『2度目のはなればなれ』ネタバレあらすじ・感想・評価〜原題『The Great Escaper』

人生を描く映画

『2度目のはなればなれ』ネタバレあらすじ・感想・評価レビュー




今回取り上げる映画は、『2度目のはなればなれ』(2023年:イギリス映画)です。

とある理由で老人ホームを抜け出した退役軍人のヒューマンドラマですが、実話です。

ノルマンディ上陸作戦D-Dayを生き残って、老人ホームで余生を送っている男とその妻は、70年前、ある秘密を持っていました。

残りわずかな時間を、ある約束を果たすためにD-Day70周年記念式典会場に向かいます。そんな1人の老人をめぐる、ヒューマンストーリーです。

引退宣言をした名優マイケル・ケインの演技は、「老いた時にはかくありたい…」そう思わざるほど超絶に渋いです。

そんな、老いと希望と約束を大事にしたくなる『2度目のはなればなれ』をレビューします。

水彩で描くThe Great Escaper

水彩 『2度目のはなればなれ』イメージ …artwork by TAKU




この映画は、90歳の老人が主人公のロードムービーと言っていいです。ちなみに実話というから驚かされます。

そんな超高齢の主人公を、やはり高齢となった名優マイケル・ケインが「役者人生最後の映画」と位置付け、フルスイングの名演を見せつけます。

ぼくら観客は、歩くことがおぼつかない一人の老人が、一つの目的を成し遂げる姿を目にします。

そのことによって「老人ロードムービー」を疑似体験すると同時に、「どう老いていけば良いのか?」という問いもまた、突きつけられます。

超高齢化社会の中で、ステキに老いるとはどういうことなのか?

今、日本は超高齢化の波にさらされているけれど、イギリスもまた然りなんですね。

ぼく自身、超高齢の両親の介護で走りまっています。

その現場では、常に「超高齢となった時の、人の尊厳を保ち方」を考えさせられています。

この映画は、超高齢化社会における「老いと尊厳」をも考えさせられる作品になっています。

『2度目のはなればなれ』あらすじです

あらすじは一部ネタバレを含みますので、映画をご覧になりたい方はスルーしてくださいね。

+ + +

物語は、イギリス南部・ドーバー海峡に面したブライトンの老人ホームで始まります。

主人公は、ホームで余生を過ごす90歳を越えるバーニーとレネ。

バーニーはかつて第二次世界大戦の激戦地ノルマンディ上陸作戦D-Dayを生き残った退役軍人です。

D-Day70周年の記念式典がフランスの彼の地で開催される2014年の夏。

式典を知ったバーニーは、式典出席の申し込み忘れていたのですが、レネの「行きなさい」という声に押され、1人、老人ホームを抜け出して式典会場を目指します。

フェリーに乗り、フランスの対岸を目指す彼は、船上で元空軍爆撃機を操縦していた元軍人の今は私立学校の校長をしている男に出会います。

男の好意で旅先のホテルに泊めてもらい、式典参加の手配までしてもらったバーニー。

しかし、当時の記憶はバーニーも男をも70年経った今もなお苦しめていました。

男は、弟がいた街を爆撃、バーニーも出撃を命じた戦車兵を目前で死なせていたのです。

一方、老人ホームではバーニーの失踪がばれ、上へ下への大騒ぎに。

もちろんレネは涼しい顔です。

警察はSNSでバーニーの行方を追い始めます。

そして、ノルマンディでの式典直前。

バーニーは過去の苦い体験に終止符を打とうと、同じく心に傷を持っている元空軍兵士の男を無理やり誘い、バイユーにある、とある場所へ向かうのでした、、、。

原題『The Great Escaper』と邦題のこと

実は、原題と邦題は全然違います。原題は『The Great Escaper』です。

劇中、「2人が離ればなれになるのは、人生で2度目」ということがレネによって明かされます。

そのレネのセリフが日本公開タイトルに使われているんですね。

「原題は『The Great Escaper』の方が良かったのでは?」という口コミもいくつかレビューにはみられますが、ぼくは逆に「うまい邦題だったなあ」と、観終わってから思いました。

