『すばらしき世界』ネタバレ・最後死因は?から、あらすじ考察評価・ラストシーンまで徹底解説

ヒューマン・ハートフル

『すばらしき世界』徹底解説
最後死因は?からネタバレあらすじ・考察評価まで

こんにちは、映画好き絵描きのタクです。

今回取り上げる映画は『すばらしき世界』。2021年公開の日本映画です。

この映画『すばらしき世界』で描かれるのは、ズバリ、「一度社会からはみ出した男がまっ正直に生きるとどうなるか?」です。

作家・佐木隆三が実在のヤクザの実体験をもとに書き上げたと言われる「身分帳」の映画化です。

脚色はされているとはいえ「実話」です。

ということは、この映画『すばらしき世界』は、ぼくらが今生きている世界を映し出しているんですね。

社会からはみ出した人間が、世間の中で自分に実直に生きようとすると、そこには何が起こるのか..?? 

それらを西川美和監督が丁寧に描き出しています。

主役は役所広司。脇役は仲野太賀、長澤まさみ、六角精児・北村有起哉、他。俳優たちの熱演も素晴らしいです。

この映画のタイトルは映画の核心をついていると思います。それは、「誰もが当たり前と思っている日常=このすばらしき世界は、本当にすばらしき世界なのか…??」という問いかけです。

第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、国際評価も高い『すばらしき世界』をレビューしてみます。





『すばらしき世界』スタッフ・キャスト

区分 内容
監督 西川美和

▼キャスト(役名・役回り)

俳優名 役名 役回り(映画での立ち位置)
役所広司 三上正夫 刑務所を出所した元殺人犯。真面目に生き直そうとするが、社会とのギャップに苦しむ主人公。
中野太賀 津乃田龍太郎 三上の更生を追うテレビ制作スタッフ。取材を通して、三上の本質に触れ成長していく青年。
長澤まさみ 吉澤遥 津乃田の同僚ディレクター。三上の過去と向き合いながら、報道と人間性の狭間で揺れる。
六角精児 杉浦弁護士 三上をサポートする弁護士。更生に向けた実務的・法律的な支援を行う。
北村有起哉 西谷 三上の昔の知り合い。裏社会との繋がりを持ち、三上の生活に影を落とす存在。
安田成美 木村敦子 更生支援施設の関係者。三上を温かく見守り、穏やかな暮らしへ導こうとする。
白竜 真田 かつての裏社会関係者。三上にとって過去の象徴のような存在。
キムラ緑子 井上京子 三上を気にかける地域の女性。社会に馴染めない三上の心の拠り所となる人物。
梶芽衣子 福山房江 三上の養母的存在。彼の生い立ちと孤独を象徴する重要人物。
橋爪功 松本良夫 更生保護関係者。社会復帰の難しさを理解しつつ、三上を支える支援者。



『すばらしき世界』解説〜主人公は実在人物。実話ベースです。

『すばらしき世界』は実話がベースとなっており、モデルも実在します。映画の元になったのは、佐木隆三氏の小説「身分帳」です。

主人公三上のモデルとなった方は田村明義氏。田村氏は実際に殺人罪で刑務所に服役していました。氏が出所後、佐木隆三氏にコンタクトをとり、「自分のことを小説にしてくれ」と依頼し本になったといいます。

もちろん映画にあたってはフィクションとなっていますが、映画『すばらしき世界』の三上の性格は、小説「身分帳」の主人公像を反映させたもののようです。



『すばらしき世界』あらすじは?ネタバレ閲覧注意!

出所と再出発の困難

物語は、三上(役所広司)が旭川刑務所を出所する場面から始まります。

殺人の罪で13年服役していた三上は、弁護士・庄司夫妻の支援を受け、東京での社会復帰を目指します。

しかし社会の風は冷たく、生活保護申請での口論、職探しの難航、偏見と誤解が次々と三上を襲います。

真面目に生きようとするほど浮いてしまう彼の姿に、社会の歪みが見え隠れします。

テレビ企画と揺れる心

ある日、テレビプロデューサー吉澤(長澤まさみ)とディレクター津乃田(仲野太賀)は、「前科者が母親と再会する」企画を三上に打診します。

最初は乗り気でなかった三上ですが、失われた母への想いと、ディレクター津乃田との交流によって、少しずつ心を開いていきます。

福岡帰郷と再起

世間の視線に疲れた三上は、かつての地・福岡を訪れます。

旧知の親分に会い、そして過去の影に向き合う三上。

福岡で彼は「真っ当に生きること」の意味を再確認し、再び東京へ戻る決意をします。


『すばらしき世界』あらすじ・結末最後まで〜ネタバレ閲覧注意!

