映画『道草』ネタバレあらすじ・感想・評価・キャストまで|画家志望の切なくもリアルな日常を描いた作品を専業絵描きが解説

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映画『道草』
ネタバレ感想評価レビュー

当レビュー記事にはネタバレが含まれます。映画をご覧になる方は、鑑賞後にお読みください。また感想評価はあくまで一個人の印象です。その点をご了承ください。

こんにちは!映画好き絵描きのタクです。

今回レビューする作品は、『道草』。2022年公開の日本映画です。上映時間122分。

監督は俳優としての顔も持つ片山享監督。ぼくは、監督の存在をはじめて知りました。
ネットであたったところ、過去作は何本もあるようです。
『まっぱだか』『とどのつまり』といった作品がピックアップできましたが、すみません、ぼくはどれも観たことがありません。まだまだ勉強足りないってことですね。

ストーリーが「絵で食っていこうとあがく若者の話」…と知り、ぼくは映画好きとしてというよりも、世の片隅になんとか食べているリアルな専業絵描きとして、スルーできませんでした。

そんな作品『道草』の感想を画家目線も交えながら書いてみます。




『道草』解説

どんな映画?

主人公は、粗大ゴミ収集の仕事をしながらも、画家として独り立ちしたいと苦悩する画家のタマゴです。その彼が、他人の絵や価値観、コレクターの評価、世間の評価に翻弄される姿を通し、「自分らしさ」や「描く楽しさ」とはなにかというテーマが描かれます。

主人公の画家のタマゴ・榎本道雄役を演じた俳優は、青野竜平。彼の絵を認め支える女性・富田サチ役を田中真琴が演じています。

Screenshot



『道草』あらすじ〜ネタバレなし

主人公の榎本道雄(青野竜平)は、美大出の画家志望の若者だ。
絵だけで食えない彼は、ごみ収集のアルバイト仕事で生計を立てている。

ある時、ギャラリーカフェでホールをしている若い女性・富田サチ(田中真琴)に出会う。
サチは榎本の絵に魅力を感じる。

サチの前で榎本が描いた一枚の絵「道草」をきっかけに、サチは榎本のアトリエ兼アパートで共に暮らし始める。

サチはバイト先のギャラリーカフェオーナーに頼み込み、その絵「道草」を展示販売してもらうよう願い出る。個展経験の浅い榎本は、値付けもアバウトだ。値段は、3万円。
ギャラリーカフェオーナーは、快く引き受ける。

サチとのつましいながらも幸せな日々。

次第に榎本は、画家としての成功を意識するようになる。しかし作品は、売れない。

ある日、榎本はゴミ集積所に捨て置かれた一枚のキャンバスを見つけ、持ち帰る。

キャンバスに描かれていたのは、自分の画風=風景画とは異なる、エネルギッシュに絵の具を散らしたような抽象画だった。

榎本は、いつものギャラリーカフェにその絵を持ち込み、自分の作品だと偽り、置いてもらうことにするが…。



『道草』あらすじネタバレラストまで〜閲覧注意!

ここからは完全ネタバレです。映画を見たい方はスルーしてください。

ある日、榎本はカフェオーナーから、「ふらりと現れた絵画コレクターが、その抽象画を10万円で買取った」と、告げられる。そして「別の作品も見たいと言っていた」とも。

美術コレクターと会うことが決まった榎本は、はた、と、困り果てる。そう、自分で描いた絵ではないからだ。

榎本が絵を拾ったゴミ集積所に再び足を運ぶと、また一枚の抽象画が捨てられていた。

その絵を拾い、自分の絵と偽り絵画コレクター(入江崇史)に渡す榎本。コレクターはその絵に高い評価をつけ、榎本が戸惑うほどの代金を支払う。さらに自分の還暦パーティーで、榎本のアーティストとしての素晴らしさを世に広めたい、ひいてはさらに新作を準備してほしい、と、榎本に告げる。

絵画コレクターが気に入っている作品は、見ず知らずの他人が描いた絵だ。困り果てた榎本は、その作品に似せて絵の具を撒き散らすような絵を描き始める。

サチは、もちろん抽象画が拾ってきたものとはしらない。榎本をいぶかしげに眺めつつも見守るサチ。しかしサチは榎本の絵『道草』に感じていた「楽しさ」を、新作の抽象画に感じることはできなかった。

榎本はコレクターの主催する還暦パーティーで新進気鋭のアーティストとして持ち上げられ、出会った女性と一夜を共にする。

榎本とサチの間に広がる溝。

榎本の創作姿勢が腑に落ちないサチは、『道草』をギャラリーカフェから買い戻し、アパートの部屋に置き、荷物をまとめ、二人暮らしにピリオドを打つ。

ひとりになった榎本は、サチが忘れられず、バイト先のギャラリーカフェを訪れるが、サチはすでに辞めた後だった。

カフェオーナーの計らいでサチとの再会ができたものの、サチの気持ちはすでに榎本から離れていた。

ラスト、心の動きのままにアパートの壁一面に、絵の具を塗りたくる榎本。
出来上がったのは、朝日が昇る海原の絵だった。
エンドロール。


『道草』感想

タイトル『道草』の意味するものは?