たぶん『The Great Escaper』って原題は、イギリス製作陣が、名作戦争映画『The Great Escape』(邦題『大脱走』)へのオマージュとして付けたのだと思います。

『The Great Escaper』は、『The Great Escape』(繰り返します、邦題『大脱走』)へのユーモアが込められていた、と思うのです。

イギリス人ならタイトルにニヤッとするでしょう。

けれども日本人で『大脱走』の原題が『The Great Escape』だとわかる人って、たぶん、映画オールドファン。

あえて『2度目のはなればなれ』と邦題をつけた配給会社のセンスが、ぼくは好きです。

『2度目のはなればなれ』ぼくの感想

バーニーの立つ海の向こう

冒頭のシーンはブライトンの海辺から始まります。

実は、映画のテーマの発端になる「ノルマンディ上陸作戦」が強行されたのは、映される海辺の海峡を挟んで向こう岸なんです。

イギリス人にとっては常識ですが、日本人にとっては狭い海峡だってことはイマイチピンとこないかもしれません。

こんな距離感です。

Screenshot

バーニーがブライトンの海辺に立ち、過去に思いを馳せるシーンが冒頭な訳で、その距離感を知った上で見ると、立ちすくむバーニーの心のうちに入っていくことができるのではないでしょうか。

このシーンで立つ老いたマイケル・ケインの表情がたまらない。

文字通り人生の苦楽を味わって残りあとわずかとなった静かな心中を表しているように感じました。

マイケル・ケイン90歳のロードムービー

主人公の90歳のバーニーを演じているマイケル・ケインが素晴らしいと思ったのは、静けさだけではありません。

「90歳生きてきたからこそ、できること」が、暗に描かれています。

D-Day70周年記念式典参列の申し込みはできなかったにも関わらず、それでも現地に向かうバーニー。物語は、一つのロードムービーでもあるんですね。

わずか二日間の出来事=バスに乗り込み、フェリーにチェックインし、フランスの街で退役軍人たちと過ごす=の時間が映画では語られます。

手押し車がなければ歩くこともおぼつかない90歳の老人にとっては、一大アドベンチャーです。

見どころは、90歳を越えようとも、動くことで、旅先で人間関係が生まれるというこ点にあります。

新たな出会いの中で、バーニーはどういう声を発していくのか?

これは聞きどころです。

マイケルケインがどのようにセリフを解釈して演技したのかは分かりません。

だけど、セリフの一言一言を聞くたびに、

「マイケルケインのような静かな表情で、こういうふうな言葉を言えるような老人になりたいな」

とぼくは思っていました。

若い戦傷軍人とバーニー

バーニーは、フェリーの船上で退役軍人をサポートする、一人の若い黒人戦傷軍人にあいます。

老退役軍人ばかりの物語の中で、彼の存在がストーリーに輝きを与えています。

バーニーたちがフランスの町のレストランで昔話をしているところに、その黒人戦傷軍人が乱入、ひと騒動巻き起こすのですが、そんな彼を「言葉と表情」で押さえ込むバーニーの姿は、「老兵かくあるべし」「老人かくあるべし」を絵にしたようなイキを感じます。