以下、結末までネタバレですので、映画を見たい方はスルーしてください。

福岡での出来事は、三上に真っ当な世界に生きるきっかけをくれます。

東京に戻った彼をむかえたのは、世話になっている役場職員でした。

役場職員は、三上の体力や丁寧さを活かせる職場を懸命に考えた末に、老人介護施設を斡旋します。

案の定、介護施設の仕事は三上の性格に合っているものでした。しかしそこでもまた、三上は人間関係の嫌な面を見せられ、自分を押し殺して苦悩します。

三上にとって唯一の救いは、障がいを持った一人の男性介護スタッフとの交流でした。しかしそのスタッフは他の職員からあざとく距離を置かれています。三上は、素直に真っ当に生きるその男と向き合う時に、心地よさを見出します。

ある日、その障がい者の介護スタッフが三上に「これ、あげるよ」と、花を手渡します。それは数輪のコスモスでした。

そのコスモスに、三上は、己の未来を託すかのような表情を浮かべます。

しかし三上の未来は、花束を持ち帰った小さなアパートで、途切れてしまいます。

持病の発作が彼を襲い、倒れる三上。

二度と起きることのない三上の手元には、「すばらしき世界」への切符になるかもしれなかったコスモスの花束が落ちていました。

…エンドロール。



『すばらしき世界』主役の最後の死因は?

映画では「三上の最後のシーンの死因はなんだったのか?」が明確には明かされずに終わります。ネット上でも「死因は何?」という疑問が多数見受けられます。なので、最初に死因の推測を、答えの一つとして書いておきます。(あくまでぼくの推測です。間違っていたらごめんなさい)

映画の前半で、出所した三上が、手続きのために訪れた役所で突然苦しみ倒れ、病院に担ぎ込まれるシーンがあります。

そこで三上はドクターから「高血圧症なので、治療に専念するように!」と、かなり強く言われています。

劇中では、他のシーンでもその発作が三上を襲っていますので、高血圧症の診断が伏線となっての、ラストシーンの三上の死だと思います。

三上の死因、それは高血圧症からくる心筋梗塞ではないかと、ぼくは推測しています。


『すばらしき世界』感想・考察

役所広司の圧倒的な存在感

映画は冒頭、旭川刑務所に服役している三上が出所するシーンからスタートします。

三上を演じる俳優は役所広司です。とても静かなオープニングなのですが、すぐにしっかりと観客をドラマにひきこみます。

役所広司は、静かな空気を出しておきながら、深く語るのがうまいです。

例えば、静かな「はいっ」という一言で、そのシーンを占拠してしまうのが、役所広司です。

光る脇役陣の好演

また、キャストの中では、本能でネタを嗅ぎ分ける敏腕女性プロデューサー・吉澤を演じた長澤まさみも、その弾けっぷりがよかったです

そしてプロデューサー・吉澤の対極キャラとなるのが映像ディレクター津乃田です。その津乃田を演じたのは仲野太賀ですが、シーンごとに津乃田の心の動きを嫌味なく演じていました。

中でも津乃田が三上の背中を流す時に見せる涙、そしてクライマックスの慟哭には、俳優仲野太賀の底力を感じました。

スーパー店長役の六角精児の味のある演技、そして、一見堅物役人役の北村有起哉も、とことん素敵です。

俳優それぞれの妙味がきっちり詰まった一本だと思います。



練られた脚本とリズミカルな展開で最後まで一気見

『すばらしき世界』は最後まで一気見でした。途中、意味不明となるところもなく、筋のブレも感じません。

登場人物の意味づけや役回りもハッキリしていて、それぞれきちんとキャラが立ち上がって、程よく主役に絡んでいきます。

映画のカナメは、主役三上の性格です。なので三上の「実直&素直=悪く言えば喧嘩っぱやくて、単純」=を、脚本でどう表現するかが大変なところだったと思います。その点も見事に応えてくれています

三上は真面目に生きたいんだけれど、世間=世界は、実は三上の心とは比べ物にならないくらい冷たく、結果的に三上の生き方を許しません、、、。なんとなんとすばらしい世界でしょう、、、。