『道草』を観ました。先にも書きましたが主人公は食えない画家=只今売り出し中の画家です。

ちなみに映画のタイトルの『道草』は、榎本がはじめてサチの前で描いた絵のタイトル=画題でもあります。

それは、榎本がサチと遊んだ路地を描いた、具象の風景作品でした。

歴史に名を残した画家はよく映画で取り上げられますが、売り出し中の売れない画家予備軍の実像を描いている映画って、あまりないです。ピンと来るところでは、リリーフランキーの主演した『くるりのこと』くらいでしょうか。


画家のぼくがみる画家のリアル

イマドキは、インスタやSNSを使って売り出ししていく若手画家が多いと思います。還暦過ぎたぼくでさえ、15年ほど前から売り出しツールとしてSNSはやっていました。
でも『道草では』あえて、そんなシーンは入れていません。そこ、よかったです。ギャラリーやアトリエ制作の空気感、人間ドラマに重心を置いていました。

個展会場での、青野竜平演じる”売れない榎本”と”絶賛売れている画家”の会話や、売れっこ画家と常連さんとの会話、演技が、自然すぎる!超絶にリアルです。

ぼくは思わず「そうそう、あるある!絵が売れた時、お客さん相手に確かにそう言うよね!」と、ニヤニヤして引き摺り込まれていました。

また、サチ役の田中真琴のナチュラル感が突き抜けています。彼女の演技の間合い、ヒキの強さはどこから生まれるんだろう?

演出のせいなのか、役者さんがうまいのか、ヘタなのか、それがわからないくらいリアルすぎて、不思議な映画でした。

それと、脇役のゴミ収集会社の上司の武藤(大宮将司)。いい感じの存在感で、前半のドラマを回してくれています。その武藤の存在がとても心地よかったです。

しかし、後半は、武藤は出てきません。代わりに榎本を遊んでしまう一人の女性が登場します。こちらの女性(名前がわからない)が、後半の武藤の代わりの存在としてドラマを回します。

この武藤ともう一人の女性は、すなわち絵に無関心の榎本の外の世界を表しています。

榎本のいる”画業の世界”と、武藤と女性のいる”絵なんか興味がない、わからない人たちの世界”。この2つのフィールド構造は、『道草』を、ただの売れない画家ストーリーにせず、より深い作品にしていると感じました。


長回しに負けた

ぼくは基本、カメラ長回しの演出が好きな方です。
でも、この作品の片山亨監督の長回しの意図がわからないシーンもいくつかありました。
実際、2度ほど寝落ちましたから。それも、一度はクライマックスで…。

「監督、これだけ回してるんだ、意味あるんだきっと」と、思いつつ、懸命についていったんですけど、気がついたら寝オチてた。ぼくは片山亨監督の長回し演出がダメでした。
監督の意図は必ずあると思うのですが…うーん…。これは個人的な感じ方なので、スッと受け止めれる人もいると思います。

ぼくの評価は?

ぼく自身、画家として生きてきて、個展を何度もやってきました。そんなこともあり『道草』は、同業者として肩入れして見ていました。

会場にいる時の心模様や制作でのあがき、絵の評価への漠とした不安…そんなあれこれが映画の中の榎本の声や絵の具のチューブの開く音を通して自分の体験とリアルに重なっていました。

でも、、誰にでもオススメか?と言われると、、、、観る人を選ぶ映画だとも思います。

ぼくの評価は、限りなく星4つに近い星3.9🌟🌟🌟✨💫です。


『道草』配信レンタル先は?

以下のサービスで配信・レンタルされています。(2026年3月現在情報です。配信が終わっておいる場合もありますので、ご確認ください)

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『道草』が刺さった方へのオススメ映画

『しあわせの絵の具 愛を描く人モード・ルイス』ーーリウマチで不自由な体で描き続けた女性画家の一生。

映画の持っているトーンは全然違いますが、一人の画家の姿を描くという点でオススメな映画です。

『道草』スタッフ・キャスト

スタッフ

監督・脚本:片山享
撮影:深谷祐次

キャスト

青野竜平、田中真琴、Tao、谷仲恵輔、山本晃大、大宮将司、入江崇史






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