『異端者の家』ネタバレあらすじ解説・考察・評価から配信・DVDブルーレイ情報まで|ヒュー・グラント、仮面を脱ぐ〜宗教という歯止めが外れたときの人間の怖さ

スリラー・SF・アクション

『異端者の家』ネタバレあらすじ考察評価
信仰の一線と演技の一線を超えたヒュー・グラント

この記事にはネタバレが含まれます。その点をご留意の上、お読みください。

こんにちは!映画好き絵描きのタクです。今回レビューで取り上げる映画は『異端者の家』(2024年公開・アメリカ映画)です。

制作会社はA24。常に新しいエンターティメントにチャレンジしている映画制作会社です。なので、A24生み出す作品って、つい期待を込めて見てしまいます。

『異端者の家』はスリラーですが、主役を英国を代表する俳優の一人、ヒュー・グラントが、今までのトーンとは全く異なったサイコな役柄を演じています。

原題はHeretic。訳すと「異端者」です。「異端者」をAIで紐解くと、宗教的な正統から外れた教義を信じる人、学説などにおいて主流から外れた考えを持つ人、あるいは社会の規範を無視して自由奔放に生きる人を指す、、、となっています。

ポスタービジュアルからもプンプンと異端者の意味が漂ってきますが、果たしてどんな異端者がスクリーンに登場するのでしょうか?ぼくの視点でレビューしてみます。



『異端者の家』トレイラー

『異端者の家』解説〜どんな映画?

ヒュー・グラントといえば、やわらかな微笑みと甘い英国紳士ぶりがトレードマークの俳優。
そんな彼がまさかのホラー・スリラーに挑戦――。『異端者の家』(原題:Heretic)は、宗教の「歯止め」が外れていく人間の怖さを描いた、サイコスリラーです。

監督・脚本は『クワイエット・プレイス』の脚本コンビ、スコット・ベック&ブライアン・ウッズ。製作はA24。主演のヒュー・グラントが見せる“静かなる狂気”が、観る者を底冷えさせます。



スタッフ・キャスト

役名 俳優 メモ
ミスター・リード ヒュー・グラント 不気味な紳士。知的な狂気を体現
シスター・バーンズ ソフィー・サッチャー 宣教師。真面目で芯が強い
シスター・パクストン クロエ・イースト 宣教師。衝動的で感情豊か
エルダー・ケネディ トファー・グレイス シスターの属する教団の上層部
監督・脚本 スコット・ベック/ブライアン・ウッズ 『クワイエット・プレイス』脚本コンビ
撮影 チョン・ジョンフン 『オールド・ボーイ』など
音楽 クリス・ベーコン 知的で不穏な旋律が印象的
製作・配給 A24 米国公開:2024年11月8日



あらすじ(途中まで)

雨の夕暮れ。二人の若いシスターが、教会の布教活動で、とある邸宅を訪ねる。

ドアを開けたのは、穏やかで上品な物腰の中年男性ミスター・リード(ヒュー・グラント)。

ミスター・リードは人懐っこい笑顔と挨拶で、二人を招き入れる。

最初は穏やかな宗教トークのはずが、少しずつ空気が変わっていく。

鍵は外から閉められ、携帯の電波は届かず、パイを焼いているはずの妻の気配はどこにもない。

礼儀正しく彼の問いかけに答えるシスター・バーンズ(ソフィー・サッチャー)と、怪しさを察知し慎重なパクストン(クロエ・イースト)。

そして、リードが静かに問いかける。

「あなたは“信じる”扉を開けますか? それとも“疑う”扉を?」

それは信仰と自由意志をシスターたちに問いかける“とある実験”のはじまりだった。

ミスター・リードの上品な紳士の笑顔は消え、屋敷は次第に“異端の巣”のような不穏さを増してゆく。

ミスター・リードは罪と赦しを語りながら、彼は二人の信仰心を巧みに崩し、誘導し、地下室へと閉じ込められる――。



『異端者の家』あらすじ結末まで〜ネタバレ閲覧注意!

以下はネタバレです。映画を見る方は絶対スルーしてください。

+  +  +

リードの理論は破綻していたことに気づいた二人は、布教活動という名目が、彼にとって“実験”であったことを悟る。

リードは信仰を逆手に取り、神を信じる者の「境界線」を試していたのだ。
閉ざされた地下室に閉じ込められた二人に対し、リードの行動は、教義と論理から狂気と暴力へと変化してゆく。

シスター・パクストンはリードの手にかかり、斃れる。

できうる全てを使い別の地下室へと逃げるシスター・バーンズ。

そこでシスター・バーンズは驚くべき光景を目にする。

バーンズの目の前に並んでいたのは、ミスター・リードの誘導=狂気の異端審問=にかけられた、過去に布教に訪れた宣教師たちが閉じ込められたケージだった。

秘密の牢獄から反撃に出るバーンズだが、ミスター・リードの異端者幽閉への仕打ちは常軌を逸していた。逆に絶体絶命となるシスター・バーンズ。

そこに絶命したとばかり思っていたシスター・パクストンが最後の力を振り絞り、ミスター・リードを打ち倒す。刺し違えるが如く、シスター・パクストンは倒れ、命の火は消える。

傷だらけのシスター・バーンズは、雪の降る屋敷の外へと逃れ出る。

そこには一匹の蝶が舞っている。
その蝶は、屋敷の中で、ミスター・リードが「死者の魂は蝶になる」と語った象徴句を思い出させるものだった。その蝶は息絶えたシスター・パクストンの命の輪廻だったのか――。

雪と蝶――。
それは、信仰の「死」と「再生」を暗示するラストショットでエンドロール。



『異端者の家』の見どころは?