また、男はのちに謝ってくるのですが、若者にありがちな饒舌弁明を、老人のバーニーが「それは言うな」と、制するのです。

このシーンでのやり取りもまた、記憶に刻まれただけでなく、高齢時に近づいている我が身を、思わず振り返ってしまう、背筋が伸びる名シーンでした。

そんな気づきをがっちりくれます。

登場人物たちは皆、戦争で心に深い傷を負って、その傷をなんとかしようともがいています。

そのもがき方が、観るぼくの心にじわじわと迫ってきました。

傷が深いだけ、物語も、深いです。

レネとバーニーの70年

「2度目のはなればなれ」という邦題はレネのセリフから取られています。

70年寄り添いつつ、2度のはなればなれを経験したレネがそう言うのです。

70年で2度。

もちろんその裏にはバーニーの「絶対に君を離さない」との誓いがあるわけです。

ネタバレですが、1回目の離れ離れは、ノルマンディ上陸作戦です。

そして、2度目も、やはり彼の行く先はノルマンディでした。

『2度目のはなればなれ』というタイトルには、「ノルマンディ」が、かかっているのです。

イギリス人にとって、ノルマンディ上陸作戦は様々な意味で、日本人が想像する以上の影を落としているんだな、と、ぼくはレネのセリフから受け取りました。

そしてこうも思いました。

「2度のノルマンディ行きは、レネからするとどちらも命懸け。彼女は老人ホームで飄々としていたけれど、バーニーに無事帰ってきてほしいとの願いの切なさは、80年前のD-Dayと、なんら変わりなかったんだ」

バーニーを「普通の人」として描いた妙味

バーニーは、SNSで足がつき、新聞一面で『The Great Escaper』と取り上げられ一躍時の人となってしまいます。

そんなバーニーが、老人ホームに帰り着く前に、ふと髪をかきあげるシーンがあります。

この「かきあげ」所作は、有名人になった自分がどう見えるか?を意識してしまったバーニーを表しています。

そしてそれに続くバーニーのチラッとみせる表情が、素敵なのです。

そのカットからは、「いつ何時でも、決して舞い上がるな」いうメッセージを暗に感じました。

そのシーンだけ、人間のエゴへの批評がチラッと見えます。そんな抑えた演出、好きです。

92歳(存命中)の父がいる63歳のぼくの視点

正直、冒頭の老人ホームのシーンは、結構ヒキました。

というのも、ぼくには高齢92歳の父がいるから。

ふっと日常に引っ張り戻されてしまったような錯覚が、一瞬ですがありました。

でも、ドラマでバーニーとレネの会話が進むにつれて、そんなヒキはすっ飛んでいました。

この映画は、決して高齢者介護の話ではありませんし、高齢社会をメインテーマにしているわけではありません。

あくまで2人の夫婦が、どう生きたか?の話なのです。

その生き様を説得するために、老人ホームのリアルな様子も(イギリスの、ですけど)描くために必要だったわけです。

ぼく自身、90歳まで生きる自信はありませんが、少なくともこの先、どんな爺さんになりたいか?の指針のようなものをもらえました。

ぼくと同じ世代にはもちろんのこと、老若男女広く知って観てほしい映画だと思いました。

『2度目のはなればなれ』ぼくの評価

老いは、遅かれ早かれ、誰にでも訪れます。

今、20代であっても、40代であっても、50代ならあっという間にタッチダウン。ぼくのように60代なら、すでに当事者、高齢化社会の一員となり、『二度目のはなればなれ』のリアルまで、あとわずか、です。

足腰がおぼつかないほど老いたときに、あなたはどういうふうに生きていたいですか?

老いた時の尊厳の保ち方、さらには生き方そのものを考えさせられました。

70年前の戦争を、こんな斬新な切り口で表した脚本に脱帽でした。

ぼくの評価は星四つ⭐️⭐️⭐️⭐️です。

いい映画をありがとうございました。

『2度目のはなればなれ』と併せて見るなら、この一本!

『2度目のはなればなれ』が気に入った方に是非見てほしい映画がコチラです。

ノルマンディ上陸作戦を描いた、戦争映画の金字塔『プライベート・ライアン』

バーニーをはじめ、退役軍人たちの若き日、上陸作戦の最前線はどうだったのか?敵味方に分かれていたイギリスとドイツの戦いのリアルが知ることができます。

戦争映画として、人間ドラマとしても秀逸。オススメです。

『2度目のはなればなれ』スタッフ・キャスト

監督:オリヴァー・パーカー

キャスト:マイケル・ケイン グレンダ・ジャクソン ダニエル・ヴィタリス ローラ・マーカス ウィル・フレッチャー







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