ヤクザの三上が、すぐに血が沸騰してしまう自分を抑えて、更生への道を歩もうとするシーンの連なりと、どうにもならず暴発してしまうシーンが、うまい具合に物語に緩急を作っています。

「ここぞ!」でさしはさまれるそんな三上暴発シーンは、「こうでなくちゃね!」的エンタメスパイスが効いており、見ていて気持ちが良かったです。







西川美和監督の鋭い嗅覚

正直に言います。ぼくは西川美和という監督を知りませんでした。「ニシカワヨシカズ?それともミワ?」…もう無知丸出しですね。

で、西川美和監督を調べてみたのですが、そこではじめて女性監督だということがわかりました。ヨシカズではありませんでした。ごめんなさい。

実はぼくは、映画全編を通して、うっすらと「本能的な嗅覚」が漂っているように感じていました。

「本能的な嗅覚」って何かというと、「道徳感」とか「世間的な善悪」を越えた、匂いを嗅ぎ取るセンスです。

その嗅覚が嗅ぎ取るものは、建前を通り越した先に漂っているほのかな「異臭」です。

映画『すばらしき世界』から、社会の歪みの「匂い」と人間再生への「匂い」を感じたのは、西川美和監督が、そんな女性ならではの嗅覚で撮ったからじゃないかな…と思いました。

そう書くと「何言ってんだよ!今どき監督に女性も男性もないだろう?それは色眼鏡ってもんだ」と言われそうです。

しかし、タテマエの向こう側の「匂い」嗅ぎ取るチカラは、男性よりも女性の方がはるかに敏感だと、ぼくは思っています。

西川美和監督は、『すばらしき世界』を通して、”今、ぼくらが生きている世界の、タテマエの向こう側に漂う匂いを嗅ぎ取る大事さ”をも、伝えたかったのではないでしょうか。



数枚の古い写真にキャラを語らせる〜光っていた美術の仕事

映画で大事なのは、『登場人物のキャラクターをどうやって厚みを持たせるか?』でもあります。

それって簡単なようで、案外難しいように思います。

役者の演技はもちろんですけど、美術の小道具も、その下支えを担います。

『すばらしき世界』では、そんな小道具がとことん生きています。映画を見るときに、ぜひ、小道具に気をつけて観ててください。小道具にすごく意味を持たせていますから。

例えば劇中、三上の幼い頃から10代までの古い写真が現れるシーンがあります。

その写真はたったの数枚なのですが、その写真が三上が、いったいどんな性格でどんな過去を背負ってきたのか?を強く印象付けます。

古い写真の中で童顔で微笑む若い三上のその表情は、三上という男は一匹狼のヤクザではあるけれど、素直で実直な性格であることを、無言のうちに語りかけていました。

また、「机の上のボールペンの軸からメモが取り出されるシーン」も印象的で、その後のドラマを際立たせていました。それが際立ったのも、腕のいい小道具スタッフがいてこそでしょう。

他にも、ロケされたアパートの絶妙な古めかしさや、三上が取り込む洗濯物まで、映画の裏を支える美術チームの丁寧な仕事が光っていました。



『すばらしき世界』ぼくの評価は?

見せつけられたのは「善と悪」「常識と非常識」の境目の曖昧さ

ぼくは、映画を見ながら登場人物たちに感情移入し、「こんなシチュエーションで、あなたならどう動く?」と何度も問われ、その答えを登場人物の行動に重ねていました。

そんなふうに、ヤクザ、スーパーの店長、役人、テレビディレクターそれぞれに感情移入できたこと=映画に没入できたことは、演じる俳優と演出した監督のシンクロあってこそだったと思います。

また、「善と悪」「常識と非常識」の境目の曖昧さを見せてくれたこともまた、この映画の奥深さだと思っています。

みているうちに、ワルなはずの主役が真っ当に見えてきて、善良な市民の方がワルに見えてくる。そんな二つの視点を映画『すばらしき世界』は持っています。

「この“すばらしき世界”とは一体何なのか?」

最後に「この“すばらしき世界”とは一体何なのか?」について書いて終わりにします。

それは、社会の裏側にいた人間が、再び生き直そうとする「すばらしいはずの世界」は、果たして本当にワンダフルワールドなのだろうか?…という問いを立てることで見えてきます。

ぼくは、三上の心の内こそが、実は「すばらしき世界」だったように思えました。

ぼくの評価は、四つ星半⭐️⭐️⭐️⭐️✨です。

いい映画をありがとうございました。



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