ヒュー・グラントの“知的狂気”が怖い

ヒュー・グラントがここまで怖いとは。
彼が演じるリードは、上品さと理知的な佇まいはそのままに、「理屈で人を追い詰める狂気」を持っています。
微笑を浮かべながら人の信仰を論破し、言葉で支配していく。その静かな怖さにゾクリとします。

もともと清潔感とスマイルが売りのヒュー・グラントが、あえて宗教の“歯止め”を外していく人間をそのスマイルで演じることによって、知的狂気が倍増しているといってもいいと思います。

『異端者の家」には、“ヒュー・グラントのイメージを壊す楽しさ”が詰まっています。

この映画はまさしく「ヒュー・グラント、仮面を脱ぐ」ですね。



シスター二人の対照構造がマル

布教でミスターリードの家を訪問し、狂気に絡め取られてゆく若い女性のバーンズとパクストン。この二人は性格も信仰の温度もまったく違います。
かたや理性的で真面目。かたや感情第一で自由奔放。そのコントラストが見どころでもあります。

リードの誘導と理論によって、二人の心が少しずつ崩れていく。

観ているこちらも、「自分ならどう答えるだろう?」とつい考えてしまう。

セリフの運びも読めない展開で、脚本の練り込みの深さを感じました。

宗教の歯止めが外れる瞬間

『異端者の家』のテーマは“信仰”ですが、語られているのは人間の支配欲そのものでしょう。

宗教の名を借りたコントロール、善意の顔をした支配。

リードが示す「信じる/信じない」二択は、自由意志に見せかけた束縛でもあります。

その選択システムを媒介にして、二人のシスターの心を切り崩し、知的な会話劇からホラーへと滑らせてゆく演出手腕が見事です。



『異端者の家』ぼくの感想

ヒュー・グラントが満を持して“悪の化身”にチャレンジ。これには正直ワクワクしました。
ドアを開けて登場したときの彼の笑顔と口上は、「ヒュー・グラントさま」そのもの。
けれど物語が進むにつれ、目の奥に狂気が滲み出してきて、シスターたちを罠に導くサイコぶりにゾッとしました。
ゾッとしつつも目が離せない…..なんというか、ヒュー・グラント本人もこの役を演じるのを心底楽しんでいるように見えました。

シスター・バーンズとパクストンのコンビも絶妙。
真逆の性格設定がうまく効いていて、どんなセリフで切り返すのか毎回ドキドキでした。
予想を軽やかに裏切るセリフ回しがいい。脚本の勝利だと思います。

――ネタバレになりますので、映画を見る方は以下スルーしてください――

物語が地下室に移る後半からは、一気にホラートーンへと移行します。
「あれ?心理スリラーじゃなかったの?」と一瞬戸惑いましたが、そこからの二重三重の展開でしっかりと納得できました。

ただ――以下ネタバレ度120%です。映画を見る方は閲覧禁止です――

「ミスター・リードの凶器が“カッターナイフ”なんですよ。

これが痛い!

ナイフや斧よりも、身近な文具で襲われるほうが痛さ倍増です。カッターには思わず顔をそむけました。
昔観た『デッドゾーン』の凶器で使われた“ハサミ”と同じ系統の痛さです。

もう一つの“伏線付きの凶器”もありまして、これがまた上手い使い方をされているのです。
「おお、そういえばあったよね!ソレがココで登場か!」と膝を打ちました。脚本の巧さに拍手です。

後半はダークな世界観にどっぷりです。
その沼のような重さが好きかどうかで、作品への印象、評価が分かれると思います。
ぼくは「後半はちょっと違うかも???」と思いながらも、結局最後まで楽しんで観ていました。

そして、特筆すべきは、ラストの雪の映像です。
白く静かな世界が“救い”を感じさせ、蝶のモチーフの回収も見事でした。
ダークな世界を静謐な美しさで締めくくっています。それがまた”不思議な奇妙さ”でよかったです。



『異端者の家』評価 ★★★⭐️✨(星3.5)

ヒュー・グラントが英国紳士から“歯止めの外れた男”へと変化していく演技は圧巻でした。
ソフィー・サッチャーとクロエ・イーストの繊細な表情演技も素晴らしい。

ただし、宗教的なやりとりはキリスト教圏の文化背景が前提になっており、日本人のぼくには少しピンとこない部分もありました。
後半の演出が少し“はしゃぎすぎ”に感じたのも事実です。

それでも、固唾を飲みながら最後まで見入ったハラハラムービー。
ヒュー・グラントの新しい顔を堪能できる、知的スリラーでした。



『異端者の家』配信レンタル先情報・ブルーレイDVDは?

配信レンタルは以下サブスクで

U-NEXTで配信レンタル中です。(2025年10月現在)

ブルーレイ・DVDはAmazonで入手可能

Amazon.co.jp: 異端者の家 [Blu-ray] : スコット・ベック & ブライアン・ウッズ, ヒュー・グラント, ソフィー・サッチャー, クロエ・イースト: DVD
Amazon.co.jp: 異端者の家 : スコット・ベック & ブライアン・ウッズ, ヒュー・グラント, ソフィー・サッチャー, クロエ・イースト: DVD







コメント

タイトルとURLをコピーしました