った上で(下手くそだけど)ミュージカルを観ると、見方が180度変わります。
タップダンサーの見事なわずか数分の踊りの裏側には、数百倍の稽古があるんですね。
実際にタップを習った、超絶に凡人のぼくが言います。
「フレッドアステアのタップは、今に見ても、超絶に「神」。エンターティナーの神様がついているとしか思えない。」
21世紀の令和となった今も、世界中で、歴史に名を刻むだろう名タップダンサーは次々と生まれています。
もちろん、タップ好きなぼくも、彼らの技にゾッコン身惚れます。
フレッドアステアのダンスがくれるもの
しかし、フレッドアステアの「タップダンス」、そして「映画」は別次元の何かをくれるのです。
それは、何か?
『観る人が満面の「笑顔」になるラブ&ピース。』です。
フレッドアステアの芸は、時代を越えて残っていく金字塔だと思います。
もし、どこかに喧嘩している二人がいたならば、フレッドアステアのタップミュージカルを見ること、オススメかもしれません。
フレッドアステアの魅力は、時を越えた踊りと演技の品格!
ぼくが初めてタップを知ったのは高校生の時だったと書きました。
えっと、1979年あたりです。
田舎の名画座で、一ヶ月ぶっ通しで週替わりミュージカル特集なんてのをやっていたのです。
多分、館主の趣味です。
そのミュージカル特集でダンス映画マジックに引っかかったぼくは、『愛と哀しみのボレロ』のシーンや、スタイル変わって『フットルース』『シカゴ』『ロックオブエイジス』『リトルダンサー』なんてダンス映画好きになっていきました。
正直言います。アステアは霧の向こうに消えかけていました。
それが、数十年の時を越えて、フレッドアステアの名前が記憶の向こうから呼び戻されました。
きっかけは、2023年。
ある一本のフレッドアステア出演旧作をリバイバル放映でした。
ぶっ飛びました。
それは『タワーリング・インフェルノ』。
脇役出演のフレッドアステア、当時、75歳。
ぼくは、映画の内容さておいて、フレッドアステアの磨き込まれた演技力に感服・脱帽していました。
フレッドアステアは、さりげないシーンを、絶妙の仕草で画面をめちゃくちゃ引き締めるんですね。
例えば、スーツに腕を通すシーンひとつとっても「はあ、、、」とため息が出ていました。
ちょっと違うかもしれないけど、どこか、フーテンの寅さんの渥美清の存在感に通じるところがあります。
「ただ彼がそこに居る」だけで、画面がエンターティメントに変わってしまう。…そんな感じ。
ダンサーとしてだけではなく、役者としての凄さをあらためて感じたのでした。
それから「フレッドアステア映画」巡礼がふたたび始まっています。
マイケル括りで話した『バンドワゴン』初め、『イースター・パレード』『トップハット』『パリの恋人』……。
ストーリ展開は流石に古さを隠せませんけど、フレッドアステアのダンスに誰もが笑顔になること間違いなしではないでしょうか。
『フレッドアステア』性格と人となり
俳優の性格や人となりをぼくが語るなんておこがましいですが、興味あるところですよね。なので、調べてみました。
4歳でタップを習い始め、17歳でブロードウェイダンサーデビュー。22歳で舞台『バンドワゴン』を成功させ、映画デビューは34歳です。思ったより映画界に入ったのは遅いんですね。
ミュージカル全盛の時代が過ぎた後も、『渚にて』や『タワーリングインフェルノ』『ゴーストストーリー』などに出ています。
私生活は芸能人にありがちな派手な生活は好まなかったようです。
二度結婚しています。一人目の奥さんは病気で死別。再婚は80歳を越えてから45歳年下の競馬ジョッキーと周囲の反対押し切って再婚。その二度の結婚生活は共に優しさに満ちたものだったようです。
そのタップは、紳士的な空気や、踊る相手を思いやる雰囲気がありますが、私生活や性格も同様だったのでは?と思いました。
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